はじめまして.いつもかぎしっぽの記事をいつも楽しく読ませていただいている学部の一年生です.風洞実験に興味があって,流体力学の勉強を始めました.現在「流体力学:前編(今井功著)」を読んで勉強しています.
風洞実験の主な目的は,僕の所属する鳥人間サークル(琵琶湖で人力飛行機を飛ばすやつです.)で作る機体の設計のためのデータ収集です.
そこで質問なんですが,自作の風洞,風洞模型で実用的なデータって取れるもんなんでしょうか?加工技術は自作の人力飛行機を作れる程度です. また,風洞実験に関する書籍・ホームページなどはありませんか?流体力学の本を読んで勉強してると,(もちろん楽しいのですが,)「門外漢の私がこの分厚い本から風洞実験に必要な知識を抜き出す事が出来るのだろうか?」と思ってしまいます.流体力学のなかで,風洞実験に必要なトピックというのはどこでしょうか?
流体力学や航空力学が専門の方の意見が聞けたらうれしいです. よろしくお願いします.m(_._)m
私は実験系ではないので詳しくは知りませんが,航空力学が専門ですので知っている範囲でお答えいたします.
風洞には一つ一つ癖があり,非常に精巧にできたNASAが使うような風洞でも,違う風洞で実験すると全く違う結果が出る,ということがよくあります.同じ風洞で連続的に実験することが大事で,例えば御自分で作られた風洞による実験結果を,既存のデータと比較したり,一緒に使ったりするのは難しいと思います.
また,どのようなデータを取りたいかによって風洞の設計が変わります.高速気流を起こせるもの,大きな物も入れられる大直径のもの,周期的に翼型を振動させられるもの,圧力や温度を計測する機器がついているもの(圧力の計測方法にも色々ある)等々です.用途によっては,自分で風洞を作ることも可能だと思います.人力飛行機に関する何をどのように調べたいのかを,まず明確にするといいでしょう.
ありがとうございます.そうなんですか.NASAが使ってるような風洞でさえ癖があるんですね.実験というのは正確にやりさえすれば,ある程度似たような結果になるとばかり思っていました.
色々と調べて見ましたが,実物と模型のレイノルズ数をあわす事がキーになっているのでしょうか?人力飛行機は低速(設計飛行速度は10m/s以下,確か7〜8m/sくらい)なんでマッハ数の変化は気にしなくて良いように思えます. 人力飛行機の設計で大変なのがフェアリング(パイロットがのる場所)だと思います.この部分だけは3Dの設計が要求されますから.(他の部分も3Dでやるべきですが...)それでこの部分だけの最適化を目指すのであれば,模型(部分模型)はそんなに小さくせずに(=風速もそんなに上げずに,)風洞実験が行えるかな,と考えました.翼との干渉を考えるとそう簡単ではなさそうですが....
でもよく見る風洞模型って結構小さいですよね?あれでレイノルズ数を合わすために風速を上げると大変な事になる気がするのですが.気圧を高めているようには見えませんし.レイノルズ数をあわす事はそんなに重要ではないって事ですか?
以上,今日学んだ知識でぼやいてみました.つっこみお待ちしております.m(_._)m
>Joh@東京さん
ところで,Joh@東京さんは航空力学が専門とのことですが,設計とかはどうなされているんでしょうか?風洞なしだと,方程式を解いたり,コンピュータシミュレーションで設計することになるんでしょうか? 私はそちらの方面での機体の最適化にも興味がありましたが,なんとなく楽しそうなので風洞実験の方を選びました.
>人力飛行機の設計で大変なのがフェアリング(パイロットがのる場所)だと思います.
パイロットの乗る場所をフェアリングと呼ぶとは知りませんでした.空気抵抗を減らすために何かを流線型に整形することを,普通フェアリングと呼んでいます.どういう形の操縦席を考えてらっしゃるのかわかりませんが,そんなに設計が大変なんでしょうか.
>翼との干渉を考えるとそう簡単ではなさそうですが....
