はじめて質問させていただきます.
ニュートン力学の説明で「慣性力だけには反作用がない」とあり,なるほどと思いました.
一般相対性理論は重力と慣性力の等価性を原理とするものと理解していますが,一般相対性理論では重力に反作用はないのでしょうか?
TOUNさん,こんにちは.
私の拙い理解の範囲で,回答というよりも議論に参加させてください.
重力と慣性力の等価性・・・等価原理ですね.
一般相対性理論では,重力もいわゆる「力」としての独立した存在意義を失い,時空の曲がりとして表現されます.よく,球体をのせたゴム膜のモデルがありますよね?たとえば近接した2つの天体は,相互の質量の存在によって周囲のゴム膜をゆがめます.このゆがめられたゴム膜(時空)の曲がりにしたがうという限定の中で,2つの天体は「自由」に運動するというイメージです.一般相対性理論の上では重力は本来の力としての意味を失い,時空の曲がりに帰するのです.すると,重力の反作用という現象自体はどこにいくのかと考えると,重力の中で運動する天体自身も周囲の時空をゆがめていますから,ある意味ではこのゆがみが重力場への反作用ということになるでしょうか?
一方,慣性力はもともとが慣性系においては現実の力ではありませんから,反作用もありません.速さが変わったり回転したり・・・加速系という特殊な時空間はそれ自身において曲がったものになるわけです.まさに,この曲がりの原因が他の天体の質量によるものなのか,実験室の加速によるものなのかは手元で知る方法はなく,その意味で慣性力は重力と等価であるというのですね?むしろ,一般相対性理論の考え方でいけば,慣性力にも反作用があると見ることもできるのではないでしょうか?単に,実験室内の物体の質量が自身のまわりの時空を曲げるのを手伝っているという意味において.
Yokkun様
御教示ありがとうございます. 「一般相対性理論の考えでは慣性力にも反作用がある」というのに感心しました.
他所(遠心力の説明)で次のような文を見ました:
「慣性力と呼ばれる力の認識の仕方は2通りあります.一つは,座標系が慣性系でないために表現上付け加わる加速度を,力の項に移行して考えるというもの.もう一つは,物体に慣性があるために生じる,加速度運動を強制させる束縛要素に対する反作用と捉える見方です.」
私には後者がより自然に見え,Yokkunさんのお答えとも似ているように感じます. しかし,「慣性力には反作用はない」というということを間違いとした場合,ニュートン力学の計算になにか矛盾が起こってきそうな気もしますが.
いやあ,ほんとは「慣性力」に反作用はないというのが正解でしょう.混乱させるようでごめんなさい.
一般相対論ではそもそも,重力も慣性力も時空の曲がりとして埋没して「力」という独立した存在でなくなってしまうわけです.AとBが万有引力で引き合う場合に,Aがその質量によって周辺の時空を曲げる,Bも同様に相応に周辺の時空を曲げる.互いに曲げ合った時空の中で,互いに「自由」に運動する・・・というのが一般相対論の描像なのですね.すると,BからAへの反作用はまさにBも時空を曲げているというその点にあると考え,これを「Aがつくる重力場への反作用」と表現することもできるだろうということです.ただし,もはや「力」がないのですから,本来の意味での作用・反作用という概念自体が不要のものとなってしまったのですね.
慣性力の場合,Bが周辺の時空を曲げたことを「場への反作用」と考えても,その寄与を受けるべきAがないのですから,本来の反作用にはもちろんならないわけです.
TOUNさんが,紹介されている 「・・・物体に慣性があるために生じる,加速度運動を強制させる束縛要素に対する反作用と捉える見方です.」
これは,「反作用」の意味が本来のものではありません.「力」に抵抗する「慣性」そのものを言い換えているにすぎません.そしてこのとき「反作用」ととらえられているのが慣性力そのものであって,「慣性力の反作用」という意味ではありません.ですから,私が「反作用があると見ることもできる」みたいにいったこととは全く関係がありません.念のため申し上げますが,ここでいう「見ることもできる」という「反作用」は本来の「力」の意味から拡大解釈されています.もちろん,本来の「力」の意味での反作用は慣性力にはありえないと断言できます.
Yokkunさんのお答えは,「一般相対性理論の世界では重力の「力」も慣性力の「力」も「時空の曲がり」に溶け込んでしまうのでニュートン力学の世界の 作用とか反作用とかいう概念が不要になる」ということですね.
ある質量による「時空の曲がり」は他の質量に影響を与えて「万有引力」現象となると理解しますが,「慣性力による(加速系内の)時空の曲がり」は他の質量に影響を与えませんね?すると両者はかなり違って見え,「等価」とは思えなくなるのですが.
