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格子欠陥の統計力学とフェルミ分布

金属結晶を考えます.できるにはエネルギー W を必要とする,格子欠陥(格子以外の場所に割り込んだ同種の金属原子)を起こしている原子数を n 個,格子を作っている原子数を N とすると,フェルミ分布関数から,

n = \dfrac{N}{e^{\beta W}+1} \tag{1}

と考えられます.この式を導出してみます.ただし, \beta = \dfrac{1}{k_B T} ,つまり逆温度です.

自由エネルギー

金属結晶は体積がほとんど変わらないので,膨張によるエネルギーは無視でき,ヘルムホルツの自由エネルギー F を考えれば良いでしょう.

F = E -TS \tag{2}
が基本です.ここで,格子欠陥ができる前のエネルギーを E = E_0 とすると,
n 個の欠陥ができた後は, E = E_0+ n W となります.また,およそ N 個の場所に n 個の欠陥原子が割り込んでいると,考えられますから,組み合わせの数は, w=_NC_n=\dfrac{N!}{n!(N-n)!} となります.よって,エントロピーは,ボルツマンの関係式より,スターリングの公式 \ln x! \simeq x \ln x - x を用いて,
S(n) &= k_B \ln w \\&= k_B ( N \ln N - n \ln n -(N-n) \ln (N-n) ) \tag{3}

ですから,自由エネルギー F(n) は,

F(n) &= E(n) -TS(n) \\&= E_0 + n W - k_B T ( N \ln N - n \ln n -(N-n) \ln (N-n) ) \tag{4}

となります.さて,実現されるのは自由エネルギーが最小となる n の値ですので,式 (4) を微分してゼロに等しくなる n が実現される n となります.

\dfrac{d}{d n} F(n) = W + k_B T  \ln n - k_B T \ln (N-n) = 0  \tag{5}

よって,

\ln n - \ln (N-n) = \dfrac{-W}{k_B T} = - \beta W \tag{6} \dfrac{n}{N-n} = e^{- \beta W} \tag{7} n = \dfrac{N}{e^{\beta W}+1} \tag{8}

が導けました.つまり,これはフェルミ分布した欠陥粒子数の期待値となります.これは,一つの欠陥サイトには一つしか原子が入れないと考えた為,フェルミオンの計算になったと考えられます.今日はこの辺で.お疲れ様でした.