人工衛星を搭載したロケットは通常東向きに打ち上げられます.しかも各国のロケット打ち上げ基地はできるだけ緯度の低い場所に置かれています.これはどうしてでしょうか? 私はコリオリの力が関係していると思うのですが皆さんはどう思われますか?
ひぐらしさん,こんにちは.
地表の自転による速度によって,ロケットの地球中心に対する初速度を稼げるからだと思います.コリオリの力は地表から見たときにロケットが受けるように見える「みかけの力」ですから,直接関係がないように思います.
ただし,打ち上げる人工衛星の用途によって,軌道を選ぶ必要がありますから,上の利点が常に生かされているわけではないと思います.
ひぐらしさん,定性的なコメントをさせて戴きます.
発射台から射出する瞬間には,発射台が地表とともに地軸について自転している訳ですから,遠心力もコリオリの力も加わります.これらの力は,発射台・ロケットともに地表とともに回転する加速度系に居る訳ですから,実在の力として受ける訳です.
ただし,一度,発射台から離れてしまえば,大気を経由しての影響しか無いですよね.
赤道上の話と限定しますと,発射の瞬間に;
・遠心力は垂直上方に向くので,明らかに打ち上げに効果的に寄与します.
・コリオリ力としては,垂直方向の速度成分は無いに等しく,自転による赤道の接線方向の速度しか持っていませんので,ベクトルの外積をとれば,やはり垂直上方に寄与します.
ところが発射後は,当然,地表と切り離されてしまうので,ロケットの推進機構自身による推進力と,大気流との相対速度に基づく抵抗とに支配されるだけです.当然,地球回転による遠心力もコリオリの力は存在しません.
mNejiさん,より詳しい説明で補っていただき,ありがとうございます.
大気を通じての影響は大きいでしょうね.低緯度で貿易風が東より(西向き)なのは気になりますが,それでももちろん大気は外から見て地表とともに東へ動いているはずですから.
遠心力の影響は,まさに地球中心に対して「初速度を稼ぐ」ということに同等であると思われます. また,コリオリ力は地表に対する初速がほとんどゼロの射出時に直接影響することはないのではないでしょうか?もちろん,発射以降の地表から見た軌道はコリオリ力によって曲がっていくように見えることになるでしょう.また,大気の影響が間接的にコリオリ力に関係していることはご存知の通りです.
既にお二方の回答がありますが,基本的には, (1)初速をかせげるのと, (2)打ち上げ場所の正味の重力を小さくできるからです.
理由は, 地上の打ち上げ場所も,自転による回転の接線方向の速度を地球の中心に対して持っています. よって,その自転と同じ回転の方向(東向き)に打ち出せば,その分,地球の中心に対して初速がかせげます. また,地上の重力加速度は,赤道が一番小さく,北極や南極が一番大きくなります. なぜなら,地上の重力は,地球の中心から引かれる重力と,地球が自転していることによる遠心力の合力が,地上での正味の重力になるからです. つまり,赤道付近の低緯度では,地上を離れるのに必要な燃料の節約ができます. もちろん,自転による回転の接線方向の速度も,赤道が一番大きくなります.(自転の回転の半径が一番大きいため)
コリオリの力に関しては, 地球は自転しています(太陽の周りを公転もしています)ので,真の意味では慣性系ではないため,地上に固定した座標系(例えばロケットの発射基地を座標原点にして,鉛直上方をz,東向きをy,それに直角な方向をx)に対して何らかの速度を持っていれば,コリオリの力はロケットに限らず働きます. それがどのように働くかは,地球上での座標系の場所(主に緯度が関係する)と座標系に対する物体の速度によって異なります. 鉛直下方に重力のみが働く慣性系であれば,高いところから初速ゼロで物を落とせば,まっすぐ真下に落ちますが,実際の地球は上に述べたように自転もしている非慣性系であるため,地上に固定した座標系(非慣性系)では,落下する物体にはコリオリの力が働くので,まっすぐ真下に落ちずにずれた場所に落下します.(空気の抵抗が無くてもずれます) ロケットの打ち上げは,その逆向きの運動ですから,基地から見れば,ロケットにはコリオリの力が働きますが,実際には,これに空気の抵抗力なども加わります.