別の質問ですが,電磁「力」,弱い「力」(相互作用),強い「力」(相互作用)にはみな「作用=反作用」が成り立ってると思っていますが,それでよろしいでしょうか?
横から失礼します.
一般相対性理論の流れは理解していませんが....
おろ覚えですが,核力には三体力が論議されたようですが,少なくともポジティブな結果は出なかったと思います.二体力では,「作用=-反作用」が成立すると思いますが.
>慣性力による(加速系内の)時空の曲がり」は他の質量に影響を与えませんね?
慣性力場は加速系で見る限り重力なのですから,もちろん加速系で見る限りにおいて他の質量に影響を与えるのです.これを慣性系からみることができるのなら,時空は平らなのでもちろんその影響は見えない.無重力の空間を質量は等速度運動するだけです.座標系自体が曲がっているので,その系の中に入り込むと重力によって落下運動しているように記述されるわけです.反作用がないというのは,慣性力の作用の源となる質量がそもそも存在せず,引っぱりかえそうにも相手がないということなのですね?
>両者はかなり違って見え,「等価」とは思えなくなるのですが.
はい.反作用の相手がないということが慣性力が重力と異なる決定的な違いです.でもその作用を観察する限りでは,慣性系での重力と加速系での慣性力を見分ける方法がないというのが「等価原理」の内容だと思います.
>電磁「力」,弱い「力」(相互作用),強い「力」(相互作用)にはみな「作用=反作用」が成り立ってると思っていますが,
4つの力の詳しいことは私の手の及ぶところではないのですが,力と呼ばれている限りまさに相互作用であり,その源もはっきりしていますから,必ず反作用があるものと思います.
#書き込みの後mNejiさんの投稿を拝見しました.その辺は私はよくわかりません.「力」と呼ばれ,その源があるので反作用がある・・・という古典的な理解にとどまっています.
横レス失礼.
これは極論かも知れず,あるいは独自の解釈かも知れないことを最初に断っておきます.従って,中高生や物理をこれから学ぶ人は鵜呑みにしないように.特にテストに書くと×かもよ(笑).
まず,作用・反作用とは何か.勿論物体が一つではこれは意味を持ちません.なぜなら,作用と反作用はその定義から言って,”別の”物体に働く力だからですね. そして2体以上になったとき,はじめて相互作用の結果として,相手に作用を及ぼすとき,自分が相手から作用(反作用)を受けずにはいられない,ということがいわんとしていることですね(細かく言えばその力は同一直線上で反対向きということがありますが,以下は面倒なので細部には触れません).
さて,主張ですが,慣性の法則も,運動方程式も,作用・反作用も慣性系でしか成立しない法則である,と単純に考えれば良いと思います. そうすれば当然,加速系でも重力系でも(本質的には同じですが)成立するはずはなく,反作用が無くても矛盾しません.ここで混乱しやすいのは視点の問題です.加速系や重力系を”外から”見ることができれば,その視点は通常慣性系の上の人が見る視線であり,作用・反作用が成立している(と見える)のは明らかです. 加速系として,加速している透明な宇宙船を見れば,乗員は加速と逆方向に力を受け,座席に押しつけられています.ここには宇宙船が加速するというエンジンの力に対向する乗員の慣性が止まろうとするための反作用を宇宙船に与えます.これが議論の二つ目の側面のことですね.
これは今までも出てきたように,宇宙船後方に質量が生じたことと区別ができませんが,それは外から見て言えることです.乗員はただ床下方向に重力が発生したと思うだけで,つまり作用だけが発生した(ように見える)だけです. 重力系はどうでしょう.外から見れば地球が人を引っ張り,人が地球を引っ張り,やはり作用・反作用だなと思います.しかし,地球上の人には,下に引っ張られる作用があるだけです.つまり加速系でも重力系でもその”内部”の人にはそもそもその力の要因に対しては反作用はもともと無いのです.その(知り得ざる)要因以外の内部の力については勿論慣性の法則も運動方程式も作用・反作用も成り立ちます.考えてみれば,宇宙船でも地上でも(上の外部要因を除いて)力もないのに,物体は下方に動き出します.慣性の法則を満たしていません.我々は経験的に重力という力が下方に向かって存在していることを知っているに過ぎません.
結局,当初の質問はそのように視点が混乱しているだけであり,慣性力も重力も同じ結論であり,見方の違いに過ぎないと思います. 等価原理については,例えば重力系でいえばその中で自由落下する”系”を考えれば,それは”局所”慣性系を為すということであり,自由落下する人が観測する物体はまた慣性系の法則を満たす事になります.一般相対論ではそのような局所慣性系がある場合は本当の慣性系と等価であるということであり,どのような場合でも局所慣性系が取れるとは限らないのだと思います.
なんとなくさん,こんばんは.
