水の屈折率を4/3とします. 真空中で400nmの紫は,水の中では,波長が縮んで,300nmになります. この光は,水の中では,紫外線となって,人間には見えなくなってしまうのでしょうか. それとも,水の中でも,振動数は変わりませんので,やはり紫色として見えるのでしょうか. 色の違いの本質は,波長の違いなのか,振動数の違いなのか,それとも他にあるのか,ご教示ください.
> 真空中で400nmの紫は,水の中では,波長が縮んで,300nmになります. > この光は,水の中では,紫外線となって,人間には見えなくなってしまうのでしょうか.
人間の目の水晶体を通るときの波長に違いがありますか?
> 人間の目の水晶体を通るときの波長に違いがありますか?
水晶体中の光の波長と,真空中の光の波長の両者に,違いがあるかどうかということですか. それとも,水晶体における波長の違いが,色の違いとなって見えるのですよ,ということを言っているのですか. すみません,よくわかりません.
eKineticさん,初めまして.
視覚というのも判り難いものですね.いくつか検索してみると;
「目はどうして色が分かるの?」by キリヤ化学
に奇麗で,解り易い解説がありました.これによると;
〜〜〜引用初め〜〜〜〜〜〜 錐体細胞には3種類のヨドプシン(Iodopsin)があります.ヨドプシンはレチナールは共通ですが,結合しているオプシンはアミノ酸配列が違い,青(437 nmに吸収のピーク),緑(533 nm),赤(564 nm)の3種類があります.これら3種の錐体細胞によって色を感じることができます.人が見える色は赤,青,緑の3種類の色の混合です(3原色). 〜〜〜引用終り〜〜〜〜〜〜
とあります.
錐体細胞は,結局のところ,あるエネルギ幅の光を吸収出来る物質と考えれば良いと思います.従って,水晶体(生理食塩水?)の廻りに張り付いている錐体細胞は,波長で考えるより振動数で考えた方が解り易いとは思いますが,歴史的な流れで波長表示をしているのだろうと思います.
いつ頃から人類が,カラー映像を検知出来るようになったのか知りませんが,量子化学・電気化学の仕組みを巧みに使って脳への情報を作ったと思うと愕然としました.
> よくわかりません.
空気中の光だろうが,水中の光だろうが,観測するときには,目で見るはずです. どちらを通った光だろうと水晶体を通るときの波長はおなじ.すなわちどちらの光も同じ色に見えます.
もし,ちがうのなら,たとえば,容器にいれた水をとおしてものを見たとき(あるいは水を詰めた水中めがねを通して眺めたとき),周波数あるいは波長のシフトを通じて色の変化が観測されるはずですが,そういう話は聞いたことがありません.(分散や散乱・吸収は違う話ですね.)
# もちろん,色は水晶体あるいは硝子体で決まるのではなく,視神経につながった3種類の視細胞(錐体細胞)のどれに反応したかで決まるのですが,ご質問の前半はそれ以前の話ですね.
そうか!なるほど!だから色が変わらないのか. ということは,色を判断するのは,視神経に伝わる光子の波長という事なのかな. 神経医学も絡んでくるのですね.
> 色を判断するのは,視神経に伝わる光子の波長という事なのかな.
ええっと,念のためつっこみます.視神経を伝わるのは電気パルスあるいは化学反応の連鎖ですよ....
(追記: 「視神経に」を「視神経を」と読み違えていました.ミュフ猫さん.すいません.)
3種類の色にそれぞれ反応する視細胞を人間は目の網膜に持っています(他に白黒で弱い光も感じる視細胞(桿体細胞)もあります).例えば,赤色光に反応する視細胞に赤色光を含む光が届くと,視神経に電気信号を送ります.この信号の時系列形態は知りませんが,光の周期とは無関係なはずです.
なるほど.レスどうもありがとうございます.
>ヨドプシン(Iodopsin)
という単語は,全く見た事が無かったので,検索すると;
■The Journal of General Physiology, Vol 38, 623-681, Copyright © 1955 by The Rockefeller University Press
という概説に出くわしました.1950年代後半から論議されているようですね.このページの下に関連記事が,pdfなどで見られるようです.
#ここら辺,物理も過去のトピックスを少しずつでも纏めて解説をつけてもらいたいと思います.
■the chemistry of the eye 2
これは,日本人の研究者の方の英語による解説ですが,資料は見易いです.受光部のメカニズムも知りたいですが,視神経から脳での情報処理の側面も知りたくなりますね.
