エネルギーの流れや運動量を表すというのは,電磁波に対してしか成立しないんでしょうか? そう書いてある本やサイトもあるのですが,「ファインマン物理学4」の6章に出てくる 磁石のそばの電荷(角運動量が場に蓄えられている)の話だと,磁石は静磁場, 電荷も静止しているので,電磁波が出てくる要素はないように思うのですが…
ポインティングベクトルは電磁「場」について定義されてませんか?少なくともファインマンの本では,ポインティングベクトル S を導く過程において電磁波であることを仮定している箇所は見つけられませんでした.
S = ε_0 c^2 E x B この E, B が電磁波の場合に限るって書かれているのでしょうか?
EMANの物理学
だと真ん中よりちょっと下の辺りに 「ポインティングベクトルがエネルギーの流れを表すとの解釈は,この式を電磁波の 場合に適用した場合にだけ出来ることなのである.」 という記述があります. 本だと「なっとくする電磁気学」だったと思うのですが,同様の記述があったと思います.
で,確かにファインマン物理にせよ,「理論電磁気学」(砂川重信)にせよ, ポインティングベクトルの導出に電磁波であるとの仮定を置いているようには 見えません. しかし,そうすると 1)一様磁場内(下図では画面から出てくる向き)に電荷q(>0)が存在しているとき, 画面上を反時計回りに回る方向にポインティングベクトルが存在し,角運動量が 場に蓄えられている
磁場B◎ ・電荷q(>0)
2)キャパシタの極板間の静電場に直角に磁場が働くように磁石を置いたときも ポインティングベクトルが存在し(下図では画面奥向き),場に運動量が 蓄えられている
磁場B↓ +|−E→|- +|−E→|- +|−E→|- 磁場B↓
1)はファインマン物理3に出てきている「パラドックス」の話と一緒のような気がしますが,2)はどうなんでしょうか?極板を磁場に突っ込むときに運動量が場に食われて いることになるんでしょうか?
kenです. Dr.StrangeLabさん,COさん.こんにちは.
なるほど 「ポインティングベクトルがエネルギーの流れを表すとの解釈は,この式を電磁波の 場合に適用した場合にだけ出来ることなのである.」 が正しいようですね.(いまさらはじめて知った.) ポインティングベクトルを実際に使うのは電磁波の場合だけですし.
上の記述をまとめると
? ポインティングベクトル S=E X H は電磁場について定義される. (静電場,静磁場でも定義できる) ?電磁波の場合(電場もしくは磁場が時間に対して変動している場合) ポインティングベクトル S=E X H は電磁波のエネルギーの流れを表す. ?電場および磁場の双方が時間に対して変動しない場合 ポインティングベクトル S=E X H は定義されるが,エネルギーの流れを表す ものではない.
私にとっては?がはじめて気づいたことです.
大学で習ったはずのことで,私が単に忘れていたことですが 電磁波の場合(電場もしくは磁場が時間に対して変動している場合) ポインティングベクトル S=E X H は電磁波のエネルギーの流れを表す ことはマクスウエルの方程式から導かれる. この変形の過程で方程式には∂/∂tがかかっているので, ∂/∂t=0の場合は 0 X A = 0 X B のときA=Bとは言えなくなる ことから,電場および磁場の双方が時間に対して変動しない場合 についてはポインティングベクトルはエネルギーの流れを表すものではない.
こういうことになります.
kenさん>この変形の過程で方程式には∂/∂tがかかっているので,∂/∂t=0の場合は 0 X A = 0 X B のときA=Bとは言えなくなる kenさん>ことから,電場および磁場の双方が時間に対して変動しない場合についてはポインティングベクトルはエネルギーの流れを表すものではない.
とすると,私の投稿内容の1)と2)は 「いずれもポインティングベクトルをEとHから定義することはできるが,実際にはそこにエネルギーも運動量も存在しない」 という回答になるのでしょうか? その後もいろいろと考えてみたのですが, 2)のキャパシタの両極板がタイマースイッチで接続されていて,ある時間後になると両極板が短絡されるとします. すると,電流が画面上で左から右に流れるので,フレミングの法則から,両極板は画面奥向きに力を受けることになります. この向きはポインティングベクトルが指す運動量(またはエネルギーの流れ)と同じ向きです. が,この力の反作用はどこへ行ったのでしょうか?磁極が受けているのでしょうか? (絵がないのでわかりにくいですが…今絵を描いております.) なんとなく,場の運動量が極板に移ったようにも考えられますが…
1)は角運動量(のようなもの)がポインティングベクトルから出てきますが,こっちは2)みたいに取り出す方法がはっきりしません.何かやると電荷がぐるぐる回りだすのでしょうか?
kenです. >2)のキャパシタの両極板がタイマースイッチで接続されていて, >ある時間後になると両極板が短絡されるとします. >すると,電流が画面上で左から右に流れるので,フレミングの法則から, >両極板は画面奥向きに力を受けることになります.
きれいな絵のついたものであらわすと,次のようになります.
(もちろん,私が書いたものではありません.著者のブルーさんに感謝しましょう) 残りの件は後ほど...
>電流が画面上で左から右に流れるので,フレミングの法則から,両極板は画面奥向きに力を受けることになります. >この向きはポインティングベクトルが指す運動量(またはエネルギーの流れ)と同じ向きです. >なんとなく,場の運動量が極板に移ったようにも考えられますが… 計算してみると,短絡用の電線に働くローレンツ力によって極板が得る運動量と 極板間のポインティングベクトルによる運動量は同じになります. (磁束密度B,キャパシタの電荷面密度σ,極板面積S,極板間隔dとすると, 運動量はいずれもBσdSになります)
kenです. どうも,いくつもの勘違いをしてしまったようなので, (No.2789では一個の電荷の動きと勘違いしていました) 確認しておきたいと思います. まず,「両極板が短絡される」ということは両側の電位差がなくなるので E=0となるはずですよね? あと,短絡用の電線に働くローレンツ力は,流れている電流値が わかっている必要がありますよね? そもそも運動量?てなんだろうというのもありますが.. >極板間のポインティングベクトルによる運動量は同じになります. >(磁束密度B,キャパシタの電荷面密度σ,極板面積S,極板間隔dとすると, >運動量はいずれもBσdSになります) というのはどのように導きましたか?
>まず,「両極板が短絡される」ということは両側の電位差がなくなるので >E=0となるはずですよね? >あと,短絡用の電線に働くローレンツ力は,流れている電流値が >わかっている必要がありますよね? その通りです.なので,極板間を,抵抗R,長さdの導線で接続し,それに働くローレンツ 力を短絡の瞬間から電荷がすべてなくなるまで(無限時間後)まで積分しました. 計算するとRは消えてなくなります.
>>運動量はいずれもBσdSになります) >というのはどのように導きましたか? こちらに載せておきます.
これはポインティングベクトルが「エネルギーの流れ」を表すのとは違って, 単純に場の運動量のようですね.恐らくこの磁束密度の針の山の中にある 極板を充電するか,あるいは充電しておいて磁束密度の中へ突っ込む時に 同じだけの運動量を場に与えているのだと思います.