初めて投稿させていただきます,高校3年の者です. 高校3年といっても文系物理なので,あまり高度な話は分かりません,申し訳ありません. 質問させていただきたいと思うのは,等電位線の実験についてです. 点電荷を2点に配置して,下に導体紙を敷いて,テスターで等電位の点をプロットして,線を書いて行くと言うものです.
大体の理論で,電荷を中心とする同心円が2つ描けることが分かるのですが,その先,紙の端のほうに近づいたときに,楕円でもなく,ちょうどその紙の端に引かれるように,急にその線が歪みます.(本当は,図を載せたいのですが…)
これはどうしてなのでしょうか. ぶしつけな質問とは存じますが,お教え願えれば幸いです.
この実験 (その昔,ハーバード大のグループが編み出した(HPP)と聞いたことがあります) は,手軽さと <b>一見わかりやすそう</b> なので高校や大学の教育学部あたりでかなり流行しているのですが,誤解を生みやすいところが多くあり,注意が必要です.
> 点電荷を2点に配置して,下に導体紙を敷いて,…
まず,これは,2つの点電荷 +Q,−Q がまわりに作る電場の電位を表すものではありません.それ,もどきではありますが….高校の先生方の中には,このことをきちんと理解されていない方もいらっしゃいます.
> 大体の理論で,電荷を中心とする同心円が2つ描けることが分かるのですが,
「大体の理論で,」 とお書きなので,精密にはこうならなくてよいということをおわかりなのでしょうか? 電荷近辺でも,円のように見えるのですが,実は円ではありません. 正確な形は,グラフ描画ソフト <b>grapes</b> (ここから無料ダウンロードできます http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~tomodak/grapes/ ) で 1/√((x−1) 2 +y 2 )−1/√((x+1) 2 +y 2 )=C(定数) のグラフを,定数 C の値をいくつか変えて,描いてみてください. もっと直接描く方法もあるにはあるのですが…
また,<b>導体紙がないところには電流が流れないので</b>,等電位線が導体紙の形に近づくのは当然なのです. 太文字部分が, 「2つの点電荷がまわりに作る電場の電位を表すものではありません」 の理由です. では,なぜこの方法で 「もどき実験」 ができるのでしょうか? 大学で学ぶ電磁気学で解き明かされるのですが,文系の方ですともうやらないでしょうね〜.
ご返信と丁寧なご回答,たいへんありがとうございます. 同心円にならないのは,実験結果から「なんとなくそうかなぁ・・・」と思っただけですが(笑)
導体紙が無いところには電流が流れない ↓ 導体紙のふちに剃って電流が流れている ↓ 等電位線が導体紙の辺に垂直な方向にまがる
結局のところ,これにつられて歪むので「2点電荷が作る電場の電位を示すものではない」ということでよろしいのでしょうか・・・? これに対して近似で等電位線のことを考えろという実験だったのでしょうか・・・?
> 近似で等電位線のことを考えろという実験だったのでしょうか・・・? そうです. 2つの点電荷 +Q,−Q が作る電場の電位を,簡単な方法で実験的に調べる方法が他にないからです.
> 結局のところ,<b>これ</b> につられて歪むので「2点電荷が作る電場の電位を示すものではない」ということでよろしいのでしょうか・・・? その通りですが,「これ」 が指す内容
> 等電位線が導体紙の辺に垂直な方向にまがる
は,正しくなく,正しくは,「等電位線が導体紙の辺に <b>平行になる</b>」 です.
第2の理由は,電荷がある場所の電位は +∞,−∞ にならなければなりませんが,この実験では,2点につないだ電池の電圧にしかならないことです.
さらにご希望であれば,大学の電磁気学の内容について,書こうと思います.
ありがとうございます! そうなのですか・・・実験の結果は結局的にはずれてしまっていたわけなんですね. 電位が±∞でなければ,等電位線が有限に成ってしまいますものね.
でも,これ以上難しい大学の電磁気学の内容は,正直,教えていただけたとしても自分では理解が及ばないかと思いますので,辞退させていただきますm(_ _)m
ここから先は何とか自分で考えられそうです!どうもありがとうございました!!
名の通り通りすがりなのですが,僕も高3で,この質問が気になりました. ここまでのやり取りを見ていて,この先のお話も聞きたいと思って,書き込んだのですが,書いていただけないでしょうか?
>> なぜこの方法で 「もどき実験」 ができるのか
2つの電荷 +Q と −Q がまわりの空間につくる静電場の電位 V 1 と,定常電流が流れる電場の電位 V 2 とが,全く同じ方程式 (∂ 2 /∂x 2 +∂ 2 /∂y 2 +∂ 2 /∂z 2 )V=0←<b>ラプラスの方程式</b> といいます を満たすからです. ですから,V=一定 の曲面(曲線)はよく似た形になります.しかし,上にも書いたように,決定的に異なるいくつかの点 (境界条件といいます) もあるため,同じものだと思い込んではいけません.詳しいことは,大学で勉強してください.
上のレスを書くために確認の計算をいくつかしていて,30余年ぶりに目から大鱗でした.
V=1/√(x 2 +y 2 +z 2 )…(#1) は(∂ 2 /∂x 2 +∂ 2 /∂y 2 +∂ 2 /∂z 2 )V=0…(#2)の解ですが, 2次元版のV=1/√(x 2 +y 2 )…(3) は(∂ 2 /∂x 2 +∂ 2 /∂y 2 )V=0…(#4)を満たさないのですね. 極座標,球座標ではどちらも V=1/r なので,私は当然ラプラスの方程式を満たすもの,と思い込み,疑ってもいませんでした.
ですが,気がついてみれば,さらに次元を下げた1次元の V=1/x も,∂ 2 V/∂x 2 =0満たしませんし,次元を上げた4次元でもダメです. こうなると,われわれがすむこの <b>3次元</b> という空間が非常に特殊な空間だということがにわかにクローズアップされてくるのです. どなたかこの辺の事情について,お教えいただけませんでしょうか.
原点にだけ電荷がある場合を考えれば理解できるのではないでしょうか. この場合の電位Vは,原点以外ではラプラス方程式を満たします. また,ガウスの定理によれば,電場の強さEは,原点を中心とする球の表面積に反比例します. n次元球の表面積は,r n-1 に比例するので,n次元では E∝r 1-n となります. 電位V=-∫Edr だから,n=2のとき V∝ln r,それ以外のとき V∝r 2-n になることが分かります.ただし,積分定数は無視しました. 従って,1次元では r,2次元では ln r,3次元では 1/r,4次元では 1/r 2 ,・・・がラプラス方程式を満たすことが分かります.
>> yama さん いつもいつも有難うございます.時間をかけてゆっくり咀嚼・反芻させていただきます. それぞれの次元空間において,それぞれの‘場’と‘ポテンシャル’とが定義されるのでしょうね.