日本と海外の物理学などの教科書について

日本と海外の物理学などの教科書について

ゆうた さんの書込 (2006/06/25(Sun) 15:46)

はじめまして.現在,理系大学生のものです. 質問どうかよろしくお願いします.

日本の大学の教科書と海外の翻訳された教科書を見ると,海外の場合は説明もクドイくらいに詳しいですし,問題の解説も非常に詳しいです.たとえば,力学の場合,「科学者と技術者のための物理学松村(訳)」は初学者にとってとてもわかりやすいと思います.図書館に行って,「この本わかりやす!!」と思う本はだいたいが翻訳本です.とくに問題集が高校に比べあまりに貧弱と思います.多くの日本の参考書の問題の解説は,答えのみだったり詳しくなかったり,です. なので,僕が思うに,海外の優秀な書物を読むことなしに物理学を理解することはできないんじゃないか?と思ってるんです.大学教授など彼らは日本の教科書だけで物理をきちんと理解できたのか?と思うんです.英語の書物を読みこなせない学生はものすごい非効率なことをしているのはないか?と思うんです.畑を耕すのにトラクター(海外の教科書)を使えず,クワ(日本の教科書)だけしか使えない状況のような感じがします.この認識についてどう思われるでしょうか?

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/06/25(Sun) 17:29)

始めまして.

私は,かなりのOBで,しかも長いこと物理から離れていたので,かえって気楽にお話できると思いコメントします.

私は,高校のころ物理については教科書を見ませんでした.かわりに「PSSC」という米国の教科書を眺めていました.当時,米国は,当時のソ連と覇権を巡って競争していましたが,宇宙競走でソ連に敗退し,その反省から理科関係の教育刷新を標榜して作った教材の一つかと思います.

今となっては何がどうだったかを覚えていませんが,重力ポテンシャルを絵にして説明していたのは鮮明に覚えています.

>問題集が高校に比べあまりに貧弱と思います.多くの日本の参考書の問題の解説は,答えのみだったり詳しくなかったり,です.

これにはお答えする権利がありません.私は,演習問題を一切やらない主義でしたから.ただ院生の時,インストラクタで演習の担当をしたときには,流石に事前に調べ,複数回答をしました.一部の学生さんからは喜んでもらえましたが,過半数の学生さんから行き過ぎと文句を言われました.

確かに,面白い問題を作るのはエネルギーの要ることなので,営業上の問題で,あまり制作に時間が取れないような気がします.むしろ,この掲示板などで,学生さんから見た「望まれる問題」を作ってみたら良いのでは?

なお,私は,諸般の事情から,「流体力学」に手を染めることになり,裳華房の「流体力学」,神部 勉・編著 を購入いたしました.この時,基礎演習シリーズに同名・同編著者の演習書があったので,ありがたく購入しました.

この時に,感じたのは『学生の頃は「疑問があれば,友人と論議」という強い武器があった』という事実です.こちらのサイトがそのようなユーザ・ニーズに対応してくれるのを期待します.

物理は,多面的な性格をもった学問の一つですが,おうおうにして,技術論的な側面に焦点が当てられ気味と思います.その逆の,原理原則の論議も良いと思います.

音楽の世界では,楽譜にその国の言語が使われだしたときに,その国の固有の音楽が花開くと言われています.先進国イタリアに留学したバッハが帰国後,ドイツ語で楽譜を書くようになったとか.(記憶間違いかもしれません)

わが国の物理教科書でも,日本語で書かれた強力な教科書を作るのは,皆さんのような若い世代だと思います.それも,教科書とインターネットが融合するようにしてもらいたいですね.

・教科書で判らないことを知り, ・必要な実験をPCで行い ・測定データを教科書の式で解析し ・インターネットに公開して論議する...

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

toorisugari no Hiro さんのレス (2006/06/26(Mon) 19:58)

日本の本より海外の翻訳本に良書が多いというのは事実です.米国,ソ連(ロシア),欧州と研究者の数から考えても当たり前の話です.

それより,そんな良書が英語でなくて日本語で読めるというのがすごいことだと思います.先進国の学生で良かったとよく思いました.(もちろん,専門性の高いものは原著しかないのは致し方ないですが).

ただ,残念なのはそんな良書が「売れない」からどんどん休刊・廃刊になっていることです.学部学生の人はwebだけでごまかさずどんどん専門書を買ってください.

