はじめまして
真空放電でみられる陰極線について質問があります. 陰極線は陰極から発射され,その正体は電子であると習いましたが, なぜ陰極から電子が発射されるかわかりません.
詳しい方がいれば是非教えて下さい.
Pさん,初めまして,なんとなくです.
どのレベルで答えて良いのか分かりませんし,それほど詳しくはないのですが,高校物理レベルで説明します.
まず,金属というのは金属原子核が+の電荷を持っていて,その周りに沢山の−電荷の電子があり,ほぼ電気的に中性(総電荷が0)だと思ってください. そしてその電子は,例えばビリヤードの球のようなものが,一面にぎっしり詰められていて,それが上に何層も重なっており,一番上は数が足りず,穴だらけだとします.下の層ほど+電荷に近いため強い電気力が働き,上の層ほど弱いと思ってください. 金属に正負の電極をつなぐと,この一番上の電子が+に向かって動き始めます(ぎっしりのところは動けません).球はぶつかり,次の球を動かしますが,大きく見ると穴は周りに比べて電子が少ないので+の電荷に見え,電子と逆に−の方へ向かって移動しているように見えます.これ(この穴の流れ)が電流です.つまり,電流とは−(陰極)から+(陽極)への電子の流れと見ることもできますし,+から−への+電荷の流れとも言えます.
さて,陰極と陽極が金属中ではなく空間を隔てた場合,上の動ける電子は陽極からの強い電場に引きずり出されて,空中に飛び出します.もし,空気中ならすぐに空気分子と衝突して光を放ちますが,これが放電です.この空気が邪魔するので,相当高電圧でもなかなか放電しません.しかし真空(又はそれに近い低気圧)中では遮るものが無いので,簡単に引っ張られて陽極へ到達します.これが陰極線です.それで陰極線の正体は電子なわけです. 陰極には電源からどしどし電子が流れてきますし,陽極に着いた電子は上の+の穴で消費されますから,電源を含めた回路が成り立ち,電流が流れ続けることになります. この説明で分かるように陰極から電子を引き出さねばならないため,真空でもかなりの高電圧が必要です.陰極を熱したりして電子が出やすくし,比較的電圧も低くて良いが同じ原理のことが真空管で起こっています.
わかりやすく説明して頂きありがとうございます.
私は現在大学1年生なのですが高校で物理をあまり勉強してなかったので 非常に助かります.
>この空気が邪魔するので,相当高電圧でもなかなか放電しません
この意味がよく理解できません. 陰極から飛び出した電子が空気に邪魔されるため陽極に到達しないということでしょうか? また,陰極から電子を引き出すとき,何故高電圧である必要があるのでしょうか?
こんにちは.
まず,基本的な事柄を3つ.ひとつは電子は陽極−陰極間の電位差(電圧)による電場に比例した力を受けること,つまり高い電圧ほど強い力で引かれ,物理的には大きいエネルギーで飛び出すこと.2つ目は空気はほぼ絶縁物質,つまり電気を通さない物質だということ.3つ目は物質表面から電子を引き出すにはエネルギーが要り,仕事関数と言いますが,これは周りが真空,つまり邪魔者がいないときの値で定義されます.仕事関数自体は比較的低電圧ですが,電流を流すには多量の電子が必要で,電圧が高いほど同じ抵抗であれば電流も増えます.
さて,質問はこれらが全て関係しますが,「放電」とは連続的に電流が流れる状態と見て良いと思います.空気中でも雷や誘導コイルなどで放電を見られますが,このとき空気はイオン化して伝導体となり,瞬間的に電流を流します.このためのエネルギーはかなり必要で,相当な高電圧にするか,電極を極度に近づける必要があります(電場を強くするため).この状態を絶縁破壊と言いますが,そのためには5000V/1cm程度の電場が必要です. 電子もPさんが考えられたように,エネルギーが小さいと空気によって間単にエネルギーを失い,陽極に到達できません.つまり,陰極から陽極までのイオン化を連続的に続けさせるために高電圧によって,高エネルギーの電子を創り出す必要があります.