こんばんは. 川村「電磁気学」(岩波)の 131〜132 ページに,以下の記述がありました.
完全導体とは,電気抵抗が 0 の導体のことである. たとえば,完全導体で作った導線があったとしよう. … この導線中ではいたるところ <b>E</b>=0 となるということを意味している. そこで以下では,<b>完全導体</b>とは内部の電場がいたるところ 0 の物質のことである,と定義しておこう. … 完全導体中では電場は存在しないのだから,∂<b>B</b>/∂t=0 でなくてはならないのである * .
*超伝導体は電気抵抗が0であるが完全導体ではない. なぜなら,超伝導体中では磁束密度が排除されるので,その過程で,磁束密度の時間変化が起きる.
先ず,電気抵抗が 0 であることと,電場が存在しないことは等価なのでしょうか? 上記記述によれば等価とも思えますが,その注記によると,異なるとしていて,記述に矛盾がある様に思われます.
また,注中で,超伝導体での磁束密度の振る舞いの記述がありますが,余りに短く理解できません. 超伝導体は,電気抵抗が 0 だが,その内部には電場・磁場が存在することがあるのでしょうか.
ちなみに,砂川「理論電磁気学」(紀伊國屋)は,電気抵抗が 0 の導体を完全導体と定義しており,それ以上の記述がないため参考にできませんでした.
以上につき解説いただければ助かります. どうぞよろしくお願いします.
#ええっと,yamaさんが答えてくれると思ってたので,手を出さないでいようと思ってたのですが....
> 電気抵抗が 0 であることと,電場が存在しないことは等価なのでしょうか?
電気抵抗が有限なら,あるスケール以上の時間がたったとき電場は0です. 電気抵抗が0なら「いつでも」電場は0です.
いつでも電場が0なら より,磁束密度の時間変化はありません.
完全導体と超伝導体は別の概念だと思っていたほうがよいでしょう.(名前は似てますが...)
toorisugari no Hiro さん,お答えいただきありがとうございます.
ご説明いただいた内容は,本の主文の記述に沿うもので,納得できます. そこでわからないのが,抜粋の超伝導体に関する注記(* の部分)です.
注記どおり「超伝導体は電気抵抗が0である」ならば,超伝導体は,少なくとも完全導体の一種になるのではないでしょうか? 注記の記述を信用するなら,超伝導体は,電気抵抗が0であり,<b>かつ</b>磁束密度も0になる様です. であれば,完全導体の定義が電気抵抗=0 である以上,超伝導体は完全導体に含まれる筈です. ところが注記では,「完全導体ではない」としており,矛盾していると思われます. この不整合は,どう解釈すれば良いでしょうか?
だんだん,苦しくなってきました.識者の方,よろしくお願いします.
> 注記どおり「超伝導体は電気抵抗が0である」ならば,超伝導体は,少なくとも完全導体の一種になるのではないでしょうか?
そういう見方も可能でしょう.
>注記の記述を信用するなら,超伝導体は,電気抵抗が0であり,かつ磁束密度も0になる様です. であれば,完全導体の定義が電気抵抗=0 である以上,超伝導体は完全導体に含まれる筈です. ところが注記では,「完全導体ではない」としており,矛盾していると思われます. この不整合は,どう解釈すれば良いでしょうか?
そもそも,電気抵抗とかオームの法則自体,現象論であり,電磁気学の基本方程式であるMaxwell方程式に含まれるものではありません.有限温度の非平衡統計力学から導かれる「古典力学」的な概念や法則です.
# 電気抵抗は電磁気学の本質的な概念でない,と思ってください.
古典力学の枠内の概念を絶対温度0の極限に無理やり外挿した「完全導体」と,量子力学から得られた「超伝導体」という概念は本来違うものと考えるのが自然です.
