変圧器における電圧と電流の位相

変圧器における電圧と電流の位相

eKinetic さんの書込 (2008/01/17(Thu) 16:03)

センター試験の演習問題です. 発振器によって,変圧器の1次側に,

I=I_{0}\sin\omega{t}

の電流(グラフで与えられている)を流し,2次側のオシロスコープで観察します.

\frac{1}{4}T<t<\frac{3}{4}T の期間(電流の値が減っていく期間)で, 2次側のコイルに生じる誘導電流の向きを答える問題では,磁束の正の向きに対する電流の向きを正にとって, 「正の向きに流れる」が正解となっています.

次に,2次側のコイルに生じる電圧の変化を表しているグラフを選択する問題では,

V_{2}=-V_{0}\cos\omega{t}

のグラフが正解となっています. このグラフは, \frac{1}{4}T<t<\frac{3}{4}T で,正です.

以上のことは,2次側のコイルに生じる電圧と,流れる電流の位相は,同じであるということを意味しているのでしょうか?

オシロスコープが単に抵抗とみなせるのであれば納得もできますが,いろんな素子が入っていると考えられますし... そもそも,1次コイルの電圧と電流の位相,それに対する2次コイルの電圧と電流の位相関係が,よく理解できていません. ご教示いただければ幸いです.

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

yama さんのレス (2008/01/17(Thu) 19:04)

V_2=-V_0\cos\omega t=V_0\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right) なので,電圧と電流の位相には \frac{\pi}{2} の差があります.

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

eKinetic さんのレス (2008/01/17(Thu) 19:25)

お返事,ありがとうございます.

2次側の電圧は,1次側の電流に対して位相が遅れているということですね. 2次側のコイルに生じる電圧の位相と,同じ2次側に流れる電流の位相は,どうなのでしょうか?

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

yama さんのレス (2008/01/17(Thu) 23:49)

この問題では2次側に抵抗はつながれていないのだと思いますが,その場合,2次側の電圧と電流には \frac{\pi}{2} の位相差があります. 2次側に抵抗をつなげば,位相差は変化します.

追加 よく考えてみるとオシロスコープの抵抗も無視できないかもいけませんね.その場合の位相差にはオシロスコープのインピーダンスが関係してくるでしょうね.

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

トンガリ さんのレス (2008/01/18(Fri) 10:37)

関連して,AC100V入力でAC120V出力の単巻変圧器に関する質問です.

【単巻変圧器】 単巻変圧器の構造は,入出力に共通な0V端子から一本の銅線でコイルを巻き始め, 例えば,1000巻きの所で100V端子を出し,1200巻きの所の120V端子で巻き終わる. 単巻の語源通り,一本の銅線の巻方は全区間において一定方向である. コイルの筒芯には閉鎖磁気回路鉄芯が挿入されている.コイルの直流抵抗は小さい.

AC120V出力には例えば海外のラジオを接続する. AC100V入力側の電流の位相は入力側の電圧よりも90度遅れる. AC120V出力側の電流の位相は出力側の電圧よりも90度遅れる.

【質問】 AC120V出力側の電圧の位相はAC100V入力側の電圧よりも180度遅れる. AC120V出力側の電流の位相はAC100V入力側の電流よりも180度遅れる.

は正しいですか. 自分でもうまく説明できないのです.

特別にAC100V入力でAC100V出力の単巻変圧器を考えると奇妙ですし・・・

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

eKinetic さんのレス (2008/01/19(Sat) 21:49)

yamaさんのご教示: >位相差にはオシロスコープのインピーダンスが関係してくるでしょうね. によって,私は,「1次側の電流の変化に対して,2次側の電流の向きがどうなるか」を問うこの問題には, 2次側に接続されている素子の情報が不足しているという点で,不備があるという考えで,落ち着きました.

電流が流れるためには,回路が閉じていなければなりません.初め私は,オシロスコープが単に抵抗とみなせるのであれば,2次側のコイルが交流電源のように働いて,2次側の電圧と電流に位相差はないはず,そう考えれば解答は正しい, と思っていました. しかし,オシロの替わりにたとえ抵抗が接続されていたとしても,2次コイルそのものに自己インダクタンスがあるはずで,

-M\frac{dI_{1}}{dt}-L\frac{dI_{2}}{dt}=RI_{2}

といった式が成立するのではないかと思います. もし, R=0 で回路は閉じているのであれば,yamaさんのおっしゃるように,

>2次側の電圧と電流には \frac{\pi}{2} の位相差があります.

ということではないか,と解釈しました.

トンガリさんの問題のように,入力側,出力側どちらも電流が電圧に対して位相が \frac{\pi}{2} 遅れるという前提が与えられているのであれば,入力の電流を, I_{1}=I_{0}\sin\omega{t} として,出力の電圧は, V_{2}=-M\frac{dI_{1}}{dt}=-MI_{0}\cos\omega{t} となることから,yamaさんのおっしゃるように,入力側の電流 I_{1} に対して,出力側の電圧 V_{2} は位相が, \frac{\pi}{2} 遅れています. ですから,出力側の電圧と電流は,入力側の電圧と電流それぞれに対し,位相が \pi 遅れるとするトンガリさんの考えは,私は正しいと思います.

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

yama さんのレス (2008/01/20(Sun) 11:52)

>AC120V出力には例えば海外のラジオを接続する. >AC100V入力側の電流の位相は入力側の電圧よりも90度遅れる. >AC120V出力側の電流の位相は出力側の電圧よりも90度遅れる.