>慣性の法則も,運動方程式も,作用・反作用も慣性系でしか成立しない法則である,と単純に考えれば良いと思います. そうすれば当然,加速系でも重力系でも(本質的には同じですが)成立するはずはなく,反作用が無くても矛盾しません.ここで混乱しやすいのは視点の問題です.加速系や重力系を”外から”見ることができれば,その視点は通常慣性系の上の人が見る視線であり,作用・反作用が成立している(と見える)のは明らかです.
なるほど.やや視点のふらふらした私の見方に対して,すっきりして明快です. そもそも「慣性力」という言葉自体が,慣性系から見れる立場にないとありえない言葉ですよね.加速系では,まさに重力が生じたにすぎないわけです. そしてまた,重力系も同じ・・・この点は目からウロコでした.
なんとなく様・Yokkun様
非常に面白いご議論ありがとうございます.
質問が二つあります.素人ですのでまたまた混乱していたらごめんなさい.
(1)なんとなく様の「作用‐反作用法則は慣性系でしか成立しない」というのは,動き始めた満員電車のなかで慣性力で倒れないために人と人とが支えあう場合はどうなるのでしょうか?また,「すべての基本力で作用・反作用法則が成り立つ」ということでしたが,電磁力や核力も慣性系でしか作用・反作用法則が成り立たないことになりますか?これは直ちに検証可能なように思いますが.
(2)Yokkun様の「作用を観察する限りでは,慣性系での重力と加速系での慣性力を見分ける方法がない」ですが,作用を受けている物体だけを(「内部」?で?「局所」?で?)観察する限りはそうかもしれませんが,系(透明な箱)の中から外を観察すれば,たとえばエレベーターのワイアが切れた(加速系&慣性力)とか,上空に巨大な星が出現した(慣性系&重力)とか,というように検証可能な差異が観察できるのではないでしょうか?これは視点を移動させず,肉眼(前者)・望遠鏡(後者)でできますね?こういう方法で,2体間作用であるかないか(慣性力か万有引力か)が分かる,とは言えませんか?
>TOUNさん
それは「系」という考え方に誤解があると思います.間単に言えば,透明な電車に乗っている人が外の景色をみて自分が静止系ではない,と”分かる”ことと,静止系の上で運動を観測するということは別次元の話しです.
(1)について考え方を述べます. 移動する電車内にAさんとBさんがいるとします.まず,明確にして置かねばならないのは,電車が加速中なのかもう加速していない(等速度運動)のか,と言うことです.後者であれば地上(静止系)と何等変わりが無く,全く同じ状況です.つまりAさん,Bさんは慣性系です.しかし,電車の外のCさんはA,Bさんが電車と同じ速度ですっとんでいくように観察します.ところで加速中の場合はどうでしょう.AさんもBさんも(得たいの知れない)力で電車後方へ向けて引っ張られます.これが慣性力であり,Aさん,Bさんはなにも作用を加えた覚えのない(反)作用を受けたと観察します.Cさんがそれを見ると,ただ電車が加速したために.A,Bさんが慣性により止まろうとするため,A,Bさんに加えられた作用にしか見えません.その反作用は電車の床に加えられ,それをうち消すように電車は動力を使って加速し続ける必要がある,というだけです. このとき,AさんとBさんが互いに押し合ったとします.その押し合いについては当然作用,反作用が成立します.前の説明で”外部要因”と記述したのがこの電車の動力です.勿論それ以外の要因により起こる運動は電車内でもすべての法則が成り立ちます. 電磁力,核力についても同様です.但し,慣性力は質量起源(重力と同じ)によるものであり,その検証は簡単ではありません.作用・反作用をこの2力から分離する必要があります.我々は実験系として通常慣性系を用いていますし,上述のように外部要因として用意できるのは加速系(重力系)くらいですから,当然それ以外の力は作用・反作用が成立します. 長くなったので(2)はYokkunさんが良ければお任せします.
エレベータの外の景色や,急に出現した星の存在を考えなくとも,私たち人間が,地上の重力が巨大な質量を持つ地球と地上の物体との相互作用であり,また同じ力が太陽と惑星など天体間に作用しているのだということを知りえた歴史を考えれば十分な気がします.
天体の運動を注意深く観察して,そこに天体間の相互作用を見出すのは人間の想像力と洞察力であり,たとえば月が地球に引かれている事実を私たちは地上で直接観測しているわけではありません(もちろん,たとえば地上の潮汐という現象から月の引力を洞察するのはここでは「違反」です).そして,積み重ねた情報と洞察によってそこに引力を見出しているときに,私たちは宇宙空間に慣性系をイメージしてそこに「立って」いるのだと思います.