ゆうたさんのおっしゃることで気になるのは,「わかりやす!!」ということが良書だと思っていらっしゃることです. # きっとランダウ・リフシッツは読まれていないだろうな:-)

わかりやすさや,自習がすいすい進むことも良書の一つの条件かもしれませんが, それだけだと,昔のよい本と出会えなくなってしまいますよ.

mNejiさんもおっしゃっていられるように > 『学生の頃は「疑問があれば,友人と論議」という強い武器があった』という事実です

すいすいわかるだけでは本当には理解できず,人とあるいは自分自身と議論して はじめて理解できるものがあると思います.

厳しい言い方をすれば「詳しい解答をみても力にはならない」 のです.

初学者向けの良書はまだまだ国産の本はそろっていません.でも,中級以上なら国産の本でも世界に誇る名著がたくさんあります.

早く,それらの本が味わえるようになってください.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

ゆうた さんのレス (2006/06/27(Tue) 05:33)

ありがとうございました.今後は,さらに英語の勉強に時間を投資したいです.

難しい書物での自分との格闘や,友達との討論などが必要なことは確かと思います.答えはすべて教科書に載ってませんし,最先端の研究には教科書なんてありませんので,いずれはそういう作業の中に入らなければいけないですし,また,自分なりに考えたり,友達との討論の結果,教科書の字面には書いてない深い理解を自分なりにできた経験もあります.

でも,物理の諸段階のたとえば波動方程式を,わかりにくい教科書で時間をかけて格闘して理解した知識と,わかりやすい教科書でスルッとたいした時間もかけず理解した知識と,今の僕にはそれほど差があるとは思えないんです.それに,今の僕は,それほど物理を愛してはいないです.多くの学生が,なんとなく物理学を選んでるんだと思います.その2つの理由で,僕には物理学のた〜くさんの科目を格闘しながら理解していくほどの情熱がないのです.とにかく内容を難なくスルッと理解していきたいんです.

僕は思うんですが,学部生は学問にそれほど情熱があるとは思えません.結果,悪戦苦闘する情熱がなく理解できないまま,物理学の何たるか,をまったく知らずして挫折する人がかなりいるように思います.大学院生レベルになれば,物理学の面白さが少し理解できて,後は自分で悪戦苦闘してくれるように思いますけど,学部生はそうではないような気がします.食わず嫌いのようで才能がすごくもったいない.物理学の何たるか,を多少なりとも理解してから挫折するようにすべきと思いますね.なので,日本はもっと教育に金をかけるべきだし,国の事業で教科書作成をするべきな気がします.売れる売れないに左右されない,とにかくわかりやすい教科書作成のために.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/06/27(Tue) 20:00)

面白い論議がでているので,コメントさせていただきます.

「toorisugari no Hiro」さん >ただ,残念なのはそんな良書が「売れない」からどんどん休刊・廃刊になっていることです.学部学生の人はwebだけでごまかさずどんどん専門書を買ってください.

専門書(紙)と同時に,対応する専門書(ウェブ・サイト:自由閲覧)をつくり,連携して理解を深めるようにする.その心は;

  1. 専門書(紙)を見るのは「学ぶ」には良いと思いますが
  2. 関連部分をみたり,グラフ・表を連携して見たいことが良くある.それを専門書(ウェブ・サイト:自由閲覧)で補完する.
  3. 物理のかぎ・しっぽでも,動くグラフが,ある種の理解を深めるのにゆうこうですし,表も読者がソートできたらよいかも知れません.
  4. 当然,本の中の式を直接パクッて,遊ぶのもよいかも知れませんし,その出力を自分でグラフ化するとか.

ゆうたさん >日本はもっと教育に金をかけるべきだし,国の事業で教科書作成をするべきな気がします.売れる売れないに左右されない,とにかくわかりやすい教科書作成のために.

これには大反対です.明治時代のわが国や,現在の中国のように,目を瞑っても,国力の増強をするしかないならいざ知らず...

  1. むしろ,大学・研究所の職員に「その人のユニークな視点をこめた本を書くべく休暇を,3年ごとに6ヶ月」といった制度を導入する.好評な図書を書いたと学生が投票したヒトには,1年間の留学(国の内外をふくめて)を与えて,もう1冊の本を書く義務を課す...

ゆうたさん >僕は思うんですが,学部生は学問にそれほど情熱があるとは思えません.結果,悪戦苦闘する情熱がなく理解できないまま,物理学の何たるか,をまったく知らずして挫折する人がかなりいるように思います.

これは,そのヒトの個人的問題であって,他のヒトが口出しできないものだと思います.そのヒトなりに,ある種の必然からそのような結果になっているからです.かく申している私も,そのような落ちこぼれでしたから....

