1メートルの定義を調べたら光が真空を1/299,792,458秒間に進む距離とありました. ガラスとか空気とかは光の色によって屈折率が変わりますが, 真空は色によらず一定の屈折率ですか?
クジラさん,初めまして.
もしも, >真空は色によらず一定の屈折率ですか?
が起こると;
白色光線を長い距離はなれた点に向けて発射すると, そこでは,受光始めに,「時間差の虹」が計測されますね.
恐らく,太陽系の規模でも,この効果は大きく出る様な気がします.
zoroさん,面白いことおっしゃりますね(笑) しかし,残念ながら現実にはそのようなことは起きません.
結論から言うと,真空には,電場や磁場を打ち消すように働く原子がないからです.
それを説明してみます.
屈折率は,
が定義です. nが屈折率,cが真空中の光速度,vが媒質中の光速度です. つまり,真空中の光速度と媒質中の光速度の比が屈折率です.
そして,媒質中の光速度は,マクスウェル方程式から導かれるのですが,
となります.
と は,それぞれ,媒質中の誘電率,透磁率で,物質の種類によって変わってくるのはもちろん,光の色(光の振動数)によっても異なる値を示します.
なぜ媒質の屈折率が光の色によって変わってくるかという質問は,いいかえると,なぜ光速度が色(光の振動数)によって変わってくるかということになります.そして,光速度は誘電率や透磁率に関係するのでした. つまり,誘電率や透磁率がなぜ振動数に依存するのかを考えればよさそうです.
まず,誘電率とはなにかを考えてみます.
物質を構成するのは原子ですよね. そして,核はプラスの電荷をもち,電子はマイナスの電荷をもちます. 電場の波が媒質中(物質中)を伝わるとき,電子が揺さぶられまして, 電子は基本的には電場を打ち消すような方向に動きます. 打ち消されれば打ち消されるほど,誘電率は大きくなります. これを「分極を起こす」といいます.
その電子は,入ってくる光の色(振動数)によって違う反応をします.極端な話,振動数が大きな極限では,電子は質量があるので,場のすばやい変化に追いつきませんよね.そこでは,電場は打ち消すように動けません.このように,誘電率は振動数に依存するわけです.
一方,真空では分極は起きません.電場を弱める原子がないからです. つまり,誘電率や透磁率は,振動数によりません. よって,真空中では光速度と屈折率は振動数によらないことが分かります.
>>真空は色によらず一定の屈折率ですか?
クロメルさんのおっしゃるように 『空中では光速度と屈折率は振動数によらない』 わけで,だからこそ1mの定義が 『光が真空を1/299,792,458秒間に進む距離』 というわけですね.
しかし真空中でなく,何らかの媒質を光が伝播するときは
>白色光線を長い距離はなれた点に向けて発射すると, >そこでは,受光始めに,「時間差の虹」が計測されますね.
ということになります. これは実験ではちょっと確認が難しいですよね.しかし 現代のテクノロジーを使えば,確かめられます. きわめて短いパルス光を出すレーザがあります. このパルス光はさまざまな周波数を含んでいて, 白色光に近いともいえます.これを1mほどの長さの 水槽に通して,出てくる光を観察すれば, 赤が先に,青が後に出てくることがわかるでしょう. その時間差は10ピコ秒程度と思います.うーむ. しかし何とか計れそうな気もしますね.
もうひとつ,宇宙にはパルサーという,電波のパルスを出す 天体があります.宇宙空間といえども完全な真空ではなく, とても希薄なプラズマ・ガスがあります.そうすると 周波数(電波の色)によってパルスの到来時刻に差がでます. これははっきりと観測されていて,周波数によっては1秒程度の 差になります.
みなさんへ,
今回のジョークは度が過ぎた様で,ご免なさい.私は,高校の物理の時間に,この手の自問自答をして楽しんでいました(笑).
クジラさんの質問が,如何にも自分が作っていた自問の雰囲気に近かったので,茶々を入れてしまいました.もしも,此れが起きたらと考えているうちに,時間差プリズムを連想し,ちょっと捻って「時間差の虹」が出て来たので,書き込みをしてしまいました.ちょっと思慮がたりなかったかな,と反省しています.
