この記事では,座標系の回転に関する重要な定理を証明します.
ここに デカルト直交座標系(カーテシアン座標系とも言います) と回転軸 が有ったとします.それを別のある軸 の周りに回転対象の点と座標軸を共に ラジアンだけ回転(この回転を と書く事にします.)して, 座標系の座標軸に移り , が に移ったとします. これと ラジアンの回転をする時, 周りの回転 と, 周りの回転 では結果は当然違いますが, そこに単純なある関係があると言うものです.J.J.Sakuraiの『現代の量子力学(上)』(吉岡書店)に この特別な場合が載っていますが,今回私はこの結果を拡張しました. この記事でこれから扱うのは,座標系の中の点の「能動的回転」 [*] です. ベクトル に回転 を作用させた結果を, と書くと,
[*] | : この回転は複素数平面での積をイメージして頂くのが一番です. で実際に座標平面の上で点 は回転します.「能動的回転」の対義語が「受動的回転」です.これは座標系とその中の点を考えた時,点は動かさないで,座標系の方を動かしてその座標を測りなおすと言うものです. |
その定理とは,
若しくは,
と言うものです.これが分かると,例えば以下の様なオイラー角の回転を直ぐに書き下せるようになります. つまり, を行って 座標に移り, 次に を行って 座標に移ります. 最後に だけ回転します.これを とします. その時,回転は一番右から順に作用させるとすると,
となりますが,回転後の軸周りの回転は煩わしいです. そんな時,この定理が使えて,
であります. ここで の逆回転を としました. 連続回転 の逆は つまり,一つ目の回転をした後, 二つ目の回転を行った時,元に戻すには,二つ目の回転を逆に行い,一つ目の逆をすれば良いという事です. よって, は
という結果が得られます.ここで, ならば簡単に書き下す事が出来て,
となります.今回の話のご利益はこんな感じです.では,式 の証明に入りましょう.
最初に回転軸 と とは次の関係があります [†] .
[†] | : 回転の略記のRですが,ここまでの純粋に回転を表す記号から,以降では回転の行列を表しているとお考えください.この行列は直交行列であり,転置を で表すと, であり, ( は単位行列)が成立します.つまり, となります. |
肝心の任意の回転軸周りの回転行列は,例えば
等となります.ここで はダイアドであり, として, であり,任意の に掛かると, の様に外積に変化します.ちなみに,この記事で出てくる回転軸 は全て長さが1です.( )また,ダイアドは, に対して,単なる行列積 と言う行列だと思っておけば間違いが有りません.
式 を使えば, は変形できて,
となります.ここで,
が示せれば,無事に
となります.よって,式 を示せば証明完了です.今回の話が成立すると確信を持った計算があります. それは,次の必要条件を導いた計算です.式 を辺々二乗したのです. すると, より,
となり,矛盾しないからです.もちろん, から のみを導けないので,然るべき計算をこれから行います.
さて, は の成分を並べ替える事で手に入ります. よって,まずは を求めましょう.式 の添え字を から に変えたものを使って,
よって,この要素を並べ替えて出来る は
と言う行列 を使って,
となります.ちなみに,
となっています.よって,我々は
より,
を示せばよいです.式(18)の中辺の計算を と置きます. すると,
ここで,
更に,
とすると,計算の後に
が分かります.また,
となります.ここから,
であります.
も言えます.
さて,これらを用いて式 を変形していきます.
よって,無事に式 を示せました. お疲れ様でした.それでは,今日はこの辺で.