地球が加速系であり,遠心力やコリオリ力が自転による慣性力であるということを知ることができたのも,私たちが加速系にいるからだけではなく,情報の蓄積・洞察力・想像力によって,太陽系空間の慣性系としてのイメージをつくりあげ,その中での地球の自転という加速運動を知ることができたからですね.加速系の立場に「埋没」すれば,いずれも重力のわずかな変動としか見えません.
ガリレイの相対性原理でも, 「等速度で運動する実験室内の現象は,静止している場合と何ら変わりがない.したがって,我々は実験室『内』の現象を観察する限りにおいて,実験室がどんな速度で運動しているのかを知ることはできない.」 としていますが,このとき,もちろん窓外の風景が後方へ流れていくことを見るのは「違反」なのです.したがって,加速系に「埋没」しようとするとき,ワイヤが切れたことも,巨大な質量をもつ星が現れたというのも「見ては」いけません. 私が「見分けることができない」といったのは,もちろんこういう場合によく使われる比ゆ的な表現で,加速系に「埋没」した不自由な観点からのものであり,TOUNさんも言っているように, 「作用を受けている物体だけを(「内部」?で?「局所」?で?)観察する限り」 ということなのだと思います.重力が急に小さくなった原因を「ワイヤーが切れた」ことや「星が出現した」ことに見出す人は,洞察によって自らの非慣性系を脱出して慣性系に立っているといえるでしょう.
ということなのですが,ご理解いただけたでしょうか? 慣性系を知るもののみが,自らが非慣性系にいることを知りえるわけです.
場の理論の立場から重力や慣性力の反作用について考えてみました.
場の理論においては,作用・反作用の法則は局所的にしか成り立ちません. 例えば,2個の荷電粒子が力を及ぼしあっているとき,遠隔作用の考え方では,それぞれの粒子に働く力は,大きさが等しく向きが反対になるわけですが,厳密にはこれは成り立ちません.それは作用の伝播速度が有限であるためです. 場の理論の立場では,荷電粒子どうしは場を媒介として間接的に力を及ぼしあいます. 力を及ぼしあうということはエネルギーや運動量をやりとりすることです. すなわち,粒子と場,場の無限小部分と隣接する部分などの間でのエネルギーと運動量のやりとりの連鎖の結果,荷電粒子どうしがエネルギーと運動量をやりとりするわけです.このそれぞれの過程で運動量が保存することが,局所的に作用・反作用の法則が成り立つということです. 一般相対論は重力場の理論なので,作用・反作用の法則は局所的なものとして考える必要があります. ところが,一般相対論では,電磁力は力ですが,重力は力ではなく,時空の歪みなどの影響の現れです. 真の重力場が存在しなければ時空は平坦で,曲率テンソルは0です. 真の重力場が存在すれば時空が曲がって曲率テンソルは0でなくなります.この場合,座標変換によって曲率テンソルを0にすることはできません. しかし,真の重力場が存在しない平坦な時空においても,加速系においては見かけ上重力が生じます.これが慣性力です.この場合,曲率テンソルは0のままですが,局所的にはこの慣性力を真の重力と区別することはできません.真の重力にしても慣性力にしても,それが存在するときには,疑似接続係数が0でなくなります. いずれにしても,重力も慣性力も力ではないので,その反作用というものも意味を持たないことになります. しかし,作用・反作用の法則を局所的な運動量の保存に置き換えて考えることはできそうです. 重力場が存在しないときには,物質場と電磁場のエネルギー・運動量テンソルの4次元発散が0になることが,局所的なエネルギーと運動量の保存を表します. しかし,重力場があるときには,物質場と電磁場だけでは局所的な保存則は成り立ちません.成り立たせるには重力場のエネルギー・運動量テンソルのようなものを含めて考える必要があります. しかし,重力場については, エネルギー・運動量テンソルは定義できません.それは適当な座標変換によって,局所的に重力場を消去できるためです, そのかわり,重力場のエネルギー・運動量擬テンソルというものを考えることができて,それを含めれば局所的な保存則が成り立ちます. しかし,重力場のエネルギー・運動量擬テンソルはテンソルではないので座標系の取り方によって0になったり0でなくなったりします.曲率テンソルが0の平坦な時空の計量がミンコフスキー計量で表されている場合は,この擬テンソルは0ですが,座標変換によって加速系とか曲線座標系に移行すれば擬テンソルは0でなくなります.また曲率テンソルが 0でない場合には.適当な座標変換によって擬テンソルを局所的に0とすることができます. つまり重力場のエネルギーや運動量が空間の特定の部分に分布しているると考えることはできず,座標系のとりかたに依存するわけです. いずれにしても,このような擬テンソルを考えれば,局所的な運動量保存側が成り立つことになり,ある意味では,局所的な作用・反作用の法則が成り立つと言えるでしょう. つまり,物体が重力場の作用を受けてその運動量が変化するとき,重力場がその反作用を受けて,その結果,重力場の運動量が変化するわけです.さらにその運動量の変化が重力場を介してその重力場の源になっている物体にまで伝わると.その物体が反作用を受けますが,その伝わる時間が非常に短くて瞬間的に伝わると見なせる場合にはニュートン力学的な意味での作用反作用の法則が成り立つことになります. 慣性力も局所的には重力と等価なので,慣性力が働くことは局所的には重力場が生じていることと同じであり,その重力場に反作用が働くと考えることができそうです. しかし,慣性力の源になる物体は存在しないので,その反作用が重力場を介して他の物体に伝わるということは起こらないでしょう. ただし,宇宙の全物質との相互作用によって慣性が生じるというマッハの原理を認めるならば,最終的には宇宙の全物質が(もちろん慣性力を受ける物体自身は除いて)慣性力の反作用を受けることになりそうです.しかし,マッハが考えたような,宇宙全体をカバーする慣性系は一般相対論では存在しないので,マッハの原理はそのままでは成り立たないようです.