これはちょっとおかしいと思います.電流と電圧の位相が90度ずれているなら,電力P=IVの平均値は0になります. しかし,ラジオの消費電力が0ということはないと思います.少なくとも音のエネルギーに相当する電力は消費しているはずです.

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

桝岡 さんのレス (2008/01/20(Sun) 16:42)

理想変圧器で,電圧入力であれば, ・2次側が無負荷なら1次側に電流は流れない(Lが無限大) ・2次側の電圧と1次側の電圧は同相 ・2次側の電流と1次側の電流は同相 になると思います. 1次側の電流の位相は,2次側の負荷インピーダンスで決定されます.

現実の変圧器では,損失や,有限のインダクタンス等により,位相のずれが発生します.

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

トンガリ さんのレス (2008/01/21(Mon) 12:15)

?桝岡?さんは?2次側の電流と1次側の電流は同相?と言われます. 私は先に?2次側の電流と1次側の電流は逆相?ではないかの趣旨の質問をした.

私が逆相ではないかと思った理由は,うまく言えないのですが,
0〜100V間のコイルを1次側と見立てて入力電流が流れると,その延長上の

100〜120V間のコイルを2次側と見立てて出力電流は逆起電力から逆相であろう. したがって,その弾みと言うのも幼稚ですが, 0〜120V間のコイルを2次側と見立てて出力電流は入力電流の逆相ではないか. と思ったのです.

しかし確信がないので,私の誤りを指摘して頂きたく,上記の趣旨の質問をしたのです. 2CHオシロスコープで観察すれはすぐ分かることですが,GNDの混触に注意かな・・・ 2CHオシロスコープの入力切替スイッチを共にAC側に倒しておけば火は出ないかな??? とにかく,AC100V入力でAC100V出力の単巻変圧器を考えると奇妙ですから.

Re: 変圧器における電圧と電流の位相

桝岡 さんのレス (2008/01/21(Mon) 23:46)

>?桝岡?さんは?2次側の電流と1次側の電流は同相?と言われます. >私は先に?2次側の電流と1次側の電流は逆相?ではないかの趣旨の質問をした.

書いた後で,極性の表示が,他の人と逆かもしれない,と気がつきました.

電気回路では,トランスを電気部品として扱うので, ・1次側の電流は,トランスに入力する方向を正 ・2次側の電流は,トランスから出力する方向を正 として計算しています. さきほどの記述を, -- 理想変圧器で,電圧入力であれば, ・2次側が無負荷なら1次側に電流は流れない(Lが無限大) ・2次側の出力電圧と1次側の入力電圧は同相 ・2次側の出力電流と1次側の入力電流は同相 になると思います. -- と訂正します.

以下は,1次も2次も,入力電流を正方向としてコイル電流を考えます.

コイルの逆起電力(電圧)は,巻き線の置かれた空間の磁界変化に依存するので, 2つのコイルが同じ位置に巻かれると,同じ磁界変化になるので, 1次と2次には,同じ位相で,電圧比が巻き数比の,逆起電圧が発生します.

1次コイルでは,入力電圧と逆起電力がバランスしているので,入力電圧と逆起電力は同相です.

1次コイルが電圧駆動されていれば,電源電圧=逆起電力が一定なので, 2次コイルに負荷が接続されて,2次コイルに電流が流れても, その電流による磁界変化を打ち消すように1次コイルに電流が流れ, 磁界は無負荷時と同じままです. 1次コイルの電流と2次コイルの電流は逆相になります. #遅れるか,進むか,ではなく,逆相

電圧と電流の位相差は,2次コイルに接続された負荷のインピーダンスに依存し, 2次コイルの電流は,負荷電流(=トランスの出力電流)と逆相です. 抵抗負荷(電流と電圧は同相)であれば, ・1次コイルの電流と電圧は同相 ・2次コイルの電流と電圧は逆相 であり,1次コイルで電力が消費されて,その分の電力が2次コイルで発生し, それが2次コイルに接続された抵抗で消費される,というイメージになります.

お礼

eKinetic さんのレス (2008/01/30(Wed) 21:21)

トンガリさんに対する私のコメントNo.19228は,はずしていました. 単巻変圧器ということを忘れ,繋がっていない2つのコイルが,磁束で結ばれている変圧器のつもりで投稿してしまいました.すみません.

単巻というのは,1次と2次どちらのコイルも,一本の導線の一部分なのですよね? もしそうならば,電流は共通(2つのコイルは直列につながれているようなもの)ですから,位相差はないように思います.(また,勘違いしてますか?)

桝岡さんにもいろいろ教えていただいたのですが,変圧器の動作を表す用語そのものの意味がわからないありさまで,不勉強さを痛感しています. ひとつひとつを説明していただくのも申し訳なく,ひとまず置いといて,先に進みたいと思います.

yamaさん,トンガリさん,桝岡さん,そしてみなさん, ありがとうございました.

Re: お礼

桝岡 さんのレス (2008/02/01(Fri) 09:11)

>電流は共通(2つのコイルは直列につながれているようなもの)ですから, >位相差はないように思います.

理想単巻トランスのコイルに流れる電流を考えれば,1次と2次で,電圧は同方向ですが,電流は逆方向です. 電流も同方向なら,1次も2次も電力が消費されてしまい,トランスになりません. 2次側では,消費電力が負(=発電)になる必要があります.

トランスのインダクタンスが無限大では無い場合は,1次と2次の電流間に位相差が発生します.インダクタンス有限なら,鉄心の励磁電流が必要なので,1次側には,電圧に対して90度遅れた電流成分が存在し,その分が位相差になります.