自動車学校の学科試験の問題です.
「車が重い荷物を積んでいる場合は,ブレーキの効きが悪くなって停止距離が長くなったり,振動や騒音が大きくなる.」
質点の場合,すべり摩擦は垂直抗力に比例するため,質量を大きくすることによって摩擦力は大きくなると考えられるのですが,車のブレーキではそうではないようです.どうしてか分かりますか?また,停止距離ですが,質点の場合,摩擦力による加速度は質量によらないため,停止距離は変わらないはずです.
分かる方,よろしければ解説お願いします.
質量の大きい車を同じ加速度で減速させるには,大きい力でブレーキのディスクを挟まなければならず,そのためにはブレーキペダルを強く踏む必要があります. ブレーキペダルを踏む力が一定だとすると,質量が大きいほどブレーキの効きが悪くなるわけです.
>自動車ではなく自転車で考えた方が解かり易いかも・・・. >地面とタイヤの摩擦力で減速するのは,時間がかかって危ないです.w >ブレーキによる摩擦は,タイヤをはさみこんで負荷をかけながら, >減速させるもので,その摩擦力は自転車の質量に無関係で, >運転者の握力に依存します. >従って,停止距離もどれだけ強く握るかで変化すると思います.w
あ!ひょっとして,ブレーキをかけた瞬間にタイヤがロックした場合 の自動車の運動について仰られているのでしょうか? その場合は上記の説明は,的外れもいいところですね.(^_^;) 実際,どうなのでしょうか?
>yamaさん
「ブレーキのディスクを挟」むとは,どういう意味ですか?同じ地面を同じタイヤで走る時,車のブレーキは車の質量には依存せず,ブレーキペダルを踏む力のみによるのでしょうか?
>ミュフ猫さん
>タイヤをはさみこんで負荷をかけながら,減速させる
地面とタイヤの摩擦力で減速させるのかと思っていました(汗) タイヤをはさみこむとは,どういうことですか?
けん(大学1年)さんへ
>地面とタイヤの摩擦力で減速させるのかと思っていました(汗) >タイヤをはさみこむとは,どういうことですか?
いや,自転車のブレーキシステムを観察すると,そのようになっているかと. それより,ブレーキをかけた瞬間にタイヤがロックした場合は,自動車の 減速に寄与する外力がタイヤと地面の摩擦力のみになるので,私もけんさんと 同じ疑問を持ちます. 誰か教えてください.m(_ _)m
車を減速させる力が路面からタイヤにはたらく摩擦力であるのは当然です. その摩擦力を生じさせるためにブレーキをかけるわけです. ディスクブレーキの場合は,ホイールにとりつけたディスクをブレーキパッドで挟むことによってタイヤの回転を減速させるわけです. このとき,タイヤの回転の減速を妨げるように,路面からタイヤに摩擦力がはたらき,この摩擦力によって車が減速するわけです.
まず,タイヤがスリップすることなく減速する場合を考えます,また簡単のためタイヤの慣性モーメントは無視できるものとします. その場合は,ディスクを挟む力のモーメントと摩擦力のモーメントが釣り合わないといけません.同じ加速度で減速するには車の質量が大きくなるほど摩擦力も大きくなければならないので,釣り合いの条件から,ディスクを挟む力も大きくしなければならず,そのためにはブレーキペダルを踏む力を大きくしなければなりません. ブレーキの力が同じ場合は,生じる摩擦力の大きさが同じになるので,車の質量が大きいほど減速するときの加速度は小さくなります.つまり,ブレーキの効きが悪くなるわけです.
次にタイヤがスリップする場合ですが,このときは運動摩擦力がはたらくので,けんさんのお考えのように加速度は質量に無関係になります.
しかし,タイヤがスリップすると非常に危険です.タイヤが転がっている場合は車はタイヤの向いている方向に進みます.しかし,スリップする場合には,横滑りするなど,タイヤの向きに関係ない方向に進んだり,ハンドルでタイヤの向きを変えてもその方向に進まなかったりするからです. また,スリップしていないときは,接触面においてタイヤと路面の相対速度が0なので,タイヤには静止摩擦力がはたらきます.ブレーキの力を強めるとこの静止摩擦力は大きくなり,スリップする直前に最大になります.スリップを始めると運動摩擦力に変わるので摩擦力はかえって小さくなります. つまり,スリップする直前の状態を保てば最大摩擦力がはたらいて最短距離で停止できます.これに近い状態を自動的に保つシステムがABSです.