取り急ぎ,主要点にコメント致しました.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/07/01(Sat) 16:12)

ゆうたさん:

>今後は,さらに英語の勉強に時間を投資したいです.

英語も苦手だったので,是非ともこの方面でも良い成果を得られますように.

他方,日本語の本でも良い本が有ると思います.最近の物理の教科書は見てないので判りませんが,私は基本的にファインマンさんの"Lectures On Physics"でしたが,電磁気には特別の関心があったので,砂川さんの理論電磁気学も勉強しました.この本には演習問題が別途でて来たのですが,サボりました.

輪講で,英語の電磁気学の本(著者はイタリア人のような名前)を読まされましたが,理論電磁気学の方がよく書いてあったのを自慢したものでした.微分形式のマクスウェル方程式が速めにでて,段々に積分形式の表現が出てくるのに「目を皿にして」ながめたようなきがします.

#私は,面倒がり屋で有名でした.唯一まじめだったのは,ベクトル解析は1年の夏休みに出来ました.体積分,面積分,線積分等と微分形式の式との対応関係がずらずら出てきたのには驚きました.「ベクトル解析ツール無しでどうしてこれらの積分算法を編みだしたのか」が不思議だと思いました.

当時,人には聞けない悩みがありました.非慣性系に出てくるコリオリ力が今ひとつ理解できなかったのです.ところが,現在,趣味で水泳の解析に手を出しているのですが,その関係で

「新版 ロボットの力学と制御 有本 卓・著 朝倉書店 2002-03 ISBN4-254-20945-2」

を拝見しました.この解説が巧みで,積年の疑問が解消しました.

これは,座標系の取り方の図での表示が巧みなので,分離して考える要所がきちっと分離して説明されていたからと思います.もっとも,多くの学生が平然と理解していたのに,頭の悪い私がいけないのだと思いますが...

ですから,夏休みぐらいは,日本の図書にも目を通してくださいね.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

Joh さんのレス (2006/07/01(Sat) 21:28)

日本の教科書は,薄くないと売れないのか,内容が薄いか,説明が不親切な本が多いように思います.

しかし,ゆうたさんが「海外の本」と一概に言っているのは,「英語の本」のことなんでしょうね.ドイツ語やフランス語の本は昔に比べて貧弱になっているように思いますし,オランダやスウェーデンなどの小国では,すでに本屋に行っても英語の教科書ばかりが売られています.もちろん簡単なレベルの本はそこの国の言葉の本がありますが,専門性が高くなれば,自国語で教科書を出す体力のある国は多くないのではないでしょうか.いまや世界中の人が,英語を勉強しなくてはどうしようもない状況になっていますし,日本人だけが苦労しているわけではありません.

圧倒的な需要を考えてみても,英語の方がいろいろな本が出ているのは当然でしょう.日本語は,結構頑張っている方だと思いますし,悪くない本もたくさんありますよ.

勉強するとき,お金を惜しまずに複数の教科書を手元に置いておくのが一番良いと思います.著者によって興味の方向や説明の仕方が違いますし,読み手によっても納得のいく説明の仕方は異なるからです.色々な知識をオーバーラップさせ,最終的に自分なりの理解に到達するのが良いと思います.その意味で,日本語の本と英語の本は併用すれば良いのではないでしょうか.

私自身,インターネットに記事を書いていますが,インターネットでの勉強はあくまで補助的なもので,何でもすぐに検索して調べようとする人は駄目だと思っています.あくまで,メインの勉強は活字の本,手計算,友人や先生との議論を通して行うべきで,できれば居心地の良い喫茶店も必要です.大学に行くということは,授業だけでなく,色々な友人,様々な形の知的刺激,図書館,勉強できる環境など,総合的な環境により大きな意味があるように思います.私が物理のかぎしっぽに書いた記事について,たまに「わかりやすい」という感想を頂くことがあります.ありがたいことですが,本当は,すんなり分かる記事なんて意味がないと思ってます.できれば,読者をうんうん唸らせて,自分で頭を働かせるような重厚な記事を書きたいのですが,まだまだ力不足です.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

崎間 さんのレス (2006/07/01(Sat) 23:29)

ゆうたさん,mNejiさん,toorisugari no Hiroさん,Johさん,こんにちは.

様々な意見があって面白いですね :)

僕は,分かりやすい記事を自分でつくることには意味があると思ってます. だから,分かりやすい記事を読んで, どういうのが分かりやすいか知ることにも意味があると思っています. 特に,理解にスピードが求められるときには,分かりやすさはとても大切です.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/07/02(Sun) 00:46)

崎間さん,始めまして.

