虚数部のない波動関数,例えば下記のようなポテンシャルの場合
測定をしないで物理量の値を考えることは許されるのでしょうか. それともやはり許されないのでしょうか.
個人的には,虚数部の無い波動関数ならどう考えても測定をしな くても物理量を考えられると思うのですが,文献,ネット探して も「いいよ」という記述を見つけられなかったもので・・・
ちなみに,朝永振一郎の量子力学では,状態の確率とは, 「ある状態にあるところの量子力学系に対して,ある物理量を測定 する実験を実施したとき,その測定の結果としてある値が得られ ることの確率であり,測定を実施しないで物理量の値を考えるこ とは許されない.」 とされています.
ある物理量の固有状態であれば,その物理量については測定しなくてもその固有値を持つと考えることができるでしょう.しかし固有状態でなければ,その物理量は確定値をとらず,いろいろな値をとる確率が分かるだけなので,測定しなければその物理量の値は決まらないでしょう. また,ある物理量の固有状態であっても,別の物理量については固有状態になっているとは限りません.その場合,その別の物理量は確定値をとりません.
古典論の場合も測定しなければ物理量の値は分かりませんが,分からないだけで,物理量自体は常に確定した値を持っていると考えることができます.しかし,量子論の場合はそのように考えることはできません. というのは,古典論では全く同じ物理状態について物理量を測定すれば必ず同じ値が得られますが,量子論では全く同じ量子状態について物理量を測定しても一般には異なる値が得られるからです.