電気について

電気について

かんの さんの書込 (2006/06/18(Sun) 01:06)

理工学部に通っている大学一年のかんのと申します.基本的に高校時代は物理が苦手だったのですが,大学ではなぜか少し好きになってきました.現在,疑問に思っていることがあります.非常に大それた質問をしてしまいますが,どなたかお願いできますでしょうか・・・?

電気回路についてです.(電気回路と読んでいいのかどうかもわからないのですが・・・) 中学のころから電気回路ではオームの法則V=RIが成り立つと教わってきました.しかし,電気回路とはまず抵抗が必ず存在しなければいけないのですか?なぜか大学になるまで,電気の分野(特にこのような電気回路について)は公式を覚えるだけで,何が起こっているのかなど根本的なことを僕は放ってきてしまったようです.

電気抵抗が存在せずに電源Vのみの電気回路は作ってはいけないのですか?Rが分からなければおのずとIも求められないのかなと思ったりします.

電源が存在すれば電気回路内の電位差が一定になって電子が流れ,定常電流を流すことを可能にする.抵抗がなければその電子は永遠に流れ続けることができる.抵抗とは電子の流れにくさですから,ないにこしたことはない.こう考えるのはおかしいのですか?むしろ回路内を同じ電子が回り続けるという考えも誤解なのでしょうか?

教えてください.もし抵抗が電気回路に必ず必要ならばなぜ必要なのか?また,電気回路内では具体的に電子にどのような動きが起こっているのか,教えていただけると助かります.なかなかこのようなことを説明している本が見当たらないので・・・. もしこのようなことが詳しく書いてある本があるのなら紹介してください.

Re: 電気について

黒子 さんのレス (2006/06/18(Sun) 08:27)

かんのさん,こんにちは.

まず,電気回路で抵抗が必ず存在しないといけないのかという質問ですが, 理論上では抵抗がなければ,電流は流れたい放題で,しかもそれがどこまでも永遠に続きます. でも,計算上は電気抵抗=0と考えている導線であっても,実際には必ず抵抗を含んでいます. なので,超伝導でも使わない限り,本当に電気抵抗=0の回路というのは作れません. よければ,一度,超伝導というものを調べてみてください.

そして,回路中の電子の振る舞いについてですが, 電源だけの回路ならば,理論上はずっと電子がぐるんぐるんと永遠にまわり続けていることになります. 抵抗を電子の流れで考えようとするときは,導電率や流れている物質の熱振動なども一緒に考える必要があります. きっと大学で電磁気などを扱い始めたら,そのうちに出てくることでしょうから,今は頭の片隅にでも置いておいてください. 電気回路を考えるだけなら,抵抗とは電子の流れをどのくらい邪魔しているのかを表す数値,または流れにくさと考えてよいかと思います.

で,,抵抗がないと,とにかくいいのか. それは,その回路の部分がどんな役割を持っているかで,もちろん変わってきます. 電線のように,とにかく電気エネルギーを遠くまで運びたいならば,(抵抗がない)=(電気エネルギーの損失がない)ということなので,抵抗がないのはとっても嬉しいことですね. でも,流れている電気エネルギーを取り出したい部分(負荷の部分)では,抵抗が小さくては取り出せる電気エネルギーも少なくなってしまいます. 抵抗が少ないとか,キャパシタンスが大きいとかいうことが,どんなときに有利なのか,どうして有利なのか,回路を作ったり解析したりする上で,非常に大事なことなんです. なので,そういうことを考えながら,これからは電気回路を眺めてみてください.

長文となってしまいましたが,まだ疑問があるときは遠慮なく言ってください.

Re: 電気について

黒子 さんのレス (2006/06/18(Sun) 10:53)

すいません. 上で私が説明したことは,意味が分からないというご指摘を掲示板の外でいただきました. 一番最初に返信しておいて,無責任かと思いますが, 誰かフォローしていただけるとありがたいです.

Re: 電気について

かんの さんのレス (2006/06/18(Sun) 11:34)

黒子さん,ご丁寧な解説有難うございます.僕もこの質問を投稿したあといろいろ考えてみました.なので下の考えがあっているかご指摘お願いいたします.

まず導体は等電位であることを忘れていました.そしてキルヒホッフの第一法則をもう一度考え直してみると少し頭が整理されたような気がします.

導線を通っている間は理想的には電位が等電位なので,電子は加速も減速もされず電流は変わらない.しかし,抵抗器や電流計などを通ったときに少し通りにくい=つまり抵抗が働くために,一秒間に通る電子の数は少なくなる=電流が下がる=電圧が減速される向きにかかっていると考えることができる. これを考えると閉回路でスタート(電源)のときの電位は,その道中で少しずつ減速されて一周して戻ってくるとゼロになる=つまり電子が不動の状態になる.だが戻ってくるとまた電源のおかげで加速する.