追記 「ディスクを挟む力のモーメント」というのは,不正確な表現でした.正確には「ディスクを挟むことによってディスクにはたらく摩擦力のモーメント」です.
>yamaさん
>ディスクブレーキの場合は,ホイールにとりつけたディスクをブレーキパッドで挟むことによってタイヤの回転を減速させるわけです.
ディスクとはホイールとの位置関係が変わらない何かで,ブレーキパッドとはディスクの動きを止めようとするものですか?タイヤのブレーキの仕組みがよく分からないもんで….
それから,スリップしない場合について質問があります.
>その場合は,ディスクを挟む力のモーメントと摩擦力のモーメントが釣り合わないといけません.
追記で書かれている部分を見ると,摩擦力のモーメントと摩擦力のモーメントがつりあう,になってしまいませんか?摩擦力は何かとつりあうのですか?
ディスクは,ホイールに固定されていてタイヤとともに回転します.回転しているディスクをブレーキパッドで挟むと,ブレーキパッドからディスクにはたらく摩擦力によってディスクの回転が減速し,それによってタイヤの回転も減速します.
このとき,ブレーキパッドからディスクにはたらく摩擦力のモーメントと,路面からタイヤにはたらく摩擦力のモーメントが釣り合うということです. (ただしタイヤの慣性モーメントが無視できる場合です.)
ディスクにはたらく摩擦力は,ブレーキパッドがディスクを押す力に比例し,従ってブレーキペダルを踏む力に比例することになります.
そうか!なるほど. 減速に寄与する外力という意味では,タイヤのスリップの有無に関わらず, 路面とタイヤの摩擦力のみということですね. まとめると,
【スリップしない場合】 ・減速に寄与する外力→路面とタイヤの静止摩擦力
・減速によって生じる→ブレーキパッドとディスクとの摩擦熱エネルギー 主なエネルギー
【スリップする場合】 ・減速に寄与する外力→路面とタイヤの動摩擦力
・減速によって生じる→路面とタイヤとの摩擦熱エネルギー 主なエネルギー
こんな感じかな? どうもありがとうございます.m(_ _)m
>yamaさん
解説ありがとうございます.
>ブレーキパッドからディスクにはたらく摩擦力のモーメントと,路面からタイヤにはたらく摩擦力のモーメントが釣り合うということです.
釣り合わなければならないのですか?
タイヤの回転の運動方程式は,タイヤの慣性モーメントを I とすると次のようになります.
慣性モーメントが無視できる場合は I=0 と置くことができるので,
になります.すなわち,タイヤにはたらく力のモーメントが釣り合うわけです.
ここで慣性モーメントを無視できることには理由があるのでしょうか? 実際,つりあっているのですか?
話を簡単にするために慣性モーメントを無視したわけです. 自動車全体の運動エネルギーに比べてタイヤの回転の運動エネルギーはかなり小さいので,慣性モーメントを無視しても大きな誤差は生じないでしょう. 従って,正確に釣り合っているわけではありませんが,近似的に釣り合っているということです.
慣性モーメントを無視しない場合は,タイヤの回転の運動方程式を考えるとディスクにはたらく摩擦力のモーメントのほうが少し大きくなります. この場合も,ブレーキの力が同じ場合は,車の質量が大きいほど減速するときの加速度が小さくなることに変わりはありません.
いつもいつも丁寧な解説,ありがとうございました.
ミュフ猫様
>【スリップしない場合】 ・減速に寄与する外力→路面とタイヤの静止摩擦力
静止摩擦力では接触面での相対的なズレ運動がないわけですから熱発生がありません.減速に寄与する外力ではないと思います. スリップがなければ制動力はブレーキだけです. 静止摩擦力は滑らずに転がるという条件を実現しているだけです. 滑り始めると運動摩擦に変わりますのでどちらの場合も静止摩擦力は減速には寄与しないことになります.
komagatakeさんへ
レス,どうもありがとうございます. 私も最初はそう思っていたのですが,自動車を1つの系と見た場合, 路面との接触面以外の場所において発生するすべての力は,内力と なるので減速に寄与できないと思います. タイヤが宙に浮いていれば,ブレーキをかけようが,かけまいが 減速しません.
