抵抗両端の帯電

抵抗両端の帯電

山旅人 さんの書込 (2005/09/19(Mon) 21:48)

新たにスレッドを立てさせていただきました. 前回の論争から20日ほど隠遁致しておりました. この間,たまに標記のことを考えてみては,自分自身をどのように収斂させようかと行きつ戻りつしておりました.

私は,先の論争中からずっと気になっていたことが3つあります.

<1>私自身のものも含めて参加者の議論が定性的なものばかりで,定量的なものがほとんどないこと <2>この事実(抵抗両端の帯電)が高校及び大学教養課程の物理で全く扱われていないのはなぜかということ.物理学科の学生が使うような教科書や演習書(後述)には記述があるとはいえ… <3>今回の論争は高校生の質問から端を発したものでしたが,今後私達は同じ質問を高校生から受けたとき,上記<2>に鑑みて 「帯電している」 と回答すべきなのかどうかということ

です. <1>については<2>が背景にあるからではないでしょうか.すなわち,ポピュラーじゃなかった.恥ずかしながら,私自身知らなかった.先の論争に参加された皆さん,これらに対するご見解をお聞かせくださいませんでしょうか.

隠遁生活の間手許にあるいくつかの本にあたり,『詳解 電磁気学演習』(共立出版) の中で 誘電率ε,電気伝導率σ,抵抗率ρの媒質をつめた容量Cの平行板コンデンサーの両極間に電流が流れるとき,合成抵抗Rは R=ε/σC=ερ/C となる

という記述を発見し,自分自身の不勉強さを恥じていたところです. これによれば,抵抗Rに起電力Vの電池をつなぎ電流Iが流れるとき,抵抗の両端に Q=CV=(ερ/R)V=ερI なる電荷Qが滞留することになる. ほぼ同様の記述は,『大学演習 一般物理学』(裳華房) にもありました(書籍は化石のようなものばかりで申し訳ありません).

ところで,本掲示板には,bit map または jpeg で収録された図を挿入することは出来ないのでしょうか.と申しますのは,前回頂いたレス《伝送線路》(桝岡@V-Tails さん,No.6688)は大きな示唆を含んでいると思うのですが,図がないために桝岡さんの意図の全体像を掴みかねているのです. 私自身,ここに書かせて頂くとき,図が書けたらいいなと思うことがたびたびあります.

Re: 抵抗両端の帯電

渡邉 さんのレス (2005/09/20(Tue) 11:57)

最後の方にちょろっと参加していたので書き込ませて頂きます.

<1>:高校生が見ているという意識があったからだと思っています.でも,僕自身は<1>の状態には当てはまらないと思っています.

<2>:本に載っているのならば,いつでも教養として知っていてもおかしく無いのでは?講義などで扱われない理由ですが,そんなものは無いと思います.逆に講義で扱われる内容にはあると思いますが

(僕の使っている教科書にも,上に書かれている式の導出が載っています)

<3>:僕は「帯電」という意味をいまいちよく理解していません.ですが,せっかくなので書いておきます.電気的に中性な抵抗が,電荷が表面に誘起したような状態なので,分極しているようにも思えますね.(誘起しても全体としては中性)

<1>,<2>については参加者の意識調査のような感じでここでしかできない事ですが,<3>については調べれば分かりそうですね.

Re: 抵抗両端の帯電

篠原 さんのレス (2005/09/20(Tue) 14:57)

おひさしぶりです. 篠原です.

<1> 単に電荷の蓄積の有無を説明するだけであれば,議論は定性的なもので十分であると考え,あえて定量的な議論はしませんでした. しかし,当然定量的な考察は出来るわけで,ガウスの法則から容易に表面電荷 \omega [C/m^2] が,

\omega =\left[ \frac{\varepsilon _1}{\sigma _1} -\frac{\varepsilon _2}{\sigma _2}\right] i_n

となることを導くことが出来ます.

<2> 今回の議論のようなものを含むすべての物理現象を教養課程で学ぶのは不可能でしょうし,また無駄でしょう. 教養課程で大切なのは,電磁気学ではマクスウェルの方程式を使えるようにすることだと思います. マクスウェルの方程式さえ理解していれば,それに関係する物理現象は学ばなくても,自分で説明することが出来るのですから. 教養課程では,マクスウェルの方程式を理解するのに必要な物理現象を学ぶのではないでしょうか.

