電気ストーブ

電気ストーブ

crank さんの書込 (2007/04/16(Mon) 00:14)

伝熱学について勉強しているのですが,電気コンロについて,あれって熱を運ぶ方法の熱放射,熱伝導,熱伝達の内どれにあたりますか? 一応,自分は熱放射と熱伝導は関係していることは理解できたのですが,熱伝達についてはどう考えればいいのか・・・誰か知っていたらアドバイスください.

Re: 電気ストーブ

yama さんのレス (2007/04/16(Mon) 07:22)

熱伝達というのは物質の移動によって熱が運ばれることでしょうか? そうだとすると,電気コンロでは空気の対流によっても熱が運ばれるので熱伝達も関係しますね.

Re: 電気ストーブ

crank さんのレス (2007/04/16(Mon) 18:27)

返答ありがとうございます.空気の対流による熱移動があると書いてありましたが,鍋とかフライパンを直接つけるからそこで熱が運ばれて・・・っと,熱伝達が関わるってことですか?

Re: 電気ストーブ

yama さんのレス (2007/04/16(Mon) 22:23)

電熱線の発熱によって周囲の空気が熱せられ,熱せられた空気が上昇して,鍋などに当たって熱を伝えるわけです.

Re: 電気ストーブ

crank さんのレス (2007/04/16(Mon) 23:17)

わかりました.伝導と伝達の理解に苦しみましたが,なんとか理解できました.ありがとうございました.

Re: 電気ストーブ

komagatake さんのレス (2007/04/28(Sat) 10:57)

熱が伝わる仕組みは3つあります.普通「伝導,対流,輻射(放射)」という言葉が使われています.これは中学校でも出てきます.物理で使われている用語だと思います.用語が違うので分野が違うのかなと思うのですがわかりにくい使い方をしているように思います.

「熱伝達」といえば熱が伝わることを表していると思いますので 「熱伝達」の内容が「伝導」,「対流」,「輻射」であると考えるのが素直なんですが.

本当に「熱伝達」を「対流」の意味で使っているのでしょうか.意味のハッキリした用語である「対流」をわざわざ外して別の曖昧な言葉に置き換えるということを分野が異なってもやるとは思えないのですが.

蛇足になりますが3つの違いを確認しておきます.

伝導と対流は物質が熱を伝えます.放射は主に赤外線でエネルギーを伝えます. 伝導と対流の違いは物質に巨視的な流れがあるか否かです.液体と気体では対流による熱の運搬が大きいですが固体では伝導だけになります.格子振動によってエネルギーが伝わる場合は音速と熱伝導率に関係が出てきます.金属の場合は自由電子によるエネルギーの運搬の寄与が大きいですので音速との相関はあまりありません.

熱伝導の解説のサイトを見ると化学結合の違いを無視したものがかなりありますので驚きました.「金属の結合は共有結合で・・・」という様なところから出発しているのがあったのです.これをまた引用している人もいるのです.物性について話をするときに高校の化学のレベルは踏まえて欲しいと思います.

電気コンロでお湯を沸かす場合,放射と対流が主だと思います.伝導はヒータから空気に熱が渡されるところと空気からやかんに渡されるところには関係しますがやかんのあるところまでの移動にはほとんど影響してきません.

「熱伝導が関係していることは分かった」と書いてありますがこの様な理解になったのでしょうか.

トースタでヒータが縦型でパンも縦に入れるものがあります.この場合は対流の寄与は小さいです.暖められた空気は上に逃げます.パンの水分を一緒に上に逃がしているのでしょう.伝導も関係してきません.空気を暖めるだけの働きですから.輻射が主になるだろうと思います.

気象の例も出しておきます.

太陽からの熱で地表が暖まります.これは輻射です.空気はほとんどエネルギーを貰いません.まず地面が暖まります.地面に接触している空気に熱が伝わります.これは伝導です.暖められた空気が膨張し,密度が小さくなって上昇します.温度の高い空気が上に移動しますので熱を運んでいることになります.これは対流です.周囲の温度の低い気体と接触して熱を与えれば伝導で熱が移動したことになります.上空に行くほど温度が下がる理由は地表で貰った熱を上に運搬することで熱が分散するからです.大気圏の温度分布を見ると太陽エネルギーの吸収が起こるところで温度が高くなっています.その場所は地表と電離層です.

Re: 電気ストーブ

yama さんのレス (2007/04/28(Sat) 21:14)

検索してみると,「熱伝達」はkomagatakeさんがおっしゃるような広い意味に用いられるのが一般的のようですね.対流熱伝達とか放射熱伝達という言葉もあるようです.