横から失礼します.
私は,最近,熱力学だ,解析力学だと,昔は苦手としていた分野とご縁が出て来て,公営の図書館でこれらの分野の本を借用しています.其の中の1冊;
「よくわかる力学」 江沢洋・著 東京図書,19991年2月 ISBN 4-489-00335-8
の第5章 質点系の力学,§30 自動車を走らせる力,pp344-348 で論じてあります.ご参考まで.
ミュフ猫様
自動車は宙に浮いているわけではありません. だから外力がどこに働いているかの吟味が必要になるのだと思います.その外力は制動の原因となっているものですね.ずれが生じてエネルギーを失っていなければいけません. スリップしていないときのタイヤは地面と相対的なずれが生じていませんのでむしろ地面の一部のような働きです.無限軌道で考える方が分かりやすいです.そうすると一番地面に近くて絶えずずれの生じているところを考えることになります.車の軸(シャフト)になります.固定された車のシャフトと回転する車の間には必ずずれが生じています.ここはベアリングで出来るだけ摩擦を小さくしているわけですが動と静の境目です.ブレーキはここでの接触状態を強くしていることになります.外部と内部の境目はこの部分だとするのがいいのではないでしょうか.こう考えたのですがいかがですか. とにかく「静止摩擦力でエネルギーを失う」という矛盾を解消しないといけないと思うのです.
自動車の場合は,静と動の境目についてkomagatakeさんのように考えることもできそうですが,歩いている人が立ち止まる場合はどうなるのでしょうか? 裸足で歩いているとして,足の裏は地面に対して滑らない場合,立ち止まると運動エネルギーは減少し,体内のどこかで熱が発生することになりそうですね. しかし,静と動の境目はどこにあるのでしょうか?
yama様
人の場合は複雑でちょっと判断しにくいです.
自動車に絡んで次のような例を考えました.
机の上に物体Aがあり,物体Aの上に物体Bがあるとします.物体Bが今右側に動いているとします.各物体間に摩擦があるとします.
Aの運動として次の3つの場合が考えられます. (1)AがBと一体となって机の上を滑っている. (2)机と一体となっているAの上をBが滑っている. (3)BはAの上を滑って行き,Aは机の上を滑っている. Bから見て内部,外部は(1)〜(3)で変わります. (1)ではAは内部です.(2)ではAは外部です.(3)ではどちらにとってもかまいません.ハッキリと線を引くことが出来ないのかもしれません.
(1)はブレーキがかかってタイヤがロックし,スリップしている場合です. (2)はブレーキがかかっているがタイヤは滑らずに転がっているときです. (3)はブレーキもタイヤも滑っているときです.(滑りながら転がっているのはここにはいるでしょう.)
シャフトの所を境目と書きましたがシャフトもタイヤと一緒に回っているとしないといけないかもしれません.その場合は軸受が静の部分です.とにかくタイヤは回転しているのに自動車は回転していないわけですからその境目で摩擦が問題になります.この境目はもっと自動車の中まで続いている可能性もあります.車輪と連動して動いているものは全て外部としなければいけないのかもしれません.(3)の様に段階的に外部と繋がっているとしないといけないのかもしれません.車輪の回転はクランクシャフトからエンジンまで繋がっています.クラッチを切った場合とつないだ場合で外部の範囲が異なることになります.エンジンブレーキをこれで理解することも出来そうです.とにかく可動部分で相対的にずれの生じている部分は全て考慮の対象になります.シリンダーの中でのピストンの動きも問題になるでしょう. (3)の場合でいうと最初にBだけが運動エネルギーを持っていたとしてもエネルギーを失うところはAとBとの境界,Aと机との境界の両方です.
ブレーキは車に固定されています.内部の装置です.それが回転している部分と接触することによって制動効果が出てきます.回転している部分は外部ですから内部と外部の接触を強めることで制動を掛けています.
静止摩擦で制動を掛けることは出来ないということと矛盾しないように自動車というシステムについて考えたものです.
