自分が今興味をもっている家電製品について,質問させてください.
IH調理器でアルミ鍋を使えない理由として 「抵抗が小さいから使えない.」という説明をよく目にするのですが, 何故,抵抗が小さいといけないのでしょうか? 生じる渦電流が大きくなるだけで,特に問題がない気がするのです. 相互誘導が関係しているのか,アルミの融点が低いか,とかを 自分は予想をしているのですが,何方かご存知でしたら教えてください.
>何故,抵抗が小さいといけないのでしょうか? こういうのは極限を考えるとわかりやすいです. 抵抗が0だとどうなるでしょうか. 進入する磁力線を打ち消す方向に電流は流れますが,抵抗がないのでその電流は減衰することもなく,損失は生じず,熱も発生しません.ちなみにこの状態は電流が流れて磁力線を発生している状態であり,エネルギー自体は蓄えられています.ただ損失がないからそのエネルギーは失うことなく蓄えられたままです.
ここで外部磁界がなくなると,今度はそのエネルギーを外部に放出して電流は流れなくなります.つまり外部磁界がコイルで作られているのであれば,そのコイルが今度は電磁誘導にて電流が流れるわけです.
つまり抵抗が0だとIHによる加熱は不可能になります.
超伝導物質だと抵抗が0なので,完全に磁力線を打ち消す方向の磁力が発生し,これにより浮力が得られて浮上することとなり,リニアモーターカーに使われています.なぜならば損失が生じないので効率がよいからです.(浮上による仕事量の分のみ損失が生じる) ちなみにもしIHがあるであれば面白い実験が出来ます.アルミは抵抗0とまではいきませんが抵抗が小さいので超伝導ほどではなくても浮かばせることが出来るはずです. 小さい円筒のなべを用意し,それに水をいれます.そしてアルミホイルをなべの部分だけくりぬいてドーナッツ状にして,両方をIHにかけます.アルミホイルのドーナツのところになべを置きます. IHのスイッチを入れるとアルミホイルは浮き上がります.
さて,流れる渦電流の大きさについて考えて見ます. 基本的に流れる電流は磁力を打ち消すだけの量になります.言い方を変えると,なべの抵抗値がいくつであろうと流れる電流量はあくまで打ち消すだけの量しか流れないのです. つまり抵抗が低いから流れる量が多くなるというものではないのです. ところで抵抗が0ではない場合,せっかく磁力線を打ち消すように電流が流れても,それは直ぐに抵抗によりエネルギーを消費してしまい,流れなくなってしまいます.つまり磁力線の進入を許してしまうわけです.
そのため,IHでは交流磁界を作り常時電流が流れるようにします.
ただアルミのように抵抗が小さい場合には,当然減衰も遅くなります.つまりそれは熱に変化するまで時間がかかるという見方も出来ます.言い方を変えると,単位時間当たりの熱量は小さくなるわけです.
あと,IHの場合には透磁率も関係してきます.流れる渦電流は透磁率が大きいほど大きくなりますので,非磁性のアルミは透磁率が小さいですから更に加熱はしにくくなっています.
Einsteinさん,ありがとうございます. まだ,理解しきっていないのでお教え頂いた内容について, 少しずつ,質問を重ねさせてください.
>抵抗が0だとどうなるでしょうか. 進入する磁力線を打ち消す方向に電流は流れますが,抵抗がないのでその電流は減衰することもなく,損失は生じず,熱も発生しません.ちなみにこの状態は電流が流れて磁力線を発生している状態であり,エネルギー自体は蓄えられています.ただ損失がないからそのエネルギーは失うことなく蓄えられたままです.
とありますが,例えば,抵抗Rの回路に発生する誘導起電力をV,それに伴い回路に流れる電流をIとすると,電力をPとして V=IR,P=RI^2 の2式が成立します.このとき,V=一定として,Rが小さいなら,その分Iが大きくなると思うのです.それによって,Pは「0×∞」の不定形になり,電力も有限の値を取る可能性を排除できないと思うのですが,どこで自分は誤解しているのでしょうか? (自分ではおそらくV=一定という前提がおかしいかなとは予想しているのですがよくわかりません...)
横入りであれですが..
さて,電力ですが,抵抗が0の極限でもたしかに有限値です. 電力とはそもそも電子に与えられたエネルギーの和です.普通抵抗があるとこのエネルギーは片っ端から抵抗にぶつかって熱に換わってしまうので「電力」=〜「熱」ですが,もし抵抗がないならこの「電力」は電子がぐるぐる回っている運動エネルギーのまま保存されます.なので「電力」があっても「熱」にはなりません.
