londonの分散力

londonの分散力

X さんの書込 (2007/08/30(Thu) 01:57)

londonの分散力はどの状態のどのような結合か. という問題なのですが・・・ ファンデルワールス力と似たものと考えてもいいのでしょうか

Re: londonの分散力

komagatake さんのレス (2007/08/31(Fri) 11:27)

ファンデルワールス力はファンデルワールスの状態方程式の圧力の補正項に対応する力です.理想気体からのずれの原因となるものの中での分子間力に相当します. この分子間力がなければ気体→液体の状態変化は起こりません.

分子間力には色々なものがありますがイオン間の静電引力に比べると桁違いに小さいです. 荒っぽく言うと力の大きさは次のようになっています.

(A)イオン間の静電引力1000

(B)水素結合(F−H,−N−H,−O−H)100 (C)双極子−双極子10 (D)ロンドンの分散力1

・・・・(B)〜(D)が分子間力

水素結合も永久双極子によるものですが特別な原子が近接して存在している時だけで働きます.(水の分子量が小さいにもかかわらず沸点が高いというのは水素結合によるものです.) ロンドンの分散力は誘起双極子−誘起双極子間に働く力です. この力は無極性分子間の相互作用を表すものですから全ての分子に共通に働くものです.(他の力が働いていれば影響が小さいので隠れてしまいます.1つ1つの電子に働く力ですから電子の総数に依存します.分子量が大きくなると分子間力が大ききなるということはここから出てくるものです.) 双極子−双極子相互作用の表現は電磁気の練習問題に出てくるかもしてません.双極子間の距離rに対してr^(−3)で変化します. ロンドンの分散力はr^(−6)で変化します.ごく近くでしか働かない力です.

ファンデルワールス力という言葉が分子間力の意味であったり,分散力の意味であったりと混乱しています.無極性分子の場合は分子間力としては分散力しかないのですから同じ意味になります.このことからファンデルワールス力=分散力というイメージが出てきています.極性分子の場合には混乱します.

(C)と(D)の間にまだいくつかの力を考えることが出来ます. 永久双極子−誘起双極子 (この「誘起」双極子と分散力の「誘起」双極子とでは少し意味が違います.) 永久双極子−四重極子 四重極子−四重極子 (四重極というのはご存知ですか.CO2には分子としての極性はありませんが結合の極性はあります.δ−・2δ+・δ−という形でつながっています.)

物理化学の教科書には載っていることだと思います.

追記ロンドンもファンデルワールスも人の名前ですね. londonではなくてLondonです.H2の共有結合を量子力学的に初めて明らかにしたハイトラー・ロンドンの理論(1927年)で有名です.量子化学の出発点になるものです.超伝導や超流動の研究も行っています.