おっしゃるように,一番難しいのは干渉です.胴体と主翼,主翼後流と尾翼,プロペラ後流と主翼,プロペラ後流と尾翼,等々,干渉にも色々な種類がありますが,設計段階で予想していなかった干渉が起こり,何か問題が生ずるということはたまにあります.現在ではコンピューターを使ったシュミレーションが発達していますが,そういう問題の解決では風洞がまだまだ重要です.
>気圧を高めているようには見えませんし.レイノルズ数をあわす事はそんなに重要ではないって事ですか?
実験では,レイノルズ数を合わせることが大前提です.とても大事なことです.それから,レイノルズ数は,長さ・速度・粘性係数で定義される無次元数ですので,気圧を高めるというのは,よくわかりません.
>人力飛行機は低速(設計飛行速度は10m/s以下,確か7〜8m/sくらい)なんでマッハ数の変化は気にしなくて良いように思えます.
マッハ数が問題になるのは,空気の圧縮性が利いてくる場合です.マッハ数0.3くらいまでは,空気を非圧縮性流体とみなして計算します.飛行速度が音速より十分小さくても,プロペラの先端速度など,どこかのマッハ数が局所的に高くなることがありますので,十分注意してください.多分,人力飛行機なら,プロペラ先端でも関係ありません.
>ところで,Joh@東京さんは航空力学が専門とのことですが,設計とかはどうなされているんでしょうか?風洞なしだと,方程式を解いたり,コンピュータシミュレーションで設計することになるんでしょうか? 私はそちらの方面での機体の最適化にも興味がありましたが,なんとなく楽しそうなので風洞実験の方を選びました.
航空機の設計には,幾つもの段階があり,考えることや実験することがたくさんあります.風洞も方程式もシュミレーションも全部大事です.これらは,相反するものではなくて,相補的なものです.飛行機のサイズ,翼面荷重,エンジンなどをまず決め,おおまかな性能を予想してから,細部を設計します.(この段階で,予想よりも馬力がたりない,思ったほど軽く出来なかった,というようなミスが起こると,重量が増大していく悪循環にはまり,最初からやり直した方が良いこともあります.)風洞を大々的に使うのは,この後の段階です.機体の最適化というのは,何を意味しているのかよくわかりませんでした.
皆さんこんにちは.
以前,高専の卒業研究で風洞を製作したことがあります. そこでの問題点は,風邪の発生源を整流でした.
自分で製作するのは本格的な風洞よりもスリットタイプのような もののほうが向いてるように感じました. そのほうが,色々なコンディションが整えやすいと思います.
私は風は苦手なのですが飛行機は好き!今までに人が乗れない飛行機(動力なし)をいくつ作ったか?計算よりも数を作ることがよく飛ばすコツと実感しています.ただ経費と時間を抑えるために計算や実験をするわけですが,,,.実際の風は正面から吹いてるのではないので,風洞で実験するということはちょっと左右,上下,乱流と様々に実験するのかなー?大変ですねー.真正面からのデーターがあればとりあえず後はやってみようということかな? とにかく,どんどん作って〈模型でも,実寸でも,計算でも),どんどん飛ばしてみる,,修正して行く,そのうち感覚的に実験と実際の通訳ができるようになると思います.同じ形の飛行機でも,木で作ったり,プラ,紙いろいろ,意味なくやってみるとへーって言うのがあって面白いです. 飛ぶのは人間の夢.遊びの心を常に持ちながらできたらいいですね!以前アルミで紙飛行機を作ったことがありました.スピードがないと飛ばなくてカタパルトを使ったらミレニアムファルコン号がワープしていくシーンの如く消えていきました.その後は芳しいものができず,奇しくも初めて作ったやつが一番よかった,で処女飛行でなくなったということで,なんかこそばゆい感傷に浸っています.
みなさん色々と回答してもらって,ありがとうございます.m(_._)m
>>Joh@東京さん
>実験では,レイノルズ数を合わせることが大前提です.とても大事なことです.それから,レイノルズ数は,長さ・速度・粘性係数で定義される無次元数ですので,気圧を高めるというのは,よくわかりません.
レイノルズ数は分母に動粘性係数が入っていますよね?そして動粘性係数は粘性係数/密度ですので,気圧を上げたり下げたりして密度を変え,レイノルズ数をコントロールする事はできると思いますが,なにか間違っていますか?高圧風洞について読んだことがあるんですが.
