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コリオリの力

天気予報などで衛星から撮影した台風の映像が写ることがあります.台風は渦を巻いています.また,日本近海には温かい南の海から豊富な栄養原を運んできてくれる黒潮という大きな海の流が存在しており,この流れも地球規模でみると大きな渦を巻いています.台風の渦,黒潮の渦,これらを結ぶキーワードが「コリオリの力」と呼ばれるもので,地球のような回転物の上を動く物体に働く力です [*]

ForceDeCoriolis-1.jpg
[*]ぼくはこの「コリオリの力」がどうしてもよくわからず,長い間コンプレックスを持っていました. が,しばらく時間を空けて考えてみたら「あ,そんなことか」と理解できるようになりました. 勉強というのは,こういうことの繰り返しなのかもしれません.

マンガ的にみてみよう

コリオリの力が発生する前提条件は,回転運動している系にいることです.「系」という言葉を想像しにくければ,漠然と「全体的な場所みたいな感じ」と捉えておけばいいでしょう.いま,一つの系として「回転している大きな円盤」を考えて,円盤の上で動く物体のがどのような運動をするのかを調べてみます.ここでは,ピッチャーがキャッチャーに向かってボールを投げる様子を考えます.まずはつぎの4コマ漫画をご覧ください.

なげます.くるくる.スルー.ちゃんととってよ(怒).

円盤の中心にいるピッチャーは,キャッチャーに向かってまっすぐボールを投げたハズなのに,キャッチャーはボールを取ることができませんでした.キャッチャーがボールを避けたわけではないのです.円盤が回転していたので,円盤ごと動いてしまったのです.

いまぼく達は円盤の外にいる立場からピッチャーと

1,2,3,4

ではつぎに,円盤の上に立っているねこ大王の立場から同じ動きを観察します.

ボールが斜めに進んでいるように見えます.まっすぐ投げたのにボールは斜めに進んでしまったのです.ということは,ボールの進行方向がかわったのです.と,いうことはボールには力が働いたことになりますね.この力こそが「コリオリの力」です.

円盤の外から見ている人にとっては,ボールはあくまでまっすぐ飛んでいるのであって,動いているのはねこ大王たちだと思うでしょう.ねこ大王たちが「円盤の上に乗っている」と認識しているのであれば,動いたのは自分達だね,と理解できてボールがうしがら太郎のミットに収まらなかったことに疑問を抱かないでしょう.

しかし,回転円盤がとてつもなく大きくて,自分達がそのようなものに乗っていると認識していないのであれば「ボールが曲がった」と不思議に思うのです.たとえば,ぼくたちは地球という回転物体の上に乗って動いているのですが,普段は誰も自分が動いていることを意識してはいません.このような場合,ボールが曲がるのは(自分達が動いているからではなく)「コリオリの力」が働いたからだと考える方が便利なのです.

数式を計算してみよう

コリオリの力の基本的な性質は上で書きました.台風が渦巻く理由等は,一通り説明できます.ですがもっと詳しいことを知りたければ,たとえば時速100kmで投げたボールに働くコリオリの力はどの程度なのか,などは具体的な数値を知るにはもう少し詳しい情報が要ります.数値を扱って詳しい予測をするには,数式の理解が欠かせません.コリオリの力を含んだ運動方程式を導きましょう.

回転座標系の運動方程式

回転していない座標の運動方程式を回転する座標に変換してやると,コリオリの力を含んだ運動方程式が自然に出てきます.ここでは z 軸のまわり角速度 \omega で回転する xy 平面上の運動方程式を式(1)で表せることがわかっているものとします.詳しくは 回転する剛体上の座標EMANの物理学・解析力学・コリオリの力 を参照してください(手抜きじゃないですよ!).

m\frac{{\rm d} x'^2}{{\rm d}^2 t} = \bm{F} \tag{1}

では,ブランコの運動を考えてみましょう.