ラウエはん点による構造解析法について

ラウエはん点による構造解析法について

前田 さんの書込 (2005/07/03(Sun) 18:04)

はじめまして.初投稿します前田と言う者です.現在大学2年生です. 教養課程で物理学があるのですが,生物選択で入学したため物理に関し てはほぼ素人です.そこで皆さんの力を借りたいと思い投稿した次第で す.よろしくお願いします. 早速なのですが,ラウエ写真を撮る際に連続X線を使用するタイプの 装置を用いた場合,どの波長の光が回折しているのか分からず,構造解 析には使えません.こういった場合その装置にどのような工夫をしたら 連続X線でも構造解析に使える写真が取れるのか?という問題なのです が,私が考えた回答としては連続X線を単色X線にするために,特定の 一波長以外のX線を吸収してしまうような物質を置けばいいのではない か,と考えました. この回答はどうでしょうか?また,この問題に関してきちんと勉強で きるようなサイトなども教えていただけると助かります.よろしくお願 いします.

Re: ラウエはん点による構造解析法について

崎間 さんのレス (2005/07/04(Mon) 19:28)

前田さん,はじめまして. 教養課程を機会に,物理に興味を持てると良いですね!応援しています.

> ラウエ写真を撮る際に連続X線を使用するタイプの
> 装置を用いた場合,どの波長の光が回折しているのか分からず,構造解
> 析には使えません.こういった場合その装置にどのような工夫をしたら
> 連続X線でも構造解析に使える写真が取れるのか?

静止している結晶に連続X線を照射すると,「最短波長分の1」の半径を持つ大きな球と「最長波長分の1」の半径を持つ小さな球との間でブラッグの条件を満たすことになります.そのため,これらの領域で連続的なエワルド球が存在することになります.ということはつまり,ラウエ法では構造解析に必要なデータを一度にたくさん集められるのがメリットです.実際に,酵素の動きなど,リアルタイムなデータが欲しいときはシンクロトロン放射光を使った時間分割ラウエ法が用いられています.

ですから,

> どの波長の光が回折しているのか分からず,構造解析には使えません.

という部分は少し良く分かりません.

> こういった場合その装置にどのような工夫をしたら
> 連続X線でも構造解析に使える写真が取れるのか?

は,「たくさんの回折データを見分ける工夫」でしょうか.具体的には,結晶の対称性からくる消滅則などを用いていると思います(たしか) :)

Re: ラウエはん点による構造解析法について

前田 さんのレス (2005/07/04(Mon) 21:43)

お答えありがとうございます.文章が不十分で申し訳ありません.補足させて いただきます. まず最初にご指摘についてですが,超軟X線発生装置を用いたラウエ写真の 撮影を行いました.試料は珪素と雲母です.この装置は連続X線を用いる小規模な タイプです.それによって得られた写真の斑点は,どの波長のものが回折した結果 なのか分からず,この写真からは結晶構造を解析できません. そこでこの連続X線しか出せない装置にどのような工夫をすれば単色X線による 写真,つまり構造解析に使える写真が得られるか?ということなのですがこれで 伝わるでしょうか? あれからさらに調べてみましたが,どうも固有X線が吸収されずに残り,他のものがほぼ吸収されるようなフィルターを置くという方法があるようです.しかしなにぶんバックグラウンドが無いものですから文献が難しくてよく理解できませんでした. また文章が不十分かもしれませんが以上のことについて説明していただけると助かります.よろしくお願いします.

Re: ラウエはん点による構造解析法について

崎間 さんのレス (2005/07/04(Mon) 22:15)

高融点金属(ターゲットと呼ばれます)にX線を照射すると,特性X線を取り出すことができます.たとえばタングステン \mathrm{K_{\alpha 1}} 特性X線の波長は約 0.21 オングストロームほどになります.単一波長にするためには,まずフィルタと呼ばれる金属を通します.さらにバックグラウンドを取り除くためグラファイトの単結晶で回折させると,単一波長になります.ただ,そういった改造を実際に学生が行うことができるのはか分かりません.X線については

あたりはまとまった知識として役に立ちそうです.

--- 少し追加

> それによって得られた写真の斑点は,どの波長のものが回折した結果
> なのか分からず,この写真からは結晶構造を解析できません.

ラウエ写真とはそういうものだと思いますが,「結晶構造を解析できません」という判断は指導教員の方のものでしょうか? ラウエ回折像は異なる波長のエバルト球にのっていますよね,通常,そこから「指数付け」→「強度の積分」→「波長の規格化」と進んで「構造因子」を求めます.そこからは,特性X線での構造解析と同じ手順になると思います(なにか勘違いした発言ならすみません).

Re: ラウエはん点による構造解析法について

前田 さんのレス (2005/07/05(Tue) 19:29)

解析方法についてはいろいろあるようですがご指摘にあるとおり担当教員から 条件を限定されています. また今日調べた内容をまとめますと,実験に使用されたX線はCuターゲットのX線であり,Kβ線を取り除きKα線(特性X線)だけを取り出すためにこの場合はニッケル箔をフィルターとして用いる方法があるようなのですが,どういった原理で Kβ線を取り除きKα線だけを取り出せるのかが良く分かりませんでした.このことについてご説明いただけないでしょうか?