>航空機の設計には,幾つもの段階があり,考えることや実験することがたくさんあります.風洞も方程式もシュミレーションも全部大事です.これらは,相反するものではなくて,相補的なものです.飛行機のサイズ,翼面荷重,エンジンなどをまず決め,おおまかな性能を予想してから,細部を設計します.(この段階で,予想よりも馬力がたりない,思ったほど軽く出来なかった,というようなミスが起こると,重量が増大していく悪循環にはまり,最初からやり直した方が良いこともあります.)風洞を大々的に使うのは,この後の段階です.機体の最適化というのは,何を意味しているのかよくわかりませんでした.
航空機の設計は全部必要なんですか....どれが欠けてもいけないんですね.シュミレーションの方も勉強してみます.機体の最適化というのは,機体をより良くする,例えば抗力を減らし揚力を上げる,僕らの場合だと遠くまで飛ぶ機体を作る,という意味で使いました.
>>マサシさん
>自分で製作するのは本格的な風洞よりもスリットタイプのようなもののほうが向いてるように感じました.
スリットタイプというのは具体的にはどのようなものですか? 風の整流は一番難しそうだと感じています.どのようにして,風が乱れてないかなどチェックされましたか?線香による煙とかでしょうか?
なんくるさん
マサシです. 私の作った風洞は60cm×60cmと大きかったので出口を 各辺20分割して小型の風力計で測りました. 線香の煙は乱れがすごくてうまくいきませんでした.
スリットタイプですが,名称が正しいかは定かではありませんが, 流体力学の教科書に翼の断面の周りを可視化したものが載ってい ますが,これは一般的な風洞ではこんなにきれいに可視化できま せんので2枚のアクリル,もしくはガラスを2〜3cmの間隔で 配置して断面を観察するそうです.
参考までに,低レイノルズ数領域において一番揚力の大きい翼形状は曲板 だそうです.スピードの速くない飛行機には向いているかもしれません. 理由は翼の下部で剥離が起こって圧力が下がるからです.
整流はハニカムなどが一般的ですが,金属製はベラボーにお高いです. 紙製の物もあるので私はそっちを使用しました.
では,がんばってください.
>そして動粘性係数は粘性係数/密度ですので,気圧を上げたり下げたりして密度を変え,レイノルズ数をコントロールする事はできると思いますが,なにか間違っていますか?
すみません.まったく間違ってません.レイノルズ数は,空気密度に比例します. m(_ _)m
翼型の表面の圧力分布を調べる方法などに色々な苦労があるんですが,一瞬,そういうことが頭をよぎり,なんだか勘違いしました.ご容赦ください.
>マサシさん 参考までに,低レイノルズ数領域において一番揚力の大きい翼形状は曲板 だそうです.
揚抗比はどうなんですか?
>>マサシさん 参考までに,低レイノルズ数領域において一番揚力の大きい翼形状は曲板 だそうです.
人力飛行機の設計で,大切な事の一つは製作が容易であることだそうです.いたずらに理論的な効率を考えても,製作精度が絡んでくるので単純ではないということです.
とは言っても,僕はどちらかといえば理論派なので試してみたい気がします.曲板とまでは行かなくても下のほうの凹みが大きい翼型なら作れそうだと思います.
>>Joh@東京さん
レイノルズ数を合わせることは風洞実験での大前提とのことですが,レイノルズ数を合わせるためには,模型の縮尺率の逆比を速度に掛けなければいけませんよね.例えば1/20の模型を風洞実験するためには,実際の速度の20倍の風をあてるということです.ジャンボジェット機の実験などでは,模型を小さくするとマッハ数がすぐに1を超えてしまう気がします.つまりレイノルズ数を合わせるためにはマッハ数が犠牲になります.すると,空気のふるまいも違ってくると思います.
僕の理解は正しいでしょうか?もし上の説明がOKなら,この問題はどうやって避けているんでしょうか?
質問? レイノルズを知らなくて申し訳ないのですが,粘性が変わってもいいのなら? 静かなプールに模型を沈めてトローリングしたら机上の参考にはなるのでは? 風洞で無風時の飛行をシミュレートできると思いませんが,どちらかといえばこちらの方が面白そう,,,.
