初めましてKANです. アボガドロ数を決定する実験的方法がありますかね? くだらない質問かもしれませんが,友達が「アドボガドロ数を決定する実験でなんかいいのある」と聞かれましたが,一つも思いつきませんでした. それからそのことが頭から離れません.どうか私の疑問を晴らしていただけませんか.よろしくお願いします.
KANさん
下らなくはないですよ. そういうことを考えずにただ数字を丸暗記している人が多いと思います.
1molで6×10^(23)個です. この6を小数点下4桁とか5桁で書いている人をよく見ます.普通の場面では意味のない数字です.10^(23)というとんでもなく大きな数字が大事なのです.
アボガドロ数の測定は難しいです. アボガドロ数の決定というのがいつごろのことか調べられたことはありますか.
アボガドロがアボガドロ数を決めたと思っている人も多いです.私も「見ることも触ることも出来ない分子の数をそんな昔にどうやって数えたのですか」という質問をよく受けました.
年表で調べると 1811年分子説の提唱(アボガドロ) 1908年分子の実在性の証明(ぺラン) です.
アボガドロ数の決定が分子の実在証明に使われているのです. ぺランが根拠にしている測定値は有効数字1桁のものです. 方法によってばらつきがありました. 5.・・・×10^(23)〜6.・・・×10^(23) と幅があります.でもぺランは「方法が違ってもこういう数字が決まるのはその理論のものとになっている分子が確かの存在するからである」という主張をしています.ぺラン自身はアインシュタインの理論を使ってコロイドの沈降平衡からアボガドロ数を測定しています.
それまでは「分子」は一部の人しか認めていない仮説でした.高校の教科書では現在「アボガドロの法則」と書かれていますが少し前までは「アボガドロの(分子)仮説」と書かれていました.(ここのサイトに解答を寄せられている皆様は多分「仮説」と書かれた教科書で習っていると思います.)
>1つも思いつきません
当然だと思います.教科書にはそういうことが書いてありません.先生もたいていそういう問題意識はありません.「覚えなさい!」とだけ言う人がほとんどです.
高等学校のレベルでは「単分子膜の厚みの測定」からアボガドロ数を決定するという実験がよくやられています.これは素朴にやると10^(23)の指数部分がずれるかも知れないという精度です.でも10^(23)というとんでもなく大きな数字がどうやってわかるのかという手がかりになります.分子の大きさが(1/一億)cm付近にあるということを知る方法なのです. ネットの記事で精度を上げるために分子の形に対する情報を与えてしまっているのを見ました.分子がどれだけ小さいかということを初めて知る実験なのに分子の縦横比が分かっているとするのは疑問です.数字を合わせることだけに目が行ってしまっている実験になってしまいます.
教科書には固体の結晶構造が載っています.3種類の立方格子と六方最密格子です.「化学の教科書でなぜ?」と思うところです.固体物理の入門のように取り扱ってしまうというへんな事も起こってしまいます.
固体とはどういうものかということで扱うのであれば成分粒子が規則正しく配列したものと言うことだけでいいはずです.具体的な結晶形までは必要ないはずです.
結晶構造が化学の教科書の最初の方で取り上げられているのは分子や原子の大きさを決める方法だからです.原子半径という言葉が出てきますが原子と原子がどこまで近づくことができるかを調べることでしか大きさきを決めることは出来ません.イオン半径,ファンデルワールス半径も同様です.
結晶形と格子間隔はX線回折という方法で決めます. 試料として用いた元素の原子量,密度はわかっているはずですからこれは1molの個数を出す方法にもなっているのです. (入試問題ではこれが逆転してしまっています.アボガドロ数は皆が知っている数字なので「アボガドロ数を決める」問題として出すことが出来ないのです.だから「密度を求めよ」とか「原子量を求めよ」というような変な問題になるのです.)
ぺランの「原子」という本が岩波文庫からでています.興味があれば読んでみてください.上に書いたことも載っています. ぺランは1926年にこの功績でノーベル賞を貰っています.
KANさん,初めまして.
中学生の時に,「塩水を電気分解して,刺激臭いの強いガス」が出て来て驚いた事が有ります.その時,使っていたクリップの周辺が黒緑色になって,怖くなりました.その後,化学で電気分解を知るまで「?」でいました.
さて,私自身は,電気分解を習って,「どこにもある塩水」が分解により「猛毒な塩素ガス」にあるのが信じられませんでした.さらに,一定量の電気量で分解される気体の体積が一定の圧力と温度のもとでは同じになる,というのも驚いたものです.
と同時に,当時は「電子の電荷が一定値」であることが直ぐに納得出来ずにいたのですが.でも,仮に一個の電子電荷が一定であるとすれば,電気分解の結果,「一定量の体積」と「一定量の電気量」,一定量の「一個の電子電荷」から逆に「一個のガス分子の重さ」が算出できるととなり,とても嬉しく感じたのを思い出します.
KANさん
mNejiさんのレスを見て1つ思い出しました.
電気分解の法則から 一価の陽イオン1モルの電気量(これをファラデー定数と言います)は F=9.65×10^(4)Cであることはわかります.
電子1つの電荷はミリカンによって1909年に求められています. e=1.6×10^(-19)C です.
イオンの電荷と電子の電荷とが同じものであるということがわかっていると アボガドロ数は上の2つの量から計算することが出来ます. NA=F/e です. ファラデー定数は高等学校の化学の教科書の電気分解のところに載っています. 電気素量は物理定数の1つですから物理の本には載っています.化学の教科書では多分付録のところに載っているでしょう.
ただこれは現在の立場からのものです.
イオンの実体がどういうものかについての理解は20世紀の初めの段階ではまだ十分でなかったと思われますので電気素量が求められればアボガドロ数が求められるというものではなかっただろうと思います. 分子,イオン,電子が互いにどういう関係のものであるのか,電気分解で移動する電気量とこれ等の関係はどういうものかというところがきちんと整理されて理解されるまでは無理なはずです.
当時は原子の構造もまだよく分かっていない,量子力学の理論がどんどん出てきている最中という時期です.次々と新しい物質や新しい性質が発見されている時です. 酸化・還元反応を電子の移動で考えるというのが定着するのも20世紀後半のことだろうと思います.電気分解は酸化・還元反応であるということが理解されるのにもかなりの時間がかかっているはずです.
送れて本当に本当にすいませんでした. 聞いといて遅れるなんて無いことですが,本当にすいませんでした.反省しています.誠にすいませんでした. 私の疑問にこんなにも親切に詳細に答えてくれて komagatakeさん,mNejiさん本当にありがとうございました. komagatakeさんの解説は本当にわかりやすくためになりました.勉強になります. 私はアボガドロ数というものをあまりつかめないでいましたが,納得することができました.ありがとうございます. mNejiさん,的確にpointをついてくれて分かりやすかったです. お二人とも分かりやすく私の疑問を解決していただけまして,ありがとうございました.