遠隔作用,近接作用

遠隔作用,近接作用

Electra さんの書込 (2009/06/05(Fri) 18:52)

はじめまして,Electraといいます. 普通にくらす31才の男です.物理は中学まで習いました. 自分の日常に物理が関係してるのではないかという気がしながら今まできたんですが, やっぱり実際にやってみなくてはと思い,このサイトに来ました. 初心者なのでなにがなんだかわかりませんが,よろしくおねがいします.

ところで質問なのですが,このサイトの「遠隔作用,近接作用」のところで, >もしクーロン力が遠隔作用の力であるのな らば電場も磁場も存在しないことになり, >電磁波は存在しないことになります.

という部分があります.どういうことなのかがわかりません. どなたか教えていただけますか?

Re: 遠隔作用,近接作用

Yokkun さんのレス (2009/06/05(Fri) 20:45)

Electraさん,こんばんは.

うーん.なかなか難しい問題ですが,私なりの理解をちょっとお話します. ここで「遠隔作用」というのは,ある物体の存在による作用が瞬時に(所要時間ゼロで)離れた場所にある物体に影響を及ぼすということです.かつて,重力(万有引力)も電気力も磁力も,遠隔作用と考えられて,離れていても瞬時にその影響が伝わる,ある意味神秘的な力とされていたのです.

しかし,ファラデーやマクスウェル,アインシュタイン等を経て現代の物理学では,電気力,磁力はもとより,重力も「近接作用」と考えるべきであることが明らかになってきました.近接作用の要点は次の2点にあると思います.

  1. 作用の源(電荷,電流,質量)の存在が,まわりの空間にある種のひずみを作り出し,そのひずみが空間を伝わっていく.
  2. したがって,その作用が他の物体に伝わるには時間がかかる.真空中ではその伝播速度は光速に等しい.

空間のひずみのイメージは,ファラデーの電気力線というアイディアに始まっています.磁石のまわりの鉄粉がつくる磁力線模様は写真などでごらんになったこともあるでしょう?なお,重力によるひずみは時間をも巻き込んでいわゆる「時空」のひずみとして表現されます.

大切なことは,これらの空間のひずみというのが単なるイメージにとどまらず,エネルギーをともなった「実体」であるという点です.光や電波などの電磁波は,電場と磁場が相互につくりあって空間の電気的磁気的なひずみの波として伝わっていくというのがその正体で,近接作用の考えがなければ説明がつかないのだと思います.

Re: 遠隔作用,近接作用

Electra さんのレス (2009/06/06(Sat) 22:22)

Yokkunさん

あがとうございます. 近接,遠隔という考え方は距離ではなく(つまりリモコン=remotecontrolも近接作用?), 実体を持った相互作用があるかどうかということみたいですね. でもって,実体のある相互作用が近接作用ということになるのでしょうか. 逆に実体のない作用,遠隔作用と呼ばれる物があるのでしょうか.

物理を始めたばかりなので用語使い方や理解がうまく言ってる感じがしませんが, 引き続きがんばってみます.ご返事ありがとうございました!

Electra

Re: 遠隔作用,近接作用

なんとなく さんのレス (2009/06/07(Sun) 01:55)

Electraさん,はじめまして,なんとなくです.

Yokkunさんの説明はオーソドクスと言えると思いますが,私は少し違う見方をしています.(時)空間的に離れた2点間に力(作用といってもいいですが)が働く時,その(中)間に何等変化(影響)が無い場合は「遠隔作用」,そうでない場合は「近接作用」と捉えています.この意味では「遠隔作用」にあたる物理現象は「量子エンタングルメント」以外には思いつきませんが,通常「遠隔作用」とは言わず,「非局所性」と呼ばれます.この点,「近接作用」は「局所性」というものの現れで,電磁場,重力場などを一般化した「場」の局所性に基づいています. どの中間においても「場」の変化が将棋倒しのように次々連続していくわけです. この「場」とは比喩的ですが「真空」のある状態です.その局所性は速度とは直接関係無く,極論を言えば空間的距離でもありません.しかし相対論により「場」の変化は光速度で制限されています.そして「場」は実体ですがその媒体は必ずしも観測可能ではなく,あたかも時間や空間そのものが観測できないのと似ています. たとえば,磁石のN極とS極の間には磁場がありますが,磁場は観測できてもそれを伝える(筈の)光子は実体として観測できません.しかも磁場は磁極があればその周囲に出来ますが,静磁場(のみで)はエネルギーを運びません.重力場も質量があるだけではエネルギーを運びません.もしそうなら,磁極や質量は徐々にそのエネルギーを失い,いつしか無くなってしまいます.しかしこれらの「場」は加速をしたり,変形することで実体の電磁波や重力波となってエネルギーを放出します. この不思議な「場」の本質は今でも解明されたとは言えず,その意味で「近接作用」と「遠隔作用」の説明は難しく,本当の意味がわかるのは将来に待たねばならないのかも知れません.