ところで,慣性系では慣性力は現れないのに,非慣性系(加速度系)ではコリオリの力や遠心力を含む慣性力がなぜ現れるかですが, それは,非慣性系(加速度系)の座標系を定める座標軸が,慣性系に対して時間的に変化するからです. 例えば,慣性系において,等速直線運動する物体があるとします. それを慣性系に対して静止した人がカメラのファインダーを覗けば,物体は等速直線運動をして見えるでしょう. しかし,慣性系に対して動きながらカメラをかまえてファインダーを覗けば,物体は曲線を描いて動いて見えるでしょう. そして,物体が曲線を描く原因の力(慣性力)が働いていると考えるわけです. ちょっとわかりにくいかもしれませんが,コリオリの力や遠心力を含む慣性力が,座標系によって現れたり現れなかったりするというのは,そういう理由です.
transferさん,
>(1)初速をかせげるのと, >(2)打ち上げ場所の正味の重力を小さくできるからです.
(1)は,そうですね.自分の場合,座標系をいい加減にして説明したので抜けてしました.これを拝見していて,たとえば,地球の中心を原点とする2つの座標系を考えると良いかと思います.
・[I] 自転座標系:地球の中心を原点とし,自転軸について地表と共に回転する,加速系. ・[II] 公転座標系:地球の中心を原点とし,太陽にたいする公転座標系.ロケットの運動程度では,ほぼ静止系.
ロケットは発射台から離れるまでは,I座標系で考えるから,遠心力もコリオリの力も作用を受ける.ただコリオリ力は,この系で見る限り速度は少ないので無視出来る,として良さそうです.
#自分の前回のコリオリ力の説明は撤回します.ご免なさい.
他方,(2)はそうでしょうか?ロケットが発射台から離れると,II座標系で考えるのが自然です.ここでは自転の効果は存在しないので,遠心力による重力加速度の減少はないのだろうと,思います.
mNejiさん
実際に私たちが経験する重力加速度は,正味の重力加速度です.(地球の中心から引かれる方向と遠心加速度の方向とのベクトル和ですから,鉛直方向というのも,そのベクトル和による正味の重力加速度の方向です) 物を落とせば,その正味の重力の方向に落ちます. 地球上では赤道で正味の重力加速度が一番小さくなるのは明らかで,ロケットだろうが発射台だろうが,そこで働く人たちにも,等しく同じ正味の重力加速度が働きます.(基地付近の狭い領域は平らな平面と見なせ,その平面に一様に同じ正味の重力加速度が働くと考えてかまいません) ですから単純に,机の上に置いてある質量 m の消しゴムを持ち上げるのに,最低限どれだけの力が必要か?という問題と同じです. その机や消しゴムに働いている正味の重力加速度が小さければ小さいほど,持ち上げる力も小さくて済みますよね. それと同じで,正味の重力が小さければ,打ち上げ時の燃料の節約もできます.
transferさん,mNejiさん,おはようございます.
私には,(1)と(2)は同じものであると思えるのですが,いかがでしょうか? (1)はmNejiさんの[II]系から見た効果で,(2)は[I]系から見た同じ効果であると思います.実際計算しようとすると,すぐにわかります.その意味でmNejiさんの,「II座標系で考えるのが自然」が当たっています.どちらでもいいから一方に固定してみないと,同じ効果を別物と見る勘違いが生じるので注意が必要ではないでしょうか.
ちなみに,加速系である地表で東または西に移動すると,重力がわずかに減少・増加する効果がかつて潜航艇に積んだ精密な重力計で測定されており,「エトベッシュ効果」と呼ばれています.重力が自転による遠心力の効果を含んでいるのですから,東または西に移動するという観測者の運動がその影響を高めあるいは低めるわけです.
