この記事は現在、プロジェクトメンバーによる査読中のものです。草稿段階ですので、内容・表現の正確さについて責任を負いかねます。 リンクを正しく張れていないところが存在しますのでご注意ください。 正式公開まで、いましばらくお待ちください。
複素数と図形1

複素数の演算をガウス平面上での点の動きに対応させると,複素数同士の演算を非常に美しく図形的に捉えることができます.図形的にイメージしておくと忘れにくいというのもありますし,複素数を初等幾何学に応用することもできるわけです.

複素数はニ実数の組だということでしたが, a+ib はガウス平面上でベクトル (a,b) を表わすと思って見てみましょう.

複素数の足し算・引き算

二つの複素数 a+ibc+id を足すと, (a+c)+i(b+d) を得ます.これはガウス平面上のベクトルの足し算 (a,b)+(c,d)=(a+c,b+d) に相等します.

Joh-Imaginary0.gif

引き算 (a+ib)-(c+id)=(a-c)+i(b-d) も同様,ベクトルの引き算 (a,b)-(c,d)=(a-c,b-d) に相当します(ベクトルの加法・減法については もういちどベクトル2 を参照ください).

Joh-Imaginary02.gif

純虚数 i を掛ける

まず,ガウス平面上で 1 に純虚数 i を掛けるとどうなるかを見てみましょう.最初に 1 はガウス平面上でベクトル (1,0) として表わされます. 1\times i = i ですので,一回 i を掛けると (1,0)(0,i) に移されることが分かります.

Joh-Imaginary1.gif

もう一度 i を掛けると,今度は i\times i=-1 ですから,ベクトル (0,i)(-1,0) に移されます.どんどん掛けていくと, (-1,0)\rightarrow (0,-i) \rightarrow (1,0) と移されて,もとの (1,0) に戻ります.

Joh-Imaginary2.gif

一回 i を掛けるたびに,クルクルと 90 度ずつ,ベクトルが反時計回りに回転していくことが分かりました.この様子を,頭の中でしっかりとイメージできれば完璧です.

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実数を掛ける

次は,複素数 a+ib に実数 m を掛けてみましょう. m \times (a+ib)=ma+imb ですので,ガウス平面上で次図のように,ベクトル (a,b)m 倍されました.

Joh-Imaginary3.gif

このように,複素数に実数 m を掛けると,複素数の表わすベクトルは角度はそのままで,長さが変わることが分かります.

複素数の乗法(より一般的に)

純虚数と実数を掛けて,複素数の表わすベクトルの動きを見ましたが,より一般的な複素数の積を見るには,複素数を極形式で表わしておくのが便利です. z_{1}=r_{1}(\cos {\theta}_{1}+i\sin {\theta}_{1})z_{2}=r_{2}(\cos {\theta}_{2}+i\sin {\theta}_{2}) を掛けると,次のようになります.途中で三角関数の加法定理を使います.( 三角関数の公式1 を参照.)

z_{2}z_{1} &=r_{2}(\cos {\theta}_{2}+i\sin {\theta}_{2})r_{1}(\cos {\theta}_{1}+i\sin {\theta}_{1}) \\ &= r_{2}r_{1}\Bigl\{ (\cos {\theta}_{1}\cos {\theta}_{2}-\sin {\theta}_{1}\sin {\theta}_{2})+i(\sin {\theta}_{1}\cos {\theta}_{2}+\cos {\theta}_{1}\sin {\theta}_{2}) \Bigr\} \\&=  r_{2}r_{1} \Bigl\{ (\cos ( {\theta}_{1} + {\theta}_{2}) + i \sin ( {\theta}_{1} + \theta _{2}) \Bigr\}      \tag{1}

これより, z_{1} の表わすベクトルは, z_{2} を掛けることで長さが r_{2} 倍され,偏角は {\theta}_{2} だけ反時計回りに大きくなることが分かりました.

Joh-Imaginary5.gif

この関係を絶対値と偏角の記号を使って表わせば,次のように書けます.

|z_{2}z_{1}|=|z_{2}||z_{1}|                    \tag{2}
{\rm arg}z_{2}z_{1}={\rm arg}z_{2}+{\rm arg}z_{1}              \tag{3}

また,式 (3)z_{1} の代わりに \frac{z_{1}}{z_{2}} を入れれば {\rm arg}z_{1}={\rm arg}z_{2}+{\rm arg}\frac{z_{1}}{z_{2}} となります.移項して次式を得ます.

{\rm arg} \frac{z_{1}}{z_{2}}={\rm arg}z_{1}-{\rm arg}z_{2}            \tag{4}

絶対値も同様に z_{1} の代わりに \frac{z_{1}}{z_{2}} を入れれば式 (2)|z_{1}|=|z_{2}| \Big| \frac{z_{1}}{z_{2}}\Big| となるので,両辺を |z_{2}| で割って次式を得ます.

\Big| \frac{z_{1}}{z_{2}}\Big| = \frac{|z_{1}|}{|z_{2}|}               \tag{5}

(4)(5) の意味も図形的にイメージしてみましょう.

割り算

割り算は掛け算の逆演算ですので, z_{1}z_{2} で割ることは, z_{1} の表わすベクトルの長さを r_{2} で割り, {\theta}_{2} だけ逆向きに(つまり時計回りに)回転させたものになります.乗法と,ちょうど逆の変化を表わすことを式形から確認して下さい.(図はもう省略します.)

\frac{z{1}}{z_{2}} &= \frac{r_{1}(\cos {\theta}_{1}+i\sin {\theta}_{1})}{r_{2}(\cos {\theta}_{2}+i\sin {\theta}_{2})}  \\&= \frac{r_{1}}{r_{2}} \cdot \frac{(\cos {\theta}_{1}+i\sin {\theta}_{1})(\cos {\theta}_{2}-i\sin {\theta}_{2})}{(\cos {\theta}_{2}+i\sin {\theta}_{2})(\cos {\theta}_{2}-i\sin {\theta}_{2})}  \\ &= \frac{r_{1}}{r_{2}} \cdot \frac{(\cos {\theta}_{1}\cos {\theta}_{2} + \sin {\theta}_{1} \sin {\theta}_{2}) + i(\sin {\theta}_{1}\cos {\theta}_{2}- \cos {\theta}_{1}\sin {\theta}_{2})}{\cos ^{2} {\theta}_{2}+ \sin ^{2}{\theta}_{2}}  \\ &= \frac{r_{1}}{r_{2}} \cdot  (\cos (\theta _{1} - \theta _{2}) -i \sin (\theta _{1} - \theta _{2}))\tag{6}

複素同士の加法と減法が,複素平面上ではベクトルの加法・減法に対応し,乗法と除法は,ベクトルの長さを定数倍しつつ回転させる操作に等しいことが分かりました.ここで見た図形的イメージは,複素数を図形に応用する際の基本となりますので,よく理解しておいて下さい.