はじめまして. 現在高校2年生で,電場やコンデンサーなんかを勉強している最中です. 早速質問なんですが, どうして電子は不の電荷を持つのでしょうか? また,どうして同じ電荷同士は反発しあい,違う電荷同士は引き合うのでしょうか. 色々と検索してみたんですが,まったく手がかりがつかめませんでした. ひょっとしたらまだ解明されていないのでしょうか? わかっている方がいましたら,どうかよろしくお願いします.
yajさん,初めまして.
昨年から,この数式掲示板に出没している老人です.一緒に考えて見ましょう.
>どうして電子は不の電荷を持つのでしょうか?
歴史的には,電池での電流の方向についての定義があって,電子が負電荷,水素イオン(陽子)が正の電荷になったのだろうと思います.
摩擦で発生する「電気」には,「相互に反発する場合」と「引き合う場合」の認識は在ったと思います.それをいつ頃の時点で,正負の電荷と結びつけたのかを知りたい所ですね.きっと識者の方々から教えてくださると推測します.
>ひょっとしたらまだ解明されていないのでしょうか?
どこら辺に疑問を持つか,もう少し詳しく書いて戴く必要がありそうですが,万有引力の場合は,引力しか許さない;言い換えれば「質量には正負の区別が無い」;のに対比して,「電荷には正負の区別が入った」ように思います.
電子の電荷は正としてはいけないのかということでしょうか.
それはですね,電子の存在を確認する前に電池で電荷というものを定義したからです.電池は,ある物質A(酸化作用の強い物質,酸化剤)とある物質B(還元作用の強い物質,還元剤)があって,それぞれを正極と負極(電気分解のときは陰極と陽極と言い方が違いますので注意してください.受験の時に,けっこう重要な知識です)と呼んでいました.
ここで負極に対する正極の電位(符号付き電圧の差)を正と定義したわけです.少しわかりにくいですね.言い換えると,正極から負極に「正」の電荷が流れていると考えたわけです.ここで正の電荷が定義されました.ここで注意してほしいのは,正の電荷が流れていることは,逆向きに負の電荷が流れているとも言えます.正極と負極はこの時点で対称だと思われていました.
ところが,科学が進歩してミクロの世界のことがわかってくると,実は電線を流れている粒子は,電流とは逆向きに流れている粒子が原因だと分かりました.陰極線の発見です.ガラス容器に蛍光体を塗り正極と負極を両端に置きます,容器の中を真空中にして電気を流すと,陽極側だけが光るのです.これは陰極(電池の負極につながった電極)から出た粒子が,陽極側のガラスに加速されてぶつかって発光していると考えられます.ここで正極と負極は対称でないことが確認されたのです.この粒子は,電流と逆向きに流れるので負の電荷をもつことになります.この粒子が電子と呼ばれて,現在にいたる訳です.
と,ここまで書きましたが,yajさんはすでに化学の授業は受けていますか?電池について分からなかった場合は,電池によって正の電荷と負の電荷が定義されたと考えてください.
それと,同じ電荷がなぜ引き合うのかは,説明できないと思います.現実世界がそうあるからだとしかいいようがありません.なんとかの法則というのは,そういうことが起こるといいますが,なぜかは説明しないからです.でも,同じ電荷同士が引き合う世界では,負極にある粒子が引き合うので,電流は流れないことになります.
わざわざ丁寧にありがとうございます. 少し質問が抽象的すぎたみたいです. wikipediaによれば,「電子の電荷の大きさは電気素量に等しく符号はマイナス」なのですが,なぜ,電子は電荷,つまり電気を帯びるのでしょうか. 授業では,一般的な物質(エボナイト棒など)が電気を帯びるのは電気を持った電子が移動するからである,というのは習ったんですが,なぜ電子が電気を持つのかまでは教えてもらえませんでした.
>それと,同じ電荷がなぜ引き合うのかは,説明できないと思います.現実世界がそうあるからだとしかいいようがありません.なんとかの法則というのは,そういうことが起こるといいますが,なぜかは説明しないからです.