Re: 遠隔作用,近接作用

Electra さんのレス (2009/06/08(Mon) 01:22)

なんとなくさん

ありがとうございます. 作用とは二つの物が相互に与える影響という見方と違い, 作用とはその場を伝わる力(?)にその本質があるということのようですね. >「場」の変化が将棋倒しのように次々連続していくわけです. というのは分かりやすい説明でした.

ところで,新しい疑問がわいてきました. >この「場」とは比喩的ですが「真空」のある状態です. という説明ですが,今回の説明上では場は真空であると理解しました. 真空の状態とは原子が一切ない状態と理解しているのですが, この状態でも力を伝える”場”というのは成立するのでしょうか? だとすれば,重力や電磁力やそれをを伝える物は原子の中にあるもの以外のものということになるんでしょうか? かなりまどろこしい言い方になってしまいました. つまり,物質と力(エネルギー?)は同じ原子や素粒子というレベルでおこってる事なのでしょうか? 途方もなく基本的な質問かもしれませんが,どなたかよろしくお願いします.

Re: 遠隔作用,近接作用

なんとなく さんのレス (2009/06/08(Mon) 11:30)

私の拙い説明を的確に捉えておられると思います.本質を理解するのにはやはり言葉だけでは嘘になるのですが(つまり比喩的です),できるだけ書いてみますね.

現代物理学の”解釈”では,ご存知のように物質は原子から出来ています.これはさらに分類すると,光子,電子,陽子,中性子,ニュートリノからなりますが,さらに陽子や中性子はクオークと呼ばれる素粒子から出来てい(ると思われてい)ます. 物質は確かに存在し,観測もできます(クオークは特別の仕掛けにより,単独では観測できませんが).この素粒子のレベルで分類すると,ある分類法では物質(を作る)粒子と物質間の力を担う,場の伝達粒子に分けられます.π,ρ,ω,K,B中間子,光子,W,Zボソン,グルーオン等がありますが,これらは力を伝達するときには姿を現さず(観測できず),エネルギーを十分に与えられて初めて姿を現します.真空とはこの物質が何もない空間だと思われてきましたが,現代の”真空”は物質と不可分であり,語弊を恐れずに言えば,全ての物質の母体でもあります. 例えば真空中の2電荷は互いに力を及ぼしますが,それはそれらの間の真空がもはや”何もない”状態ではなく,(仮想)光子を交換している”状態”に変化しています.今これらの力はすべて四つの力で説明されることが分かっていますが,宇宙開闢時にはただ一つの力で統一されていた,とみるのが統一場の理論です. 話をまとめると,力の交換(作用)は仮想的にある種の伝達粒子(の交換)によって担われているが,それは真空の状態変化と捉えることもできる.そしてその状態変化の伝わる速度は光速度を越えられない.

最後にもの凄く比喩的ですが,私に中の素イメージは次のようです. 全空間には無数のつらなった歯車が噛み合っている.ある歯車が回転し始めるとそれに伴い次々と歯車が回転し始める.この最初の歯車が物質であるとして,途中の歯車は質量0のため力(エネルギー)を必要としないで回転を伝えていく. 何処かに物質の歯車があると,それは質量があるため,初めてその2つの歯車間には力が必要となり,力が伝達されたように見える.この中間の質量のない歯車が真空のイメージであることはいうまでもありません.

