量子の性質の一つにスピンというのがありますが, スピンってなんでしょうか? 実際に自転しているのでしょうか? でも,光子の回転なんて測れないと思いますし…
よくわかりません. 知っている人がいらしたら教えて下さい. お願いします.
盾矛さん,始めまして.
うまく説明できるか判りませんが,荒っぽい考え方を書いてみましょう.
「古典力学での太陽と地球」と「量子力学での陽子と電子」との対比で考えると;
ーーーー 古典力学 <--> 量子力学 ーーーー 太陽の周りの地球軌道が作る角運動量 <--> 陽子の周りの電子軌道がつくる角運動量:=「軌道角運動量,大きさ 」 地球の自転がつくる角運動量 <--> 電子が自転するために出来る角運動量:=「スピン(角運動量),大きさ )」 ーーーー
他方,光子では,「質量のある部分」が無いので考え難いですが....
ーーーー 古典電磁気学 <--> 量子電磁気学 ーーーー 偏光 <--> スピン(角運動量),大きさ ーーーー
私は,量子電磁気学は勉強しそこなったので,あえて簡単に書いています.もし,途中までは判っているけど...,ということなら,詳しく質問されるといいように思います.
>分野によってスピンの意味のとりかたが異なると言うことでしょうか?
むしろ,光子の場合の特異性と考える方が適切かも知れません.でも,この話を確りと理解できるには,角運動量の量子化,電磁気学とその量子化,量子化での対称性など,かなり広範な関係を必要とします.
従って,これらの勉強をされて行けば,自然と理解できるようになるとおもいます.ここでは光子の出身である電磁波の偏光について考えてみます.
ご存知のように電磁波は横波だといわれます:進行方向に対して,電場・磁場が垂直方向に振動するからです.ある空間の一点で,電磁波を見た時に,振動面は一つですが,その面内でどのように振動するかは,2次元の力学的振動を考えても2つの方向を自由に取れる事はお分かりになれますね.
「平面の自由度2の振動」の可視化例が,リサージュ波形です.オシロスコープのx軸とy軸とに別々の単振動波形をいれて,それに対応する点の軌跡を見る事が出来ます.一般の場合,x,yに別々の周波数を印加しますが,電磁波では同一です,念のため.この場合でも,2つの振動の位相差によって,振動が直線的に変化する場合と,回転する場合が出てきます.
通常は,直線的な振動が判り易いですね.電磁波の場合でもそうで,それを直線偏光と呼びます.他方,振動方向が回転する場合もあります,それを円偏光と呼びます.進行方向に対して右ねじの方向に回転するのを「+のヘリシティ」,その逆を「−のヘリシティ」と呼びます.
他方,スピンの大きさが の量子系では,ある方向に対するスピンの射影は, の3つの値が許されます.
ところが,光子では,進行方向へのスピンの射影は の2つの値しかありません.これは,光子の出身母体である,電磁波が「+と−のヘリシティ」しか持てない事に由来するとおもいます.
追伸:
普通,スピン角運動量をスピンと呼びます.というのは荷電スピン(isospin, isotopic spi, isobaric spin とか書かれる)もある為です.もはや力学的な類似ではなくて,電荷の分類にスピンの概念を利用して,概念の拡張をしているのだと思います. というように,ご質問はとても難しいものだと思います.でも,古典的な力学,電磁気学,量子論,量子力学,量子電磁気学,素粒子論等の分野を手中に入れた時に,正しい理解ができる事は請け合います(笑).