人の身体の場合,筋肉や骨格の動きの各部分でずれが生じてエネルギーを失っていく事になるのだと思います.単に手を曲げたり伸ばしたりするだけの場合も熱が発生するのですから.人の場合は運動エネルギーによる体温上昇よりも筋肉の収縮を起こさせるためのエネルギー(これは結局のところ化学反応のエネルギーです)によるものの方が影響が大きいのかもしれません.筋肉が外力をどの様に受け止めてエネルギーをどの様に分散させているのかは筋肉生理学の詳しい解説を見ないと分かりません.階段を一段下りたということだけでもどうなっているのかがよく分からないのです.
komagatakeさん,
面白い論点を展開されて,興味深く拝見しています.
>静止摩擦で制動を掛けることは出来ないということと矛盾しないように自動車というシステムについて考えたものです.
「ころがり摩擦」が「静止摩擦」を超えない範囲で,加速・減速しているのが正しい運転ではないかと推測しています.でも,なにかこの問題を自分で解く気になれないので,楽しく観戦させていただいています(笑).
>人の身体の場合,筋肉や骨格の動きの各部分でずれが生じてエネルギーを失っていく事になるのだと思います.単に手を曲げたり伸ばしたりするだけの場合も熱が発生するのですから.人の場合は運動エネルギーによる体温上昇よりも筋肉の収縮を起こさせるためのエネルギー(これは結局のところ化学反応のエネルギーです)によるものの方が影響が大きいのかもしれません.筋肉が外力をどの様に受け止めてエネルギーをどの様に分散させているのかは筋肉生理学の詳しい解説を見ないと分かりません.階段を一段下りたということだけでもどうなっているのかがよく分からないのです.
私は,水泳の時の運動解析をしようとしていますが,筋力のデータなどはあるようですが,運動に伴う摩擦によるエネルギ損失などのデータはなかなか手に入りません.
基本的には,関節にかかわる外部トルクに,筋肉による発生する内部トルクが平衡すると考えればいいと思います.其のとき,筋肉の摩擦力も入れないと行けません.
もっとも,自動車でも,エンジン等の摩擦,シャフトでの振動ロス,車体の振動ロス,車体の空気抵抗など,まじめに計算しようとすれば大変ですよね.
zoro様
エネルギーロスの起こるところろはたくさんあると思いますが今考えているのは制動と摩擦という面です.制動ということで外部からコントロール可能という条件を入れてもいいでしょう.
エンジンを切って惰性で走っている車が自然に止まるときを考えます.クラッチも切っておかなくてはいけません.車輪と連動して回転している部分を出来るだけ減らしておかなくてはいけ無いからです.この場合には車の各部分の振動や回転部分のこすり合わせが効いてきているでしょう.転がり摩擦もここで効いてきます. 制動はこの様な効果の上に付け加えるものとして考えていることになります.当然制動の効果の方が大きいです.惰性で走っている車でのエネルギーロスが制動を掛けたときと同程度であれば自動車の意味がありません.
クラッチをつなぐと全く止まり方が違います.エンジンブレーキの効果です.これは操作可能ですから制動の一つです.車輪の回転がエンジンの内部まで伝わってきます.ピストンを強制的に動かします.(「バイクの押し掛け」というのはこれを使ったエンジンの始動方法です.) よく雪道でブレーキを踏んではいけないといわれます.私は雪道で180°スピンを2回やりました.一回目はブレーキを踏んだためです.2回目はシフトダウンによるものです.ブレーキを踏んではいけないということが頭にあったのでギヤーを落としたのです.急激なシフトダウンでかけたエンジンブレーキは急なフットブレーキと同じような働きをするということがよくわかりました.
制動を考えるときは振動とか転がり摩擦は横にのけておいていいと思います. そういう効果に新たに付け加えるエネルギーの逃がし道です.その道は幅が広くないといけません. 私はそれを「静と動との境目」をキーワードにして考えました.
タイヤがどこでスリップするかというグリップ力を問題にするときは静止摩擦力を使ってトルクを考える必要があるでしょう.でもその計算は今の私には難しいです.
ミュフ様,yama様,zoro様
私にはもう書く内容が無くなりました.厚かましいこととは思いますがまとめさせて頂きます.
元々の質問は質量に比例した摩擦力と制動距離の関係でした. ブレーキは摩擦を利用していますが質量には関係がありません.机の上を物体が滑っているという例で考える摩擦があまりにも一般化しすぎている事による誤解だと思いました.ドラムブレーキにしろ,ディスクブレーキにしろ,自転車のブレーキにしろ,人間の筋力を使っています.油圧で増幅している場合もありますが出発点は人間です.
