静止摩擦力の向きについて

静止摩擦力の向きについて

こうじろう さんの書込 (2007/04/26(Thu) 15:21)

こんにちは,僕は浪人生です. 河合出版のエッセンスのP46の問題です. 高校物理で恐縮ですが…

滑らかなな床上に,質量m,MのA,Bを重ねておき 下のBを一定の力Fで引くと,A,Bは一体となって動いた. 加速度とA,B間の摩擦力fを求めよ.

一体化した運動方程式を使って,まずaを求めることはできました. a=f/(m+M)となりました. ただ次のfで,aでAが右向きに動いていることから,Aには同じく 右向きの静止摩擦力が働いていることがわかる. と解説にはあります.

運動方程式のaが力の向きというのはわかるんですが, Aが右向きにすすむのなら,Aにはその反対方向の左向きに静止摩擦力が働き, その反作用として,右向きにBがかかるんではないんですか?

なぜAには右向きの摩擦力がかかって,その反作用としてBに左向きにかかるんでしょうか. 摩擦力の働く方向の見分け方を教えてください. どうか,よろしくお願いします.

Re: 静止摩擦力の向きについて

Joh さんのレス (2007/04/26(Thu) 16:10)

問題のaは直接(押す人からの)外力を受けてないので,摩擦がなければ慣性の法則により,その場にずっと居たかったに違いありません.aが右に動いているのは,まさにbから受ける摩擦力によってです.

摩擦力は,常に何か他の外力に対抗する形で現れます.

Re: 静止摩擦力の向きについて

komagatake さんのレス (2007/04/26(Thu) 19:01)

摩擦力は何時も運動の反対向きと思っているのではないでしょうか.じゃまをするというイメージで摩擦力を考えているからです.高校生に多い間違いです.

上にあるAにとっては摩擦力は推進力です.摩擦がなければ動くことができません.その分下にあるBにとっては負担です.Bに加わっている力を見るとfがまるまるBに働くのではなく摩擦の分だけ小さくなります.それはBがAを引っ張っていることに対応します.紐で引っ張っているのも摩擦で引っ張っているのも同じだとして貰うといいでしょう.

作用・反作用は同じ物体について考えるのではありません. Aの立場で見たときとBの立場で見たときの関係を言っているものです. これもよくある誤解です.

Re: 静止摩擦力の向きについて

こうじろう さんのレス (2007/04/27(Fri) 13:40)

こんにちは. 丁寧な解答ありがとうございます. とても参考になります.

>Johさん 慣性の法則によって,ここにいようとするのにaを求めたところ右に動くことがわかったが,外力がないのに右に動くというのは摩擦力が働いているからという推察でよろしいんでしょうか? ちなみに,ここでいう他の外力に対抗するってのは,Fの外力によって右に動こうとするBに対して,対抗するという形でBにも摩擦力がかかるということですか?

>komagatakeさん 恥ずかしい勘違いばかりして申し訳ないです. 一生懸命お二方のお言葉を受け勘違い,間違いを正していきたいです. Aがのっているのは負担があるから,その分摩擦力が左にかかるってことですね 紐で引っ張っているのも,摩擦で引っ張ってるのも同じというのはどういうことなんですか? うまく理解できません.

また,摩擦力の向きを考えるときの思考の流れというのはどういう風にすすめていけばいいんですか?

Re: 静止摩擦力の向きについて

佑弥 さんのレス (2007/04/27(Fri) 18:49)

はじめまして.

摩擦力の向きをどう考えていけば良いかですね. 普通摩擦がなければ物体が面に対して相対的にどちらに動くかを考えて,その反対向きに摩擦力が働くとすれば良いでしょう.

摩擦力が働くメカニズムは解明されていないので(色々考えられてはいますが…),正確に考え方を示せないので残念ですが,次のように考えると分かりやすいでしょう. 考え方1…粗い面と物体をギザギザと考えてみる. 考え方2…物体が自分の重さで面を押すうちに軽くくっついてしまうと考える.

今のところ2の考え方をより正確にした考え方が有力ですが,まだ課題もありますのでこれくらいの紹介にしておきます.

Re: 静止摩擦力の向きについて

zoro さんのレス (2007/04/27(Fri) 22:14)

こうじろうさん,初めまして.

私も,摩擦力が嫌いです.でも最近,水泳の力学的分析にはまり,粘性に悩んでいます.ある意味,同じ悩みを持っているのかも知れませんね.

さて,

>摩擦力の向きを考えるときの思考の流れというのはどういう風にすすめていけば

というのは,とてもクールな疑問だとおもいます.私だったら,一度,「だるま落とし」という玩具を買って来て遊んでみるのが簡単です.

今は,手元にそんな玩具はありませんが,近くの乾電池のスレッドで「9V積層電池」の測定の話があり,古い電池を探したおかげで,壊していない9V積層電池(角形)が2つあったので,やや重たい筆記具を「叩き棒」にして叩いてみました.

思いの外,うまく巧く落とせたり出来ました.今回の場合,巧く落とせるより,巧く落とさない場合の動きをジックリ観察すれば,どんな計算をすれば良いか,見えてくるように思います.

いま,考える運動が水平面である限り,摩擦力の力は,上の物体の質量,重力加速度,上と下の相対速度によって決まる事は与えられているとします.問題は,摩擦力の方向の決め方も大事ですが,動き出すまでは,与えられた外力に応じた抗力を出す事出す事だと思います.逆に言えば,動き出すまでは,自動的に抗力が外力にバランスしています.ところが外力が静止摩擦力の大きさに達したら,今度は,抗力が運動摩擦力に遷移してしまうことです.

私は,高校のころ,上記の遷移が理解できなかったことと,方向が決め難かった事で,摩擦現象が苦手でした.

