波動関数について質問です

波動関数について質問です

あさ(高校で物理やってない大学1年生☆) さんの書込 (2005/12/19(Mon) 00:49)

お久しぶりです.今回は波動関数についてよく分からないことがあったので,教えてください.

水素原子の波動関数を求めるときに,角度部分関数Y(θ,φ)≡T(θ)P(φ)を導入するところがありますが,そこから,実関数を得るために一次結合を行う場面がありますよね?たとえばY_1,1+Y_1,-1など.....

私はいまいちなんでこんなことをしても平気なのかがよく分からないのです.確かに波動関数の数は変化しませんが,でもせっかく解いた関数とは別物になってしまいます.線型結合してできた新たな波動関数を一つの軌道として考えていっていい理由をどなたか教えてください<m(__)m>

...うまく言えなかったのでしつこく書くと,Ψ=R(r)T(θ)P(φ)・・・?と分離して,しかもいろいろな過程をその後経てPの解のかたちがP(φ)=Asin(m_lφ)+Bcos(m_lφ)になるとなったわけで,それなのに,P_m_lとP_-m_lとの一次結合によって得た新たなPを?のPに代入してしま(って,水素原子の波動関数としてまとめてしま)う事がどうして許されるのかが分かりません.

どうぞよろしくお願いいたします.

Re: 波動関数について質問です

川上 さんのレス (2005/12/21(Wed) 17:38)

質問がいまいち理解できていませんが(物理から離れて久しいので, 最近頭がボケててすみません)

きわめて直感的な答えをしますと,

量子力学では,一つの物理状態(言葉が不適切でしょうけど)は, 二つのエネルギー状態の線形結合であらわせます.

具体例としては,スリットに光を通す場合を考えると,

入射光:実は|↑>と|↓> の重ね合わせ

スリット通過光:|↑>と|↓>に分離

分離された|↑>をさらにスリットに通した光:再び |↑>と|↓>

量子力学では,一つの量は二つの量の重ねあわせだと 私は理解しています.だから,粒子のスピンという概念が 重要なのだと思います.

ちなみに理解しやすい良書としては,JJサクライの量子力学と その演習書.

さらにおまけとしていうと,人間は,善と悪の2状態の重ね合わせ したがって,時に人を泣かし,人を助ける.これは私の持論です.

量子化学

あさ さんのレス (2005/12/22(Thu) 20:48)

お返事ありがとうございます<m(__)m> JJサクライの量子力学については今朝図書館で発見してきました.

量子力学では,一つの物理状態(言葉が不適切でしょうけど)は, 二つのエネルギー状態の線形結合であらわせます >>ここがどうしてなのか,ということがまさに気になります. どうしてそういうことになってしまうのか,量子論をそもそもどうやって考察していったかという経緯からうまく説明できないでしょうか?

あのあと,私ももうちょっと考えてみて,そもそも波動関数には物理的意味がないことを考えてみれば,線型結合して人間にとってとらえやすいように考えても支障はないんじゃないか,っていう感じあたりに答えが得られないか,と思うようになりました.ただ,(波動関数を導く過程の)どこでそれがはっきりいえるのか,いまいち頭を整理できていません.

初めての人も多いので遅ればせながら自己紹介しておきますと,あさはただいま大学1年生で,物理系の人間ではありません.将来は生命科学やりたいとおもってます.高校でも物理はやってません.今回の質問は量子化学の初歩みたいな講義を受けていて出てきた疑問です.まだ自分の疑問にすっきりとした答えが見つけられないので,川上さんはじめ,多くの方にご返答いただきたいです.よろしくお願いいたします.

Re: 量子化学

yama さんのレス (2005/12/26(Mon) 16:31)

波動関数が常に2つの固有関数の重ねあわせで表されるわけではありません. 1つの固有関数に一致する場合もあるし,3つ以上の固有関数の重ねあわせになる場合もあります. 問題の水素原子の場合はどうかというと,量子数(n,l,m)が確定値をもつ状態は,当然1つの固有関数で表され,2つの固有関数の重ねあわせではありません. しかし,l=1,m=1の固有関数は複素数なので,m=-1の固有関数と重ね合わせて実数にしておいたほうが都合がいい場合があります.この場合はmは確定値をとらず,波動関数はある直線方向に広がります. これが化学の教科書に載っているp軌道で,重ね方によってp x とp y の2つの軌道ができます.さらに,m=0の場合は初めから実数で,直線方向の広がりをもち,p z 軌道となります.これら3つのp軌道は互いに直交する方向に広がっています. もちろん,m=0,1,-1の3つのp軌道を考えることもできますが,化学では普通p x ,p y ,p z の3つのp軌道を考えます. 化学結合を考える場合は,このようなp軌道を考えるほうが都合がいいからです. といっても水素原子の基底状態ではp軌道には電子がないので,p軌道に電子がある原子について考えるわけです. 分子の波動関数を正確に求めることは,ほとんど不可能ですが,近似的に原子の波動関数を組み合わせて表すことが考えられます. たとえば,硫化水素分子は直角二等辺三角形に近い形をしていますが,これは硫黄原子の二つのp軌道と水素原子のs軌道が重なった軌道に電子が入って結合するものとして説明できます.2つのp軌道は直交しているので,結合の角度がほぼ直角になるわけです. m=1の軌道だけでは,波動関数は直線方向に広がらないので,このような結合は説明できません.また,原子の固有関数は,分子の固有関数ではないので,mが確定値をとる必要はありません. p軌道だけでうまくいかない場合は,s軌道と重ね合わせた混成軌道を考えたりしますが,それらのことは化学の教科書に書いてあると思います.