物質中の光速は c ではないのか?

物質中の光速は c ではないのか?

CO さんの書込 (2004/08/02(Mon) 21:54)

以下,ken さんの引用です.

COさん >実は,ガラスの中(物質中)でもやはり光速は一定です.ただし,光が物質と相互作用をします.相互作用をした結果,物質が光をだします.我々が観測するのはそれらの重ねあわせです.それらの重ねあわせは見かけ上,光が遅くなったように見えます

どんどん話しが広がりますが, この記述は,率直に言って,不思議な感じがしました. 「物質が光をだします」とはどのようなことでしょう. 物質に光がぶつかって反射する.あるいは光がランダムに方向を 変化させることでしょうか? 物質が光のエネルギーを吸収し,点光源みたいに光を放出して それと干渉し重ね合わせることでしょうか?

「見かけ上,光が遅くなったように見えます」という表現について. 光を2つに分けて一方は真空中に,一方はガラス中を通過させ 合体させると干渉が観測されます.光ファイバ通信でスイッチング が実際に行なえています.ということは,見かけ上ではなく 本当に光が遅くなっているのではないでしょうか. また別の見方として,ガラスの経路が見かけ上,距離が長くなった という言い方もあるかと思います.「光路長」という名前がついています. 「見かけ上,光が遅くなったように見えます」と 「見かけ上,距離が長くなったように見えます」は同じことでしょうか?

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

CO さんのレス (2004/08/02(Mon) 22:13)

> 「物質が光をだします」とはどのようなことでしょう. > 物質に光がぶつかって反射する.あるいは光がランダムに方向を > 変化させることでしょうか?

詳しくは先ほど示したファインマンの本に書いてあるのですが,「物質を構成する原子がもつ電子」が電磁波による電場に揺さぶられて光を出しますというのが正しいです.

>「見かけ上,光が遅くなったように見えます」という表現について. > 光を2つに分けて一方は真空中に,一方はガラス中を通過させ > 合体させると干渉が観測されます.光ファイバ通信でスイッチング > が実際に行なえています.ということは,見かけ上ではなく > 本当に光が遅くなっているのではないでしょうか.

干渉は二つの光の位相がずれていれば起こりますよね.つまり物質中を通った光は,位相がずれているのであって,光速自体が遅くなっているのではないと思います.

> 「見かけ上,光が遅くなったように見えます」と
> 「見かけ上,距離が長くなったように見えます」は同じことでしょうか?

そうですね,見かけ上,ということであればそうも言えると思います.

なんかさも「知っている」かのように書いていますが,しっかりファインマンを参照しながら書いています.(^^;

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

ken さんのレス (2004/08/03(Tue) 15:40)

自分 >「見かけ上,光が遅くなったように見えます」という表現について. > 光を2つに分けて一方は真空中に,一方はガラス中を通過させ > 合体させると干渉が観測されます.光ファイバ通信でスイッチング > が実際に行なえています.ということは,見かけ上ではなく > 本当に光が遅くなっているのではないでしょうか. COさん >干渉は二つの光の位相がずれていれば起こりますよね.つまり物質中 >を通った光は,位相がずれているのであって,光速自体が遅くなって >いるのではないと思います.

それでは,以下の例で考えてみましょう. 面光源として,10ps(ピコ秒)の間発光し,90ps間休むものを考えます. (10ギガビット毎秒のパルス光源ですね.光ファイバ通信では なんの変哲もないものです) 点Aで2つに分割し,経路L1と経路L2に分かれ 再び点Bで合流するものとします. L1とL2は物理的な長さはまったく同じLですが 屈折率はn1,n2と違っていて(n1-n2)L/c=50psの関係があるとします.

この場合私の主張は B点で合わさった光はL2経由の光と50ps遅れてやってきたL1経由の光の 合成になる.(50ps毎に10ps幅の光が観測される)というものです. (物質中では本当に光のスピードが遅くなる)

COさんの主張は B点で合わさった光はL2経由の光と同時にやってきた位相だけずれた L1経由の光の合成になる.(100ps毎に10ps幅のL1経由+L2経由の 重ね合わせの光が観測される. 物質中では見かけ上,光のスピードが遅くなるが,本当には 光の速度は一定である) ということの様ですが,これでよろしいでしょうか.

