こんにちは. 半年ぶりに投稿する求道者です.
位置エネルギーについての理解があやふやのようで,自分自身の論理破綻が見抜けず困っています.どなたかアドバイスをお願いします.
仕事と位置エネルギーに関して以下のような説明をよく見聞きします.※
?高さhにある質点mが落下するとき,重力がこの質点にする仕事はmghである. ?高さhにある質点mは,落下することによりmghの仕事をする能力(ポテンシャルエネルギー)を潜在的に持つ (※例えば,橋元淳一郎「単位が取れる力学ノート」講談社サイエンティフィック2002年)
このことから,私は以下のように推論します.
?では重力が仕事をします. ?では質点が仕事をします.
「質点の落下」という一つの事象に対して,同時に二つの主体(重力と質点)が仕事をすることになります.
この質点が地面に到達する直前にもっているエネルギーは,次の?,?を合計した2mghになります. ?:重力がこの質点にした仕事(mgh) ?:ポテンシャルエネルギーから変換された運動エネルギー(mghに相当)
誤りのある結論であることは明白ですが,上記の論理のどこが破綻しているのか,見出せずにいます. 私の推論のどこが誤りであるのが,どのように考えるのが妥当なのかご教示ください. よろしくお願いいたします.
以前,やかんさんにご紹介いただいた「エレクトロニクスの基礎」は大変参考になりました. ありがとうございました.
はじめまして.篠原と申します.
まず,うちの大学の先生は「・・・が仕事をする」とはあまり言うべきではなく,「質点が仕事をされる」と表現すべきだ.といっておりました.
上の問題の場合,質点が地面に到達する直前では,ポテンシャルエネルギーはすべて運動エネルギーに変換され,ポテンシャルエネルギーは0です(h=0).このため,地面に到達する直前での質点が持つ力学的エネルギーは運動エネルギーのみのmghになります. また,地面から高さhにある状態では,運動エネルギーは0です(速度v=0).このため,力学的エネルギーはポテンシャルエネルギーのみのmghになり,力学的エネルギーは常に保存されています.
求道者さん,こんにちは!お久しぶりです.
>以前,やかんさんにご紹介いただいた「エレクトロニクスの基礎」は大変参考になりました.ありがとうございました.
あっ,こういう本御紹介しましたっけ?でもご参考になられたのでしたらよかったですね.
ご質問のような内容はきっととても大切な言葉の定義だと思うのですが実は私もよくわかってません.ただ,
”?高さhにある質点mは,落下することによりmghの仕事をする能力(ポテンシャルエネルギー)を潜在的に持つ”のところですが,”落下することにより,”ではなくて,”上昇する事により”のような気がするのですが,どうでしょうか?ああ,やっぱりよくわかんないなあ・・・.
>?では質点が仕事をします.
これはおかしいのではないでしょうか.質点は何に対して仕事をするのでしょうか.落下した質点が他の物体に衝突すれば,その物体に対して仕事をするでしょうが,まだ衝突していない段階では,仕事はしていません. 仕事をする能力を運動エネルギーの形で持っているだけです. その運動エネルギーは,?のように重力が質点に対して仕事をした結果,生じたものです. これをポテンシャルエネルギーが運動エネルギーに変換されたと考えることもできますが,同じことを言い換えているだけです. 高いところにある物体が,仕事をする能力を持つのは,重力がはたらくためです. もし地球の重力がなければ,いくら高い位置にあっても,仕事をする能力は持ちません.従って ?:重力がこの質点にした仕事(mgh) ?:ポテンシャルエネルギーから変換された運動エネルギー(mghに相当) の2つは同じものです.ポテンシャルエネルギーが運動エネルギーに変換するのは重力が仕事をしたためです. ?と?を合計したのでは,同じものを二重に勘定することになってしまいます.
篠原さん,やかんさん,yamaさん ご回答ありがとうございます.
