可視光のエネルギーはどこへ

可視光のエネルギーはどこへ

クロメル さんの書込 (2007/02/15(Thu) 18:08)

太陽光の中で熱を運ぶのは赤外線ですよね?物質を構成する原子を抵抗力を受ける振動子と考えると,その振動子と共振をおこす波長がちょうど赤外線の波長だと理解しています.可視光にあたる光は反射してしまうので暖かくないのだと思います.

密閉した二つの部屋で大量の白色LEDと赤外線LEDを点灯させることを考えます.光の出力を同じにした場合,部屋の壁の暖まり方は一緒になりますか?また,部屋の一面を開放した場合壁の暖まり方はどうなるでしょうか?

という疑問がおこりました.皆さんはどう思われますか?

私は部屋を密閉した場合は同じように暖まり,部屋を開放したら赤外線のほうが暖まるのかなと思うのですが.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

りんご さんのレス (2007/02/15(Thu) 19:45)

「暖かい」というのは物理的な尺度とは,少し違う様な気がします.と書きましたが,室温を上げると考えれば良い訳ですね.

#生物的に暖まるのは,生体の奥まで電磁波が侵入して,広い範囲のが細胞温度があがる事だろうと思います.為には,赤外線から極超短波の領域ですよね.紫外線などは,皮膚表面で強く吸収され,細胞破壊に繋がるのですね.

他方,LEDの波長ごとの光束の強さ,ジュール熱等のデータが判ると面白そう....中途半端なコメント,ご容赦.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

篠原 さんのレス (2007/02/15(Thu) 20:26)

メンバーなのに,まだ挨拶していませんでしたね. クロメルさん,はじめまして.篠原です.

> 太陽光の中で熱を運ぶのは赤外線ですよね?物質を構成する原子を抵抗力を受ける振動子と考えると,その振動子と共振をおこす波長がちょうど赤外線の波長だと理解しています.
> 可視光にあたる光は反射してしまうので暖かくないのだと思います.

半導体を勉強しているので,どうしても半導体工学的に考えてしまうのですが,私の考えを述べます.

赤外線により暖められるというのは,赤外線によりフォノンを直接励起する,ということですよね? (言い換えれば,赤外線により格子振動が誘起され,温度が上がる,というクロメルさんの説明と全く一緒ですが.)

でも,光により励起できるのは,フォノンだけではなく,電子もあります. 赤外線よりも大きなエネルギーの光をあてた場合,物質中の電子は(準位があれば)励起されます. この励起された電子が基底状態に戻るときのエネルギーの一部もフォノンの励起に使われるため,可視光でも温度は上がると思います. 実際,強力なDVD用赤色半導体レーザーを手に当てると暖かく感じます.

>密閉した二つの部屋で大量の白色LEDと赤外線LEDを点灯させることを考えます.光の出力を同じにした場合,部屋の壁の暖まり方は一緒になりますか?また,部屋の一面を開放した場合壁の暖まり方はどうなるでしょうか?

うーん,, 部屋の壁の材質とかにより変わると思うのですが. 物質により,赤外と可視光での吸収係数や反射係数は変わるので,,,

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

クロメル さんのレス (2007/02/15(Thu) 21:42)

>りんごさん

そうですね温度の上がり方です.室温というよりは,壁面の温度を意識しています. 紫外線は吸収されると分子が壊れるってことは,分子の結合のエネルギーに以上ってことなんでしょうかね?ガンマ線なんかも分子を破壊するみたいですし. それと波長ごとの強度という話ですが,話を簡単にするために,単色LEDということにします.単色LEDはたしか波長が決まっていると思うので,それで「両者の光の出力は同じ」で伝わるかなと思います.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

りんご さんのレス (2007/02/15(Thu) 22:10)

クロメルさん,

>そうですね温度の上がり方です.室温というよりは,壁面の温度を意識しています.

熱平衡は不得意な分野なので...(笑).

>紫外線は吸収されると分子が壊れるってことは,分子の結合のエネルギーに以上ってことなんでしょうかね?ガンマ線なんかも分子を破壊するみたいですし.

ガンマ線は,遺伝子の鎖を切ります.紫外線は日焼けをイメージしていましたが皮膚表面を壊すのか,メラニンなどの分子を増殖させた結果なのか知りませんでした.