仮にそうだとすると,現段階では同意できないですね. 自分でも少し調べてみます

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

CO さんのレス (2004/08/03(Tue) 17:19)

> ken さん > COさんの主張は > B点で合わさった光はL2経由の光と同時にやってきた位相だけずれた > L1経由の光の合成になる.(100ps毎に10ps幅のL1経由+L2経由の > 重ね合わせの光が観測される.

いや,そういうことではないです.私の説明がまずかったです. 位相という言葉が明確ではありませんでした.

とりあえず電磁波の電場成分だけ考えます. 光源,物質,観測点,という順番に並んでいたとします.

光源物質観測点 ○ |・→z Es EaEo = Es + Ea

このとき,観測点で観測される電場(Eo)は,光源からの電場(Es)と物質中の原子(電子)が出す二次的な光(Ea)の重ねあわせで表されます. Eo = Es + Ea この,Es, Ea というのはやはり光速で伝わって基本的な寄与をしている,というのが私の「光は光速で伝わっている」ということの意味です.

そして,Es は計算するまでもないので,Ea を計算して Eo を求めると Es = E_0 exp[iw(t-z/c)] Eo = E_0 exp[iw(t-z/c-(n-1)Δz/c)](Δz は物質の厚さ,n は屈折率) といったように,exp の位相をずらすような結果が得られます. つまり,見かけ上,物質中で光の速度が遅くなったということが言えます. 実際に時間に対して引き算の形でずれているので,観測される電場は 50ps 毎に 10ps 幅の光が観測される,ということで良いと思います.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

shin-muu さんのレス (2004/08/03(Tue) 17:27)

はじめまして,COさん,kenさん. 光速の議論をされているのをみて, 疑問に思ったことがあるので便乗して書き込みさせて頂きます.

昔スラッシュドットに光子の停止に成功との記事がありました.

このような実験結果はやはり光の干渉では説明できないと思うのですがどうなのでしょう? 私もこれからちょっと詳しく勉強してみます.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

CO さんのレス (2004/08/03(Tue) 17:37)

shin-muu さん,はじめまして. > 昔スラッシュドットに光子の停止に成功との記事がありました.

な,なんじゃこりゃ. とりあえず,上で話しているのは古典電磁気学の範囲ですが,これはなんなんでしょう..

上の記事とは関係ありませんが,新聞とか雑誌とか,科学に関しての扱いがかなりいいかげんなときがあります.私は気をつけるように心がけてます. 昨年末くらいに,「高校生の発見がアーンショーの定理を覆した!」なんてことを新聞が大きく報じてましたが,怪しいと思ってたら案の定,その話はぱったりと消えてしまいました.(^^; それらの記事も全部削除されちゃってます・・.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

shin-muu さんのレス (2004/08/03(Tue) 18:06)

光子の停止に関する論文は今のところ見つけられていないのですが, 研究グループの一つのページを張っておきます.

あと,実験方法に関しても記述がありましたのでそれも貼っておきます.

Now, Mikhail Lukin and colleagues at Harvard University, the Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics and the Lebedev Institute in Moscow have demonstrated a new method that does indeed store the photons at rest in a gas. First, they fire a short "signal" laser pulse into a hot gas of rubidium atoms that is also being illuminated by a strong "control" beam. The signal pulse is slowed down when it enters the gas, and a holographic imprint of the pulse is stored in the rubidium atoms when the control beam is turned off. Such experiments have been performed before, and the pulse is generally recreated by turning on the control laser again.

However, the Harvard-Moscow approach is different because it relies on two control beams travelling in opposite directions. In addition to recreating the signal pulse, the control beams also produce an interference pattern that, in the words of team member Michal Bajcsy, "makes the atoms in the gas behave like tiny mirrors". The photons in the recreated signal pulse therefore bounce backwards and forwards between these "mirrors", which means that the overall pulse essentially remains frozen in space. The pulse can be re-released by switching off one of the control beams.

"Earlier experiments on the storage of light stored only the 'signature' of the light pulses in a process somewhat similar to creating a hologram," Bajcsy told PhysicsWeb, "so there were no signal photons present in the medium when the light was being stored. Our experiment, on the other hand, 'traps' actual signal photons inside the rubidium vapour in such a way that the overall signal pulse does not travel."

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

CO さんのレス (2004/08/03(Tue) 18:40)

う〜ん,「ガスが mirror のように振舞って,その中を動く光は"見かけ上停止しているように見える"」ということでしょうかね. たぶん,定在波(定常波)のようなものをイメージすればいいんじゃないでしょうか. 右向進行波と左向進行波は相変わらず光速で動いているけど,その重ね合わせは定常波なのでそこに留まっているようにみえると.

