三次元ユークリッド空間 上の外積代数を考えると,微分形式として次の
つを定義できました.
【零次微分形式】
ただの関数. など.
【一次微分形式】
【二次微分形式】
【三次微分形式】
それぞれ, を基底とするベクトルの形になっていることを,もう一度確認して下さい.(零次微分形式はスカラーに相当.)さて,基底の次数別に何次微分形式などと呼び分けていますが,これらは異なる次数の外積空間の元ですので,言ってみれば,違う世界に住んでいるようなものです.
次数の異なる微分形式の間には,どのような関係があるのでしょうか?(まさか何の関係も無いというわけはなさそうですよね.)
実は, 外微分 という演算によって,次数の異なる微分形式を関係づけることが出来ます.零次微分形式を一回外微分すると一次微分形式,一次微分形式を一回外微分すると二次微分形式,二次微分形式を一回外微分すると三次微分形式という具合に,外微分を行うことで,微分形式は一つ次数が上の微分形式に対応させられます.
[*] | この段階では,まだ外微分とは何か,具体的に示していませんので,『そのような関係を与える写像を入れることが出来る』というような言い方に留めておいた方が正確でしょう.しかし,すぐに示すように,外微分も,今までよく知っている微分によく似た計算です. |
いきなりですが,関数の全微分を求める計算を思い出しましょう.ただの関数は零次微分形式ですから, と置きましょう.この 全微分 が次のように書けることは,既に微積分学でお馴染みだと思います.
よく見ると,これは一次微分形式の形になっていますね.そこで,関数の全微分を求める計算は,『零次微分形式→一次微分形式』という写像だと考えることも出来るわけです.いまから考える外微分という計算も,関数の全微分を,もっと高次の微分形式にも拡張したものだと考えて下さい.以下の つのルールに基づく演算を 外微分 だと定義します.
[†] | 今までの人生で,全微分を計算したことは何度もあると思いますが,『零次微分形式から一次微分形式への写像』をしていたとは気がつかなかったかもしりません.次からは,全微分を見たら一次微分形式だと思ってみましょう. |
definition
五番目の性質は, ポアンカレの補題 として知られるもので,二回連続で外微分を取れば,どんな微分形式でも零になるという主張です.この性質は,また稿を改めて考えます.まず,一次微分形式の外微分を実際に計算してみましょう.(途中で などの性質に注意して下さい.)
確かに, は二次微分形式になっていることが分かります.次に,二次微分形式の外微分も計算してみます.
これは三次微分形式になっています.最後の段で,基底の順列と符号にだけ気をつけてください.では,最後に三次微分形式の外微分が になることを確認してみましょう.
三次微分形式の外微分が になるのは,
上の微分形式を考えているからです.一般に,
の元の外微分は
になります.微分形式の外微分を取ると,微分形式の次数が一つ上がるという点を確認して下さい.
Important
外微分は微分形式の次数を一つ上げます.(写像 になっています.)
[‡] | 式 ![]() ![]() ![]() |
式 と式
にもう一回外微分を施し,
が成り立っていることを確認してみて下さい.
あまり考えたことがなかったかも知れませんが,全微分は座標系によりません.
もし,適当な座標変換をして と変数変換できるとすれば,合成関数の微分公式により,次のような式変形が可能です.
これより と書くことが出来ます.これはどういうことかと言えば,適当な座標変換
の下で,全微分
が不変だということです.
theorem
全微分は,座標変換に対して不変です.
薄々予想されることですが,全微分の持つこの性質は,全微分を拡張したものである外微分にも引き継がれています.後ほど, 外微分の座標不変性 で詳しく考えてみる予定ですので,その準備として,とりあえず全微分の座標不変性を確認しておいて下さい.
[§] | もちろん,ここで用いた座標変換とは, ![]() ![]() ![]() ![]() |