なお,念のために強調しておくと,既に述べたように重力も慣性力も電磁力のような真の力ではないので,上に述べたことは,そのはたらきをあたかも力のはたらきであるかのように置き換えて考えたものであるということです.
yamaさん,横から失礼します.
私は一般相対性理論には完全落ちこぼれでしたが,ファイルさんの「赤方変位」と言うスレッド以来,一般相対性理論に興味が少し出て来た所です.
今回のご説明はとてもイメージが取り易いと感じるますが,自分のような素人には,残念なところ,まだまだ理解出来る段階にありません.
自分では一応,古典電磁気や力学,量子力学については学部段階をおおよそ理解しているとおもいますが,実際に一般相対性理論に手をだすとして,どのような学習方法があるでしょうか?
本論から離れすぎていたら,ご免なさい.
yama様
御教示有難うございます.私自身テンソルや接続に関してチンプンカンプンなのが残念です.わかるような気のする範囲で質問させてください.
(1)「慣性力の源になる物体は存在しないので,その反作用が重力場を介して他の物体に伝わるということは起こらない.」とされていますが,もしそうなら,慣性力と重力とは局所的にも区別できることになりませんか?つまり,慣性力場の時空の曲がりは,いかなる他質量にも伝わらない曲がり方だからです.これは実験的検証が可能なような気がしますが.
(2)慣性力と重力とが「局所的に」等価である,という原理は一般相対論にとってどれくらい重要なのでしょうか?それが否定されれば一般相対論は崩壊しますか?
(3)「作用・反作用則は場の理論では局所的にしか成り立たない」ということは,「作用‐反作用」が,粒子とその場の間でしか成り立たない,ということですね.その関係は「他の」粒子とその場の間でも対称であるはずですから,基本力を純粋に考えた場合には粒子と粒子の間に作用‐反作用則が近似的には成り立つ,と理解していいでしょうか?
(4)別の質問ですが,マックスウェルの方程式・シュレディンガーの方程式は慣性系での方程式と理解していますが,それでよいでしょうか?また,もしそうであるとするとそれらを加速系に入れた場合にはどんな種類・程度の書き換えが起こりますか?
mNejiさんへ
一般相対論については,私もきちんとは学習していないので,あまり適切な回答はできませんが,適当な入門書で,問題も解きながら学習するのがよいと思います. 入門書としては例えば ttp://www.amazon.co.jp/dp/4535784221 があり,基礎的事項の説明が適切で,章末問題の解答も比較的詳しく書かれているように思います.
yamaさん,
ご紹介有り難うございました.私は面倒くさがり屋なので,「問題を解きながら」というのが辛そうですが...,目次を見ると,面白そうな章立てなので興味が涌きました.区の図書館の検索で見つかったので,ちょっと齧ってみたいとおもいます.
なお私の頭は頑固なので,理解出来る柔軟性があるかどうか疑問ですが....
TOUNさんへ
きちんと答えることはできませんが,一応私の考えを述べておきます.
(1) もちろん真の重力場と慣性力場では時空の曲がりかたに違いがあります. 真の重力場では時空が曲がっていますが,慣性力場では時空は曲がっていません. あるいは,真の重力場では曲率テンソルが0でなく,慣性力場では曲率テンソル(のすべての成分)が0になります. (ただし,慣性力場でも3次元空間部分だけを考えれば曲がっていることになりますが.) 真の重力場と慣性力場が局所的に区別できるかどうかですが,曲がっているかどうかを局所的に区別できるかどうかということになりますね. 曲面上の微小部分が曲がっているかどうかは,数学的にははっきり区別されるはずですが,実際の測定によって区別できるかどうかが問題です. 曲面上の非常に微小な部分を測定して,その部分が曲がっているかどうかを判別することは実質的に不可能だと思います.つまり曲がっているかどうかを局所的に区別することはできないわけです. もちろん,ある程度広い部分を測定すれば曲がっているかどうかは容易に判別できるので,局所的という条件をはずせば,真の重力場と慣性力場は区別できます.