>上空に行くほど温度が下がる理由は地表で貰った熱を上に運搬することで熱が分散するからです.

そういうこともあるとは思いますが,普通は断熱膨張による温度低下の影響のほうが大きいと思います.中学校の教科書でもそのように説明されています. 実際,乾燥断熱減率は約1℃/100mであって,平均的な気温の低下率とされる0.6℃/100mより大きくなっています. なお,地表から上空への熱の移動については,対流にともなって水の潜熱の形で運搬されるということができるでしょう.

Re: 電気ストーブ

komagatake さんのレス (2007/05/01(Tue) 21:23)

yamaさん

断熱膨張のことは書いていませんでした. 言いたかったのは太陽からの熱はまず地表が受け取るということです.その熱が順次上に伝わっていく仕組みが対流であったり伝導であったりします.ただ対流が起こるときは伝導の効果は小さいです.断熱膨張は対流に伴って起こります.対流と別に熱を運ぶ仕組みがあるのではありません.対流により上昇した空気の塊の温度が下がります.膨張で周囲の空気を押し広げるときに仕事をしてエネルギーを失うわけですから熱を伝える仕組みの一つです.

温度勾配の値が異なるのはかき混ぜが十分に起こる前の状態と起こってしまった後とを比べているからです.流れがありますから平衡状態の成り立つところを越えて上まで突き抜けます.

水の潜熱の形でというのも書いていませんでした.元々が電気コンロの話でしたのでそこまで書いていませんでした.輻射,伝導,対流の説明のための例でした.地球の環境の話だと水が重要になってきます.槌田敦は地表の熱を宇宙に捨てる仕組みの一つだと言っています.

Re: 電気ストーブ

yama さんのレス (2007/05/01(Tue) 23:28)

>対流により上昇した空気の塊の温度が下がります.膨張で周囲の空気を押し広げるときに仕事をしてエネルギーを失うわけですから熱を伝える仕組みの一つです.

そのように言うこともできると思いますが,そうすると次の記述は疑問です.

>周囲の温度の低い気体と接触して熱を与えれば伝導で熱が移動したことになります.

これが断熱膨張によって失われたエネルギーが周囲に移動することを意味するのだとすれば,それを熱伝導とは言わないと思いますし,純粋な熱伝導だけを述べているのだとすると,断熱膨張による温度低下が考慮されていないことになります. たとえば,一定の有限体積に閉じこめられた気体の一部が膨張してエネルギーを失うと,気体の残りの部分は圧縮されてエネルギーを得るわけですが,これは仕事によるエネルギーのやりとりであって,熱伝導とは言わないと思います. また,地球大気の場合は,一定体積に閉じこめられているわけではなく,宇宙空間に開かれているので,一部が膨張したからといって,他の部分が圧縮されるとは限りません.膨張によって失われるエネルギーの一部は,大気の上昇にともなって位置エネルギーに変わるでしょう.

対流によって地表から上空に熱が運ばれることは確かですが,その場合の上空への熱の移動については,上昇した大気から熱伝導によって周囲の大気に熱が伝わる効果よりも,水蒸気の凝縮による凝縮熱の放出とか,上昇した大気自体が周囲の大気と入れ替わる(従って周囲の大気は下降する)効果のほうが大きいと思います.

Re: 電気ストーブ

komagatake さんのレス (2007/05/06(Sun) 13:07)

yamaさん

書き込んで頂いているのに気が付きませんでした.申し訳ありません. 気が付いてからもどう返事していいかが分かりませんでした.あやうい理解のまま書き込みをしているからでしょう.でもこうやって書き込んでいると曖昧なところがあってもハッキリしてくるということが起こると思いますので書いています.

断熱膨張を含めると難しいですね. 伝導,対流,輻射という3つの枠組みで熱伝達を考えるということ自体が無理なのかも知れません.

気体における熱の「伝導」は分子の衝突によるものとするのでしょうね.速さの違う分子が衝突してエネルギーが渡されるということになります.すると「膨張に際しての仕事によってエネルギーが移動する」というのは「伝導」とは言わないということになるのですね.

3つの枠組みで考えるということであればどこかに入れざるを得ないのですから伝導も少し緩く考える必要があります.

圧縮したときに温度が上がるという現象を気体分子運動論で初等的に考えたことがあります.動いている壁にぶつかった分子の速度は衝突前よりも大きくなっているということではないだろうかと考えて納得していました.伝導は物質をミクロに見ている,対流とか断熱膨張は気体をマクロに見ているというスケールの違いも考えにくい理由であるように思います.

>地球大気の場合は,一定体積に閉じこめられているわけではなく,宇宙空間に開かれているので,一部が膨張したからといって,他の部分が圧縮されるとは限りません.

