この記事では,完全弾性衝突 をする球同士の衝突でも, 非弾性衝突を起こしうる簡単な例を論じます.
上図の様に完全弾性衝突を行う大きさの等しい球1,2,3を考え,それぞれの質量をm,m/2,m/2とします. 球1はx方向に速度vで運動しています. 球2と球3は自然長 の減衰付きのばねでつながれて静止しているとします. 衝突の際はy軸に対して対称な衝突をし, 1と2の間で力積 ,1と3との間で力積 をそれぞれ交換します.
ここで注意することとして,反発係数の式は恐らくは使えません. よって,その代わり運動量保存則と運動エネルギー保存則を用いることを注意しておきます.
今回は運動方程式ではなく,運動量と力積の関係を用います. 今回は瞬間的に力積を授受するのであって, もし運動方程式を用いるのでは互いに力を与えながら, 有限の距離を進まなければ,運動の変化が起こらないからです. 速度はIの関数として,次の様になります.
ここで,球の半径が等しいことで衝突の瞬間に正三角形ができますから, 球2,3が受ける力積の絶対値を とすると,
変数 の9個に対し, 方程式が8つしかありません.条件がもう一つ必要です.
とりあえずは,速度を求めておきましょう.
さて,答えを言うと, を決めるのに足りない条件は, 衝突直前,直後においての運動エネルギーの保存則から得られます.
式 に式 と を代入すると, の二次式となります.
ここで では素通りですので,
と決定されました.すると,式 より,運動の全てが決定します.
ここで興味があるのは,x軸方向の相対速度変化(反発係数)です.
見事,反発係数は ではなくなりました. 私が思うに,今回はx方向の運動がy方向の運動自由度に逃げたのですが, 他の非弾性衝突も,このように何らかの他のエネルギー自由度に 散らばってしまうため,起こるのだと思います. 減衰付きばねは,得られたy方向の運動をやがて熱に変えます. このばねは球2,3が飛び去ってしまうのを防ぐ為ですが,本質ではありません.
今日はここまで,お疲れ様でした.