また,IHに抵抗が低いと使えない理由ですが確かに電流を増やせば加熱するでしょう.しかしよく考えてみてください.IH調理器の中の回路も銅などの金属です.抵抗の低い鍋が加熱するくらいの電流を流すにはIH調理器もそれに応じた電流を流さないといけないことになりコンセントなんかも加熱してしまいます.なので抵抗が低い金属を加熱するには,コイルの巻き数を増やしたり回路の抵抗を落とすなどの工夫が必要となると考えられます(IH調理器の中には銅アルミに対応しているのもあるそうです)
>自分ではおそらくV=一定という前提がおかしいかなとは予想しているのですが そういうことです. 抵抗0の場合を考えれば,V=IRでR=0だからVは0になりますね. 抵抗0の場合には100%進入する磁束を阻止できる(発生する渦電流による磁場により打ち消されてしまう)わけですから,電磁誘導による起電力は出てこないわけです.
イレフトさん,Einsteinさん,ありがとうございます.もう少し質問させてください.
イレフトさんへ, 電力の定義が「単位時間に熱として逃げていくエネルギー」ではない,ということでしょうか?正しい電力の定義を教えてください.
Einsteinさんへ, 渦電流が発生している時点で,電磁誘導による起電力は生じています. 渦電流由来の磁場により磁束が阻止できるから,電磁誘導による起電力はでてこない,というのは論理がおかしい気がするのですが,どうでしょうか?
宜しくお願いします.
横から失礼します.
電力とは,電流の仕事率だと思います.すなわち単位時間に消費される電流のエネルギーです. 電流のエネルギーがすべて熱になるとは限りません. 例えば,モーターの場合は,電流のエネルギーが(熱以外に)回転運動のエネルギーになります. また,電流のエネルギーが電磁波のエネルギーとなって放射される場合もあります.
電磁誘導による起電力は V=-dΦ/dt なので,磁束Φの時間的変化が0でない限り,誘導起電力は0にはなりません.なお,磁束Φは物質内部の磁束であって,外部の磁束とは異なります.
ところでEinsteinさんは「抵抗0の場合には100%進入する磁束を阻止できる」とされていますが,必ずしもそうではないと思います. 確かに超伝導体の場合は,磁場は内部に進入できないので,内部の磁束Φは常に0になり内部に誘導起電力は生じません.これは超伝導体が完全反磁性体であるためです. 超伝導体は完全反磁性体であるために電気抵抗が0になりますが,逆に,電気抵抗が0であれば完全反磁性体であるとは言えません. 完全反磁性体でない物質では,電気抵抗が0の極限でも内部の磁束Φは0でなく,従ってその磁束が変化すれば内部に誘導起電力が生じてます.
誘導起電力が0でなければ抵抗が0の極限で電流が無限大になりそうですが,自己誘導のために,抵抗が0でも電流は無限大にならず有限になります.その場合発生するジュール熱は0になってしまいます.このときは電流のエネルギーが磁場のエネルギーとして蓄えられたり放出されたりするだけなので,電力の平均値は0になります.
>渦電流が発生している時点で,電磁誘導による起電力は生じています. 磁束の進入阻止という見方ではなくて,電場に注目するのであれば,起電力というより,電場が生じ,その電場を打ち消すように電子が移動するとお考えになるとよいでしょう. yamaさんへ 今回の説明ではマイスナー効果の話は本筋ではないので省略しています.
>超伝導体は完全反磁性体であるために電気抵抗が0になりますが, いえ,完全反磁性体だから電気抵抗が0になるのではありません. 今のところ見付かってはいませんんが,完全導体(マイスナー効果はないけど電気抵抗は0になる)という概念はあり,理論上ありえない話ではありません.
>逆に,電気抵抗が0であれば完全反磁性体であるとは言えません. いえ,上記の完全導体であれば,私が説明したように,磁場の侵入を阻止します.
マイスナー効果との違いは,超伝導の条件を満たさないときに(たとえば温度が高い状態),静磁場を加え,超伝導状態/完全導体にしたときに,
・急に磁場の侵入を阻止する反磁性として働く....マイスナー効果 ・磁場の変化が電流を誘発するのだから,電気抵抗が0になったときには既に磁場が存在するのでそのまま磁石になる........完全導体
という違いが生じるだけです.昔はこの違いには気がつかず,単純に電気抵抗が0なので反磁性になると考えていましたが,マイスナー効果の発見により別のものであることがわかったのです.