> 様々な意見があって面白いですね :)
このスレッドもとても面白いですね.その上,昨日今日の「慣性の法則?じゅんさん」のスレッドは,まるで演劇を見ているようで,思わず「拍手」してしまいました.

> 僕は,分かりやすい記事を自分でつくることには意味があると思ってます.

私は「分かりやすい」文章を書く能力が欠落しているのですが,「自分でつくることには意味」はとても大切だなあ,と思っています.

> 理解にスピードが求められるときには,分かりやすさはとても大切です.

これは,敢えて問題意識を掲げられていると感じます.「慣性の法則?」では,お二人の解説者とじゅんさんのピンポン,その間を皆さんがジッと見守ったのですね.恐らく,じゅんさんは一生この時の緊張感と考える楽しみを忘れないとおもいます.この場合は,一種の時間遅延がとても重要とおもいます.

少し,違うかも知れませんが,Johさんの数学から物理数学を俯瞰した解説には,エレガントな緊張感があると思います.私のように数学嫌いであったものですら,昔,疑問に感じたものの難しいから「理解の外側に置いて来てしまった何か」についての記憶が少しずつ呼び戻されているようです.こんな歳になって,知的興奮を体験できるとは思いませんでした.

このような環境を構築された事について,深い感謝を表明いたします.

さて,話をJohさんの発言に移ります.

> 日本の教科書は,薄くないと売れないのか,内容が薄いか,説明が不親切な本が多いように思います.

これは,toorisugari no Hiroさんが,始めの頃におっしゃった;

> ただ,残念なのはそんな良書が「売れない」からどんどん休刊・廃刊になっていることです.学部学生の人はwebだけでごまかさずどんどん専門書を買ってください.

と共役の現象のようですね.「売れない」といけないから,「薄くする」と「内容が薄いか,説明が不親切」....

でも,ご両者共に,日本語の教科書の出版の意義を主張されています.私も,つい最近になってそうだと思います.アジアの周辺国としてアジア大陸,アメリカ大陸の圧力を受けつつ,自国のアイデンティティを保ってきたモーチベーションが,日本語の本を保存してきたのかもしれません.

他方,インターネットと本は競合するものでもあり,ヒュージョンするものでもあるように思います.具体的なアイデアの実証が大事ですね.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

かつ さんのレス (2006/07/02(Sun) 10:51)

皆さん,おはようございます.

その昔,拙の若かりし頃(^^;),教科書を書いている教授にこの理由を訊いた事があります. 物理では無く数学でしたが,英語の複素関数論の教科書が非常に判りやすかったので,何でこんなに差があるのか,問いただした訳です.

実は,彼らも,本当は判りやすい教科書を書きたいのだそうです.しかし, > 日本の教科書は,薄くないと売れないのか,内容が薄いか,

まさにこれが理由で(^^;),最初にページ数を指定されるんだそうです. で,まさか図とか結果の式とか前提とかは削れませんよね.すると,途中の計算を削り,説明を簡単にし,重複をなくす,という事になります. 結果として,自習するのが困難な教科書になる,という事の様です.

逆にアメリカの教科書は,基本的に自習することを前提にして書いてある,と聞いたことがあります.

ただ,最近は日本語で読める判りやすくて易しい参考書が沢山あるので,良い時代だと思いますよ・・・と爺の戯言です,忘れて下さい(^_^)

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

あああ さんのレス (2006/07/07(Fri) 13:58)

大学で勉強したことって,もし代々木ゼミナールとか大手の塾がわかりやすく教えていれば,大学4年間の勉強は1年もあれば身につくようなことのように思う. 量子力学とかも本当にわかりやすく教えれば,誰でも理解できるようなことと思う.ただ,教科書や授業が,わかりにくいだけのような感じがする.

昔の学生は,今のような遊びや情報氾濫社会でなかったから,勉強くらいしかやることなかったのかもしれない.だからじっくり勉強に時間を投資するのが当たり前の環境だったかもしれない.でも今の学生はそういうのとは異なっているのかもしれない.