Yokkunさん,初めまして. 私も(1)と(2)は同じことに起因しますので,同等と言ってよいと思います.
実際問題として,ロケットの射場をどこに選ぶかは,その衛星の目的にもよると思います. (衛星の目的とは,静止衛星にしたいのか,軌道傾斜角をもって地表を観測したいのか,それとも地球以外の他の天体を観測したいのか,など) ただ,一般的に言って,地上から宇宙空間に衛星を運ぶのに必要なエネルギーが少なくて済むのは,赤道付近が有利であるのは確かです. (赤道付近の射場が慣性空間に対して大きな速度を持っていますから)
ところで,東向き西向きの運動で正味の重力が異なるは,潜水艦より飛行機の方が顕著に表れそうですね.
とにかく,地上は本当は非慣性系であり, 場所(や運動)によって実際に経験する正味の重力は異なる. 観測者が静止していれば,一般に,赤道付近の低緯度は正味の重力が小さく,高緯度は正味の重力が大きい. 確か理科年表でも,標準重力加速度と,「標準」という言葉が付いていたように思います. 地球の形も完全な球ではなく,地球の自転の影響で,赤道半径の方が極半径より大きいです. また,重量の大きさが場所によって異なるのは,地球の自転の影響ばかりでなく,地球内部の物質の密度分布が一様でないのも原因です.
transferさん,同感いただいたようで安心いたしました.
>ところで,東向き西向きの運動で正味の重力が異なるは,潜水艦より飛行機の方が顕著に表れそうですね.
振動等のノイズ軽減によって測定を精密にするために,細心の注意が払われたと記憶しています.かなり昔の測定ですから,現在では測定器の進歩によってもっと高速の移動実験室での測定が可能になっているかもしれませんね.
ちなみに,体重60kgの人が赤道直下で西向きあるいは東向きに1m/sで歩くと,その「体重」(受ける重力の大きさ)が1g弱増減することになるようです.
なんとなくです.
結論から言うと,transferさんの最初の見方が正しいと思います.同等とか同じという言葉の意味をそのままとっていいのでしょうか?
初速度を持つことも,重力の減少もともに自転による結果ですが,効果は別なことです.問題を地上で観測しましょう.赤道付近で東に向けて人工衛星を打ち上げるのに必要な総エネルギーが西向きに打ち上げるより小さくてすむという事実があるということを念頭に置きます. このとき,エネルギーが小さくてすむひとつの理由は重力が小さいからだ,としか分かりません.何故小さいかは赤道の方が重力に対向する”見かけの力”が大きいからですね.これなら東西どちらに向けて発射しても同じ事です.
一方,宇宙空間(静止系)から見ると,ロケットは地球の回転速度と同じ,接線速度を持っており,かつ重力はその地点の”遠心力”によって減少していることが見て取れます.従って,上と同じ事を言っているのは後者であることが分かります. しかし西に向かって初速度を与えると,接線速度を小さくしてしまいます. つまり,重力云々はポテンシャルエネルギーとして,初速度は運動エネルギーとして寄与し,東に向けるのは地上で折角持っているこの運動エネルギーをうまく生かしているわけです.接線速度は重力に垂直ですから,これらの利点は発射直後の差違で捉えるべきだと思います.というか,そもそも東西に向けて発射したロケットの(初期)条件の違いはそれしかないからです.
なんとなくさん,こんにちは.
>重力云々はポテンシャルエネルギーとして,初速度は運動エネルギーとして寄与し,
前者のポテンシャルエネルギーは,地表系から見たものであれば当然遠心力によるポテンシャルを加味したものですが,この遠心力による重力ポテンシャルエネルギーの変化は,自転のための地表速度による運動エネルギーの寄与分と同じです.同じものを異なる見方をしたからではないのでしょうか?西向きに発射したロケットの慣性系から見た運動エネルギーの目減りは,地表系においては西向きに運動する物体が受ける重力の増加による効果(エトベッシュ効果)に同じです.おっしゃられている意味を誤解しているのかもしれません.もし,そうでしたらごめんなさい.