上の英文は正しいけど,それを一般向けに翻訳した記事はあまり正しくないということでしょう.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

やかん さんのレス (2004/08/03(Tue) 20:00)

COさんがご紹介された掲示板見てきました.光がぶつかった分子は二次的にπ/2位相のずれた光を出し,それが重ねあわされていくんですね.う〜ん,すごい!(やかんは本当に理解できて感心してるのでしょうか).光子停止の記事に,200311Decのnatureに掲載予定,と書いてあったのですが,どうも見つけられませんでした.本当だったら,当時,もすこしマスコミが騒いだんじゃないでしょうかね. 私の力ではとても科学的な議論では太刀打ちできないので,また議論の息抜きに非科学短編小説を・・. プリズムの世界の我々プリズム人は,ここプリズムに住んでいる.こちらの物理学者は光速を*(=c/n)であらわしている.密度もこんなもんで,なにかに密に満たされているなどとは考えたことないし,これまで我々の観測にもひっかかってこない.そう考えざるをえない現象もない.完全な無,と考えている.ただ最近一部の学者は,実はこの世界は高い密度で物質が充満しており,ものすごく高いエネルギーを加えると,この世界が壊れ,もっと空虚度の高い世界に変化する可能性がある,この世界には端があり,我々は想像だにできないが,その空虚な別世界に囲まれている,そこでは恐らく光速は,空虚度が高い分,*より大きいのではないか,との説を発表している.ここでは時々全く不規則な光の通過があり,現在も原因は謎であるが,今のところ外部にあるとされる世界のなにか,気まぐれ,いたずら,としか表現しようがない.(終)

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

ken さんのレス (2004/08/04(Wed) 15:19)

COさん.書きこみありがとうございます.

前の書きこみから,いろいろネットや本をあさっているのですが 実は,まだ分かっていません. 「群速度」と「位相速度」がキーワードだと思っているのですが. 「群速度」は真空中の光速を超えることはありませんが, 「位相速度」は真空中の光速を超えることがあるそうです. 物質からの光という概念を取り入れてうまく 「群速度」を(位相速度じゃなくて)表せればいいんですが...

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

笠 さんのレス (2004/08/04(Wed) 19:48)

どうも,徐々に生き返りつつ院試に向けて凹んでいるやつです. ハーバードの研究チームの話ですが,これって光子がガスの原始に捕獲されたときに局在的な格子振動の結果として停止したり速度が遅くなったように振舞うみたいな感じではどうでしょう?僕は今年の初めから半導体の研究室で固体物性について勉強をはじめたばかりなのですが,よく光子と結晶の格子振動との相互作用とかが出てくるので,なんとなく似た話なのかなあと思ったのですが.半導体の分光測定の時なんかに聞いた話ですが,薄い半導体に非常に細いスリット(光子の波長と同じくらいのオーダーらしいですが)をつけて光子を通過させるときに,半導体結晶の格子振動とみたいなものとの相互作用(表面プラズモン)の影響で透過率がとても大きくなると聞きました.そのときに見かけ上光速がとても遅くなることがあると思ったのですが. うーん,なんかうまく自分の意見を説明できてないような気がします.すいません.まだ凹んでるせいかなあ.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

CO さんのレス (2004/08/05(Thu) 00:53)

> ken さん > 「群速度」と「位相速度」がキーワードだと思っているのですが. > 「群速度」は真空中の光速を超えることはありませんが, > 「位相速度」は真空中の光速を超えることがあるそうです.

群速度,位相速度についても前述のファインマン物理学IIのp312〜に載っています. 一度,参照してみてください.

> 笠さん

格子振動ってガス(気体)でも考えられるんですか? ガスが一箇所に局在する確率は低そうですよね.

私も院試期間中です,お互い頑張りましょう,この掲示板読んで.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

崎間@管理人 さんのレス (2004/08/05(Thu) 16:57)

屈折率の話,大変興味深かったです.勉強になりました. やかんさんの短編小説も面白いです. 3次元人と2次元人(あるいは4次元人と3次元人)みたいな感じで.