動いているものを摩擦で止めようとしているのですから運動摩擦のはずなのに静止摩擦が出てきて不思議に思ったのがきっかけでした.
「内力は重心の運動を変えることは出来ない」というのがミュフ様のこだわりだったようです.ミュフ様は回転している車輪を車の一部と考えて内部としました.ブレーキで働く力は内力であるということになります.外部は車輪より外ということで地面になります.外力は地面から働く摩擦力しかありません.スリップしていないときは静止摩擦力が働いているということは共通に認識しておられるわけですから制動の原因となる外力は静止摩擦力ということになります.でも静止摩擦力ではずれが生じていませんのでエネルギーロスが生じません.ここで矛盾が生じました.
私は車輪は外部と考える方がいいのではないかと考えました.タイヤがロックしてスリップしているとき,車輪は車の内部です.でもスリップしていない車輪は車の外部であるとしたのです.自動車と車輪の相対運動の違いに着目しました.車輪と地面との間でずれが生じないということから車輪は地面と同等であるとしたのです.車輪の固定されているシャフトが軸受けの所で回転しているのが物体が机の上を滑っているのと対応していると考えたのです.ブレーキは車の内部に固定された装置を外部に接触させて減速させる道具ということになります.
静と動の境界をキーワードにして考えるという表現も使いました.
自転車に乗っていて足を地面にこすり付けて補助ブレーキにしたことがあるのを思い出しました.今でも子供がよくやっています.木の箱に車を付けて遊んだ特に木のレバーを取り付けて地面をこする形のブレーキを作った覚えもあります.地面をこするか車輪をこするかは同じ事だということになります.車輪は滑っていなくてもブレーキの所で滑っています.運動摩擦でエネルギーを失うということに変わりはありません.静止摩擦でエネルギーを失うことになるという矛盾は出てきません.
放物運動の授業の時に秒速1mで水平に飛び出すスロープをボール紙で作りました.ビー玉をスロープの高さ7.2mmの所から落下させると計算通りに落下します.この値は位置エネルギーの5/7が重心の運動エネルギー,2/7が回転の運動エネルギーという計算からでるものです.この時に「摩擦は無くすことは出来ないが摩擦があることを使ってエネルギーロスの少ない運動を実現することはできる,滑らすと駄目だが転がすといける」と生徒に言ってきました.摩擦よりもスロープの材料のたわみの方がエネルギーロスへの影響は大きいです.うまく水平になっているかのチェックも重要です. スロープの端から床までの高さを測り,落下地点までの距離を計算させます.結果が出たらその位置にチョークを並べます.ビー玉を転がすとたいてい当たります.面白いです.生徒は高さを変えてやりたがります.
zoro様次から書くときはzoroさんにします.今回は様を使います.
悪質な違法行為を示唆する書き込みがあったため,二つ前の書き込みを削除させていただきました.
komagatakeさん,
面白い論議ありがとうございました.
ちょっとだけ,質問させてください.
>車輪は滑っていなくてもブレーキの所で滑っています.運動摩擦でエネルギーを失うということに変わりはありません.静止摩擦でエネルギーを失うことになるという矛盾は出てきません.
これは,ブレーキ・パッドがブレーキ・ディスクを挟んで制動する場合ですよね.従って,出てくるのは動摩擦係数ではありませんか?
>放物運動の授業の時に秒速1mで水平に飛び出すスロープをボール紙で作りました.・・・略・・・摩擦よりもスロープの材料のたわみの方がエネルギーロスへの影響は大きいです.うまく水平になっているかのチェックも重要です.
もし良かった,もう少し具体的な製作法をお教え下さいませんか?水泳のジャンプの模型を水平に飛ばす台にできるかと思いまして,お尋ねします.
なお,7.2mmは,すこし低すぎるように思います.7.1cmぐらいでは?いずれにしろ,力学を工作のセンスで取り上げるのは面白い試みですね.
zoroさん
(1) >>車輪は滑っていなくてもブレーキの所で滑っています.運動摩擦でエネルギーを失うということに変わりはありません.静止摩擦でエネルギーを失うことになるという矛盾は出てきません.
>これは,ブレーキ・パッドがブレーキ・ディスクを挟んで制動する場合ですよね.従って,出てくるのは動摩擦係数ではありませんか?