>Yokkunさん
仰ることはその通りです.ただ,説明として以下のように考えたのです.
まず,発射前,同じ場所のロケットA,Bは地表系に静止して,宇宙空間からみても,同じ運動エネルギー,同じポテンシャルエネルギーを持っています.この時点では地表に静止しているのですが,すでに低緯度が有利なのは,正味の重力が小さいからですね.それ以外にはありません.
そしてA,Bをそれぞれ真東,真西に同じ地表(に相対)速度で発射します. これは宇宙空間から見ると,同じ速度ではなくAが大きいわけですね.したがって遠心力はAが大きく(重力は小さく),Bは遠心力が小さく(重力が大きく)その利得の差は初速度(接線速度)の違いといっても良いし,正味の重力が小さいと言ってもいいでしょう.この初速度は緯度が低いほど大きいですから.また低緯度であることが有利,そして上記の理由で東が有利,となります.
つまり,低緯度であることと東向けであること(を説明する)には二重の意味があり,例え垂直に打ち上げても低緯度有利はあるわけです.そこで初速度を稼げる”だけ”では言い尽くせないのではないかと思った次第です.
なるほど,大体理解できたと思います.
>例え垂直に打ち上げても低緯度有利はあるわけです.
これは,地表に対してということですね?すると,宇宙空間から見てすでに自転による接線速度を得ていると考えていいのですよね?実際の発射時も,より早く空気抵抗の少ない高さに到達させるのが最優先ですから,地表に対してほぼ垂直に打ち上げ,それから東へ傾けて加速するというのが通常行われていることだと思います.そこで,多段ロケットの場合切り離したブースター落下時の安全を考えて(あとは失敗したときのことも考えて)東海岸に発射台を設置することが多いのでしょうね.
transferさんの No.24173 についてコメントします.
>実際に私たちが経験する重力加速度は,正味の重力加速度です.(地球の中心から引かれる方向と遠心加速度の方向とのベクトル和ですから,鉛直方向というのも,そのベクトル和による正味の重力加速度の方向です) >物を落とせば,その正味の重力の方向に落ちます.
この場合の「正味の重力加速度」には吟味が必要だと思います.
例えば,学生実験で行う「振り子の実験」で重力加速度を出す実験では,本来の万有引力に遠心力成分をヴェクタ加算した値になる筈ですね.ここで重要なのは,地表に固定された建物のなかの実験台の上の振り子台は,嫌でも地球の自転座標系で観測される事です.
所が,やや大きな筒のなかで,物を自由落下させる場合には,「本来の万有引力」だけが正味の重力加速度にあるのだと思います.
これを考えるのに,空間に大きな質量Mをもった球体が静止しているとします.ここに小さな質量mの小物体を持って来る事を考えます.この両者には電荷等の成分が皆無だとします.すると,この両者には万有引力しか相互作用が無い事は明白です.
次に,その球体を北極星に向けた軸について,回転を起こします.少なくとも古典力学の範囲では,回転により相互作用に変化が起こらないという事も明らかではないでしょうか.
ところが,小物体を何らかの方法で球体に固定(束縛)してしまうと,小物体は球体の回転運動にともなった加速運動をするようになります.球体の地表から見ると,小物体は動いていないにも関わらず,万有引力に地球自転に基ずく遠心力が加わるからです.
顧みて,ロケットの場合も,普通の航空機も,「大気」を通して地球からルースに束縛されているので,遠心力やコリオリ力を取り込んでいた方が,実際の運動を説明し易いのかもしれません.
でも,ロケットの推進力が大きな場合には,むしろ地球の中心が公転面に従って,かつ北極星をむいた軸を保ちながら平衡運動するような公転座標系から見て近似できるとすれば,やはり万有引力の項だけで論議できるのではないでしょうか?