もし,学校や公営の図書館で,下記の本をごらんになれたら,面白いですよ.

トコトンやさしい 摩擦の本, 角田和雄・著, 日刊工業新聞社,2006-02, ISBN 4-526-05598-0

パラパラと眺めるだけでも良いかも.でもこの本では,計算が出来るようにはなりません.

Re: 静止摩擦力の向きについて

komagatake さんのレス (2007/04/27(Fri) 23:13)

こうじろうさんkomagatakeです.

佑弥さんの書かれた

摩擦力の向きをどう考えていけば良いかですね. 普通摩擦がなければ物体が面に対して相対的にどちらに動くかを考えて,その反対向きに摩擦力が働くとすれば良いでしょう.

分かりましたか.

力はBに働いています.Bは動きます.Aはどうして動くことができるのでしょう.摩擦があるからです.もし摩擦がなければBだけが動いてAはおいてけぼりです.摩擦というのがわかりにくければ引っかかっているとしても良いです.ある限界まではくっついている糊としても良いです.

上下でなく前後であれば連結器とか紐になります.摩擦力の代わりに張力が入ってきますが運動方程式は全く同じです.

別々の物体であったA,Bが一緒に動くということが起こるためにはBがAを引っ張る何らかの力が必要です.その力の内容が摩擦であったり紐の張力であったりするのです.

佑弥さん

摩擦力の原因として (1)ざらざら説(でこぼこ説.仮に物理的摩擦とします.) (2)くっつき説(吸着説.仮に化学的摩擦とします.) とあります.

昔読んだままの知識ですがどちらかが主というのではなくてて面の状態によって現われ方が異なるのだと思っています. 私が読んだ本は岩波新書の「摩擦の話」(曽田範宗)です.ここのところの流れが分かりやすく書かれていました.(この本が出たのは30年以上前のことなので今どうなっているかは知りません.)

ざらざら(でこぼこ,食い込み,・・・)であれば確かに摩擦が大きくなります.「摩擦の原因はそれだけか」という問題意識です.「それなら面をなめらかにすれば摩擦はどんどん小さくなるはずだ」ということになります.ところが面をきれいにしていくとかえって摩擦が大きくなる場合が見つかるというのです.本の中ではよく洗った紅茶のカップをお皿の上に乗せて傾けた場合を例にして話してしています.(この様な組み合わせの場合,普通はよく滑るというイメージがあります.でもよく洗ってあるときしきしとした感触になるというのも日常よく経験することです.著者は「この様な場合たいていは2つの物体の間に油膜のようなものがあって潤滑剤の代わりをしている.それを取り除くと「吸着」のような現象が起こり摩擦が大きくなる.」といっていたように記憶しています.)

著者の専門は軸受,潤滑だそうです(岩波全書で「軸受」という本を出していました.).摩擦と潤滑は回転するものがある限り必須のものでしょう.エンジンオイルやクラッチオイルがないとピストンやクラッチ板の焼き付きが起こります.(2)の摩擦はこの焼き付きにつながっていくものでしょう.

A,Bが木のブロックであるというような場合は(1)で良いと思います. 木のブロックの場合でも吸着説を考えるということになっているのでしょうか.

摩擦は表面状態に敏感に影響されます.手で触れば変化します.授業でやるときはチョークの付いた手で触りますから摩擦角のデモをやってもかなり動きます.摩擦係数の精度は1桁しかありませんでした.それでもこの付近というのは分かります.

Re: 静止摩擦力の向きについて

こうじろう さんのレス (2007/04/29(Sun) 15:15)

たくさんのレスありがとうございます. 非常に参考になります.

>>佑弥さん>>komagatakeさん はじめまして. これまた,わかりやすく解説していただきありがとうございます. 確かに一般的に摩擦力がないとして,その反対側という見方でやってきました.

ただ僕の質問した今回のような問題では,摩擦がなかったらという仮定ではうまくどちらにつくか見当がつきません. 僕の質問したような一見摩擦力の向きがわかりづらい問題では,加速度で動く向きを考え,こちらに摩擦力がかかっているはずだという考え方ですすめていけばいいんでしょうか?

摩擦力はまだ解明されてないんですね. 意外です. 現代物理学が発展しているのに,摩擦力が明確に解明されていないってのは驚きです.

>>zoroさん 本まで紹介していただきありがとうございます. 宅浪なので,図書館にはよくいくので拝見してみますw そんな遷移の考え方があったんですか,何か知恵の輪がほどけたような感覚です.

Re: 静止摩擦力の向きについて

zoro さんのレス (2007/04/30(Mon) 02:51)

>摩擦力はまだ解明されてないんですね. >意外です. >現代物理学が発展しているのに,摩擦力が明確に解明されていないってのは驚きです.

そういう意味では,マイナーな分野には結構,未知な部分が多く残っていると思います.

摩擦は工学的な興味が高いのにも関わらず,直接的な観測が難しい為に,なかなか研究が深化し難いのだと思います.トンネル電顕のような超ミクロな部分での観測から,実用的なマクロな摩擦面とを結ぶ方法論がないからだと思います.

すこし前のスレッドで自動車のタイヤの摩擦の話があり,昨日,本屋さんに行ったおりに,自動車のタイヤや摩擦の本を見てみましたが,定性的な話しか在りませんでした.

Re: 静止摩擦力の向きについて

こうじろう さんのレス (2007/05/01(Tue) 13:18)

ミクロとマクロですか, 奥が深いんですねw この1問で大変大きな勉強ができたような気がしました. 摩擦といっても,いろんな問題が絡んでいるんですね.

質問にお答えになってくださかった,ありがとうございました. また,わからないことがあったらよろしくお願いします. 失礼します.