対流によって圧力の高い気体の塊が圧力の低い気体の層の中に突っ込んでいくのですがやはり周りには気体があります.真空に突っ込んでいくのではありません(※).膨張に際しての仕事が必要でなければ(周りに気体がなければ)温度低下もおこらないと思うのですが.

(※)上のことに付いての補足です. 大気中で対流の起こる領域は高さが制限されています.対流圏といわれる領域です.その上が成層圏になります.気象現象はこの対流圏で起こります.積乱雲の頂上の高さがほぼその高さです.1万mほどです.気圧は地表の1/5ほどになっています.100mにつき0.6℃という気温減率が成り立っている範囲はこの対流圏です.それ以上になると温度が低下しなくなります.1万m〜5万mで徐々に温度が上がっていきます.この4万mほどで50℃ほど温度が上がります.スケールの大きい逆転層が出来ていることになります.

Re: 電気ストーブ

yama さんのレス (2007/05/06(Sun) 23:19)

>対流によって圧力の高い気体の塊が圧力の低い気体の層の中に突っ込んでいくのですがやはり周りには気体があります.真空に突っ込んでいくのではありません(※).膨張に際しての仕事が必要でなければ(周りに気体がなければ)温度低下もおこらないと思うのですが.

もちろんその通りで,気体が膨張するときは仕事をしますが,その仕事によって周囲の大気の温度が上がるかどうかが問題です. たとえば,水槽の水の中に空気を入れた風船を沈めて,風船の中の空気を温めると膨張して仕事をします.熱伝導がないとすると,この仕事によって水温が上がるでしょうか?上がりません. 風船が膨張することによってする仕事は,水面を上昇させて水の位置エネルギーを増加させるだけだからです. 地表付近の大気が温められて膨張しても,それによる仕事の一部分は周囲の大気を圧縮するのに使われるかもしれませんが,大部分は地球大気を宇宙空間に押し出すのに使われるでしょう. この温められた大気が上昇する場合は,膨張して温度が低下しますが,上昇したあと,この大気がもともとあったところには周囲から大気が流れ込みます. たとえば,温められた大気の上側にあった大気が下側に回り込むとすると断熱圧縮されて温度が上昇します. また,上昇気流が持続する場合は,同時に下降気流も生じているはずですが,下降気流では断熱圧縮によって温度が上昇します. つまり上昇気流でも下降気流でも,それにともなう断熱変化の効果は,低層の気温を高く,高層の気温を低く保つだけで,低層から高層に熱を運ぶというわけではありません. 対流によって熱が運ばれるのは,既に述べたように空気自体が熱を運ぶと同時にそれに伴う水の状態変化によっても熱が運ばれるためであって,断熱変化による温度変化ははあまり関係ないと思います.

もし対流がなく,上空への熱の移動が熱伝導だけによるとすれば,低層と高層の温度差は,現状よりもずっと大きくなるはずです.しかし温度差がある程度以上に大きくなると大気は不安定になり,対流が生じます.その対流によって熱が運ばれるため温度差は縮小します.しかし断熱変化による温度変化があるため,いくらでも縮小するわけではありません.

komagatakeさんのおっしゃるとおり,対流圏の高さは制限されていますが,その高さは季節や場所によって変化し,一般に対流が活発なところでは対流圏の高さが高くなります.従って,対流圏の大気が一定体積に閉じこめられていると考えることはできないと思います.

Re: 電気ストーブ

komagatake さんのレス (2007/05/07(Mon) 15:04)

yamaさん

色々描いて頂いています. でも正直なところどう返事を書いていいか分からなくなったという感じです.

元々は熱伝達の3つの内容「輻射,伝導,対流」を説明しようとしたものです.大気を持ち出したのがまずかったのでしょうか.

温度差のあるところでのかきまぜの仕組みとして対流を出していましたので断熱膨張や水の状態変化には触れていませんでした.どちらも対流に伴って起こることと考えていました.大気の場合もやかんの水の場合でもかき混ぜは対流によって起こるとして書いたものです.密度の違いで起こるわけですから重力が関係します.上下のかき混ぜです.

>K「上空に行くほど温度が下がる理由は地表で貰った熱を上に運搬することで熱が分散するからです.」

とにかくまず地表が熱を貰ってそれが上に伝わるということを言いたかったのでこういう文章を書いたのですがコメントをいただきました.

>y「そういうこともあるとは思いますが,普通は断熱膨張による温度低下の影響のほうが大きいと思います.中学校の教科書でもそのように説明されています. 実際,乾燥断熱減率は約1℃/100mであって,平均的な気温の低下率とされる0.6℃/100mより大きくなっています.