御質問がちょっと分かりません.「静止摩擦」と書いてあるところですか? これは車輪を内部としたときに出てきた矛盾についてのものですが.
内部,外部はまだよく分からないところがあります.重心の運動についてもまだピッタリと説明が出来ません.並進運動だけの時はいいのですが回転が入ってくると分からなくなります.車輪の取り扱いが難しいです.また質問に出すかもしれません.
(2) すみません,間違っていました.
スロープの高さは7.2cmです.いくらかのロスを考慮して1mmほど高くしておくといいかもしれません.
作り方と生徒の反応を書いておきます.
使った紙はケーキの箱とかワイシャツの箱の紙のようなものです.滑るといけないのでツルツルした紙は駄目です.なめらかに曲げることの出来ない硬い紙も駄目です.折れ目が出来るとそこで紙から離れてジャンプします.接触して回転するという条件からはずれます.衝突も起こります. 木の板に幅10cmの紙を押しピンでとめます.スロープの端の鉛直部分は下で折り曲げて押しピンでとめます.紙の厚みがスロープの頂上の位置と飛び出し口で共通になります. スロープの頂上までの高さを7.3mmになるように調整します.スロープの途中の空所には別の紙で作った三角形のスペーサーを入れてスロープがぺこぺこしないようにしました.スロープがぺこぺこするとここでエネルギーを失います.紙は固すぎても軟らかすぎてもだけというところが難しいですね.木かプラスティックスで造ったスロープに紙を貼り付けるという装置にするとこういう心配は要らないのかもしれません. スロープの水平距離は30cm程度でした.勾配がきついと滑ります. 飛び出し口の押しピンにおもりの付いた糸を付けて鉛直真下の確認をやります. 玉はビー玉やパチンコ玉を使いました. 的は横一列に伸びている物がいいです.ビー玉を一列に並べてやると飛び散りますので面白いですが集めるのが大変です.チョークも砕け散ります.割り箸のようなものでもいいですが当たったことがハッキリ分かる方がいいのでチョークを使っていました.
夏休みの自由課題で出したことが2回あります. 位置エネルギーの5/7が飛び出しの運動エネルギーになるということと制作上の注意を書いたプリントを渡しました.製作したスロープとやってみた結果をまとめたレポートを提出するようにと言いました.
1回目は反響がよかったです.はじめやってきた生徒は少数でした.うっとうしいと思っていた生徒がほとんどでした.ところがしばらくして急にやってくる生徒が多くなりました.面白い!という噂が広まったようです.材料費がかからない,簡単に作ることが出来る,自分で計算したとおりのところに落ちるので面白いということだと思います.物理の計算は現実のものには簡単には当てはまらないものだと思っていた生徒が多かったようです.机から落としてもたんすの上から落としてもいけるというので裏で調整されているかもしれない学校のデモ実験とは違うと感じたのかもしれません.興味を持った親と一緒になってやったという生徒もいました.最終的には半分以上の生徒がやってきました.よく覚えていませんが100人ほどだったと思います.一週間ほどは毎日私の部屋の前に生徒の列が出来ていました.皆自分が作ったスロープとレポートを手にしていました. 的は1cmほどの大きさです.スロープをmmの精度で作らないと当たりません.当たらないと言う生徒のスロープを見るとたいてい高さが違っています.落下地点の計算がcmの程度なのでスロープの高さでmmは気にしなくてもよいと思っていたようです.比率で考えてみたらと言いました.7cmに対して1mmは70cmに対して1cmになると言うと分かったようでした.
気をよくして2年ほど後にまた課題として出しました.でも全く広がりませんでした.
その後は教室でやるだけにしました.前に出てきてやる生徒はいますが自分で作ろうという生徒は出てきません.
komagatakeさんのお考えのように車輪を車の外部と見なすことも可能だと思いますが,内部と考えて説明することも可能です.
自動車が減速するときには,運動量と運動エネルギーが同時に減少しなければなりません. タイヤがスリップしながら減速するときは運動摩擦力がはたらきますが,運動摩擦力は負の仕事をすると同時に運動量と逆向きの力積を生じるため,運動エネルギーと運動量を同時に減少させることが可能なわけです.