目に入る前に光がどこを通ろうと,水晶体中での波長はいつも同じ,ということですね. すごくよくわかりました.ありがとうございました.
zoroさんの紹介された,キリヤ化学によりますと,屈折率は, 水晶体1.43 硝子体1.33 とありました.
色を波長で分類する場合,たとえば,キリヤ化学のページには, 青(437 nmに吸収のピーク),緑(533 nm),赤(564 nm) などとありますが,こうした値は,水晶体や硝子体中の波長ではなく,真空中の波長ですよね?
「真空中で波長 564 nm の光は,網膜に飛び込む直前の波長は,これより短いけれど,それを錐体細胞の赤が反応する」 という理解でよいでしょうか?
>錐体細胞は,結局のところ,あるエネルギ幅の光を吸収出来る物質
色を振動数で分類すれば,あまり気にすべきことでは,なかったかもしれません.
みなさんに,感謝します.
>zoroさんの紹介された,キリヤ化学によりますと,屈折率は, >水晶体1.43 >硝子体1.33 >とありました.
あはは,自分は前の質問まで見ていませんでした.改めて見ると,このサイトは色素を専門とする会社のようですが,とても確りと資料を作られていて脱帽です.これくらい自分の仕事の周辺を整理するとは,頼もしい会社です.自分も全体を読んでみます.
また,自分は,水晶体と硝子体とをあやふやにしていました.レンズ〜水晶体ですね.でも硝子体も結構大きな屈折率なので驚きました.
>色を波長で分類する場合,たとえば,キリヤ化学のページには, >青(437 nmに吸収のピーク),緑(533 nm),赤(564 nm) >などとありますが,こうした値は,水晶体や硝子体中の波長ではなく,真空中の波長ですよね?
恐らく「真空中の波長」でよいと思います.
>「真空中で波長 564 nm の光は,網膜に飛び込む直前の波長は,これより短いけれど,それを錐体細胞の赤が反応する」 >という理解でよいでしょうか?
でしょうね.ただし,資料によって,緑と赤の最大感度波長が違っています.これはどうしてなのか判りませんでした.
>>錐体細胞は,結局のところ,あるエネルギ幅の光を吸収出来る物質
>色を振動数で分類すれば,あまり気にすべきことでは,なかったかもしれません.
この際ですから,与えられた波長を持つ光子のエネルギを「eV」にでも変換する事を考えて見ましょう.簡単に筋を追うだけなので,適当に書きます;
ここで,
ここで,
に注意すると
だから;
さらに見やすく変形すると;
従って,波長, の光子のエネルギ とすると;
先に引用された, >青(437 nmに吸収のピーク),緑(533 nm),赤(564 nm) により,色毎の,波長とエネルギを出してみました. <pre> 色 波長 エネルギ ーーーーーーーー 青 437nm 2.8eV 緑 533nm 2.3eV 赤 564nm 2.2ev </pre>
確かに結構なエネルギを持っているのですね.でも微妙なエネルギ差でもあります.
>でも硝子体も結構大きな屈折率なので驚きました.
硝子体の屈折率が1.33ということは,ほとんど水でできているのでしょうね. それに対して水晶体はタンパク質を多く含んでいるために屈折率が高くなっているのでしょう.
>硝子体の屈折率が1.33ということは,ほとんど水でできているのでしょうね.
おっと,水の屈折率を忘れていました.ご注意を感謝します.熱力学と幾何光学は鬼門でした....
【追伸】
冒頭の >水の屈折率を4/3とします.
に今頃気づきました,ご免なさい.
話題を広げていただいて,勉強になります.
>青(437 nmに吸収のピーク),緑(533 nm),赤(564 nm)
赤を担当する錐体細胞の吸収のピークが,564 nmというのも,不思議です. 564 nm付近はおそらく黄色. この先に橙があって,それから,赤のはずだと思うのですが…
> 赤を担当する錐体細胞の吸収のピークが,564 nmというのも,不思議です.
おもしろい解説がありました.
> * 脊椎動物の内哺乳類以外の動物は3色または4色型の色覚を持つ事が多い. > * 哺乳類の多くは2色型色覚である. > * 哺乳類の内ヒトを含む狭鼻猿類は3 色型色覚を有する.進化の過程で一度失った3色型色覚を後に再獲得したものと考えられている.緑錐体の特性を僅かに変えることで赤錐体を得ており,赤錐体と緑錐体の特性の違いの少ない歪な3色型色覚ともいえる.
緑錐体を改造?して赤用につかっているのでピークが緑寄りなんでしょうね.