なんとなく理解できてきました. ただ,私が本質をきちんと消化できていないようで,まだモヤモヤしています. いただいたご回答(およびご回答をヒントにした追加の調査)から,以下のように理解しています. 以下の理解でよろしいでしょうか?今一度のご助言をお願いいたします.
-----私の理解--------------------
高さhから質量mの質点を床に落下させます.
[A]:この質点が落下開始時に持っていた位置エネルギーはmghです. 落下に伴い位置エネルギーは減少しますが,その分運動エネルギーが増加します. 落下開始時に持っていた位置エネルギーmghは,床への衝突直前(h=0)において,すべて運動エネルギーに転換されます. このときの運動エネルギー(1/2)mv2は,力学的エネルギー保存の法則によりmghとイコールです. 力学的エネルギー保存の法則は,保存力以外の外力が加わらない場合において成立します.
[B]:質点は床へ衝突するまでに距離hを移動します. 落下中,質点は重力mgを受け続けます.従って質点が受けた仕事は(距離h)×(重力mg)=mghになります. 物体が外部から仕事を受けた場合,エネルギーの原理によりエネルギーが増加します. 外部からmghの仕事を受けたので,この質点は運動エネルギー(1/2)mv2を獲得しました. 運動エネルギー(1/2)mv2は外部から受けた仕事mghとイコールです.
[A]と[B]は,「質点を落下させる」という一つの事象を異なる二つの視点で述べているだけです. [A]のmghと[B]のmghは,考える視点が異なるのみで同じものを示しています. 両者を加算するのは同じものを二重に足し合わせることになるので正しくありません.
異なる二つの視点とは以下のことです.
[A]の視点:質点の落下を保存力の場の内部での事象と捉えている. 質点に作用する重力を外力とはみなさない.だから力学的エネルギー保存の法則が成り立つ
[B]の視点:重力を外力と捉えている. エネルギーの原理は保存力・非保存力のどちらでも成立する. 重力は保存力ではあるが,ここでは,外力とみなすことによりエネルギーの原理を適用している.
------以上,私の理解-------------------
よろしくお願いいたします.
PS 篠原さんへ >「・・・が仕事をする」とはあまり言うべきではなく,「質点が仕事をされる」と表現すべき
この根拠をお教えいただけると助かります. (より本質的な理解に迫れそうです)
よろしくお願いいたします.
だいたいその理解でいいと思いますが,[A]と[B]は異なる視点というよりも,{B}の特別な場合が{A}であると考えることもできます. つまり保存力の場合は,そのポテンシャルエネルギーを考えることができ,ポテンシャルエネルギーの差が保存力のする仕事になるということです.
私の大学の先生が述べたことの本質が私に解っているか分かりませんが,おそらく次のようなことだろうと私は考えます.
1. 仮に,同程度の質量の3つの質点A,B,Cが同じ系の中に存在した場合,お互いは万有引力によりお互いに力を及ぼしあってA,B,Cは運動をするでしょう.このとき,質点Aに注目すると,質点AはB,Cから力を受けて仕事をしたわけだから,主語をはっきりさせた場合,「質点B,CはAに仕事をした」という表現になるでしょう.質点の数が4つ,5つと増えた場合,「質点B,C・・・ZはAに仕事をした」という表現になり,主語が複数存在することになる.「Aは仕事をされた」という表現にして,主語をあいまいにするほうが適切ではないだろうか.
2. 近接作用の考え方では,質点が直接距離を隔てて力を及ぼしあうわけではなく,次のような考え方をします. 二つの物体が力を及ぼしあうときを考える.このとき,2つの物体A,Bはそれぞれが直接に力を及ぼしあうのではなく,2段階に力が伝わると考えられる. ・Aがその周りの空間を変化させる.(場を変化させる) ・場が変化した結果,その場からBは力を受ける. つまり,上の問題の場合,質点は地球から直接力を受けるのではなく,地球は間接的に質点に力を及ぼしているわけであるから,主語をあいまいにするのではないだろうか.
問題から論点がずれましたね. ごめんなさい.