Re: 遠隔作用,近接作用

transfer さんのレス (2009/06/08(Mon) 13:02)

なんとなくさん,初めまして.

> これらは力を伝達するときには姿を現さず(観測できず),エネルギーを十分に与えられて初めて姿を現します.

エネルギーを十分に与えられて初めて姿を現すというのは,加速器や高エネルギーの宇宙線などでは検出されるという意味ですか?

Re: 遠隔作用,近接作用

なんとなく さんのレス (2009/06/08(Mon) 23:03)

transferさん,初めまして,なんとなくです.

間違いではないですが,もっと日常レベルのエネルギーでも十分お目に掛かる現象です.例えば赤熱したタングステンは赤外線から可視光までの光子を放射しますが,タングステンの中に光子が捕まっていて,それが出てくるのでしょうか.これは次のような描写が近いと思います.タングステンなどの金属中には電子が存在します.この電子は幾つかのエネルギー層(準位)に分かれていますが,通電するとこの電子の準位が高くなり,いわゆる励起した状態になります.そして励起した電子が下のレベルへ再度落ちるときに電磁波(光子)を放出します.この光子は一体どこに潜んでいたのでしょう.また比喩的なのですが,電子は電荷を持つため,その周りに光子の雲を場として持っています.ちょうど原子が原子核の周りに電子雲を持つようにですね.この場は真空の状態と言い換え,それが光子を創生するという見方もできます. この光子場は観測できませんが,電子の準位が落ちるときにそのポテンシャルエネルギーを使って実体化したと見なせます.そのとき光子は観測できます. あらゆる日常にありふれた現象ですが,これはもっとはっきり,制動輻射という物理現象から明らかになります.それは電子を加速すると,将に上の原理で電磁波を放射します.電子は周りに静電場という「場」を持ちますが,その(仮想)光子が加速によって”振り落とされ,エネルギーを得た”と見ることができます.電子はこの放射によってエネルギーの一部を失います.しかし,「場」と物質粒子には本来それほど違いがないのかも知れません.

Re: 遠隔作用,近接作用

transfer さんのレス (2009/06/09(Tue) 02:32)

なんとなくさん,ありがとうございます.

まだよくわからない点も多々あるのですが,ごくごく基礎的なところの確認も含め,これからも少しずつお訊きしたいと思います. よろしくお願いいたします.

素粒子物理というか場の量子論的考えというのは,「場」を量子化して「粒子」と見なすのでしたよね? (1) この「粒子」は量子力学でいうところの「量子」で,「波と粒子」の二重性を持つもので間違いありませんか?

今までのご説明の中でも何度か出てきておりますが,「観測できない」ものと「観測できる」ものがあるようです. (2) 光子の場合も含め,「(仮想)粒子」と「(実)粒子」があると思いますが,その違いはどのようなものでしょう?

Re: 遠隔作用,近接作用

なんとなく さんのレス (2009/06/09(Tue) 10:02)

こんにちは. 比喩に比喩を重ねると,逆に実体から離れてしまう懸念があります.以前も触れたように言葉での説明には大きな限界があります.それを御承知下さい.

(1)はその通り,というかこの世界の全ての物質は「量子」から成る,つまり量子でないものはありません.

(2)は難しい質問です.最新の超弦理論ではまさにそれを解明しようとしている,という見方も出来ます.そこでちょっと歴史的観点から見てみますが,私にはそれ以上の説明は無理です. そもそもは湯川博士が核子(陽子,中性子)間に働く強い力の説明(起因)を考えられたとき,量子力学の教えるところによると,核子の波動関数がそれ自体広がりを持つわけですが,その相互作用に交換力が存在し,それがエネルギーのより低い状態(つまり実現しやすい)であること,そしてそれはその相互作用「の場」を量子化した場合,ある質量の未知粒子に対応することを予言しました.ご存知のように当初はそれがμ粒子だと思われていたのですが,のちにπオンであることが分かりました.しかし誰もそれまでπオンを見たひと(と言っても目で見えるわけではないですが)は居なかったわけです.しかし実際に核子は強く結合されている,これは量子力学特有の現象であり古典力学に対応する現象はありません.その意味で日常(古典)の言葉で説明することは本来不可能です. つまり,核子はそれを纏うπオンの場で包まれており,それがπオンの交換で強い束縛力を生んでいるわけですが,実際に実体のπオンが飛んで行き来しているという古典的描像ではありません.これは言い換えると真空がπオンの「場」として存在しているとも言えます.しかし私達が「実体」と呼ぶとき,それは物理学では「物理的状態」とか「観測可能」と言いますが,実体ではなくとも実際に存在している,という意味では実在には変わりありません.それを仮想状態と考えれば良いでしょう.少し専門的になりますが,私達は正エネルギーの物質しか観測できません.そしてそれは量子力学的には「質量殻上」ですが,そうでなくとも仮想(この言葉も語弊がありますが)粒子として存在できます.それで十分なエネルギーを与えられ質量殻上となった実粒子に転換し,観測できるようになると思われます.