自分は,電荷に引力や斥力が生じるのは(つまりクーロンの法則が成り立つのは),その現象よりもさらに原始的,根源的な現象が原因(たとえば,はく検電器が開くのは,それが負(または正)の電気を帯び,その電気の間に斥力が働くから,そしてその電気の間に斥力が働くのは・・)だと思ったんですが,やはりもうここまで来ると説明のしようがなく,世界はそういう風にできている,としかいえないのでしょうか.
要は,なぜ電気という性質がこの世界に存在するのか,電気という性質を引き起こしている現象は何なのか,がよくわからなかった訳です.
>要は,なぜ電気という性質がこの世界に存在するのか,電気という性質を引き起こしている現象は何なのか,がよくわからなかった訳です.
現在の物理学の枠組みでは,この問いには回答出来ないと思います.その意味では,質量がどうしてそのような性質をもつのすら説明出来ないと思いまあす.
しかし,「未来永劫にそうかどうかは判らん」と思います.ヒョットすると,この点については,数学と物理学の違いなのかも知れません.
ただし,ギリシャ時代にすでに「電荷に正負が在ると知られた」としても,今の時代に生きている「正負の電荷をもつ水素原子の振る舞いを説明」できたりする訳で,知識の進歩は厳然としてあるのだと思います.ある種のブレーク・スルーがあって,電荷や質量の振る舞いを説明出来たら面白いと思います.
この説明を書いていると,大学生の頃,電子の電荷と陽子の電荷が全く同じ絶対値になるのがとても不思議に思えたのを思い出しました....
ありがとうございます. 「この世界の全ての現象は,(最終的には)物理学によって記述出来る」と考えていたんですが,やはりそれは(認めたくはないですが)不可能なような気がしてきました.
wikipediaで調べたところ,万物の理論(「自然界に存在する4つの力,すなわち電磁気力・弱い力・強い力・重力を統一的に記述する理論(統一場理論)の試みである.」 超弦理論など)を利用すれば, 「素粒子のあらゆる性質が説明できるばかりか,宇宙(=時間と空間)が誕生し,消滅する様子さえも理解できる,究極の物理理論になると期待されている.」というように電子(これも素粒子なので)の引力,斥力などの性質も説明できそうなことがわかりました. しかしながら,なぜその理論が存在するのか,それが成り立つのか,を考えると,やはりそれはもう説明できそうにありません(それを説明する,「新しい理論」が完成したとしても,その「新しい理論」を説明するにはさらに"新しい理論"が必要でそれを説明するためには・・).
本当に世の中わからないことだらけです.
そういう質問でしたか,場の量子論を学ぶと電磁気力は,光子のやり取りによって起こる.というような話になるらしいのですが,僕もまだそこまで到達しておりません.でも,そこでもさらに,では光子とは何かという疑問が出てきます.
>それを説明する,「新しい理論」が完成したとしても,その「新しい理論」を説明するにはさらに"新しい理論"が必要でそれを説明するためには・・
おっしゃるとおりですね.誰だったか忘れましたが,偉い先生が同じことをおっしゃっていました.
大変おもしろい話をしているので,知らないことばかりの人間ですが少しまぜてください.
電子がなぜ電荷をもつのか?それはどうして電荷素量1.6×10の‐19乗(C)なのか という質問に今答えることができる人はまあ,いないでしょう. しかし,超弦理論では,パラメータは1つしかないそうです.つまりこの1つの数から電子の電荷,質量,あるいはありとあらゆる物理定数が求められる可能性(あくまで可能性)はあるそうです. しかし,超弦理論が正しいかどうかはまだわかりません.そしてそのひとつのパラメータはどう決まるのかも答えられないでしょう. ただ,そう落胆するのはまだ早いかもしれません,ということが言いたかったわけです. また,わからないことが多いことはこれから学ぶものにとって楽しみがたくさん残っていることでもあります.
ただ物理は「物の理」の学問です.目の前の現象を認めないことにははじまりません.とりあえず,「そういうもんなんだ」と思うことも時には大切かもしれませんね.