抵抗がない回路では実際は導線に抵抗が働いているため,電源のみの回路でもゴールではまたゼロになることができる.ということでしょうか?それともキルヒホッフの第一法則が成立しなくとも,電源に帰ってきたときに電位が0にならなくてもよいということですか? 電源に帰ってきたときに0でなければ次のようなことは考えられないのですか?例えば3Vの電源のみが接続されている回路があって一周して帰ってきたときに,まだ1Vの電位をもっていたとしたら,そこにまた電源から3Vの電位ポテンシャルをもらって加速し,何週もするうちに無限大まで加速していく・・・というようなことは理論上は起こりえないですか?

なるほど!実用的な面では電子を活用するためには,電子の流れを邪魔することが自然と必要になるから抵抗がかかるわけですね.つまり,抵抗がない回路なんて意味はないから,中高では抵抗のある回路ばかりを学習していたわけですね?

Re: 電気について

桝岡 さんのレス (2006/06/18(Sun) 14:14)

すでに議論は別のポイントに移っているようですが,,

>電気抵抗が存在せずに電源Vのみの電気回路は作ってはいけないのですか?

回路理論としては,作ってもかまいません. そのような回路は利用価値がないので,通常は作りませんが,思考実験ということで作れば,無限大の電流が流れます.

現実的には,そのような回路は利用価値がないだけでなく,実現が困難です. 電線は,超伝導物質を使えば電気抵抗=0にできますが,電源には,内部抵抗が存在します. もし,内部抵抗=0の電源があったら,超伝導物質でショートすると,計算上は無限大の電流が流れます.しかし,超伝導物質は,大きな電流を流すと超伝導を維持できなくなるという性質があり,電気抵抗が発生してしまうので,やはり実現できないという結論になります.

(注意) 実際には,内部抵抗の小さな電源を電線でショートすると,大電流が流れて危険です. 火災の発生や,電源の破損が発生する可能性があるので,実験しないほうが良いと思います.

>回路内を同じ電子が回り続けるという考えも誤解なのでしょうか?

電源として,電池を使用している場合は,化学反応により放出された電子が移動するので,同じ電子ではなく別の電子になると思います. 発電機を使用している場合は,同じ電子ですが,比較的ゆっくりと移動するので,同じ電子が回り続けるという文章のイメージと,少し違うかもしれません. たとえば,断面積1mm^2の導線に0.1Aの電流を流す場合,電子の移動速度は7um/s程度という非常に小さな値になり,回路の全長が1mなら,1周するのに40時間かかります.

Re: 電気について

黒子 さんのレス (2006/06/18(Sun) 15:00)

桝岡さん,こんにちは. いろいろと付け加えてくださって,ありがとうございます.

かんのさん,再びこんにちは. どこまでちゃんと説明できるのか,私も怪しいところですが, まず,電子が閉回路を回って電源に戻ってきたとき,電子の速度がゼロになってしまうことはありません. 電子の速度がゼロになってしまうということは,そこ(電源のマイナス側)で流れている電流もゼロになってしまうということです. それよりも,電源で電子に与えられたポテンシャルからの力と,抵抗部分で電子に加わる抵抗力がつりあって,電子は結局,等速直線運動をしていると考えるほうが自然だと思います. (ただし,これまでの議論は電子の流れを十分,大きな時間で観察したときのものです)

電源を入れた直後は,電子にかかる力はつりあっていませんが,だんだんと速度が大きくなるにつれて,電子に摩擦力のようなものが働きます. この摩擦力は電子の速度に比例していますから,電子の速度ははある速度で安定します. そして,このときの摩擦係数が抵抗に当たるものと考えられると思います.

閉回路を一周して,キルヒホッフの電圧に関する法則が成り立たないということは,ないと思います. 桝岡さんがおっしゃったように,電源内には内部抵抗がありますし,導線にも抵抗はあるので,電源だけの回路を考えるときでも中高で習ったような,抵抗がつながっている回路と等価と考えて良いと思います.

Re: 電気について

かんの さんのレス (2006/06/19(Mon) 14:55)

桝岡さん,黒子さん,大分分かってきたような気がします.ありがとうございます.

では市販の乾電池(内部抵抗はあるのですか?)と導線を繋いだだけならば,電源と導線の内部抵抗の影響で結局はキルヒホッフの電圧降下の法則が成り立つということでしょうか?

抵抗力とポテンシャルからの力がいつかつり合うというのは,落下運動における終端速度と同じようなものであると認識してよいでしょうか?超伝導物質でショートした場合に計算上は電流が無限大になるが,実際は電気抵抗が発生してしまうというのは,この抵抗力とのつり合いが要因の一部となるからでしょうか?また電流が無限大になるというのは 抵抗に邪魔されずにポテンシャルをどんどん増やせるからですか?

電源だけの回路を考える場合でもキルヒホッフの電圧に関する法則が成り立つんですね!でも中高でそれを扱えないのは導線と電源に内部抵抗があるというのは扱いにくいし,実感が沸かないからでしょうか..

