行列式の定義を見ると,どうしてこのような式を考え付いたのか想像しにくいですね. 行列式を使わずに連立1次方程式を解いて,行列式の導出を試みましょう.
一般の場合は式が複雑で考えにくいので,まず
について考えましょう.|9dd4e461268c8034f5c8564e155c67a6|を求めるために
の辺々に をかけた
に対して,例えば
を辺々加算すると|415290769594460e2e485922904f345d|の係数が
となります.また,
を加算すると|fbade9e36a3f36d3d676c1b808451dd7|の係数が 0 になります.|415290769594460e2e485922904f345d|の係数には|367d0e931a088df0a8e7addc945fa7eb|が,|fbade9e36a3f36d3d676c1b808451dd7|の係数には |009602b61b3aa17c7e249bdb3864d338|が含まれているのがポイントで,|81033fe7e7162fdaa29fd8b3525a25b4|ならば
|7008774ba2a3c07021d61c54294cb0ef|ならば
となるので,|39ea6ef2598040e5f573f664f028a80b|を初期値として符号|f8d6856ce7090fa6159170fbc855477e|を|2acdabd94f93ff7d4c45f49f5bbea51e| によって順次定めると
が得られ,総和をとると|415290769594460e2e485922904f345d|,|fbade9e36a3f36d3d676c1b808451dd7|の係数がいずれも 0 になることが分かります.
集合|ac53d6834f53864f6cce98789b19b970|に対する1対1写像を置換といい,とくに |ac53d6834f53864f6cce98789b19b970|の任意の2数だけを交換する置換を互換といいます. |865c0c0b4ab0e063e5caa3387c1a8741|と|363b122c528f54df4a0446b6bab05515|を交換する互換|a2ab7d71a0f07f388ff823293c147d21|は
ですが,これを|5e33e4b364139e91328f66f0e78efc2c|とかきます.任意の置換は互換の繰り返し(合成写像)で 表現できます.表現の仕方はいろいろありますが,置換を表現するのに必要な互換 の数は偶数か奇数かは変わりません.互換の数が偶数の置換を偶置換,奇数の置換を 奇置換といい,置換の符号を
で定めます.|f8d6856ce7090fa6159170fbc855477e|の|e11e7dc346a4f3f8196cc186c06f11d1|は互いに異なるので,置換|a2ab7d71a0f07f388ff823293c147d21|を用いて
と表現でき,置換を用いると|7b8b965ad4bca0e41ab51de7b31363a1|元連立1次方程式への拡張が容易になります.
一般化準備として,まず
を置換を用いて書き換えましょう.|80fed756c8358e6a19850beb8178f9bd|とし
を代入した
が|aa687da0086c1ea060a8838e24611319|を求める式であることに注意.|8732099f74d777a67257cb2f04ead3d8|を求めるときの式は
あるいは|a2ab7d71a0f07f388ff823293c147d21|を変更した
であり,|1f89889020cdc84d9e1c35237cb62f65|を求める式は
です.上式の 3 を|7b8b965ad4bca0e41ab51de7b31363a1|で置換し,|a2ab7d71a0f07f388ff823293c147d21|の定義域を|baf9bcdf3df7765be566d31a4efa8b3d|と考えれば, そのまま一般の場合に適用できます.
3 を|7b8b965ad4bca0e41ab51de7b31363a1|で置換し,|a2ab7d71a0f07f388ff823293c147d21|の定義域を|baf9bcdf3df7765be566d31a4efa8b3d|と考えても|1f89889020cdc84d9e1c35237cb62f65|を同じ式で 求められることを確かめましょう.
の|a2ab7d71a0f07f388ff823293c147d21|についての総和をとると,|945315e9d656ad23442dd758248b758e|の係数は
となります.ここで|82cb38cfb7b8f079dda70c6a96f37479|は|2468f06b771fbc7d1f1af1eea1aed3db|,|c0b0371dad9f5aa0cb29a960a14d491f|は |1ef7668554b437666dc6bca399e6ff14|を意味します.上式が成立することは |e4f7b01030892a5ebb9a21e5fded02be|である任意の置換|88207bc086c9d879c22807479d29a9e2|に対して置換 |2cbc2f0a6d893fbbd534422e917a3281|が存在して,
となることで証明できます.
で考えようとすると無用な複雑さで思考が妨げられます.
(2)「3元連立1次方程式」では|6ad43a65711267334c0d010419163143| に を 天下り的にかけましたが,
から|fbade9e36a3f36d3d676c1b808451dd7|を消去すると
が得られ,同様に
も成立するので,|415290769594460e2e485922904f345d|の係数に注目して
から,加重加算によって|415290769594460e2e485922904f345d|の係数を にできることが分かります.行列式で表すと
です.
の解|1f89889020cdc84d9e1c35237cb62f65|は
から|1f89889020cdc84d9e1c35237cb62f65|の係数が0でなければ一意に定まります.
|16868711d2f80fc5c4b56ed9721a2224|を|e9e0a5801a1a99ca1d3b024c594095bc|要素とする|7b8b965ad4bca0e41ab51de7b31363a1|次正方行列|7fc56270e7a70fa81a5935b72eacbe29|の行列式は
で定義されるので,|1f89889020cdc84d9e1c35237cb62f65|の係数が|16868711d2f80fc5c4b56ed9721a2224|を|dadd98b275f56f5ef19c1bc63ba2dccb|要素とする|7b8b965ad4bca0e41ab51de7b31363a1|次正方行列|7fc56270e7a70fa81a5935b72eacbe29|の 行列式であり,上式右辺は行列|7fc56270e7a70fa81a5935b72eacbe29|の|abef081fd754a0a09d3b9c4dae967b28|要素を|d247f594c78d0d2be10fc6d82512cc4e|で置換した 行列の行列式になっていることを確かめられます.