以前,木星のイオの食のスレッドで,光速で1hr程度の距離のスケールだと思ったので若し在れば見つかっていて可笑しくないと思ったからです.でも,そんな話を聴いた事は在りませんね,という気持ちでした.
他方,宇宙空間には「希薄ながらもプラズマ」がそんなにあり,パルサについて,そんな観測すらなされていたのは面白いですね,ギャフン.
私としては,大エネルギの光,というよりは光子ならば,ある種の対創成を中間状態とした高次の摂動の影響で,何らかのエネルギ分散が出てくるような気もします.でも,それは「可視光」の性質を説明するのとは,別問題ですね.
という訳で,私の説明は撤回しますので,お許し下さいませ.
みなさん,ありがとうございます.真空は本当に何にもない世界なんですね.
もうひとつ光について質問したいのですがいいでしょうか?
光(可視光)も電場と磁場で形成されているなら 磁石で曲がったり帯電しているところで曲がったりするのでしょうか?
光は電磁波すなわち電磁場の振動が伝わる波です. 電磁場が従うマクスウェル方程式は線形なので重ね合わせの原理が成り立ちます. そのため,ある領域に電磁場があってそこに外部から電磁波が入射した場合,その領域の電磁場は,もとの電磁場と(その電磁場がない場合の)電磁波の電磁場との単なる重ね合わせになります.電磁波がその領域の外に出ると重ね合わされる電磁場がなくなるので,電磁波がそのまま伝わった場合と同じになります. つまり電磁波は他の電磁場の影響を受けないので,磁石や電荷の影響を受けて曲がることはありません.
また,光子が運動すると考えても,光子自身は電荷を持たないので電磁場から力を受けて曲がったりすることはありません.
>真空は本当に何にもない世界なんですね.
というのは,可視光の前後の波長ではそうだと思いますが,少なくともエネルギが1MeVより大きくなって来ると,電子-陽電子対が出て来たりして,真空はとても騒がしくなると思います.
光の進行方向は,yamaさんのご解説の通りだと思います.
でも,光の偏光面の場合,磁場が光の進行方向に平行に印可されている場合に,偏光面の回転を起こします.此れをファラデー効果と言ったように思います.
#中学生のころ実験するつもりが,塩水の電気分解をして,塩素に咽せていらい,実験するのを忘れていました(苦笑).
また,うろ覚えですが,糖などの化学物質は偏光面を回転させると思いました.
ご参考まで.
ちょっと気になったので一言だけ, zoroさんのおっしゃったファラデー効果は, 物質中を通る時に光の進行方向に平行に磁場をかけた時なので, 注意してくださいね.
クロメルさん,
>物質中を通る時に光の進行方向に平行に磁場をかけた時なので,
おっと,うろ覚えで書いたのはまずかったようですね.透明なガラスでいいはずだと思っていたのですが,少なくともファラデーさんは鉛ガラスで実験したようです.多分,屈折率が大きいことが大切なのでしょうが....
ヒョットして,この現象の理論をご存知ですか?
>zoroさん
タイムリーですね(笑) ええ,昨日光物性物理の試験を受けました. その試験のテスト範囲でしたよ.
書いてみましょうか? 記事にしたほうがいいかな?
>昨日光物性物理の試験を受けました.
なるほど,そういう分野が出来ていたのですか,知りませんでした.
半導体の製作技術をベースに,トンネル顕微鏡的な手法などを使って,新たな物質をつくって,光学的挙動を探求するのでしょうか.量子力学,電磁気学,半導体物理などの交差する所でもあり,ホットな領域なのでしょう.自分としては,このような領域では「非線形現象」が面白そうだと感じます.
>書いてみましょうか? >記事にしたほうがいいかな?
正に,将来,このような領域に興味を持たれる学部生の皆さんへのガイダンスに有用でしょうね.同時に,昔に興味を持った老人にも興味深いものになるでしょうね.記録性の観点から,記事に纏めるのが良さそうですね.
>ちょっと記事にするのはお待ちください^^
楽しみにしています.
若い時にレビュー(概説)を書くと実力アップしますしね.大筋が合っていれば,細かな間違いは後から修正すれば良いですし.