これに対してスリップしないで減速する場合は静止摩擦力がはたらきます.しかし静止摩擦力は仕事をすることができないので,静止摩擦力だけでは運動量と運動エネルギーを同時に減少させることはできません.自動車の運動エネルギーをそのままにして運動量だけを減少させることもできないので,結局静止摩擦力だけがはたらくことはできないことになります. 一方,ブレーキ内部ではたらく摩擦力は,内力であるため運動量を減少させることができません.自動車の運動量をそのままにして運動エネルギーだけを減少させることもできないので,結局ブレーキの内部摩擦力だけがはたらくこともできません.
しかしタイヤに静止摩擦力がはたらくと同時にブレーキ内で内部摩擦力がはたらけば,運動量と運動エネルギーを同時に減少させて,その結果として自動車を減速させることができます.すなわち,タイヤにはたらく静止摩擦力が運動量を減少させると同時にブレーキの内部摩擦力が運動エネルギーを減少させるわけです. 自動車のブレーキシステムはまさにそのようになっています.すなわちブレーキの内部摩擦力とタイヤにはたらく静止摩擦力が連動して同時にはたらくようなしくみになっているわけです.
運動量だけに注目すれば,自動車全体の運動量の変化はタイヤにはたらく静止摩擦力の力積に等しいので,「減速に寄与する外力→路面とタイヤの静止摩擦力」とするミュフ猫さんの考えは正しいと言っていいでしょう. 運動エネルギーにも注目するならば,この外力のほかに 「減速に寄与する内力→ブレーキの内部摩擦力」も同時にはたらくと考えなければなりませんが.
komagatakeさん,
詳しいご説明,有り難うございました.
(1)ブレーキについて
>内部,外部はまだよく分からないところがあります.重心の運動についてもまだピッタリと説明が出来ません.並進運動だけの時はいいのですが回転が入ってくると分からなくなります.車輪の取り扱いが難しいです.また質問に出すかもしれません.
突き詰めれば,この辺りを全体像から理解できたら面白いと思います.おそらく,ミュフさんやyamaさん達が,遠からずに式にしていただけると希望しています(笑).
でも,今回の「ビー玉ジャンプ」の様な場合ですら,ビー玉は重力,抗力(法線方向の抗力,接線方向のころがり擦力)の影響下で,「すべらない条件」をまもって運動するのですよね.これを運動量の式,角運動量の式,無滑りの条件から説明するのと基本的には類似の取り扱いができると思います.
今回の,皆様方の論議を拝見していて,朧げに感じるのは,道路や台を無限大にして問題を簡単にする為に,直感的に食い違うように感じてきました.
ちょっと,話題を変えます: 例えば,垂直ジャンプをする場合,脚を曲げてから,急に伸ばす時に,地面からの法線(垂直)抗力を利用して,じぶんの重心に垂直方向の速度を与える訳です.水泳では,このような絶対静止の対象がないので,話はさらに複雑になります.
車に戻ります: そういう意味では,(車の)重心の並進エネルギを制御するために,車輪を境に,エンジン側のトルクと,地面からの転がり摩擦の接線によるトルクで定常状態をつくっているのが,正常な運転(無滑り)だと感じます.
ここから,スリップなしに,加速・減速するには,エンジンないしブレーキによるトルクが車輪に加わることが必要です.これによって姿勢制御を保持しながらの基本操作が可能になる訳です.
ブレーキについては,ミュフさんが自転車の「目で見えるブレーキ」でお話しされていたと思いますが,回転している車輪のフレーム部分をゴムのパッドで押さえつけることで,回転していない車体,すなわち「静止部分」,おそらく「komagatake流の静」から,回転している車輪,すなわち「運動部分」,おそらく「komagatake流の動」に対して動摩擦を起こして,車輪の回転エネルギを熱エネルギに転換する事で,回転していない車体の並進速度を減少させるのではないかと推測しています.
(2)ジャンプのスケール・モデル
図らずも,詳しい製作上のノウハウをお教え下さり,有り難うございます.年とともに,アナログ的なものへの回帰志向が高くなっているので,自分でも模型少年の時に戻ってみようかと思います.
他方,高校での教育は大変そうですね.でも,考えてみれば,いつの時代でも「若人とは,不満の塊」であるわけで,大人が「善かれ」としたものは「とにかく駄目!」なのだろうとおもいます.
komagatakeさんのユニークな問題解明力が生徒達に響くように....新学期を前に,お忙しい所,申し訳ありませんでした.今後もご意見を楽しみにしています.