今の学生はすぐに答えを求め,マニュアルを求めたがる.こういう学生たちに対して,今のままの教育方針で良いのか?と.難しい教科書,理解しにくい授業などと格闘も重要だろうが,それよりも,多くの学生が量子力学を理解し,それについて議論可能な状態のほうが僕は未来が明るいように思う.つまり,大学受験スタイルのほうが良いのではないか?大学受験では,高校の授業や教科書だけでは,絶対に東大の数学の問題を解けるようにはならない.しかし,塾や超がつくくらいの親切な参考書など,手取り足取り教えるから,解けるようになる.あの薄っぺらい高校教科書だけでは,よほどの天才でない限り無理だ.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

toorisugari no Hiro さんのレス (2006/07/07(Fri) 14:26)

あああさんのおっしゃることが可能であるとしましょう.

私がもし企業の経営者であれば,高い給料を払って大学卒を雇わず,パートを雇って業務に必要な知識だけ提携予備校にいって習得させます.最低賃金でも,仕事をしながら大学入学者に匹敵する能力がつくので,多くの応募があるでしょう.最終的に大卒を雇うより安くできそうです.なにより文句言われずに自由に馘首にできるのが最大の魅力ですね.

大して苦労をかけずに得た知識には,大した見返りは来ないと思います.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

toorisugari no Hiro さんのレス (2006/07/07(Fri) 16:25)

予備校の執筆したマニュアルをライセンス購入して,それを従業員に読ませるだけでいいので,もっと安くつきますね.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

あああ さんのレス (2006/07/07(Fri) 17:42)

でも,日本の高校の授業は世界から賞賛されているわけでしょう. そして,日本の大学の授業は海外からは批判的ですよね. 「日本は高校までは優秀だが,大学4年間で凡人になる」 みたいなこと言われてますよね. アメリカの大学なんかは,もっと教育に労力とお金をかけてますでしょ.

それに,教授たちも「よりわかりやすい教科書を書きたい,しかし出版社の要請で説明を薄くしている」ということらしいですよね.大して苦労をかけずに得た知識には,大した見返りは来ないってのは教授レベルなら知り尽くしてることと思いますので,わかりやすい教科書を進めるというのは矛盾に思えます.

最先端の研究分野には,教科書などありません.よって,苦労して知識を得る技術なり根性なりを学ぶことは重要と思いますので,大学をすべて専門学校化するのはだめと思いますが,でも上記に書いた状況考えると,日本の大学教育の放任教育は度を越えてるように思うんですよね.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/07/07(Fri) 18:11)

かつさん:

>結果として,自習するのが困難な教科書になる,という事の様です.

>逆にアメリカの教科書は,基本的に自習することを前提にして書いてある,と聞いたことがあります.

言われて見ればそうかもしれませんね.私は,授業で人の話を聞いて理解できる能力に欠けていたので,自然と参考書をみて自習となっていました.

ただ,1年生の夏休みに,朝永振一郎さんの「量子力学I,II」を読めという宿題でした.問題を解く必要は無かったと思いましたが,流石「1年」だったので,流し読みながら読破しましたが,その結果,量子力学が嫌いになりました.

最近,思い出したのは,電磁気学で砂川さんの理論電磁気学を1年以上かけて読んだことを思い出しました.この本は,当時としては破格な厚さと,δ関数のオンパレード,何が何でも微分形式のマクスウェル方程式から計算するという,ストイックな姿に感激しました.とうじ演習書もあとから発行されたと思いますが,やりませんでした.いまだ,電磁気は好きなのに,答えの出せない私です.

あああさん:

>塾や超がつくくらいの親切な参考書など,手取り足取り教えるから,解けるようになる.あの薄っぺらい高校教科書だけでは,よほどの天才でない限り無理だ.

最近の高校教科書もやはり....「親切な参考書」の中でもお勧めの本を紹介して欲しいと思います.マジで見たいですね,宜しくお願いします.

toorisugari no Hiroさん:

>予備校の執筆したマニュアルをライセンス購入して

って,講義用の教科書てあるのでしょうか? 見たくなったですよ.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/07/07(Fri) 18:25)

あああさん:

あっ,あああさんは大学1年生かなと思って書き込みしましたが,間違いでしたらごめんなさい.

>でも,日本の高校の授業は世界から賞賛されているわけでしょう. >そして,日本の大学の授業は海外からは批判的ですよね.

これって出典はどこですか?

例えば,高校でいえば,語学授業はまだまだ実用できでも,明確なフレームもない.数学でみれば,複素数とか微分方程式ぐらいは数学の論理構造に関係するから,もっと屋って欲しいし,他方細かな細目は減らして欲しい.と,素人目にも本質的な改善は求められているのでは?

日本の大学は,学生数の減少に伴い,ある程度の自己改革は進むでしょうが,本質的な改革は学生側が主体的に問題点の掘り起こしと,代替案を提案・実施する必要があるとおもいますが.