それと波長ごとの強度という話ですが,話を簡単にするために,単色LEDということにします.単色LEDはたしか波長が決まっていると思うので,それで「両者の光の出力は同じ」で伝わるかなと思います.

としても,白色のLEDというのは,3原色のLEDが組み込まれているのだと思いましたた.たとえば,

光量 = \sum_{j=1}h\nu_{j}\frac{\mathrm{d} N_{j}(t)}{\mathrm{d} t}

ああ,適当な推測なので,....

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

クロメル さんのレス (2007/02/15(Thu) 22:20)

こちらこそよろしくお願いします,篠原さん.

なるほど,電子もエネルギーを吸収してフォノンにエネルギーをあたえるんですか.それと赤色レーザーも暖かいっていうのも初めて知りました.そうなんですか.そういえばレーザーといえば実験で共振器をつくる実験をやったことがありまして,赤外線レーザーはあたたかいていうのは経験したことがあります.

論点を絞るため,密閉した部屋の場合だけでいいです.密閉した部屋なら光が外に逃げることなく一般的な材質なら(反射率100%じゃない限り)最終的には壁にすべて吸収されているのかなと思ったんです.壁の反射率が100%でないなら反射率がいくら高くても密閉すれば,可視光でも赤外光でも光エネルギーが熱に変わるのは同じことになるでしょうか?

ところで篠原さんのホームページを見させていただいたんですが,篠原さんは応用物理学会の会員なんですか?私も応用物理なんでお会いすることがあるかもしれませんね.その時はよろしくお願いします.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

クロメル さんのレス (2007/02/15(Thu) 22:22)

そうでした,白色は赤青緑の組み合わせですね.話を簡単にするため赤色LEDとしてください.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

篠原 さんのレス (2007/02/15(Thu) 22:48)

クロメルさん,よろしくお願いいたします :)

LEDのスペクトルが話題に出てたので,以前,学生実験で測定したLEDのスペクトルを載せます.参考にどうぞ. (レーザーでない限り,スペクトルに広がりはありますよ.)

> なるほど,電子もエネルギーを吸収してフォノンにエネルギーをあたえるんですか.それと赤色レーザーも暖かいっていうのも初めて知りました.そうなんですか.そういえばレーザーといえば実験で共振器をつくる実験をやったことがありまして,赤外線レーザーはあたたかいていうのは経験したことがあります

研究室にアルゴンイオンレーザー(488nm)がありますが,それがあたってプラスチックが融けてしまっていたのは見たことがあります.

> 壁の反射率が100%でないなら反射率がいくら高くても密閉すれば,可視光でも赤外光でも光エネルギーが熱に変わるのは同じことになるでしょうか?

私はそう思います.

> 篠原さんは応用物理学会の会員なんですか?私も応用物理なんでお会いすることがあるかもしれませんね.その時はよろしくお願いします.

会員ではないですが,この春の学会は聞きに行くかも知れません. 秋の北海道の学会には,何とか発表したいなぁ〜 お会いしたときは,よろしくお願いします!

> そうでした,白色は赤青緑の組み合わせですね.話を簡単にするため赤色LEDとしてください.

# 話が少しそれますが,白色のLEDって,2種類あるんですよ. # 一つは,赤,青,緑のLEDを1つのパッケージの中に詰め込んだもの. # もう一つは,紫外LEDを用いて,赤,青,緑の蛍光体を光らせるもの(蛍光灯と似ていますね). # です. # ちょっとした豆知識でした ;)

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

りんご さんのレス (2007/02/15(Thu) 23:16)

食事中に考えましたが;

>その振動子と共振をおこす波長がちょうど赤外線の波長だと理解しています.可視光にあたる光は反射してしまうので暖かくないのだと思います.

これは,「共振」というよりは,生体の主要成分である水や血液の分光的吸収係数に依存するのだと思います.ご存知のように血液は赤ですよね,その周辺の電磁波が生体に吸収されやすく,体があたたまり易いだけの事とおもいます.

#細かく見れば,ヘモグロビンが酸素と結合している場合と,酸素を放出した時ではスペクトルが替わります.

他方,LEDから部屋に出た光は,部屋の各所で散乱・吸収を繰り返し,熱的平衡に達すると思います.この場合,部屋の温度は高々,300度Kのオーダですから電波領域の電磁波でしょう.