Re: ラウエはん点による構造解析法について

崎間 さんのレス (2005/07/05(Tue) 22:48)

原理は……教科書にあるような説明しかできないと思いますが,まず,X線発生の原理から説明します.

X線というのは電磁波の一種です.電子のように電荷を持った粒子が,電場のなかで減速したりすると,減速分のエネルギーとして電磁波が放出(制動放射)されます.また,原子核に捉えられている電子が,一つの軌道からもう一つしたの軌道に落ちるときのエネルギーとしても放出されます.前者が連続X線,後者が特性X線の正体です.

(参考図: http://www.jp.horiba.com/analy/emax/principle.htm の一番下)

電子の軌道に「K殻」や「L殻」という名前が付いているのはご存じでしょうか. \mathrm{K}_\alpha 線などの「K」というのは,K殻電子がはじき出された箇所に,上の軌道から電子が落ちてきて,そのとき発生するX線という意味からです.

X線を放出するのとは逆に,X線を吸収する現象もあります.物質固有の「質量吸収係数」という値があります(原子番号に関係します).この質量吸収係数が, \mathrm{K}_\alpha 線に対して大きく, \mathrm{K}_\beta 線に対して小さければ,今回のような目的にあうフィルタとしての役割を果たすことになります. \mathrm{K}_\beta 線フィルタには,ターゲット金属よりも原子番号が一つ小さいものが用いられます.

と,ところどころお茶を濁していますが,いまの僕が書けるのはこのくらいです :( …さきほど,検索していたら詳しい文書を発見しました.

こちらも参照させてもらってくださいませ.

Re: ラウエはん点による構造解析法について

前田 さんのレス (2005/07/06(Wed) 15:09)

ありがとうございます.おかげで疑問解決ができました.ただもう一つお願いがあるのですが,X線の単色化について説明をしなければなりません.その中には私同様まったく物理に関しては初心者の方もいます.その人々のために私なりに専門用語を噛み砕いて説明するための原稿を考えました.これに間違いが無いか見ていただきたいのです.頼みをする身でありながら申し訳ないのですが,明日説明することになっているので,できましたら今日お返事をいただけると助かります.

「そこで解決法としては,単色X線であれば問題ないので,X線を単色化するための工夫をすればよいわけです.つまり,連続X線ではなく固有X線を用いれば良いと考えました.その方法について調べた結果,固有X線の波長はX線を発生させる際に使用する物質,これをターゲット物質といいますが,によって決まっています.そしてこれはK,L,M・・・などの系列に分類されます.入射電子の運動エネルギーが電子の結合エネルギーよりも大きくなればその殻から電子を追い出す光電効果がおきます.そうしてできた空席にL,M,N殻の電子が入るときにK系列の固有X線が発生します.そしてこのK系列にもKα線とKβ線があります. このことを利用してX線を単色化するために用いられる物質をフィルタといいます.X線回折用フィルタとしてはKβ線をよく吸収し,Kα線をあまり吸収しない物質を用いるようです.したがって,物質によってどの波長のX線を最もよく吸収するか決まっているわけですが,その波長がKαとKβの波長の真ん中にあるような物質をフィルタとして使えばよいわけです.ターゲット元素の原子番号より1〜2番若いものがこれに当たるそうですから,Cuを用いている今回の装置の場合は,Niニッケルをフィルタとして使えば問題は解決されます.」 いかがでしょうか?よろしくお願いします.

Re: ラウエはん点による構造解析法について

崎間 さんのレス (2005/07/07(Thu) 03:10)

がんばっておられるようですね :)

> そうしてできた空席にL,M,N殻の電子が
> 入るときにK系列の固有X線が発生します.

の部分ですが,「K系列の」という話をしているので,「空席に」を「K殻の電子が飛び出した空席に」としなければなりません.「L,M,N殻の」は「L,M,N殻などの」とした方が良いです(つまり L, M, N の三つに限定する必要はありません).

> したがって,物質によってどの波長のX線を
> 最もよく吸収するか決まっているわけですが,

「物質によって」ではなく「原子によって」としたほうが正確です.ついでにいうと「したがって」がこの位置にあるのは不自然です.

他は,正しいと思います.どういった説明の仕方をするのかは存じませんが,口頭発表ならば(レポートでもそうですが)「ようです」や「だそうです」は避けたほうが良いです.「ちゃんと調べてないんじゃないか?」と思われる可能性があるからです.では,上手く行くことをお祈りしております.

Re: ラウエはん点による構造解析法について

前田 さんのレス (2005/07/07(Thu) 20:15)

おかげさまで今日の発表,うまくいきました.説明について事前に担当教官にチェックしていただいたところ完璧とのことでした.今までのお力添えに感謝します.また分からないことが出てきた折は質問させていただきたいと思いますのでそのときはよろしくお願いします.ありがとうございました.

Re: ラウエはん点による構造解析法について

崎間 さんのレス (2005/07/08(Fri) 00:40)

お疲れ様です.上手く説明できて人に分かってもらうことができると,うれしいですよね!