# 同じとみなすのは,原子内の電子の運動の性質を,惑星の運動法則から得られる概念で説明しようとする行為に等しく思えます.
もちろん,マイスナー効果を示さない「電気抵抗」0の物質が見つかれば,今の議論は覆り,新たに考えなければいけないでしょう.しかし,現在のところ「完全導体」は所詮古典力学の枠内の概念であり,それが実際の低温現象を説明している必然も証拠もない,つまり,「超伝導体」とは別物と考えていいと思います.
# もちろん,「 で定義される『完全導体』と で定義される『超伝導体』がともに『電気抵抗』0になるのは偶然の一致,あるいは瑣末な一致,に過ぎない.」という考えは乱暴だという意見があるのはわかります.
識者ではないので,失礼ながらちょっと便乗して.みなさんの考えを聞かせてください. 完全導体はtoorisugari no Hiroさんの言われるように”概念的”物質ですが,電気抵抗=0がその(古典的)定義と思って差し支えないでしょう.ちょっとググルと分かりますが,これは静磁場の存在まで否定する物ではありませんから,静磁場なら貫通できる可能性があります.磁場の変化に対しては直ちに反磁場を生じて内部に磁場(の変化)を打ち消す電流が生じると考えることができます.超伝導体では磁場の進入そのものが出来ず,いわゆるマイスナー効果を示しますが,静磁場でも進入できないことを考え合わせると,明らかに予想される完全導体の振る舞いとは異なります.その意味で完全導体ではない,という表現になったものと思われます.ちなみに質問は,静磁場中にある完全導体で,磁場を切った場合,反磁場を形成していた電流が(おそらく慣性により)残り,磁性体(磁石)のように振る舞うであろうという予想があります.勿論,これも超伝導体では見られないことで,これも超伝導体が完全導体でないことの理由として上げられていますが,この予想が正しいとすると,スピンでもないそのような円電流(?)が存在し続ける物理的機構は一体どんなものでしょう.完全導体が輪になっていて,そこをぐるぐる回るのならイメージできますが,平面とかなら,外部磁場なしに渦電流がどうやって存在し続けるのか理解できません.どういう考え方があるでしょう.
こんにちは.
当て推量ですが,外部の磁場が0になるまでに,過渡期があって, その時間では,外部磁場が時間変化するのではないでしょうか. その時間変化する磁場に合わせて,渦電流も減衰し,同じタイミングで 0になるのかも・・・.
ミュフ猫さん,こんにちは. 素直に考えれば,そうですよね.ただ,御存知のように,誘導起電力による反磁場の形成後は外部磁場を急激に切断すると,磁場に蓄えられたエネルギーの逆転は必ず時間遅れが伴い(慣性により)同時のタイミングでは完全には消去できないと,一般には考えられます.磁性体なら磁気ヒステリシスとして内部磁区の再配置が可能ですが,完全導体の場合となると・・・.まあ,完全導体が理念上の物質である以上,剛体と同じように現実的問題が簡易な描像を許さないかも知れませんが.
toorisugari no Hiro さん,なんとなく さん,ミュフ猫 さん 様々な説明,ありがとうございました.
どうやら,完全導体とは内部の電場がいたるところ 0 であり,かつ磁束密度は存在し得る物質(ただし変化はできない),とするのが正しい定義である,ということの様ですね. これに対し,超伝導体は,内部の電場も磁束密度もがいたるところ 0 になることから,完全導体ではない,ということだと理解しました. もっとも,実際に存在する“超伝導体”の性質に関しては,電磁気学の範囲を超えた物性の議論に突入する様で,私には付いていけそうにありません.
普通は電気抵抗が0の導体を完全導体というのではないでしょうか.内部電場が0である必要はないと思います.たとえば内部に磁場があれば,電流を流したときにホール効果によって電場が生じると思います. この定義では,超伝導体は完全導体であることになります. 超伝導体では完全導体であるだけでなく,マイスナー効果を示すのも特徴です.そのために内部磁場が0になるのでホール効果は起こらないでしょう.