なお,地表から上空への熱の移動については,対流にともなって水の潜熱の形で運搬されるということができるでしょう.」

この文章で「断熱膨張による温度低下を考えないといけない」とおっしゃっているように受け取りましたので「この温度低下は周りの空気に仕事をする事によるものだから熱が渡されているはずだ」と書きました.

でもyamaさんの主張は水の状態変化を考えないといけないということだったようです.上で引用した文章の「なお,・・・」とされているところが主のようです.大気の平均的な温度減率が乾燥断熱減率よりも大きいというのはそのための数字だったようです.あとから付け足しに書いてあるように見える方が主であるとは読みとれなくて方向違いの文章を書きました.確かに成層圏まで熱を効率よく運ぶのには水の状態変化が効いています.

上に運ばれた熱はさらに上に移動する必要があります.定常状態が実現しているはずですから.対流圏から上の成層圏では対流が起こりませんから伝導と放射だけになります.赤外線の形でのもののウエイトが高くなるでしょう.(対流圏の高さは季節変動しますが多分2万mに行かないでしょう.夏の方が高いとおもいますので入道雲の頂上の高さです.金床雲の見えているところです.)

>y「地表付近の大気が温められて膨張しても,それによる仕事の一部分は周囲の大気を圧縮するのに使われるかもしれませんが,大部分は地球大気を宇宙空間に押し出すのに使われるでしょう.」

熱が宇宙に捨てられるということは確かですが大気が宇宙に放出されるということはないと思います.ここに書かれている「宇宙空間に押し出す」という意味がまた分かりません.「上に行くと大気の密度が小さくなる」という圧力勾配のことを言っているのかなとも推測するのですが読みとりにくいです.

>y「この温められた大気が上昇する場合は,膨張して温度が低下しますが,上昇したあと,この大気がもともとあったところには周囲から大気が流れ込みます. たとえば,温められた大気の上側にあった大気が下側に回り込むとすると断熱圧縮されて温度が上昇します. また,上昇気流が持続する場合は,同時に下降気流も生じているはずですが,下降気流では断熱圧縮によって温度が上昇します. つまり上昇気流でも下降気流でも,それにともなう断熱変化の効果は,低層の気温を高く,高層の気温を低く保つだけで,低層から高層に熱を運ぶというわけではありません.」

ここの「断熱変化の効果は熱を運ぶことではない」という文章で訳が分からなくなりました.

>「対流によって熱が運ばれるのは,既に述べたように空気自体が熱を運ぶと同時にそれに伴う水の状態変化によっても熱が運ばれるためであって,断熱変化による温度変化ははあまり関係ないと思います 」

最後にまた水の状態変化を強調されています.

大気の場合もやかんの水の場合も「上下のかき混ぜは対流によって起こる」と同じ扱いで書くことを主にしたのですがyamaさんは違いの方を重視したのでしょうか.

追加です.

上昇気流があれば下降気流があるはずだというのは確かです.それによって大気の分布の定常状態が実現しているわけです.でも断熱条件が同じであるとは言えないと思います.強制上昇,強制下降が同じように起こっていれば断熱条件も同じようになるでしょうが上昇の穴埋めで下降気流が生じているというだけの場合は下降の断熱条件の方が緩い様に思います.上昇は狭い範囲で起こっても下降は広い範囲で起こっているということが考えられるからです. 大気の分布の定常状態が実現していれば位置エネルギーの増減も関係ないと思います.どこかで上がってどこかで下がればおなじです.

「かき混ぜ」という言葉を使いました.「対流では上下の入れ替わりだけが起こっている,かき混ぜとは別だ」と言われるかも知れません.コレはもう言葉の問題として勘弁して貰いたいと考えています.

Re: 電気ストーブ

yama さんのレス (2007/05/08(Tue) 01:00)

>周囲の温度の低い気体と接触して熱を与えれば伝導で熱が移動したことになります.上空に行くほど温度が下がる理由は地表で貰った熱を上に運搬することで熱が分散するからです.

komagatakeさんが書かれたことについて,疑問を呈したのは,この説明が,上空に行くほど温度が下がる理由としては適切ではないように思われたたためです. この説明を私は次のように解釈しました.(異なる解釈も可能かもしれませんが,多くの人は私と同じように解釈するのではないでしょうか.) つまり, 「地表が温められるので,対流が起こらなければ地表付近の気温が高くなるが,実際は対流が生じて温められた大気が上昇する.そして上空で熱伝導により周囲の低温の気体に熱を与える.そのため上昇した気体は熱を失って温度が下がる.」 というように解釈しました. また「熱が分散する」というのは,直前に書いてある内容から,「伝導によって周囲に熱が移動する」ということだと解釈しました.