(2) 局所的に等価であるというのは,やや曖昧な表現ですが,これを指針として一般相対論がつくられたわけです.. 完成した一般相対論においては,等価原理は,適当な座標変換によって任意の1点での疑似接続係数の値を0にすることができるということを意味しており,一般相対論では当然これが成り立っています. 従ってもしそれが成り立たなければ,一般相対論は成り立たないことになります.
(4) マクスウェル方程式やシュレーデンガー方程式はどちらも,慣性系における方程式です. もちろん非慣性系での形に書き換えることはできると思いますが,具体的にどんな形になるかはよくわかりません. 太田浩一「電磁気学の基礎?」には,回転座標系のマクスウェル方程式について簡単な説明がありますが,仮想的な電荷と電流(シッフの電荷と電流)があるように見えるそうです.
yamaさん 気になったのでコメントしておきます. >大きさが等しく向きが反対になるわけですが,厳密にはこれは成り立ちません.それは作用の伝播速度が有限であるためです. 間違いです.フラックスバランスを考えれば,成立していることがわかります. 作用の伝播速度云々は関係ありません.
皆さん,こんにちは.
TOUNさん,割り込み失礼します. yamaさん,お伺いしたいのですが,
>真の重力場と慣性力場が局所的に区別できるかどうかですが, >曲がっているかどうかを局所的に区別できるかどうかということになりますね.
というご説明の部分で,確かに,空間が重力場「だけ」または慣性力場「だけ」 の場合はその通りだと思うのですが,例えば,自由落下する観測者が,自身の 近傍の空間に対し,曲がっているかどうかを局所的に区別できて,結果的に 平坦でないことが判明したとしても,そのことからは,重力場が存在すること しか言えず,慣性力場の存在(つまり,観測者が観測する物体の運動に対して, 影響を与えるような重力以外の力の存在)の有無を判断できないのではない でしょうか? フリードマンの宇宙モデルに従えば,慣性力場の存在の有無は,宇宙の質量分布が 全体として,かつ平均として絶えず等方であるように見える基準系(共動座標系) において,観測者がどのような運動をしているかによって,決まるのかもしれません. この考え方が,俗に言う「マッハの原理」に結びつくものなのかどうか,私には わかりませんが・・・.
yama様,
明快なレスポンス有難うございます.もうすこし質問をさせてください.
(1)「真の重力場では曲率テンソルが0でなく,慣性力場では曲率テンソル(のすべての成分)が0になる.」「曲面上の微小部分が曲がっているかどうかは,数学的にははっきり区別される」ですが,
これは,「一般相対論では慣性力と重力は「理論的」には(局所的にも)はっきり区別されている.差異が局所的に実測できないだけである.」となりますか?私は一般向き解説書で,「一般相対論では重力と慣性力が「理論的には」区別できない」と理解していました.
(2)「等価原理は「反証可能な仮説」か?」という形の質問ではいかがでしょうか?
(3)前回「非慣性系におけるシュレディンガー方程式」に言及がありませんでしたが,これは量子重力と何か関係がありますか?
(4)「高速回転する電荷」は実際的問題と思いますが,その周りの電磁場についてマックスウェル方程式の書き換えは実際上の問題にならないのでしょうか?
ASAさんへ
私が言いたいのは,場の理論の立場で考えれば,ニュートン力学の意味での作用反作用の法則は厳密には成り立たないということです.ニュートン力学にはフラックスという概念はありません.
ミュフ猫さんへ
重力場と慣性力場の両方が存在する場合は,それを分離するのは難しいでしょうね. 分離することが原理的に可能かどうかは.私にはよくわかりません.
TOUNさんへ
(1) 真の重力場による重力も慣性力も本物の力ではありませんが,力のようにみなしたときの働きはどちらも同じで区別できません.たとえば1個の粒子が運動しているとき,それが重力場から力を受けているのか,慣性力によって運動しているように見えるのかは区別できないと思います. 力の区別と場の区別は別の問題だと思います.
(4)「高速回転する電荷」があったとしても.観測者も一緒に高速回転するわけではないので,観測者が静止しているような慣性系で考えても不都合はないと思います.
yamaさん,返信ありがとうございます.
>重力場と慣性力場の両方が存在する場合は,それを分離するのは難しいでしょうね. >分離することが原理的に可能かどうかは.私にはよくわかりません.