ただ実際の計算では,「大気の流れ」による流体力学的抵抗の評価の方が大きい様な気がします.定性的な論議で申し訳在りません.
>Yokkunさん
そうだと思います.まあ,今の思考実験では空気が無く,地上からいきなり宇宙空間とみて簡略化して考えたものなので,実際はもっと複雑なことになるのでしょう.
皆様
私は(東向き)とも明示していましたので,,なんとなくさんのおっしゃる通りの意味で考えていたのですが,何かあったのでしょうか? 単純に,打ち上げ前の発射台に乗っている時点でロケットは,V = R ω の接線速度を地球の中心に対して持っていますから,東向きが有利なのは明らかだと思います. ここで,一般に Rは地球の緯度半径で赤道で最大となり,ω は地球の自転角速度を意味します. 先の「赤道付近の射場が慣性空間に対して大きな速度を持っていますから」というのもそういう意味です.
それで,ひぐらしさんからの質問に対する答としては,
でよろしいですね? ここで,ΔV はロケットの地球の自転の接線方向の速度増分量を意味し,V がそのときのロケットの速さを表します.
以下,単純に,赤道上で自転の接線方向でのみ考えます.
重力定数:G = 6.67 × 10^(- 11) [m^3/kg・s^2] 地球の質量:M = 5.975 × 10^(24) [kg] 地球の半径:R = 6371 × 10^3 [m] 地球の自転角速度:ω = 0.73 × 10^(- 4) [rad/s]
とすると,地球の第1宇宙速度(地球の表面で重力とバランスする円軌道速度:大気抵抗無視)の大きさは,
V1 = √(G M / R) = 7909 [m/s]
で,地球の赤道での自転の接線速度の大きさ,
V = R ω = 465 [m/s]
より,
V1 - V = 7444 [m/s]
が,実際に必要な速度増分量になります. つまり,東向きに打ち上げることで,約6パーセントがかせげます.
transferさん,
(A),(B)については同意します.
(C)については同意出来ません.
(D)については,そうだと推定中です.
(C)について
実際には,地球が回転楕円体に近く赤道部分がふくらんでいることによって引力自体が高緯度より小さくなっていて,その影響は遠心力の影響に比べて無視できない(同程度の)ものであるようです.したがって,遠心力が最大であるという効果に加えて引力が最小であるという効果は独立に考えてよいと思われます.
重力に対する遠心力の比は,transferさんの6%を2乗すればよく,0.35%ほどですが,実際の極と赤道の重力差は約0.5%といわれています.
コリオリの力は地表系での「みかけの力」なので,事実上直接の影響はないと考えてよいと思います.
自己コメントです.
(C)に付いて私は,勘違いしていました.ロケットを地球の自転系座標系(地球角速度=2π/24hr)から説明するのが良くないのに気が付きました.
ロケットの軌道計算には, ・地球の自転系座標系の回転を初速度に持ち, ・普通の回転座標系(ロケットの角速度=地球の角速度とは違う) で論議するべきだろうと思います.
その意味で,せいぜい発射台を離れてスピードが急上昇している時,これが一番推進力を必要とすると思いますが,赤道だと遠心力効果で得をする訳ですね.当然,周回軌道にはいれば,「純粋な万有引力」と「ロケットの角速度に由来する遠心力」がバランスするによります.
#なお,この回転系は,地球の回転とは無関係な為に,遠心力は存在しますが,コリオリの力は存在しない事になります.着目する物体に付着した座標系と,地球のような回転フレームに付着した座標系との違いが本質的だと思います.
他方,コリオリの力を地球の自転回転系から考えます.なお,簡単の為に赤道上とします.
ロケットの発射は概ね地表に垂直に上昇する様におもいます.地表に垂直な対地表v,地球の角速度ωとすれば,コリオリの力は2ωvの大きさで,東を向きます.従って,赤道の接線方向の加速には寄与しますが,垂直上方に向かう加速には寄与しません.
