量子力学でもお馴染みの話です. エルミート行列 ならば,ユニタリー行列 で挟むことによって対角化し,対角行列 とできます. では,逆にユニタリー行列 で対角化できる行列 は,エルミート行列しかないの? という疑問に答えるのがこの記事です.簡単の為,3次行列で話を進めます.
列ベクトル をユニタリー行列の成分とします. つまり,
です.すると,その逆行列は,エルミート共役(共役転置)をダガー で表すと,
となります.対角化された行列を次のように とします.
すると, 正方行列の三連続積の展開 でやったように, 行列を展開 [*] できます.
[*] | どうやらこれを,スペクトル展開と呼ぶようです. |
この はダイアド積と呼ばれる積です. 具体的に
と置くと, を複素共役とするなら,
となり,見事にこれは,エルミート行列の条件, を満たすことが分かります. その和である も当然,エルミート行列です.
つまり,ユニタリー行列で対角化できるならば,その行列 はエルミート行列であることが分かりました. [†]
[†] | さらに強く言うなら,エルミート行列はユニタリー行列(別の言い方では,ユニタリー行列とは複素「正規」直交行列です.) ではなく,任意の複素数 を各列に掛けた複素直交行列 (ただし,その逆行列は )でも,以上の議論は成立します. |
今日はこの辺で,お疲れさまでした.