平均場近似?

平均場近似?

メントス(4年) さんの書込 (2008/07/20(Sun) 12:11)

大学院試験の過去問題です. 今回は分からなかった部分があるわけではないのですが,自信がないので,添削をお願いできますか?

N個のイジングスピンからなる系を考える.スピンiとスピンjの間の相互作用を J_{ij}=J/N としたとき,ハミルトニアンは H=-\frac{1}{2}\Sigma_{i} \Sigma_{j}J_{ij}S_{i}S_{j} (S=+1,-1) である.磁化を m=\frac{1}{N}\Sigma_{i}S_{i} と定義する. 1,mが与えられたとして,1スピンあたりのエネルギーを求めよ. 2,1スピンあたりのエントロピーを求めよ. 3,自由エネルギーを最小にするmの方程式を求めよ. というものです.

最初,問題文が把握できなくて面食らっていたのですが 定義された磁化mというのは,N個のスピンを平均したもの(係数を考えずに無次元化した平均磁化),という解釈で合っていますか? それで進めていくと U=H/N=-\frac{1}{2}Jm^{2} 状態数は W=\frac{N!}{N_{+}!(N-N_{+})!} また,全スピンの和は Nm=(S_{+}N_{+}+S_{-}N_{-})=N_{+}-N_{-}=2N_{+}-N だから mを使って状態数を表すと, W=\frac{N!}{(N/2(1+m))!(N/2(1-m))!} となって エントロピーはスターリングの公式を使い s/N=k(logN-(\frac{1}{2}(1+m))log(\frac{N}{2}(1+m))-(\frac{1}{2}(1-m))log(\frac{N}{2}(1-m)) \frac{\partial F}{\partial m}=0 より m=tanh\frac{Jm}{kT} となりました. \frac{Jm}{kT}=x として,グラフを書くと, T=\frac{J}{k} で相転移すると思います.

これは平均場近似の問題だと思うのですが,問題集などで類題をみると近接点の数zというのが与えられています. この問題には与えられていませんが,何次元の問題なのでしょうか?数式を計算していくうちに問題は解けましたが,いまいちイメージできないです.

追記 ウィキペディアで調べたところ,磁性相転移温度は T=zJ/k となるようなので,今の場合はz=1? 隣接点の数が1というのはおかしいですね・・・.

Re: 平均場近似?

nomercy さんのレス (2008/07/20(Sun) 18:46)

>ウィキペディアで調べたところ,磁性相転移温度はとなるようなので,今の場合はz=1?

結合定数に1/2を付けたり,付けなかったりするのでまずはそこを確認してみて下さい.

Re: 平均場近似?

メントス(4年) さんのレス (2008/07/20(Sun) 20:42)

ご指摘のとおり,ウィキぺディアの場合は結合定数をJで定義していました. 今はJ→J/2ですから,z=2ということになりますね. つまり,一次元の問題ということでしょうか?

Re: 平均場近似?

スチーム さんのレス (2008/07/20(Sun) 21:14)

1次元イジングモデルでは相転移しないといわれています. どこかに間違いがないでしょうか.

Re: 平均場近似?

nomercy さんのレス (2008/07/20(Sun) 21:39)

>つまり,一次元の問題ということでしょうか?

その通りです.

>1次元イジングモデルでは相転移しないといわれています.

厳密にはそうですが, 平均場近似では相転移が生じます.

Re: 平均場近似?

メントス(4年) さんのレス (2008/07/21(Mon) 00:37)

ありがとうございます. スピンが一直線に並んでいて,隣同士だけ相互作用しあうという感じですね. 計算の途中過程に変なところはないでしょうか?たぶん,答えに行き着いたので大丈夫だと思いますが.

ところで,私は「統計力学の解法=分配関数」と思っていたのですが,この自由エネルギーを最小にする,というのもメジャーな方法なのでしょうか? この問題を分配関数で解いてみました.

一スピンあたりの分配関数は z=\Sigma e^{-JmS_{i}/kT}=cosh(\frac{Jm}{kT}) となり 平均磁化mは m=<S_{i}>=\frac{\Sigma S_{i}e^{-JmS_{i}/kT}}{\Sigma e^{-JmS_{i}/kT}} =\frac{\partial logz}{\partial Jm/kT} =tanh(\frac{Jm}{kT})

出てきた方程式は一致しましたが,mはもう分かってるのに,またmを計算するみたいで,少し違和感があります. それと,状態数のことを考えずに1スピンだけの分配関数から求められたところも,正しい議論なのか?と少し違和感を感じます.どうでしょうか?

Re: 平均場近似?

nomercy さんのレス (2008/07/21(Mon) 01:00)

>統計力学の解法=分配関数

分配関数が分かれば熱力学量(静的な量)が計算できます.

>自由エネルギーを最小

一般に,自由エネルギーが最小になる状態が実現されます. この条件をあらわに使う手法も幾つかあります.(変分法)

今の,平均場近似の場合には, 磁性のある解と非磁性解の二つがあったと思いますが, どちらが実現するかというのを判断するのに 自由エネルギーを考察したわけです.

>出てきた方程式は一致しましたが,mはもう分かってるのに,またmを計算するみたいで,少し違和感があります. >それと,状態数のことを考えずに1スピンだけの分配関数から求められたところも,正しい議論なのか?と少し違和感を感じます.どうでしょうか?

この辺が平均場近似のうまいところなわけです.

Re: 平均場近似?

メントス(4年) さんのレス (2008/07/21(Mon) 21:37)

変分法というのは,本当にいろんなところで出てきますね. ありがとうございました.