Re: 電気について

黒子 さんのレス (2006/06/19(Mon) 23:23)

かんのさん,こんばんは.

>では市販の乾電池(内部抵抗はあるのですか?)と導線を繋いだだけならば,電源と導線の内部抵抗の影響で結局はキルヒホッフの電圧降下の法則が成り立つということでしょうか?

市販の電池でもキルヒホッフは成り立ちます.

>抵抗力とポテンシャルからの力がいつかつり合うというのは,落下運動における終端速度と同じようなものであると認識してよいでしょうか?

力がつりあうことを,力学でたとえたのは,そのイメージをつかんで欲しかったからです!! 厳密に言えば,力学で扱う質点と自由電子を全く同じに扱ってはいけないのですが・・・. 終端速度も,あくまで電子の運動をじゅうぶん大きな時間で観察したときに,一定の速度とみなせるというもので,ちょっとごまかしなんです. (本当は,いろんな速度をもった電子が存在しています.その平均速度は上でのべた終端速度です. このとき,ひとつひとつの電子の動きを解析するよりも,すべての電子の速度を平均速度で表すのが便利なんです.)

ちなみに,コイルのインピーダンスは慣性の力,コンデンサーのインピーダンスはばねの力のようなものと考えることが出来ます. (これらの例えは,またの機会にでも考えてみてください.)

>実際は電気抵抗が発生してしまうというのは,この抵抗力とのつり合いが要因の一部となるからでしょうか?

ちょっと考える順番が逆になってしまっている気がします. 電気抵抗があるから,抵抗力というものを例えとしてイメージできるのであって,抵抗力があるから電気抵抗があるということではありません. ややこしく感じるかもしれませんが,注意してください.

電子が媒質中を運動するというのは, 負に帯電した電子(自由電子)が,正に帯電した原子の中を運動するということです. よって,たくさんの電子が媒質中を運動する(大電流を流す)と,電子と原子の間に働くクーロン引力を無視できなくなります. このクーロン引力は,電子の運動を邪魔してしまいます. (↑これが抵抗の原因のひとつとなっているわけです.) おそらく,超伝導でも大電流を流すと電気抵抗が発生するのは,このためだと思います.. (私はそのあたりの専門家ではないので,あんまり自信はありません・・・)

>また電流が無限大になるというのは 抵抗に邪魔されずにポテンシャルをどんどん増やせるからですか?

そういうことになると思います.

>中高でそれを扱えないのは導線と電源に内部抵抗があるというのは扱いにくいし,実感が沸かないからでしょうか..

中高では,ものごとをなんでも簡単な世界に持ち込んで,話を進めたほうがいいと考えられているからだと,私は想像しています. 回路では,電源は電源!導線は導線!抵抗は抵抗!・・・と,内部抵抗とかややこしいものを省いて,きっぱり分担を分けて話を進めたほうが,初心者には易しいと信じられているのだと思います.

Re: 電気について

トンガリ さんのレス (2006/06/20(Tue) 12:24)

かんのさんの言う,電源だけの回路とは, 内部抵抗のない電源の出力をショートさせることを意味する.けど,意味がない.

乾電池には【警告:ショートしてはならない】と書かれている. 無負荷電圧が約1.60ボルトの新品の単三アルカリ乾電池をショートさせると, 負荷電圧は最大約0.02ボルトで,乾電池の表面温度は室温より最大約25℃上昇する. 約10分間のショート後,室温に冷めたときの無負荷電圧は約1.40ボルトに減った.

負荷をショートさせるのは禁止されていて危険だし,乾電池を無駄に消耗させ 乾電池を破損させる恐れがあるだけの【ショートの実験】に教育的意味がない. むしろ,ショートは問題発生の元凶と教えることこそ意味がある.

無負荷電圧が約1.60ボルトの乾電池をショートさせると,負荷電圧は約0.01ボルト に下がるのは不思議でない.乾電池の内部の化学反応する面積や容積に限度があり, ショートさせたからといって,無限大に近い電流が流れるはずもなかろう. 負荷電圧が大幅に下がって奇異に思うか知れないが,キルヒホッフの?V=0は成立ってる.

オームの法則の実験で,乾電池の内部抵抗を無視したり省略しているわけではない. 負荷電圧を計測値としているので,内部抵抗による電圧降下は織り込み済みである.

オームの法則の実験では,負荷抵抗に着目して計測値を負荷電圧&負荷電流と呼んだが, 乾電池に着目して出力電圧&出力電流と呼び替えれば,そのままで内部抵抗の実験になる.

電気回路の設計においては,負荷を破損しないように定格負荷電圧や負荷電流を考慮し, 電源を破損しないように定格出力電圧や出力電流を考慮し,トランス電源においては, 磁気飽和によるピーク電圧の低下の恐れがないか検討する.普通はショート対策も行う.