Re: 遠隔作用,近接作用

transfer さんのレス (2009/06/09(Tue) 22:46)

なんとなくさん,ありがとうございます. 質量殻というのは初めて聞く言葉です,というぐらいに超初心者です.

先の質問で,「(仮想)粒子」と「(実)粒子」の違いについて,「それ以上の説明は無理です」と言われてしまったのですが,光子については,次のことがあります. 相対論においては,光子の4元運動量のミンコフスキー的内積はゼロですよね? (光子以外の通常の粒子なら,4元運動量のミンコフスキー的内積は静止質量の2乗を意味し,光子の場合はゼロになる) しかしながら,量子電磁力学における力の担い手としての「(仮想)光子」についてはゼロにはならなず,「(実)光子」ではない,と本で見かけたのですが,正直なところ,だったら何故に「光子」と呼ぶのか?というのがあります. これについては,どのように理解したらよいのでしょうか? 恐らく他の「(仮想)粒子」も同様でしょうが,「(仮想)粒子」は,よく不確定性関係でもって,その大まかな質量が見積もられますね.

Re: 遠隔作用,近接作用

なんとなく さんのレス (2009/06/10(Wed) 01:43)

>transferさん その質問はここで説明できるレベルを越える(笑.冗談です). 元のスレ主さんの質問から遠く離れすぎるので,直接な質問のみに答えますね.質量殻上,英語でon-mass-shellはまさにtransferさんの言われていることを物理用語で言い換えただけです.初歩的な概念とは言えず,transferさんが初心者ということでは無いでしょう. 前にも少し触れましたが,どちらも「実在」の光子だが,存在形態の違いにより僅かな違いがあります.観測できる”物理的状態”の光子を実光子と呼んでいますが,仮想光子とは想像上の何かではなく,”非物理的状態”の実在する光子と考えた方が良いでしょう.量子力学ではそのような状態も許されるのです.不確定性もその現れと言えるかも知れません.丁度ディラックの海で負エネルギーの電子の空いた穴が正エネルギーの陽電子になったごとく,実粒子になることも有り得ます.蛇足ですが,Q.E.Dではこの非物理的状態もすべて足し上げないと,実際の実験結果に合わないことも,幻ではないことの傍証と言えます.

Re: 遠隔作用,近接作用

transfer さんのレス (2009/06/10(Wed) 21:43)

なんとなくさん,ありがとうございます. (仮想)では誤解を招きやすいので,他の言葉の方がよいというような記述を本で見かけたことがあります. 量子論はいつまでたっても,いっこうに本当にわかった気になりません.というより,理論自体も完成品ではありませんからね. これ以上は質問も議論もできるレベルにありませんので,私からはこれにて終了させて頂きます. ありがとうございました.

Re: 遠隔作用,近接作用

なんとなく さんのレス (2009/06/11(Thu) 11:06)

>transferさん

誤解の無いように付け加えておきますが,量子論はその枠組みでは完成品と言えます.丁度古典力学が相対論からみたら不十分でも,それ自体は全く正しい,完成品なのです.その意味で,量子論は廃れず,さらに大きな包括理論に統合されて行くはずです. ところで,量子論は将に今,日常生活の現象にナノ技術を通して実体化してきています.これからは量子論が日用品に目の当たりで見られ,常識として理解できる時代になります.面白いですね.

ではまたの機会に.