始めまして.私は専門が理工係とは全く離れているのですが,故あって心電図の原理について調べています.それで,ドンピシャのサイトを発見し,読んでいるのですが,電磁気学的内容で,とくに数学がからっきし駄目な上,英語なので四苦八苦しております.どなたか私の疑問点を教えていただける方がいらっしゃれば幸いです. 取り急ぎ,二点お伺いします.
ttp://butler.cc.tut.fi/~malmivuo/bem/bembook/08/08.htm 上記サイトに関して
(質問1) 8.6) 式から(8.7) について -ρdΦ/dr = I_o/(4πr^2) a_r(8.6) (ここで,a_r は単位ベクトル) これをdΦ= I_o/(-ρ4πr^2) a_rdrとして積分した結果が (8.7)式だと思うのですが,何故積分すると単位ベクトルa_rが消えるてくれるのか分かりません.
(質問2) (8.14) 式についてですが (8.12) 式Φ_d = p/(4πρr^2) ∇(1/r)・a_d (a_d はダイポールの単位ベクトル) (8.13) 式∇(1/r) = a_r/r^2 (a_r は半径方向の単位ベクトル) からすると,(8.14) 式は,Φ_d = p/(4πρr^2) a_r・a_d となるはずですが,p/(4πρr^2) a_r・a_z となっています.よく読むと,ダイポールがz軸に添うように座標が設定されていると仮定しているようなので,a_d→a_zになったのではないかと思うのですが,何のためにわざわざそう設定する必要があるのでしょうか.
大変初歩的な質問でお恥ずかしいのですが,何卒ご教示の程よろしくお願いいたします.
(質問1)について (8.6)式がおかしいと思います.左辺がスカラーで右辺がベクトルになっているからです. ∇Φはベクトルであり,Φがrのみの関数のときは,∇Φ=(dΦ/dr)a_r ですから,(8.6)の左辺には a_r が抜けています.
(質問2)について そのように座標を設定すると途中の計算も計算結果も簡単になるからです. 一般の場合は,この結果に適当な座標変換を適用すれば求められます.
yamaさん回答頂きありがとうございます. なる程,左辺にもa_r があって,単純に消去されたということなんですね. それなら納得です.
ただ,今更この様なことをお聞きして申し訳ないのですが, ∇を調べると,(d/dx, d/dy, d/dz)となっています. 実のところ,Φがrのみの関数の場合の∇というのがピン来ません. 先のサイトでは,To satisfy Equation 8.5, only the component of ∇Φ in the direction of r can arise.とあるので,そういうものなのだと流していたのですが,Φ・(d/dx, d/dy, d/dz)から何故dΦ/drが出てくるのでしょう.
重ね重ね恐縮ですが,新しい質問を追加いたします. (質問3) ttp://butler.cc.tut.fi/~malmivuo/bem/bembook/08/08.htm 8.2.2 Dipole では 強度 -I_o(sorce)と+I_o(sink)のmonopoleが微小距離dで近接して存在するとき,p = I_o*dをdipole moment と定義しています. (ただし,d→0,I_o→∞,pが有限の範囲にあると仮定) この分野では,こうしたdipoleをcurrent dipole と呼んでいるようです. 一方,electric dipoleと呼ばれるものがあるようですが,両者の違いがいくら調べてもよくわかりません. なお,前者ではポテンシャルΦの式にはconductivity(σ)が,後者では誘電率ε_oが入るなどの違いがあるようです.
(質問4) 質問が前後するようですが 生理学や心電図学の教科書では, 容積導体中で,dipoleから角度θ,距離rの点Rにおける電位は, V=1/(4πS)・pcosθ/(r^2) =P・R /(4πSr^2) ( p:dipole moment,S:多分conductivity,P,R:ベクトル ) であると説明されています. (しかし,何故そうなのかは全く説明がありません) ttp://butler.cc.tut.fi/~malmivuo/bem/bembook/08/08.htmの(8.15) 式が正にその式形なので,これを鵜呑みにすれば疑問が一つ解決だったのですが,実のところ少し混乱しています. 説明によれば,dipole field (Φ_d)は, Φ_d=∇Φ・d =p/(4πσr) ∇(1/r)・a_d d:dipole momentのベクトル, Φ:scalar potential=I_o/(4πσr) a_d=unit vector <恐縮ですが,詳細は上記URL8.2.2 Dipole及びFig 8.1.を参照願います.> Φを求めるために積分して,Φ_dで今度は微分??? このdipole fieldって何でしょう. 一旦は,上記のVと式形が似ているが別物で,(electric dipoleのアナロジーから) V=I_o/(4πσ)・{1/√(r^2+(d/2)^2-rdcosθ) - 1/√(r^2+d^2/4+2rdcosθ/2)} ≒I_o/(4πσ)・1/r・〔{1+dcosθ/(2r)} - {1-dcosθ/(2r)}〕 ≒I_o dcosθ/(4πσr^2)=pcosθ/(4πσr^2) と考えれば,ttp://butler.cc.tut.fi/~malmivuo/bem/bembook/11/11.htm の(11.2) 式とも矛盾が無いと糠喜びしたのですが, (11.4) 式以降の立体角との関わりで, dΦ=p/(4πσr) ∇(1/r)・dS (11.4) -dΩ=∇(1/r)・dS (11.5) という関係式が出てきます.これは明らかに生理学の教科書にある dV=1/(4πS)・p cosθ/(r^2) dS dω=dS・cosθ/(r^2) に相当すると思われるので,やはりdipole fieldが教科書でいう電位なのだと考えざるを得ません. ここへ来て,電位,potential,fieldという用語の意味がよくわからなくなってきてしまいました.