私は,これについて,伝導によって熱を失う効果はわずかなもので,温度低下の原因としては断熱膨張が最大の要因であると考えたわけです. このことは,やかんの水をコンロで加熱する場合と比較するとよく分かります. まず,底に接している水が加熱されて上昇します.表面付近まで上昇すると表面付近の水と置き換わり,表面付近の水が下降します.このとき周囲への熱伝導も起こりますが水自体の移動による熱移動に比べるとわずかなものです. 表面付近の水は次々と上昇してくる高温の水に置き換えられていきます.その結果表面付近には高温の水の層ができます. もし空気の対流も水の対流と同じであるとすれば,対流圏上部に高温の大気層ができることになりそうです.しかし,実際はそうはなりません.それは水の場合と異なり,空気が上昇する場合は断熱膨張によって温度が低下するためです. 従って,断熱膨張による温度低下を無視したのでは,水の対流のように上部の温度が高くなる可能性を否定できません.

>大気の場合もやかんの水の場合も「上下のかき混ぜは対流によって起こる」と同じ扱いで書くことを主にしたのですがyamaさんは違いの方を重視したのでしょうか.

そのとおりです.その違いこそが高度による温度変化を正しく説明できるからです.もちろん,対流によってかき混ぜが起こるのは同じですが.

komagatakeさんは,気体の膨張による仕事は周囲に熱として渡されるとお考えのようですが,前に述べたように必ずしもそうではありません.熱力学では仕事によるエネルギーの移動は熱の移動ではありませんが,広く考えて,内部エネルギーの増加により温度が上がることを熱が渡されると考えても,膨張による仕事が必ず内部エネルギーになるわけではなく,位置エネルギーなどになる場合もあります.

「地表付近の大気が温められて膨張しても,それによる仕事の一部分は周囲の大気を圧縮するのに使われるかもしれませんが,大部分は地球大気を宇宙空間に押し出すのに使われるでしょう.」と書いたのは不適切な表現だったようです. これは大気が宇宙空間に放出されるということではなく,大気全体が押し上げられるということを言いたかったのですが・・・.

上空への熱移動については,水蒸気の状態変化が重要であることを強調しましたが,水蒸気がなければ,熱の移動がないということではありません.水蒸気を含まない大気の対流によっても熱は移動します.そして上空に移動した熱の大部分は赤外放射によって宇宙空間に放出されることは,komagatakeさんのおっしゃるとおりです.

「断熱変化の効果は熱を運ぶことではない」というのは上昇した大気がそのまま下降してもとに戻れば,温度ももとに戻るので熱を運んだことにはならないということです.もちろん実際には上昇した大気はそのまま戻るのではなく放射などによってエネルギーを失ってもどるわけですから,その場合は熱が運ばれたことになりますが,それはあくまでも対流によって運ばれた熱が放射などによって失われるもので,断熱変化がなくてもおこります.

>上昇気流があれば下降気流があるはずだというのは確かです.それによって大気の分布の定常状態が実現しているわけです.でも断熱条件が同じであるとは言えないと思います.強制上昇,強制下降が同じように起こっていれば断熱条件も同じようになるでしょうが上昇の穴埋めで下降気流が生じているというだけの場合は下降の断熱条件の方が緩い様に思います.上昇は狭い範囲で起こっても下降は広い範囲で起こっているということが考えられるからです

上昇が狭い範囲で,下降が広い範囲で起こる場合は,上昇気流の流速が速く,下降気流の流速は遅くなりますね.しかし温度変化は流速にはほとんど無関係で,乾燥空気の場合,上昇するときは1℃/100mの割合で温度が下がり,下降するときは同じ割合で温度が上がります.ただし水蒸気の変化を含めて考えれば,上昇と下降で温度変化が異なることもあります.

>大気の分布の定常状態が実現していれば位置エネルギーの増減も関係ないと思います.どこかで上がってどこかで下がればおなじです.

そのとおりですね.位置エネルギーが変化するのは,一部が膨張して,他の部分を押し上げるような場合であって,定常状態についてのことではありません.

なお,以前に「実際,乾燥断熱減率は約1℃/100mであって,平均的な気温の低下率とされる0.6℃/100mより大きくなっています.」と書きましたが,考えてみると,これは熱伝導の効果を否定する根拠としては適切でなかったと思います.周囲との温度差が十分大きい場合は,熱伝導によって平均的な気温の低下率以上に気温が低下する可能性を否定できないからです.