図のようなコースをジェットコースターが走っている.空気や摩擦の抵抗はないものとする. (1)地上まで降りたときの速さはいくらか. (2)ループを廻りきるためにはスタート時点の高さはどれだけ必要か.hとrの関係を求めなさい.
図はジェットコースターが高さhから地上まで降りて,半径rの円を回転している図です.
全くわからないので段階を追って解説 よろしくお願いします.
物理初心者さん,ここはレポートや宿題の答えを教えるウェブサイトではありません.物理の疑問点を議論するサイトです.
もちろん,親切な方がいらっしゃれば,答えを教えてくれるかもしれません.でも,いずれその方も飽きます.また,物理についての議論や考察や計算等の勉強を一切しないでレポートや宿題をこなしていくのは物理初心者さんのためにもなりません.
どこまでわかったか,どこから分からないのか明確にして,分からない問題点を質問してください. 「最初から全く分かりません」は「なにも考えたくありません」とおなじです.そういう方はここでは望ましくありません.
toorisugari no Hiroさんのおっしゃる通り,全くわからないでは,どこから説明したらよいか迷うものです(笑) 私も時間に余裕があれば,答えられる範囲で答えることは可能ですが,時間に余裕が無ければ,説明をこしらえる時間もありませんので,その点はご承知置きください. ただ,これまでの私の説明で,物理初心者さんにとって得るものがあれば幸いです.(100パーセント正しい説明とは保証できませんが)
さて,この問題は,空気も摩擦もないので,エネルギー保存則が使えます. エネルギー保存則とは,ある場所AとBで,それぞれの場所での運動エネルギー+位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)の値が等しいということです. つまり,物体が運動して,最初の場所と異なる場所に移動しても,運動エネルギー+ポテンシャルエネルギーの値自体は変わらないということです.
地上を位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)がゼロのところとします. 地上から高さ h のスタート地点では,ジェットコースターの速度をゼロとします.(地上に降りてきた直後の速さを V0 とします) ジェットコースターの質量を m とします. 重力加速度の大きさを g とします.
(1) まず,スタート地点でのエネルギーの内訳は, 運動エネルギー:ゼロ ポテンシャルエネルギー:m g h エネルギーの総和:0 + m g h = m g h となります.
次に,地上に降りてきた直後のエネルギーの内訳は, 運動エネルギー:m (V0)^2 ÷ 2 ポテンシャルエネルギー:0 エネルギーの総和:m (V0)^2 ÷ 2 + 0 = m (V0)^2 ÷ 2 となります.
スタート地点と地上に降りてきた直後でエネルギーの総和は等しいので, m g h = m (V0)^2 ÷ 2===>V0 = √(2 g h) となります. これが(1)の答です.
(2) この問題は,(1)で使ったエネルギー保存則に加えて,ループを廻るときの式が必要です. その式は,コースターの遠心力と重力とループからの垂直抗力が関係する式です.
ループからの垂直抗力は,コースターの遠心力(それはコースターの速さに依存する)に応じて,場所(言い換えるとループに入ってからの時間)によって変化するので注意が必要です. なぜループに入ってからの時間によって変化するかというと,ループ内でコースターのエネルギー保存則を考えるとわかります. 例えば,ループの最高点(地上から 2 r の高さ)では, m (V0)^2 ÷ 2 = m (V)^2 ÷ 2 + m g (2 r) というエネルギー保存の式が成り立ちます. 左辺は,ループに入った直後の地上での場合で,そのときのコースターの速さを V0 としています. 右辺は,ループを丁度半周した最高点での場合で,そのときのコースターの速さを V としています. 当然のことながら,m g (2 r) の違いがあるので,V0 と V は異なり,明らかに V0 > V の関係になります. このように,ループ内の場所によってコースターの速さが変化しますので,ループに入ってからは,ある基準からの角度θを使うことで考えていきます.
その角度の基準は,ループを4分の1周したところにするのが最適です. その場所の地上からの高さ H は, H = H0 = r です. その場所から角度θ(0 < θ <π ÷ 2)上に上がった場所での地上からの高さ H は, H = H0 + r sinθ = r + r sinθ です. θ = π ÷ 2 では(つまり,ループの最高点では), H = H0 + r = r + r = 2 r となって,丁度都合が良くなります.
以上のように角度θの測り方を決めたとき,コースターがループを廻るときの式を考えます. θのときのコースターの速さを V(θ) とします. このときのコースターの遠心力 F(θ)は, F(θ) = m { V(θ) }^2 ÷ r と与えられます. コースターに働く重力は,鉛直下向きに m g ですが, 遠心力の方向に沿った重力の成分は, m g sinθ となります. コースターはループを廻る間,ループを押しつけますので,逆にループからは垂直抗力 N(θ) を受けます. その方向は,コースターの遠心力の方向に沿っていて,遠心力と逆向きです. コースターはループ上にありますので,遠心力・重力・垂直抗力の力の関係は,力の向きを考えると, F(θ) = m g sinθ + N(θ) となります. つまり, N((θ) = F(θ) - m g sinθ = m { V(θ) }^2 ÷ r - m g sinθ と書け,垂直抗力は遠心力に依存(言い換えるとコースターの速さに依存)します.
さて,コースターのループを廻るときの勢い(速さ)が小さいと,コースターはループを上れないか,ループの途中から外れて地上に落下してしまいます. ループ内でコースターの勢いが一番小さくなるのは,エネルギー保存則から明らかなように,ループの最高点です. そこでは遠心力も一番小さくなりますが,かろうじて重力(そこでの重力の遠心力方向の成分は m g)とだけでもつり合う勢いを持っていれば,なんとかループは廻りきれます. つまり,コースターがループを廻りきれるための条件は,最高点で垂直抗力 N(θ)が, N(θ) ≧ 0 を満たせば良いことになります. 最高点を乗り切れば,エネルギー保存則からコースターの勢いは再び増しますので,垂直抗力も再び大きくなります.
以上で準備が整いました. コースターがループを廻りきる必要最低限の速さをループの最高点で持っているためには, ループの最高点(θ = π ÷ 2)で,垂直抗力がゼロの場合で, 0 = F(θ = π ÷ 2) - m g = m { V(θ = π ÷ 2) }^2 ÷ r - m g より, V(θ = π ÷ 2) = √(g r) となります.
よって,この場合のループの最高点でのコースターの持つエネルギーは, 運動エネルギー:m { V(θ = π ÷ 2) }^2 ÷ 2 = m { √(g r) }^2 ÷ 2 = m g r ÷ 2 ポテンシャルエネルギー:m g (2 r) = 2 m g r エネルギーの総和:m g r ÷ 2 + 2 m g r = m g r (5 ÷ 2) となります. これが,高さ h の場所から降りてきて,ループに入った直後のコースターのエネルギーと等しいわけで,そのときのコースターの速さ V0 は(1)で求めていて, 運動エネルギー:m (V0)^2 ÷ 2 = m {√(2 g h)}^2 ÷ 2 = m g h ポテンシャルエネルギー:ゼロ エネルギーの総和:m g h + 0 = m g h より, m g r (5 ÷ 2) = m g h===>5 r = 2 h となります. これは必要最低限の条件です.
余裕を持ってループを廻りきる場合も含めて不等式で表せば, 2 h ≧ 5 r となります. これが(2)の答です.
このように設計して,ジェットコースターは安全に遊べるようになっているわけです.