なるほど.回転系への座標変換と加速系への座標変換との組み合わせで, 大域的に慣性力場をキャンセルできるとすれば,BHを除く任意の観測点で, 瞬間的にであれ,重力場だけの空間を観測できる観測者が存在しうる のかも知れないが,その観測者を探し当てる方法があるか否かはわからない, ということですね.
yama様
(1)「力のようにみなしたときの働きはどちらも同じで区別できません」ですが,先のお答えでは,「慣性力の源になる物体は存在しないので,その反作用が重力場を介して他の物体に伝わるということは起こらないでしょう」とされており,力とみなした場合にも,慣性力と重力には基本的な違いがある,と理解したのですが.
(2)重力場を「異なる質量間の「相互作用」を媒介する場」と考えることは一般相対論と矛盾しますか?異なる質量が同一の加速系の内部の非常に近く(局所)にあった場合でも重力(引力)と慣性力は区別できないのでしょうか?実験が許されれば区別できるような気がするのですが?
(3)慣性質量=重力質量という仮説と慣性力=重力という仮説は独立ではないでしょうか?前者の確認は後者を強化しますか?
ミュフ猫さんへ
そういう可能性も考えられますが,私が考えるのはもっと局所的なことです. 重力や慣性力の強さに相当するものは疑似接続係数ですが,その疑似接続係数を,真の重力場だけに関係する項と,真の重力場に無関係な項(すなわち慣性力を表す項)の和の形に表すことはできるだろうか?という点がよく分からないわけです. 真の重力場は曲率テンソルで特徴づけられますが,曲率テンソルが疑似接続係数の(座標による)1階微分を含むことを考えると,疑似接続係数が曲率テンソルで表される項を含むとは考えにくいのですが・・・.
TOUNさんへ
(1) 重力も慣性力も,すべての物体に同じ加速度をを生じるので,力のはたらきによって区別することはできません. もちろん力が生じる原因には違いがあるので,力がはたらくときの周囲の状況を観察すれば区別することができるかもしれませんが,力のはたらきかたや性質だけで区別することはできません.
(2) 矛盾しないと思いますが,電磁場と違って重力場は時空そのものであり,時空の曲がりかたで特徴づけられます. また,重力場と慣性力場は局所的には区別できませんが大域的には区別できます. しかし重力場と慣性力場の両方がある場合に,物体にはたらく力をそれぞれの力に分けることができるかどうかは疑問です.
(3)独立ではありません.もし重力質量と慣性質量が等しくなければ,具体的には物質の種類によって重力質量と慣性質量の比が異なるならば,自由落下の加速度が物体によって異なることになります.自由落下する物体に固定された座標系は局所慣性系と考えられるので,互いに加速度運動をするいろいろな局所慣性系があることになりますが,これは一般相対論とは基本的なところで矛盾します. というのは,局所慣性系は時空の曲がり方によって決まるもので,いろいろな局所慣性系があってもそれは互いに等速直線運動をしているはずであって,互いに加速度運動をする局所慣性系はありえないからです.
yamaさん,返信ありがとうございます.
>私が考えるのはもっと局所的なことです. >重力や慣性力の強さに相当するものは疑似接続係数ですが, >その疑似接続係数を,真の重力場だけに関係する項と, >真の重力場に無関係な項(すなわち慣性力を表す項) >の和の形に表すことはできるだろうか? >という点がよく分からないわけです.
なるほど.では,こういう手法はいかがでしょうか? ある観測点における疑似接続係数を導出する数式が得られたとして, その数式に含まれるであろう質量密度,運動量密度のパラメーターに 0を代入して,真の重力場に無関係な数式(すなわち慣性力を表す数式) だけを抽出することで,慣性力場の有無を判断する.
安直な発想ですが・・・.w
yama様
(1)加速系内の局所2質量 加速系内の局所に2質量があった場合,相互の位置・方向を変えた場合に変わる各質量の「重力」成分は慣性力によるものでなく「万有引力」によるものですね?こういう実験で分離することはできないのですか?
(2)慣性質量と重力質量 「慣性質量=重力質量」に関しては質問の仕方が間違っていましたので別の仕方に変えます:この仮説が確認されてもアインシュタイン理論がニュートン理論より強化されることはないのではないですか?
(4)局所的測定とニュートン世界 「1物体に関して局所的測定を1回だけ(?)行って慣性力と重力(引力)を区別することはできない」(等価原理?)ということは,ニュートン世界でも成り立ちませんか?
(5)場と系の局所性ー大域性 「重力場と慣性力場は局所的には区別できませんが大域的には区別できます.」ですが,「では,局所的にしか成り立たない現象を基礎にして理論をつくるより,グローバルに成り立つ現象を基礎とした理論を考えたほうがよいのでは」となりませんか?上は「重力場・慣性力場」を「慣性系・非慣性系」と置き換えても同じですか?また,一般相対論は「グローバルな慣性系は存在しない」と主張していますか?
