こんにちは. 理学部物理学科の2年です. グロー放電の原理は理解できるのですが,アーク放電とグロー放電の違いがよく分かりません. グロー放電の電流がただ増加しただけではないですよね? どなたかご存知であれば教えてくれると幸いです.
はるさん,初めまして.
いささか古い記憶を辿って書いてみます.
グロー放電と聞くと,「ガイスラー管とインダクションコイル」を思い出します;
Vacuum Technology (Takagi Ikuji)/3−6ガイスラー管
が,ありました.真空系を組上げる時に,何度もお世話になりました.
他方,アーク放電と聞くと,「カーボン膜蒸着」を思い出します.カーボン電極を尖らせて,他のフラットなカーボン電極と接触しておき,真空にしてから電流をかけて加熱してから離すとアーク放電が起きたように思います.
従って,経験的には「グロー放電は優美な現象で,真空が良くなると見えなくなる」という感覚です.他方「アーク放電は馬力のある現象で,明るく・熱い」という印象ですね.
簡単な説明はWikipediaにあります.
やや詳しい説明が,霜田光一「エレクトロニックスの基礎」(裳華房)の中に書いてあります.現行版の「エレクトロニクスの基礎(新版)」の旧版に当たるものです. 放電自体をテーマとして書かれた本もいろいろあるようです. 図書館などで,見られるといいでしょう.
はるさん
(大気圧アークや水中アークもありますが,ここでは分かりやすいように蛍光灯相当の低圧アーク放電について述べます.)
まず,圧力を1気圧よりも下げた状態で+極,−極の間に高い電圧をかけます.すると,−極からは高い電圧によって少しづつですが電子が飛び出し,+極に達するようになります.この時,もし−極から+極に向かう途中で電子が封入ガスの原子に衝突すると,その原子を励起して,ボーっと光ります(光るのは原子の回りを回っている電子が励起されて,そして元の準位に戻るときに発する光です.).これがグロー放電の状態です.グロー放電の特徴は高電圧で,少しの電流しか流れないことです.
やがて−極から飛び出した電子がある程度のガスを電離するようになると,+−極間をなだれのようにたくさんの電子がわっと流れます.これは徐々にそうなるのではなく,突然そういう状態に移ります.こうなると電圧はとても低くなって(−極から電子が出やすくなるためです),大変明るい光を放つようになります.光が出る原理はグローの時と同じで気体原子の励起によるものですが,その量が桁違いになります.この状態をアーク放電といいます.蛍光灯では初め一瞬だけ高電圧がかかってグロー放電が起こり,その後すぐにアーク放電になります.アーク放電は大電流,低電圧です.
因みに,ネオンサインのネオン管は,あれはアーク放電に移行せず,ずっとグロー放電をしています.明るさよりも色彩を重視しているからでしょう.
返事がおくれてしまいましたが, 皆さん早速のお答えどうもありがとうございました. koredeiinaさんの説明でひとつわからない点があるのですが, >>やがて−極から飛び出した電子がある程度のガスを電離するようになると,+−極間をなだれのようにたくさんの電子がわっと流れます.これは徐々にそうなるのではなく,突然そういう状態に移ります. これは蛍光灯管内のイオンが増え,電流が流れやすくなる為ですか? また,突然その状態に移るのはなぜしょうか?
はるさん
ここは私の説明が不適切でした. 電子によって管内の電離が進むと,管内の気体の電気抵抗が下がります.で,もっと多くの電流が流れるようになります.電流が増えるにつれて,電子を放出する陰極の温度は上昇し,熱電子放出が盛んになります(グロー放電では2次電子放出と呼ばれる機構によって電子が出ています)熱電子がたくさん出るともっと電離が進む.もっと電流が流れるのでもっと陰極の温度が高くなる,そしてもっと熱電子が出る... そして熱電子放出が支配的なアーク放電へと移行します. 即ち,たくさんの電流が流れるようになると,陰極からの電子放出が盛んになって,正の連鎖反応を起こすわけです.この陰極の機構について説明が足りませんでした. こんな説明で分かりましたでしょうか.