冗長で,まとまりに欠く質問で申し訳ありません. にわか勉強のため自分の蟠りを的確に表現する術を知りません. 考えの経緯をそのまま書きました. 宜しくお願いします.
∇Φ のx成分は,∂Φ/∂x=(dΦ/dr)(∂r/∂x) です. また,r=√(x^2+y^2+z^2) より ∂r/∂x=x/r=a_rのx成分 となります. y成分,z成分についても同様なので ∇Φ=(dΦ/dr)a_r であることがわかります.
(質問3)について current dipole の場合,電流の涌き口と吸口が近接して存在しているのに対して electric dipole の場合は,正負の点電荷が近接しています. どちらの場合も,そのまわりに電場ができていて,電位分布は同じ形になります.
(質問4)について Φ_d は dipole による電位です. これに対して Φ は monopole による電位です. dipole は逆符号の monopole の対なので,monopole による電位を用いて dipole による電位を導くことができるわけです.
まとまりの無いに質問に対し,明瞭な回答いただき感謝いたします. 重ねてお伺いします. 門外漢には,どうもイメージし難いのですが,電流の涌き口と吸口が近接して存在というのは電池見たいなものをイメージすればよろしいのでしょうか.
すみません.質問をもう一つ入れ忘れました. monopoleと(current)dipoleの関係はお蔭様で理解できました. ただ,electric dipoleの場合のように,2つの電化の作る電位の和(差)ではなく, Φ_d=∇Φなのでしょう.
current dipole のイメージとしては,電池でもいいし,外部電源につながれた+−の電極でもいいでしょう.
dipole による電位は,monopole による電位の和です. 原点にある−I_o のmonopole による電位を−Φ(<b>r</b>) とすると, 座標 <b>d</b> の位置にある I_o のmonopole による電位は,Φ(<b>r</b>−<b>d</b>) で表されます. dipole による電位は,これらの和になるので,Φ_d=Φ(<b>r</b>−<b>d</b>)−Φ(<b>r</b>) になります. これを <b>d</b> の巾級数に展開すると,0次の項は0になり,1次の項は−∇Φ・<b>d</b> になります. d は微小なので2次以上の項を無視すると,結局 Φ_d=−∇Φ・<b>d</b> となります. なお,(8.10)〜(8.13)の式は間違っているようです.いずれも右辺に−が必要だと思います. しかし,−どうしがキャンセルするので,(8.14)と(8.15)は正しいと思います.
いくつか,確認させてください.
(1) d の巾級数に展開…聞きなれない用語だったので念のため確認いたします. r(x,y,z),d=(a,b,c)とすると, Φ(r−d) =Φ(x,y,z)+1/1!{-a・∂Φ/∂x-b・∂Φ/∂y-c・∂Φ/∂z} =Φ(x,y,z)+(∂Φ/∂x, ∂Φ/∂y, ∂Φ/∂z)・(-a, -b, -c) =Φ(x,y,z)+(∂Φ/∂x, ∂Φ/∂y, ∂Φ/∂z)・-(a, b, c) =Φ(x,y,z)-∇Φ・d ∴Φ_d=Φ(r−d)−Φ(r)=-∇Φ・d ということでよろしいでしょうか.
(2)各式についても検証していただき,大変助かりました. ただ,(8.10) 式なのですが,Φ_d=(∂Φ/∂r)・dではないのですか. 記載どおり,∂Φ/∂dだとすると,(8.11) 以降に繋がる道筋がどうしても思いつきません.