ミュフ猫さんへ
慣性力の有無を調べることはできそうにも思えます. しかし慣性力の強さが定量的に求められるかどうかは疑問です. 物質が存在するときは時空が曲がり,物質がない場合は平坦になるわけですが,どちらの場合にも同じ慣性力が働くと考えていいのかどうか・・・?
TOUNさんへ
(1) 万有引力は2質点を結ぶ直線方向に働くので,座標系が等加速度並進運動をしているような場合は万有引力と慣性力を分けて求めることができそうです, しかし,座標系が回転運動をしている場合はどうでしょうか? 例として2質点が共通重心のまわりを円運動している場合を考えます. 共通重心を原点とし,円運動の回転軸と同じ回転軸を持つ回転座標系を考えます.座標系の回転の角速度と円運動の角速度が等しくなければ,この座標系で2質点は円運動をします.質量が分かっていれば,円運動の周期から質点に働く向心力が求められます. この向心力は,万有引力と慣性力(遠心力とコリオリ力)の合力ですが,質点の運動から求められるのは,この合力だけであって,万有引力と慣性力をそれぞれ別々に求めることはできないと思います.
(2)「慣性質量=重力質量」は既に実験的に確認されているので,もはや仮説とは言えないでしょう.(もっと精密な実験によって否定されることが絶対にないとは言えませんが) アインシュタイン理論が,近似としてニュートン理論を含み,ニュートン理論よりも適用範囲が広いことはご承知のことと思います.
(5) 自然現象を微分方程式で表すと数学的に扱いやすくなることが多いので微分方程式がよく用いられるわけです.微分方程式は,現象を局所的に表すものです. 重力場と慣性力場が局所的には区別できないというのは,正確な表現ではなく,曲率テンソルまで考えれば局所的に区別できます.局所的に区別できないというのは曲率が測定できないくらいの微小領域を局所的と考えているわけです. 「重力場・慣性力場」を「慣性系・非慣性系」と置き換えるということは,慣性系と非慣性系が局所的に区別できるかどうかということでしょうか? 慣性系かどうかは,慣性の法則がなりたつかどうかで判別できるので,局所的に区別できると思います,ただし,慣性系としては局所慣性系を考えることになります.大域的慣性系かどうかは局所的には判別できません. 物質のない平坦な時空なら,グローバルな慣性系が存在しますが,物質があれば時空が曲がるのでグローバルな慣性系は存在しません.
yamaさん,返信ありがとうございます.
>物質が存在するときは時空が曲がり,物質がない場合は平坦になるわけですが, >どちらの場合にも同じ慣性力が働くと考えていいのかどうか・・・?
なるほど.難しいですね.もっと,勉強して考えて見ます.m(_ _)m
yama様
毎回スピーディかつ明快なレスポンスありがとうございます.一般相対論に関する私の今までの印象はかなり変わってきています.「等価原理では万有引力理論と一般相対論は区別できない」というのは私にはbrand-newでした.
さて,前のお答えで「重力場を「異なる質量間の「相互作用」を媒介する場」と考えることは一般相対論と矛盾しない」とされましたが,慣性力場は異なる質量間の相互作用を媒介すると考えられませんね.すると,重力(場)と慣性力(場)が等価となるかどうかは,本質的には局所性とか系相対性とかとは無関係で,一質量体とその場だけを考えるか多質量体とその間の場を考えるかによるのではないでしょうか?
「2体(多体)相互作用の場合には一般相対論的重力は(慣性力と等価でなくなり???)万有引力に還元される」ということでしょうか?
真の重力も慣性力も疑似接続係数で表されるるという点では等価です. 座標変換によって任意の1点で疑似接続係数を0にすることができますが,有限の領域内のすべての点で0にできるとは限りません. 時空が平坦であればすべての点で0にできます.その場合は真の重力場は存在せず,疑似接続係数は慣性力を表すと考えられます. 時空が曲がっていれば,有限な領域全体の疑似接続係数を0にすることはできません.この場合は真の重力場が存在すると考えられます. つまり,重力と慣性力は等価ですが,重力場と慣性力場は等価でないと言ってよいのではないでしょうか. 真の重力場かどうかは,時空が曲がっているかどうかで決まるわけなので,物体同士の相互作用とは直接には関係ないでしょう. 物質は真の重力場の源ですが,重力場自身も重力場の源になります.そのために重力場の方程式は非線形になるわけです. 真の重力場を万有引力の場と言ってもよいと思いますが,「万有引力に還元される」と言う表現は適切でないように思います.
yama様
(2) 重力場は時空の歪みが伝播するわけですが,慣性力場では時空の歪みがないのでそれが伝播することもありません. また慣性力場では,疑似接続係数は座標系のとりかたによって決まるわけなので,疑似接続係数の変化が伝播することもありません.