もはや,時代は,求めるものが,行動するしかないのでは?このサイトも然りだと....

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

かつ さんのレス (2006/07/07(Fri) 23:30)

みなさん,こんばんは.

mNejiさん: 横レスですが, >でも,日本の高校の授業は世界から賞賛されているわけでしょう. >そして,日本の大学の授業は海外からは批判的ですよね.

これは私が高校ぐらいの時に,新聞記事かなんかであったような記憶が (^^; 今は昔の話かも知れませんよ.ゆとり教育で随分と学力低下したそうなので.

砂川さんの本は,分かれるでしょうね.私は好きではないです (^^;

toorisugari no Hiroさん: > 予備校の執筆したマニュアルをライセンス購入して,それを従業員に > 読ませるだけでいいので,もっと安くつきますね.

仮に,あああさんの言うような本があったとしても,それはあり得ない と思いますよ. そんなことが可能なら,既に予備校が高校生向けに売り出しているの ではないですか? これだけ読めば一年で東大合格みたいな本を(w

私も崎間さんの意見に賛成で,わかりやすさは重要だと思いますし, 苦労することに価値があるとは思いません.

因みに,わりと最近,工学部の方でしたが,大学の先生に伺った所, 先生も日本の学部が詰め込みで無理があるのは承知してらっしゃる ようですw

また,拙の友人で,東大の経済からハーバードの院に行ったやつの 話では,「アメリカで経済学部卒なんて,経済学のケの字も知らない」 と言ってました.その替わり,院は地獄だそうですが (^^;

長文多謝. m(__)m

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

tktk さんのレス (2006/07/08(Sat) 01:29)

はじめまして.面白い話なので混ぜてください.

あああさん; >大学で勉強したことって,もし代々木ゼミナールとか大手の塾がわかりやすく教えていれば,大学4年間の勉強は1年もあれば身につくようなことのように思う.

これはさすがに言いすぎかと..どんなにわかりやすく教えても,大学4年間の内容を1年で理解するのは….1年で理解できる人がいても,その人は天才だから,結局独学でもOKな気がします.

>量子力学とかも本当にわかりやすく教えれば,誰でも理解できるようなことと思う.ただ,教科書や授業が,わかりにくいだけのような感じがする.

わかりやすく,というのは大事ですが,学問としての深みを伝えるということが大学の講義の重要な点の一つだと自分は思います.ここが,大学で最前線で研究している教授の講義と,塾の先生の授業の決定的な差異だと思います.後者の場合,教えてくれる先生が本当に理解しているのかどうか不安ということも(前者でもたまに理解していないと思われる人がいますがw).

思うに,「理解しにくい講義」が良いのかどうか,というと,かなり微妙です.理解しにくい分,自分で頑張って勉強するから,結局理解が深まる,ということもありますが,やっぱり講義は分かりやすいに越したことはないと思います.ただし,学生たちに議論させる余地をうまく残すのが教育的なのかな,と.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

あああ さんのレス (2006/07/08(Sat) 18:39)

今の日本の大学教育だと,学問を理解する前にドロップアウトしてしまう人がすごく多いように思うんですよね.自分は大学生ですが,量子力学わけわかりません. これって,ものすごく人材を無駄にしてるように思う.だって,量子力学を理解できれば,最初はわけわからんかったが好きになったという人材の出現の可能性を否定してるから.量子力学を理解している100人と10人の集団がいれば,絶対に人数多いほうが良いアイディアも出てくると思うんですよね.

苦労して知識を得る作業は重要とは思ってます.だって最先端の研究は,わかりにくい教科書すらないんですから.

でも,技術立国日本が,科学を理解している人材の裾野を広げる努力をしないで本当に大丈夫なんですかね?

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/07/08(Sat) 19:24)

あああさん:

>量子力学を理解している100人と10人の集団がいれば,絶対に人数多いほうが良いアイディアも出てくると思うんですよね.

私も,量子力学がうまく解釈できない一人です.だけれども誰もが物理のオールマイティである必要があるのでしょうか?

私自身,自分と同学年の仲に「2人ほどこいつには勝てない!」と思う人に出会いました.一人は物理数学で指南を受けました.他の一人は,量子力学の授業中に,彼が教授に質問攻めをするのを聞きながら,「おお,そんな理解も出来るのか!」と感激しました.

でも,私は量子力学は苦手です.だからといって,物理を全面的に否定することもないと思っています.ある意味で,確信的落ちこぼれ,とでも言えませんか?

