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準静過程

熱力学においては,ある状態から別の状態へ移ったとき,その各々の状態は「熱力学的平衡状態」の場合を扱う,というお話は既に しました.では,そのある状態から別の状態へ移動している最中の状態はどのように扱えば良いのでしょうか?ここでは「変化中」の状態 のお話をしたいと思います.

そーっと,静かに…

結論を先に述べてしまいましょう.熱力学においては, 状態移行の最中も系は熱平衡状態である とします. 「えっ!?状態が変化してるのに?」という感じですが,その矛盾をうまく処理する良い考え方があるのです!なんと「系が熱平衡の状態 を保つように 極めてゆっくりとした 変化を考えるのです.これを 準静的 (quasi-static)な変化,または 準静過程 といいます. もう少し厳密な定義をしますと,「準静的な変化」とは 有限の変化を起こすのに無限大の時間がかかる変化 となります.

ここで具体的な「準静的な変化」の例を見てみましょう.下の図をご覧ください.

tomi-quasi-static-fig1.png

図は気体を封入したピストン付き密閉容器の様子を表しています.外部との熱のやり取りは全く無いものとします.このピストンを非常 にゆっくり引っ張れば,容器内の気体を熱平衡状態に保ったまま膨張させることができます.また逆にピストンを非常にゆっくり押し込め ば,容器内の気体を熱平衡状態に保ったまま圧縮させることができます.

「準静的な変化」が存在するということはなんとなくわかりました.しかしながら,なぜこのような取り扱いをするのでしょうか? その理由は「取り扱う問題を非常に簡単にすることができるから」です.具体的に例を挙げてご説明しましょう.下の図をご覧ください.

tomi-quasi-static-fig2.png

図は気体を封入したピストン付きの容器の上に,ある系がのせられている様子を表しています.ここで容器と系の接触部分のみ,熱の出入り が可能であるものとします.先程と同様,非常にゆっくりピストンを押し込みます.すると系は,容器内の気体の温度と等しい温度を保ったまま 気体から熱を得ることができます.また逆にピストンを非常にゆっくり引っ張れば,気体は系の温度と等しい温度を保ったまま系から熱を 得ることができます.

この例のような場合,何か一つでも = (イコール)で繋ぐことができる値が存在する…安心しますね.これがもしピストンを急激に動かそ うものなら,大変なことになります.ピストンの動きによる気体の揺らぎ,それによる容器内の気体の密度変化,その揺らぎによる熱の揺 らぎが上部の系に伝わるまでの時間…etc.様々なことを考慮しなければならなくなります.これはものすごく苦しいです.だから非常にゆ っくりとした状態変化を考えるのです.

可逆変化

上で,「系と容器内の気体の温度を等しく保ったまま系に熱を与え,また系から熱を奪うことができる」と述べました.ここから,上記の ように気体から系に熱を与えた後,同じ量の熱を系から気体に戻すと,系も気体も元の状態に戻ると考えることができます.このような, 体系の状態を元に戻し,外界にも全く変化が残らないようにし得る変化を 可逆変化 といいます.熱力学で考える 可逆変化は 準静的な変化 です.

今はまだ,準静的な変化だの可逆変化だのと言われてもピンとこない方が多いと思いますが,この知識は後々「熱機関」等の辺りで役に 立ってきます.熱力学で用いる変化はこういう変化をするのだな,と頭に入れておいてください.

コラム:場合によっては…

上では,熱力学においては極めてゆっくりとした変化を「準静的変化」とすると述べました.しかし場合によってはそうとも言えなさそう です.

例えば空気中を伝搬する音波.これは急速に変化する現象ですよね.ところが普通, 音波の振動周期よりもはるかに短い時間内に気体内の 熱平衡が成立 します.そのため 急激な変化であっても準静的変化と考えて良い場合もある のです.準静的な変化の捉え方は,時と場 合による,ということですね.