エントロピー

エントロピー

じょけr さんの書込 (2008/12/08(Mon) 20:24)

エントロピーについていろいろな本を読みましたが, 理解できません.クラウジウス積分が出てきたあたりから, わからなくなりました. Qは状態量ではないのに,それをTで割ることで状態量になるのが 納得いきません. また,この物理量の有用性がわかりません

Re: エントロピー

mNeji さんのレス (2008/12/08(Mon) 23:28)

丁度,ある本で1階1次の微分方程式;

P(x,y)\mathrm{d}x+Q(x,y)\mathrm{d}y &=0 &(1)

の解を求める話を拝見したところでした.

もし,左辺がある関数 F(x,y) の全微分で表せたとすれば,

\mathrm{d}F(x,y) &= P(x,y)\mathrm{d}x+Q(x,y)\mathrm{d}y &(2)

ですから,式(1)より,微分方程式の解は,

\mathrm{d}F(x,y) &= 0\\\therefore \\F(x,y) &= \text{Constant}

となります.

一方,関数の全微分を展開して,

\mathrm{d}F(x,y) = \frac{\partial F(x,y)}{\partial x}\mathrm{d}x +\frac{\partial F(x,y)}{\partial y}\mathrm{d}y

となるので,式(2)と比較して,

P(x,y) &= \frac{\partial F(x,y)}{\partial x} &(3a)\\Q(x,y) &= \frac{\partial F(x,y)}{\partial y} &(3b)

という関係が成り立つ必要がある.

式(3a)をyで偏微分し,式(3b)をxで偏微分すると,偏微分の順序を交換してもよいことから,

\frac{\partial P(x,y)}{\partial y} &= \frac{\partial Q(x,y)}{\partial x} &(4)

の関係が積分可能条件となる.

他方,式(4)が成立しない場合でも,微分方程式(1)にある関数 \mu (x,y) を掛ける事で,

\mu(x,y) [P(x,y)\mathrm{d}x+Q(x,y)\mathrm{d}y] = \mathrm{d}G(x,y) =0  &(5)

と出来る場合がある.このとき, \mu (x,y) を積分因子(integrating factor)と呼ばれる.式(5)が成立する必要十分条件は,式(4)と同様に,積分可能条件,

\frac{\partial \mu(x,y)P(x,y)}{\partial y} &= \frac{\partial \mu(x,y)Q(x,y)}{\partial x} &(6)

となる.

式(5)の右辺・関数Gの全微分から,

\mathrm{d}G(x,y) &= \frac{\partial G(x,y)}{\partial x}\mathrm{d}x +\frac{\partial G(x,y)}{\partial y}\mathrm{d}y &= 0 &\qquad(7)

と,式(5)の左辺を比較して,積分因子は,

\mu(x,y) &= \frac{1}{P(x,y)}\frac{\partial G(x,y)}{\partial x} &(8a)\\&= \frac{1}{Q(x,y)}\frac{\partial G(x,y)}{\partial y} &(8b)

となる....そうです.

出典:下記のpp44-45. 理工系の基礎数学10 微分・位相幾何 和達 三樹・著 岩波書店,1996 ISBN4-00-007980-8

Re: エントロピー

toorisugari no Hiro さんのレス (2008/12/10(Wed) 19:16)

じょけrさんが求める回答ではないのですが,積分因子の話が出たので,その関連の数学の話.

ある1形式 \omega が適当な積分因子で割ることで全微分になるとは,

\omega = \lambda \mathrm{d}\mu

という形である事は自明ですね.上の形式をcomplex lamellar(複層?)といいます. このとき,

\exists \lambda, \exists \mu \text{~s.t.~} \omega = \lambda \mathrm{d}\mu~~&\Leftrightarrow~~\omega \wedge \mathrm{d}\omega (=(\lambda \mathrm{d}\mu) \wedge (\mathrm{d}\lambda \wedge \mathrm{d}\mu))= 0

が成り立ちます. # 通常の3次元ベクトル解析の言葉で書くと

\exists \lambda, \exists \mu \text{~s.t.~} \bm{\omega} = \lambda \nabla \mu~~&\Leftrightarrow~~\bm{\omega} \cdot (\nabla \times \bm{\omega}) (= (\lambda \nabla \mu)\cdot (\nabla\lambda \times \nabla \mu))=0

です.

第一法則から

Q = \mathrm{d}U + P\mathrm{d}V

ですので

Q = T\mathrm{d}S

となる S,T が存在するためには

0 &= Q \wedge \mathrm{d}Q\\&= (\mathrm{d}U + P\mathrm{d}V) \wedge \mathrm{d}(\mathrm{d}U + P\mathrm{d}V)\\&= (\mathrm{d}U + P\mathrm{d}V) \wedge (\mathrm{d}P\wedge\mathrm{d}V)\\&= \mathrm{d}U \wedge (\mathrm{d}P\wedge\mathrm{d}V)

である必要があり,これは UPV の関数であるということです.

質量のやりとりのない準静可逆過程において,その空間は2次元であり,圧力と体積を指定すれば状態が決まります(カルノーサイクルのグラフの縦軸と横軸はそれぞれ圧力と体積ですね).故に,

Q = T\mathrm{d}S

となる S,T が存在します.

# なお,2次元の任意の1形式 a(x,y)\mathrm{d}x+b(x,y)\mathrm{d}y (or a(x,y)\bm{e}_x+b(x,y)\bm{e}_y )はcomplex lamellarであることは容易に分かりますね.