>技術立国日本が,科学を理解している人材の裾野を広げる努力をしないで本当に大丈夫なんですかね?

これは重要な課題(issue)であるとおもいます.しかし,物理以外の音楽とか芸術,映画,漫画,スポーツといった広い分野に,個人として世界と渡り合える人材がではじめています.

大学・研究所でみていても,ノーベル賞受賞者だフィールズ賞受賞者が近くにいたりしますね.会社ですら,ノーベル賞受賞者がでていらっしゃいます.これは,ある意味で,明治以来の政府の努力,各学会・会社の努力の積み重ね,人材・人脈のいたすところだと思います.

しかし,構造的にこのままでは良くないと思います.特に,義務教育の段階から,細かな知識の詰め込みをしていますが,内容を精選して,記憶力重視の教科書・試験体系を直すべきと思います.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

toorisugari no Hiro さんのレス (2006/07/08(Sat) 20:43)

>> 予備校の執筆したマニュアルをライセンス購入して,それを従業員に読ませるだけでいいので,もっと安くつきますね. > 仮に,あああさんの言うような本があったとしても,それはあり得ないと思いますよ.

ええ.私もそう思います.:-)

読むだけで量子力学がわかる魔法のマニュアルなんて作れっこありません.それにはふたつの理由があります.

一つはかつさんがおっしゃるようにそんなのがあったら,とうに大学受験用の「読むだけで東大合格シリーズ」がでてますよね.:-).(「読むだけでセンター高得点」みたいな本はありますが(TT)).

どうしても議論や演習をしないと身に付かないものがあります.それは知識でなく,考え方(センスや論理力といってもよい)や世界観だからです.

量子力学は,今まで積み上げてきた世界観(物理観や常識)を覆すものです.

考えてみてください.どんなにわかりやすく書いたマニュアルでも,中世キリスト教の信者に地球説・地動説を理解させることはできません(たとえ迫害がなくても).世界観を覆すには膨大な量の(400年の歳月にわたる)説得をしなければいけません.それでは簡便なマニュアルにはなりません. # 現代人はすでに新しい世界観を持ってますので,地動説は小学校の授業で十分ですがね.:-)

これが一つ目の理由です.

二つ目の理由は長いので次にまわします.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

toorisugari no Hiro さんのレス (2006/07/08(Sat) 20:46)

二つ目の理由です.

魔法のマニュアルではなく,わかりやすい良い本なら作ることは可能かもしれませんが,困難があります.

良い本ができないもう一つの理由はわかりやすい本を作るための材料が少ないことです.

量子力学には,世界観に加えて,たかが100年程度の「出来立てほやほや」の数学を使わないといけないのも癌です.さらに大学入試にでる事項と違って枯れていません(今も進化しています).大学入試の分野は狭いし固まっていますが,量子力学は広いし動いています.

このような分野でわかりやすい本を書くためには,もっとも研究が進んで新しい計算・表現方法を開発しないといけません.さらに,それらが良書(たとえばJ.J.Sakuraiの本)になるためには,たくさんの似た試みの文献の山がないといけません.

予備校の教科書や講義がよいのは,高収入が約束される場ですので,競争を勝ち残った優秀な講師がたくさんいるためです.でも,いくら優秀な講師がいても,無から量子力学のバイブルをつくることはできません.(ノーベル賞をとったファインマンぐらいの講師が10人いる予備校なら可能かな:-))

つまり,あああさんが求める本を予備校に作ってもらうためには,新しい考え方のわかりやすい量子力学のテキストが何十冊もなければいけません.優秀な講師はそれらを使って初めて,わかりやすくておもしろくて短いマニュアルを作ることが可能となるのです.

結局,結論は,「学部学生の人はwebやマニュアルだけでごまかさず,どんどん専門書を買ってください.」になります.そうすれば,より分厚い(でも解説十分の)テキストが作れますし,新しい考え方で本を書いてやろうと言う試みが,研究者や大学教授だけでなく,予備校や高校の先生,そして学生からも,起こるのではないのでしょうか.

お願いですから,専門書を買ってください.そのとき,わかりやすい本だけでなく,古典的な名著も買ってください.その「投資」がわかりやすい本を生むのにつながるのです.

長文失礼しました.

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/07/08(Sat) 21:40)

toorisugari no Hiroさん:

私は,頭のリハビリテーションの為に,こちらに参加しているような状態です.物理の図書を見るようになって,ほんの1ヶ月ぐらいで,浦島太郎状態です.良い本と思われるも図書を独断と偏見でお教えくださいませんか? できれば,amazonのサイトでチェックできるようにISBNをつけていただけると嬉しいですが.

