ある関数 を,フーリエ変換やフーリエ級数を使って,周波数関数
で再現するには,いったいどれくらいの範囲の周波数
の成分が必要になるんでしょうか?逆に,使える周波数成分の範囲が決まっているとき,どのような関数なら再現できるのでしょうか??この問題は,工学上,とても重要なことです.なぜなら,どれくらいの周波数(周期)成分を使えば,どのような情報が記録できるのかが,この制限から決まってくるからです.
当たり前の話ですが,私たちが普段生活しているこの世界は,「ビデオのコマ送りのように,時が途切れ途切れに流れている」とは普通は考えません.途切れていない,連続な世界なのです.しかし,そんな連続な世界で起こっている何かを,データとして記録したいときは,途切れ途切れな時間の間隔で連続な時間を区切って,データを記録します.ちょうど,コマ撮りの写真のように,です.
このように,途切れ途切れの時間または空間の間隔で,連続な世界を区切ることを 標本化する (サンプリングする)といいます.
//画像を載せる予定.
冒頭に書いた問題の答えを出してくれるのが, (サンプリング定理)と呼ばれるものです.まだ,「こんな定理の名前なんて初めて聞いた!」という方には,使える周波数の範囲が正しくないと,関数が正しく再現できないということも,イメージがあまり掴めないと思います.このイメージに関しては,後のセクションで実際に例を出していますので,このセクションでは「標本化定理とやらを守っていれば,フーリエ級数を使って関数を完全に再現できるんだ」ということだけ,納得しておいてください.
さて,本題に入りましょう.標本化という言葉を使って,冒頭の問題をもう一度確認してみると,「連続な関数 をどのくらいの間隔(周期や周波数)で標本化すれば,もとの
を完全に再現できるのだろうか?」ということですね.
そして,以下が標本化定理です.
theorem
ある関数 を周波数関数
で再現するためには,
に含まれる最大周波数
の
倍以上の周波数成分を
が含んでいなければいけない.
上の定理を周期についても,言ってみましょう.つまり・・・
ある関数 を周期関数
で再現するためには,
に含まれる最小周期
の
倍以下の周期成分を
が含んでいなければいけない.
ということです.