>>力さん
ハエの飛行を調べるためにハエの拡大模型をオイルと金粉(うろ覚えですが)を混ぜた液体の中に入れ,実験したという話をどこかで聞きました.
レイノルズ数は,[密度]*[流速]*[代表長さ]/[粘性率]です.流体の振る舞いを決定付ける,流体力学で最も重要な数(らしい)です.以上,教科書丸写しの説明でした.~_~ゝ
水中での実験と言う事は,密度も粘性率もあがりますよね?この二数の比って,空気と比べてどうなんでしょうか?ただ浮力のこと考えたり,風洞模型の制作のことを考えると少し大変な気がしますが....実際の航空機設計においてこのようなテクニックってあるんでしょうか?
実物よりも小さい模型を使う場合,レイノルズ数を合わせるには,流速や空気密度を高めるんでしょうけど,私は恥ずかしながら,風洞実験をしたことがないので,実際どうやってるのかよく知りません.
しかし,音速近い流れを作るために,巨大な貯気槽に一日がかりで空気をためて,たった20秒くらいで全部噴き出してしまったのを見たことがあります.すごい音でしたが,それでもマッハ数1くらいでしたから,風洞で高速気流を作るのは,すごく大変なことなんだと思います.
空気密度をどうやって変えているのか,ちょっと調べてみます.
飛行機の話題に便乗です.日本大学の学生が,人力飛行機で日本新記録をだしたようです.なんと50kmだそうです.↓でニュースの動画を見ることができます :)
こんにちは.
johさん
もの書きをしていて返事が遅れました.揚抗比は忘れてしまいました. 申し訳ありません.
なんくるさん
曲板の揚力が高いのは,実験による結果です. これに関しては,翼形状の研究が盛んだったころの 東京大学の研究者文献があるそうです. 古すぎて見つかりませんでしたが・・・.
今,低速風洞実験法と言う本を読んで風洞実験の勉強をしています. 風洞や風洞模型についてはだいたい理解できてきましたが,風洞実験用天秤についての資料がありません.
風洞実験をするとき,機体に働く力を6つの力とモーメントで検出しなければいけないと思うのですが,それを検出する仕組みが分かりません/思いつきません.また,それらのセンサーをパソコンにつないで解析する方法も知りたいです.
質問がどんどんマニアックになっていますが,誰か何か知ってる事がありましたら,回答お願いします. m(_ _)m
風洞に入れるのは,全体の模型ですか?
>Johさん はい.全体の模型を入れることを考えています.機体の各部位の干渉や,舵の切り角に対する機体の反応などを調べるのにも興味があります. (翼型や平面形などはもっと精密に実験して調べた資料があると思うので,わざわざ自分達で実験しなおす必要もないかな,と思いました.)
なんくるさん,Johさんこんばんは.
なんくるさん モーメントや力を測るセンサは経験のある方に聞くのが一番だと思うので 僕は,自分の得意分野でお話させていただくと,センサは基本的にアナロ グ信号なのでPCにはAD変換機を通さないと取り込めませんが,最近は ポータブルでUSB接続のAD変換機(データロガー)などが販売されてい るようなのでお勧めです.最近はPICマイコンを使ったデータ取得法の 書籍が販売されているので参考になると思います.
私は自分でやったことが無いので,門前の小僧的な受け売りの知識ですが,風洞で使う小さな模型を見ると,機体後部から細い棒で支持されています.支持部分の干渉を避けるためでしょう.その棒の先はモーメントや力を感知するセンサーになっていると思われます.機体表面に小さなテープのようなものをたくさん貼って,乱流を見たりもします.模型の機体表面に小さな穴がたくさんあいていて,そこで圧力や温度を計測できるようなものもありますが,すごく制作費が高いと聞きました.模型の小さな誤差も,実機では無視できない大きさに相当するわけですから,縮尺は相当精密に作られていないと,そのデータを実機にあてはめても意味がありません.本当に会社で使われているのは,全長1m以下のような模型でも,何千万円もするような,超精密な模型です.