(3)それと,これは蛇足的な事項ですが,記載どおりの解法がよりスマートなのだとは思いますが,できるだけ高等学校レベルの数学の範疇で論じられれば,より助かります.そこで,以下のように解いてみたのですが,近似があまりよく分からないので,何か間違いはあるでしょうか. |R|=r,|D|=d Φ(R−D)=I/(4πσ)・1/|R−D| Φ(R)=-I/(4πσ)・1/|R| とすると, Φ_d=Φ(R−D)−Φ(R) =I/(4πσ)・{1/|R−D|-1/|R|} ここで, 1/|R−D|=1/√|R−D|^2 =1/√(|R|^2-2|R|・|D|+|D|^2) =1/√(r^2-2R・D+d^2) r >>>d であると考え, ≒1/√(r^2-2R・D) =1/r・1/√(1-2R・D/r^2) ≒(1+R・D/r^2)/r ∴Φ_d=I/(4πσ)・{(1+R・D/r^2)/r-1/r} =I/(4πσ)・1/r・{1+R・D/r^2-1} =I/(4πσ)・1/r・R・D/r^2 =I/(4πσ)・R・D/r^3 P=I・Dより Φ_d=R・P/(4πσr^3)
=pcosθ/(4πσr^2)
(2) 確かに,よく見ると(8.10)はおかしいですね. r は d の関数ではないので,d で微分すると 0 になってしまいます. しかし,あなたが書かれた式もちょっと違うようです. あなたの式では,Φ_d は <b>d</b> の向きには関係しないことになります.
<b>d</b> の向きを一定に保ちながら,大きさ d だけを変化させるとき, |<b>r</b>−<b>d</b>| は d の関数と考えることができます. 具体的には,<b>d</b> の向きが <b>r</b> の向きと,一定の角度 α を保つとすると |<b>r</b>−<b>d</b>|=√(r^2+d^2−2rdcosα) となります.そうすると Φ_d=(1/4πσ)(∂/∂d)(1/|<b>r</b>−<b>d</b>|)d と書くことができます.ただし,偏微分係数は d=0 の値をとるものとします. この Φ_d は当然角度α(あとの式のθと同じもの)に関係します. この Φ_d の式を(8.10) とするのが適切でしょう.
なるほど,確かに(∂/∂d)(1/|R−D|)からcosα/r^2が導かれますね. d=0 とするのは,d→0の条件に基づくのでしょうか. Φ_dというのは,Φ(|R−D|)とΦ(|R|)の関数だと思いますが, 後者を無視しているのは, (∂/∂d)(1/|R−D|-1/|R|)=(∂/∂d)(1/|R−D|)-0 (※)であるからですね. であると,(8.10) の位置づけ(意義)が見えなくなってくるのです.
まず,(8.10)から即,(8.15) に帰着できるので,(8.11-13) が無駄に思えます. そもそも,(8.11) はΦ_d=Φ(|R−D|)-Φ(|R|)に基づくということでした. (これはとても自然で,分かりやすい) しかし,※を考えると,ここで再度それを持ち込むことに矛盾を感じます. どうしても,(8.10)とここで∂/∂dが出てくる意味が解しかねます. (前回のように近似計算かとも考えたのですが,どうも違うようですし) つまり,(8.10)があれば.11-13は不要だし,.11-13を考えるなら,.10は不要に思えるのです.
>d=0 とするのは,d→0の条件に基づくのでしょうか.
これはちょっと違います.一般に d の関数 f(d) は次のように級数展開できます. f(d)=f(0)+f'(0)d+・・・・ ここで f'(0) を求めるために,f(d) を微分してから d=0 と置くわけです.
>Φ_dというのは,Φ(|R−D|)とΦ(|R|)の関数だと思いますが, >後者を無視しているのは, >(∂/∂d)(1/|R−D|-1/|R|)=(∂/∂d)(1/|R−D|)-0 (※)であるからですね.
これも違います.R を固定するとΦ(|R−D|)は D だけの関数になり,さらに D の方向も固定すると,d だけの関数になります.これを f(d)=Φ(|R−D|) とすると Φ_d=Φ(|R−D|)−Φ(|R|)=f(d)-f(0) となりますが,これに f(d)=f(0)+f'(0)d を代入すると Φ_d=f'(0)d となって,f(0)=Φ(|R|) が消えてしまいます.d で微分することによって消えるわけではありません.
>つまり,(8.10)があれば.11-13は不要だし,.11-13を考えるなら,.10は不要に思えるのです.
確かにそう考えることもできそうです. 著者としては,(8.10)が D の方向の方向微分係数で表されているのを .11-13 でもっと一般的な形で表したかったのかもしれません. 著者の論旨がやや明確でないようにも思われますが,自分が納得できる形で理解しておけばいいと思います.
ああ,やはり近似だったのですね. 二変数でのマクローリン展開を考えたのですが,それだとΦ(|R|)が旨く消せないように思えたのです.それで,微分で消えたかと.rを定数として考えればよかったのですね.分かりやすくご教示いただきありがとうございます.