数学は抽象的な表現で綴られていく学問ですが,実際は具体的な定義を重ねていって厳密な定理のもとに成り立っています.この記事でも,集合に関していくつかの具体的な定義や定理を紹介しています.最初は大変かもしれませんが,やはりこれらを積み重ねていくことが大事ですので,頑張ってください.
集合を考えるとき,その集合を考える上で対象となる領域にも注意しないといけないときがあります. 中学や高校の数学で2次方程式の解を求めるとき,解の対象領域を実数全体とするのか複素数全体とするのかでは解が存在するかどうかが変わってきましたね.
集合でも,どんな対象で集合を考えているかということにちょっと気をつけてみましょう.例えば,何かの集合を考えるべき領域を整数全体としたとき,その中の奇数だけを集めた集合を考えることができます.そして,その集合の具体的な元を考えることができます.このとき,全体集合が違えば,やはり集合の元も変わってくるかもしれません.全体を定義することで,具体的な集合の元をも一意に決定できます.
このような,集合の元の対象となる領域(ある定まったひとつの集合)のことを 全体集合 といいます. [*]
ベン図で表すと下の絵のようになります.色がついた部分,つまり今考慮すべき領域全体が全体集合となります.
[*] | “全体集合”という言い方のほかにも,“普遍集合”や“宇宙”という言い方もあるようです.筆者はよく知りませんが,全体集合のことをwhole setやuniversal setと英語で言うので,日本語訳が単にそうなっているだけかもしれません.しかし,集合を考える際に,その対象領域を考慮すべき全てを含む“宇宙”とイメージするのは,なかなか味わいがあると思います. |
全体集合を定義することができれば,集合に関する表現の幅も広がります.その一つが 補集合 です.補集合とは,全体集合 の中に存在するある部分集合
に属さない集合のことです.補集合
を具体的に定義すると
つまり, とは
かつ
ということです.下の絵でも確認してください.色がついている部分が補集合
です.
集合の和集合や共通集合をいくつかの集合から求めることは,それら集合の演算をしていることと言えます.
和集合,共通集合の名の通り, を
(足し算),
を
(乗算)として上の式を書き直せば,これらの性質は実数などの演算で私たちがよく知っているものと形としてほとんど同じであることに気がつきます.非常に覚えやすい定理ですね.