自分の例では,流体力学で粘性流を一から勉強する予定です.偶然,すこし遠い区の図書館で借用した,

・連続流体物理学,西川 恭治,大林 康二,若谷 誠宏・共著,朝倉書院,1981-04

はISBNも無く,絶版のようです.

上の本と同時に,流体の渦の感触を知るために借用した,

・現代数学への入門 解析力学と微分形式,深谷 賢治・著,岩波書店,2004-04,ISBN4-00-006884-9

は,初学者にも取り付きやすい無いようです.後半,飛ばし気味のようですが,「オイラーのこま」を解析しないといけない人は稀有ですからね.

そこで,今日,他の数冊を借りてみました.私は,数学というと,高木 貞治さんの「解析概論( A4版ぐらいの大きい本)」やソ連のスミルノフさんの「理論数学教程#xx:全十数巻,殆ど1cmぐらいの小さい本,なにか数冊が厚めだったと...」の時代だったので,襟を正して数学者のお教えを戴く感触を持ってました.

ところがシリーズでは

・行列と行列式,砂田 利一・著,ISBN4-00-006879-2 ・力学と微分方程式,高橋 陽一郎・著,ISBN4-00-006875-X ・複素関数論入門,神保 道夫・著,ISBN4-00006874-1

など,数学関係の本といっても,いや,物理のしがらみを無視できる強みで,面白いではないか! と思いました.勿論,素人の誤解かも知れませんが...

この「電磁気とベクトル」も面白そうです.こちらでJohさんの解説に触れているので,「幾何入門」「曲面の幾何」「双曲幾何」にも興味が湧きますし....

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

toorisugari no Hiro さんのレス (2006/07/10(Mon) 18:14)

> 良い本と思われるも図書を独断と偏見でお教えくださいませんか?

ええーと,それでしたら新しいスレッドを提案されてはどうでしょう.最近気に入った本,名著,古典をみなさんに出してもらいませんか?

とりあえず,数学(微分形式関係)で最近気に入った本を羅列してみます.

深谷 賢治さんの本は両方持っています.ブルバキ流でないのが物理屋にも受け入れやすいですね.

現代ベクトル解析の原理と応用 新井 朝雄

もごついですけど,他の数学書に比べると物理屋を意識していて比較的読みやすいです.

物理数学の直観的方法 長沼 伸一郎

は再出です.今,見返すとだいぶん毒がなくなっていて前より拒絶反応はなかった.でも,この本のrotの説明が良いとよく言われますが,別の古い本にも同じ説明があったのを読んでいたので当時も感動はしなかったな.

rotの説明で感動したのは洋書ですけど, Geometrical Vectors ,Gabriel Weinreich

です.これは本質的にはテンソル解析の本ですけど,絵だけで(微分・積分を使わずに!)ガウス・ストークスの定理などを説明していて,「目から鱗」状態でした.これは初心者はもとより,すでにベクトル解析やテンソル解析を知っている人にもお勧めです.

テンソル解析のスタンダードは テンソル―科学技術のために 石原 繁

でしょうかね.テンソル解析は添え字計算と思っていた頭には新鮮でした.

とりあえず,ここまで.後は新スレッドよろしく > mNejiさま

Re: 日本と海外の物理学などの教科書について

mNeji さんのレス (2006/07/10(Mon) 18:57)

toorisugari no Hiroさん:

>ええーと,それでしたら新しいスレッドを提案されてはどうでしょう.最近気に入った本,名著,古典をみなさんに出してもらいませんか?

面白いアイデアですね.この掲示版に書き込んでいただいたものを,物理かぎしっぽWikiに集計整理するとか....

言いだしっぺのゆうたさんや,崎間さんのご意見をお聞かせ願えるとありがたいです.

>深谷 賢治さんの本は両方持っています.ブルバキ流でないのが物理屋にも受け入れやすいですね.

この本を見て,数学屋さんも人間なんだと思ふ,このごろです.「ブルバキ」ときくと,やや小太りの先生が,パイプでも咥えながら...といった漫画を想像するだけで終わってしまう....

私は,数十年ぶりに出戻ってきた,浦島太郎ですが,流石,小気味よい本があるようですね.今のところ流体力学で水泳の分析がしたいのですが,もう少し中期的に,趣味の世界として探索するのも良いような気がしてきました.

お教えいただいた本については,自分のところで,収集の練習に使わせていただきます.