確かに高校物理では光の速度が媒質中で「遅くなる」と習いましたね. ファインマン物理学,図書館で借りてみました. でも今は,集中講義の内容を理解するのに いっぱいいっぱいでもあります.がんばらねば.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

やかん さんのレス (2004/08/05(Thu) 17:10)

>やかんさんの短編小説も面白いです. うっ,うれしい・・.有難うございます.また変な事書いちゃったなあ,と 思っていたので救われました.管理人さんは優しーなー. 集中講義のお勉強頑張って下さいね(^ー^)ノ

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

笠 さんのレス (2004/08/05(Thu) 18:01)

>COさん 確かにガスの場合に格子振動を考えるのは無理があるのですが,なんとなくフォトン−フォノン相互作用みたいなことがガス中でもあるのかなと思ったので.うーん,ないですかねそんな感じの話.プラズマの分野とかで. ある原子ガスの系の運動量の平均値をレーザーを使って減速させるとか言うような話は聞いたことがあるんですが.この場合その逆みたいな感じですかね.あんまり考えると体に悪いので,今日はとりあえずこのくらいで(笑.

>私も院試期間中です,お互い頑張りましょう,この掲示板読んで.

ありがとうございます.院試頑張りましょう.最近部屋が散らかってるのがやたらと気になるんですが,掃除に現実逃避してしまわないよう散らかしたままです.片付けられないわけではないと思うのですが.多分.きっと.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

CO さんのレス (2004/08/05(Thu) 18:32)

> 笠さん > ある原子ガスの系の運動量の平均値をレーザーを使って減速させるとか言うような話は聞いたことがあるんですが. > この場合その逆みたいな感じですかね.あんまり考えると体に悪いので,今日はとりあえずこのくらいで(笑.

これ,私も聞いたことあります. Bose-Einstein凝縮という現象があるんですが,その実験のときに使ってたような. 参照先のURLはとっても面白いので皆さん一度見てみてください.

ちなみに,昨日の院試の英語が Bose-Einstein凝縮の話でした. 以前にこの番組を見ていたのでパーフェクトでした.(^^;

> 最近部屋が散らかってるのがやたらと気になるんですが,掃除に現実逃避してしまわないよう散らかしたままです.

良くあります.気が付くと掃除してたり,本棚の本を並べ替えてたり. エントロピーの増加は自然の摂理なので放っておいても大丈夫でしょう.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

CO さんのレス (2004/08/05(Thu) 19:30)

うあっ,なんか横に長くなっちゃって表示がおかしいですね.(firefox) でも URL を短縮することもできないっぽいのでこのままにしておきます. 管理人さんごめんなさい.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

hayato さんのレス (2004/08/06(Fri) 12:31)

>COさん >Bose-Einstein凝縮という現象があるんですが,その実験のときに使ってたような. この実験で用いるのはレーザー冷却です.私の研究テーマでもあります. ただ,レーザー冷却はドップラーレーザー冷却,サイドバンド冷却やラマン散乱などを利用したものなどいろいろありますが,典型的にはプラズマの重心系でみる温度をmK程度まで下げることが可能で,この状態であればプラズマを構成しているイオンなどを空間的に局在させることができ,Bose-Einstein凝縮を観測することができます.あと日本の標準時もレーザー冷却で局在化させた粒子の半減期を利用しています.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

崎間@管理人 さんのレス (2004/08/09(Mon) 17:04)

> なんか横に長くなっちゃって表示がおかしいですね.(firefox)

長いURLを折り畳めないのは, Mozilla系ブラウザ(Geckoエンジン)の有名なバクです. こればっかりはIEの方が優秀ですね.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

ken さんのレス (2004/08/13(Fri) 12:10)

kenです. 今週,会社で使っているコンピュータを入れ替えていました. FireFoxもver0.93にあげました.

すると,長いURLが短くなっているではありませんか. 長いURLを折り畳むのではなく文字が短縮されている. これで本当にアクセスできるのか見てみましたが, アクセスできました.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

CO さんのレス (2004/08/13(Fri) 15:01)

> すると,長いURLが短くなっているではありませんか. > 長いURLを折り畳むのではなく文字が短縮されている.

あ,ああ (^^; なんとなく気持ち悪かったので修正しました. なんか,URLを短縮してくれるサービスがあったので. 詳しくは参照先をどうぞ.

Re: 物質中の光速は c ではないのか?

ken さんのレス (2004/08/13(Fri) 15:22)

>あ,ああ (^^; >なんとなく気持ち悪かったので修正しました. >なんか,URLを短縮してくれるサービスがあったので.

そうでしたか. Win98をXPにしたり,FireFoxのバージョンを変えるだけでは 説明のつかない現象だったので,あれ,と思いました.