#回転系の解説は,クロメルさんの記事(草稿段階)が出た様です; ・ http://hooktail.maxwell.jp/kagi/1d0e002942326fc4d841ef60aac6fc60.html
これが正式版になると,この手の論議に他のサイトを引用しなくても良いので,嬉しいです.
>地表に垂直な対地表v,地球の角速度ωとすれば,コリオリの力は2ωvの大きさで,東を向きます
mNejiさん,西向きにならないですか?ベクトル積の前に負号がつきます. この場合,地表の回転のために速度ベクトルが回転していくように見えるということを指すことになると思います.簡単のため重力を無視して,赤道から鉛直上方に打ち上げたロケットが地球中心に対して直線運動(自転による接線成分を持つので半径方向ではない)をしたとすると,その速度ベクトルは地表から見て上方を経て西に回っていくかっこうになりますよね.このときの鉛直成分の増加の原因が遠心力,水平成分の変化の原因がコリオリ力ということになると思います.
>mNejiさん,西向きにならないですか?ベクトル積の前に負号がつきます.
あ,そうですね.間違っています.移行するのを忘れていました.これでは遠心力も近心力になってしまいます.
すると,コリオリ力,vωとしては西に向き,接線方向の効果としては,減速に作用します.
ちなみに,アポロ計画の第一段ロケット(サターンV)の資料; ・ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B3V%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88
を拝見すると,61kmの高度を2min30secで上昇するそうです.粗い計算をしますと,
v = 61km / 150s = 400m/s vω = 400m/s * 7*10^(-5)rad/s = 3*10^(-2) m/s^2 = 3*10^(-3)g (g=9.8m/s^2)
となって,無視できる量のようです.
アポロ計画では,第一段ロケットでまず高度を確保して,その切り離し直前に姿勢を寝かせ,第二,三段で接線方向に加速をするのでしょうか....
細かい指摘で恐縮ですが・・・
>3*10^(-3)g (g=9.8m/s^2) となって,無視できる量のようです.
最も影響の大きい遠心力(自転による初速の運動エネルギー)自体,重力に対して10^(-3)のオーダーですのでその意味では無視できないと思います.しかし,これはあくまで地表系による「みかけの力」であり,なおかつ地表系においても速度に垂直で仕事をしませんから,このスレッドでは無視してよいと思われます.
>最も影響の大きい遠心力(自転による初速の運動エネルギー)自体,重力に対して10^(-3)のオーダーですのでその意味では無視できないと思います.
なるほど, rω^2 〜 6*10^6 m *[ 7*10^(-5) 1/s]^2 〜 3*10^(-2)m/s^2 〜3*10(-3)g と同程度のオーダですね.
所が,接線方向はtransferさんのご指摘があり, >地球の赤道での自転の接線速度の大きさ, >V = R ω = 465 [m/s] です.
他方,垂直方向はゼロ速度なので,相対的に遠心力が垂直方向に寄与し,コリオリ力は接線方向に寄与が少ない様におもいます.
すこし脱線しますが;
私は,『「みかけの力」だから云々』という説明を理解出来ません.この場合で言えば,私も「コリオリ力は垂直方向に仕事が出来ない」と思いますが,「接線方向に仕事ができない」とは思えません.どういった指針の基に,このような結論が出て来るのでしょうか?
>私は,『「みかけの力」だから云々』という説明を理解出来ません.
単に,ここでは人工衛星を軌道に乗せる上でのエネルギーの効率が主題なので,慣性系から見た比較をすれば十分であり,地表系であえて複雑な慣性力の効果を議論するのはあまり(質問への回答という目的の上では)意味がないと思っただけです.もちろん,地表系と慣性力への理解を深める上での意味は大いにあります.
>接線方向に仕事ができない」とは思えません.