>赤を担当する錐体細胞の吸収のピークが,564 nmというのも,不思議です. >564 nm付近はおそらく黄色. >この先に橙があって,それから,赤のはずだと思うのですが…
これは,3種の細胞による光の吸収量の比によって色が決まるためだと思います. 例えば,564nmの光は赤を担当する細胞によく吸収されますが,同時に緑を担当する細胞にもよく吸収されるため,黄色に見えるのでしょう. 600nm付近では,赤を担当する細胞による吸収は少なくなりますが,緑を担当する細胞による吸収はそれ以上に少なくなるため,橙色に見えるのでしょう. 650nm以上では,赤を担当する細胞による吸収はさらに少なくなりますが,緑を担当する細胞による吸収がほとんど0になるため,赤色に見えるのでしょう.
> これは,3種の細胞による光の吸収量の比によって色が決まるためだと思います.
ここら辺の話は
4次元の色彩: 4原色生物の色覚を考えてみよう に詳しく書いてあります.
> 進化の過程で一度失った3色型色覚を後に再獲得したものと考えられている. 感動的で,すごい話です. 赤錐体と緑錐体のグラフがよく似ているのは,そうした進化の背景があるのですね.
> 564nmの光は赤を担当する細胞によく吸収されますが,同時に緑を担当する細胞にもよく吸収されるため,黄色に見えるのでしょう.
なるほどです.よく理解できました.
かなり以前, 「太陽の放出する電磁波の強度分布が,ちょうど人間の目が感知できる領域と一致していたため,人間は地球上で生き残った」 といった話を聞いたような気がするのですが,確かにそういう話だったかどうかは自信がありません. そのような説はあるのでしょうか?
質問が膨れていってしまい,すみません. いずれにしても,ありがとうございます.
非常に興味深いお話ですね.
遺伝子配列の揺らぎによって,偶然そのような可視光を感じる器官をもった生物の個体が現われたとしたら,周りの状態を把握できますから,危険を察知したり,仲間や餌をうまく探せたり,ほかの個体よりも環境への適応度(生存して子孫を残すことができる可能性)が圧倒的に大きくなります.
一方,地上に届かないような電磁波を感じる器官が偶然できたとしても,電磁波が届かない場所ですので真っ暗で何も見えません.よって,適応度は変わりません.あってもなくても同じです.
よって,可視光をみる目を持つ個体が子孫を残して目の遺伝子を受け継いでいけば,ほかの個体より子孫を残しやすく,長い時間ののちには,その生物種のうちの個体の大半がその遺伝子を持つようになります.それは,もう違う種になったといってもいいでしょうね.こうして進化が起こって,目がわれわれ人間などの生物に受け継がれてきたわけです.
進化論という学問的には,この議論は十分妥当(数学のように厳密な証明などのない分野ですので,正しいと言ったら怒られるかな)で周りの支持を集められる議論だと思います.
ちなみに進化の仕組となぜ人間はこのような生物になったかを進化論的に詳しく書いてある本として,「進化と人間行動」長谷川寿一,長谷川眞理子著(東京大学出版会)があります.残念ながら目については書いていないようですが,難しくなく(出てくる数式は簡単な確率論くらい)楽に読めて,最新の進化生物学に触れられるとても面白い本です.興味があったら読んでみてはいかがですか?
>> 進化の過程で一度失った3色型色覚を後に再獲得したものと考えられている. >感動的で,すごい話です. >赤錐体と緑錐体のグラフがよく似ているのは,そうした進化の背景があるのですね.
全く同感です.自分も長年の疑問が解消して嬉しいと同時に,問題がとけてしまったのを知ってがっくりしています.
>ここら辺の話は > http://dog.intcul.tohoku.ac.jp/hobby/furu-color/ >4次元の色彩: 4原色生物の色覚を考えてみよう >に詳しく書いてあります.
まだ良くわからないですが,波長観測数が1チャンネルと2チャンネルとが本質的に違うのに驚きました.
また,3チャンネル,4チャンネルの拡張まで論議されているのには拍手ですね.数学的なn次空間の話を見るに付け,相対論以外の具体例を見たかったのですが,すこし安心しました.ジックリ読んでみたい分野だと思います.
この2次元と3次元との振る舞いの差と,実際にある色覚異常とを対比すると,脳内に於ける高次処理での障害点を詳しく論議出来そうですね.逆に治療の指針が得られたりすれば,素晴らしいでしょうね.
こんな新鮮な資料が,インターネットで公開されているとは,我が国の科学力の強さを感じます.
お礼が遅れてすみません.
たくさんの方々から,常に,質の高いお返事をいただき,ありがとうございました. 熱意ある人たちの存在が,学習の励みになっています. また,お世話になると思いますので,どうぞよろしくお願いいたします.
以上,簡単ですが,お礼まで.