<3> 「帯電している」という表現が適切なものなのかどうか,微妙なところだと思います. 私はあえて「電荷の蓄積」という表現を使っていましたが.

Re: 抵抗両端の帯電

ken さんのレス (2005/09/20(Tue) 22:06)

kenです.こんばんわ

<1>については,私自身が最初,定性的にも間違っていたので,定量的な議論が できるはずがなかったと思います.

<2>については,たいていの電気的,回路理論的現象は,抵抗両端の帯電など 考えなくても,実用的にまったく問題なく説明がつくこと. 大学の教養課程ではマクスウエル方程式や電磁気学を学ぶ程度であり, そこまでの立ち入った講義は不要かと思います. <3>は,掲示板での質問に対する答えとしては,相手の知識にもよりますし, どこまで立ち入ったことを聞かれているのかにもよります. 間違ったことはいれずに,自分でも分かっていないようなことは回避して, なるべく単純に説明するのがいいかと思います.

Re: 抵抗両端の帯電

yama さんのレス (2005/09/20(Tue) 23:27)

私の考えも3人の方の意見と共通するところが多いのですが・・・

まず<1>については,「抵抗がどのくらい帯電するか」ではなく「抵抗が帯電するかしないか」という定性的な内容の問題だったので,必ずしも定量的な考察を必要としなかったためでしょう. といってもマクスウェル方程式に基づいて議論が進んでいたので,実質的にはかなり定量的な内容も含まれていたように思います.

<2>については,まず第一に,kenさんも書かれているように,実際の電気回路で抵抗の帯電が問題になることはほとんどなく,大抵の場合は無視できるからだと思います. もう一つは,導体の誘電率に関係した問題があるように思います. というのは純粋な静電気現象だけを考えれば,導体内には電場が存在しないので,誘電率は無限大ということになりますが,もちろん電流が流れている場合にはこれはあてはまりません.しかし,定常状態での誘電率を考えるのは難しい問題があるようです. これについて,古い書籍ですが(といっても現在も発行されていますが),高橋秀俊著「電磁気学」(裳華房)のP.127の記述を引用しておきます.

「導体内の電場を定めるには,導体の ε の大きさは関係しない.しかし,導体にも ε という量を考えることはできる.そうして非定常状態においては ε が関係する現象があらわれてくる.また,定常状態においても,ε が一ようでない場合は,導体の内部に電荷があることになる.けれども,この電荷を定常状態で検知する方法はないから,定常状態に関する限りは,導体の誘電率というものはなんら直接的な意味をもった量ではない.特に金属のように高い導電率をもつ物質では,分子論的に考えても誘電率というものを考えることは困難である.」

このような事情があるので,これを高校や教養課程の物理で論じるのは無理があるように思います.

<3>については,一例ですが「高校の物理の範囲で説明することは難しいが帯電はしている.しかし,ほとんどの場合は帯電は無視できる.」というような回答が考えられると思います.

掲示板での画像使用について

CO さんのレス (2005/09/22(Thu) 12:36)

> 本掲示板には,bit map または jpeg で収録された図を挿入することは出来ないのでしょうか.

現状ではそのような機能は提供しておりません.1ページあたりの容量が大きくなってしまうことや,管理上の理由からです.画像を提示したい場合には外部のウェブスペースに画像ファイルを置き,そこへのリンクを張っていただくのが良いかと思います.よろしくお願いいたします.

皆様に御礼

山旅人 さんのレス (2005/09/23(Fri) 00:22)

渡邉さん,篠原さん,kenさん,yamaさん,みなさん有り難うございました. みなさんそれぞれに,それぞれのお考えがあるものだと,改めて感心致しました.

私自身,「帯電」(誘起,蓄積)を理解しなければならないと思いつつも,気持ちの一部がブレーキをかけるのを禁じ得なかったのですが,yamaさんからいただいたレスでその(わだかまりの)正体がかなり明確になってきました.そのヒントは,引用してくださった 『高橋秀俊著「電磁気学」(裳華房)のP.127の記述』 の中にありました.すなわち,「導体の誘電率をどのように考えるのか」 です. yama さんから前回頂いたレス (No.6667,8/29) も今般初めて理解することが出来ました. 高校生にどのように回答するかについても,示唆を有り難うございました.

CO さん,不躾なお願いに対する回答,有り難うございました. > 外部のウェブスペースに画像ファイルを置き,そこへのリンクを張 る方法,模索したいと思います.