速度に接線方向成分が加わっても,コリオリ力は変化していく速度方向に対して同時に垂直に方向を変えていくのですから,正味の仕事をすることはできないということです.等速円運動において,向心力が仕事をしないのと同じです.地表系における慣性力がする仕事の概念は成立し,もちろん意味がありますが,コリオリ力に関する限り,物体の速度に常に垂直ですから仕事をすることはありません.すなわち地表系から見てもコリオリ力がロケットの力学的エネルギーの変化に寄与することはありえないのです.
人工衛星の発射過程には,大気圏脱出するまでは,大気の動向とそれに基ずく流体抵抗を評価した上で発射の指令を出す事がされている事でしょう.その意味で,地表座標系でのロケットの振る舞いを定性的に知る事は意味があるとおもいます.
質問者のかたが「コリオリの力」に言及されたのも,気象的な観点からの発想だろうかと思います.地表座標系でのコリオリの力は,多くの場合,台風のイメージが多く,ロケット射出のように地球の動径方向に向く場合は,説明が無さそうなので概算をしたわけです.
>地表系における慣性力がする仕事の概念は成立し,もちろん意味がありますが,コリオリ力に関する限り,物体の速度に常に垂直ですから仕事をすることはありません.すなわち地表系から見てもコリオリ力がロケットの力学的エネルギーの変化に寄与することはありえないのです.
コリオリ力が仕事をしない事は,そのとおりだと思います.しかし「方向を変える」ということは,ある方向に減速が,それと直交した方向に加速が起こる事による訳ですです.勿論,運動方程式が解けてしまえば良い訳ですが,その解法以前に,どうイメージするかを数値的に感じることも大切だと思います.
なお,前にも書きましたが,原点を地球中心にとったロケットの極座標系では,地表の回転効果は現れずに(コリオリの力,重力への遠心力補正),万有引力とロケッットの推進力と遠心力で運動方程式が決まるだけでしょう.
ひぐらしさんはもうご覧になって居ないかも知れませんが,自分なりに纏めさせて戴きます.
transferさんの No.24188 での「接線方向の速度の利用」というご説明が正しいと思います.
コリオリの力が出て来るのは,地表に原点をもつような座標系(以下,地表系)をとる場合になります.普通,我々が静止座標を考えると,大きな目でみれば地表系をとっていると思って良いでしょう.ところが,我々の日常的なスケールでは幾ら地表系をとっても,事実上コリオリの力は関与しません.せいぜい,「台風」とか「フーコーの振り子」でしか出て来ません.「台風」では長い距離とそこそこの速度でが風が流れたり,「フーコーの振り子」では長い時間に渡って振り子が回転するからです.
そこで,「ロケット」のように長い距離を速い速度で運動する場合にどのようにコリオリの力が働けば,大きな効果があるのでは無かろうかと思われたのだとおもいます.これについては,No.24196 で概算した様に,西向きに重力加速度の千分の一程度の加速をする程度でした.
また,発射時の遠心力の効果(日常生活での重力と,地表での遠心力のオーダ)は,No.24201 で概算した様に,やはり重力加速度の千分の一程度の加速に相当します.
したがって,地表系で見たとしても,ロケットの打ち上げには小さな影響しかないのだとおもいます.
しかし,ロケットが大気圏(高度20km以下)を通過するまでの大気の風からうける空気抵抗とか雲(水蒸気)や落雷の影響のほうが深刻だろうとおもいます.これらの事前解析のためには,地表系に基ずく気象データと,ロケットの運行軌道の計算が必要ではないかと推察します.
一度,大気圏を脱出してしまえば,計算が複雑な地表系よりは,地球中心からロケットを見た回転座標系としてロケットの極座標系を取るのが簡便です.この場合,コリオリの力は出て来ません.重力,遠心力,ロケット推進力とで運動方程式が決まる訳です.
人工衛星の軌道修正とかスペースシャトルの地球帰還などでの推進制御なだで,どのようにするのでしょうかね.