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ハイネ・ボレルの被覆定理と論理学

複素関数論を勉強していて,ハイネ・ボレルの被覆定理というものに出会いました. 詳しくは,「数学・物理解説サイト JSciencer」さんの Heine-Borelの被覆定理 をご覧いただくとして, 論理学的側面から,言いかえを行ってみたいと思います.

定理(下記参考文献からの引用)

その定理というものは次のようなものです.

『z平面上の任意の閉集合 A は,それが開集合 U_\lambda \ \ (\lambda \in \Lambda : \Lambda は点集合 ) の合併集合 U= \cap_{\lambda \in \Lambda}U_\lambda で覆われているならば,有限個の集合 U_\lambda で覆われる.』

ここで,

α:z平面上の任意の閉集合 A である.

β:開集合の合併集合 U で覆われている.

γ:有限個の集合で覆われる.

とおくと,この定理の意味するところは, \alpha \Rightarrow (\beta \Rightarrow \gamma) となります. この論理を言い換えてみましょう.まず,真理値表を書くと,

\alpha
\beta
\gamma
\beta \Rightarrow \gamma
\alpha \Rightarrow (\beta \Rightarrow \gamma)
T T T T T
T T F F F
T F T T T
T F F T T
F T T T T
F T F F T
F F T T T
F F F T T

となります.

論理的言いかえ

ここで,同値関係にある論理の変形を行います. その関係とは「対偶法」, (X \Rightarrow Y) \Leftrightarrow (\overline{Y} \Rightarrow \overline{X}) と, 名前を知りませんが,有名な同値関係(「ならばの否定」とでも言いましょうか.), (\overline{X \Rightarrow Y}) \Leftrightarrow (X \wedge \overline{Y}) です . \alpha \Rightarrow (\beta \Rightarrow \gamma) を変形していくと,

一: \alpha \Rightarrow (\beta \Rightarrow \gamma)

二: (\overline{\beta \Rightarrow \gamma}) \Rightarrow \overline{\alpha}

三: (\beta \wedge \overline{\gamma}) \Rightarrow \overline{\alpha}

となります.

さて,「三」のアルファベットに元の意味を代入してみましょう!

(「開集合の合併集合 U で覆われている.」かつ「有限個の集合で覆われない」)ならば「z平面上のある閉集合 A ではない.」ということになります.「任意の」は否定すると「ある」に変わるところに注意してください.少し定理の内容が身近になった気がしませんか?

それでは,今日はこの辺で.お疲れ様でした.