すなわち,いくら違う波長のLEDで部屋を加熱しようと,単位時間あたりに放出するLED光の熱エネルギー流量, \hbar \omega dN/dt ,が同じなら,同じ温度で平衡すると思います.

壁の一部が無い場合は,外とのやり取りが入り,簡単に結論は出せないと思いますが,特に差があるプロセスが存在するとも思えません.ただ散乱回数が少なく,光子エネルギが高い場合,相対的に壁から逃げ出る光子の寄与は,波長が短い方が大きいようにも感じます.でも,実質的には同じだろうとおもいます.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

クロメル さんのレス (2007/02/15(Thu) 23:20)

>(レーザーでない限り,スペクトルに広がりはありますよ.) ?(゜Д゜)なんと,てっきりLEDもバンドギャップに対応したとても鋭いピークなんだと思っていました.

>紫外LEDを用いて,赤,青,緑の蛍光体を光らせるもの(蛍光灯と似ていますね).

本当だ,蛍光灯と似ていますね.ところでまた新しい疑問なんですが,ブルーレイディスクってありますよね.青色レーザーじゃなくて,紫外線レーザーをつかえばもっと性能が高い容量の大きなディスクが作れるんでしょうか?

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

クロメル さんのレス (2007/02/15(Thu) 23:30)

りんごさんも篠原さんも(私もですが)密閉した部屋では同じ温度になると思いますか.やっぱりそうですよね.

私がこのことを疑問に思ったのは,蛍光灯の光ってぜんぜん暖かくないよなあと思ったからです.でも蛍光灯って60ワットとかなんですね.1600ワットのオーブントースターと比べるとぜんぜん暖かくないのも納得です.ありがとうございました.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

りんご さんのレス (2007/02/16(Fri) 00:00)

だから,スタートレックに出てくる「たしか2つの角のついた緑色した皮膚」の宇宙人さんの血液が緑〜青ならば,蛍光灯の光が暖かくて,電灯の光が冷たいのだろうと推察.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

なんとなく さんのレス (2007/02/16(Fri) 00:11)

あの,みなさん,どなたも指摘されないので,違うのかも知れませんが. 「完全に密閉した部屋の中で」と言う条件は,「黒体輻射」のそれであり,初期条件に寄らず熱平衡に到っては同一の温度とスペクトルを持つと考えてはいけないのですかね?

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

篠原 さんのレス (2007/02/16(Fri) 00:12)

> ところでまた新しい疑問なんですが,ブルーレイディスクってありますよね.青色レーザーじゃなくて,紫外線レーザーをつかえばもっと性能が高い容量の大きなディスクが作れるんでしょうか?

そりゃ,紫外線レーザーを使ったら高い容量のディスクができると思います. でも,今でさえ,精一杯がんばって青色レーザーをやっとこさ作れているレベルなので,紫外線のレーザーとなると,なかなか今は難しいんじゃないかな? そういえば,半年ほど前にAlN(窒化アルミニウム)を使って,波長210nmのLEDの製作にNTTが成功したそうです. 紫外線レーザーも研究室レベルではできているのかも知れませんね.

先日,研究室でDVD用レーザー(赤色)を購入したのですが,1個8000円でした. ブルーレイディスク用レーザーって,1個何円するんでしょうね?

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

りんご さんのレス (2007/02/16(Fri) 01:02)

なんとなくさん,

>「完全に密閉した部屋の中で」と言う条件は,「黒体輻射」のそれであり,初期条件に寄らず熱平衡に到っては同一の温度とスペクトルを持つと考えてはいけないのですかね?

お説の通りと思います.No.14362で,「熱的平衡に達すると思います.この場合,部屋の温度は高々,300度Kのオーダですから電波領域の電磁波」だから黒体輻射と近似すれば波長が判りますね,と書くのをサボりました(笑).

【追記】

ウィーンの変位則(理化学事典第3版による)

絶対温度Tにある黒体から放出される放射エネルギー密度が最大となる波長;

\lambda_{m} &= \frac{b}{T} \\b &= 0.29\mathrm{cm}\cdot\mathrm{K}

なにか変だな.しばし中断.やはり第3版では b &= 0.29cm\cdot K^{-1} と間違っている模様.上記は,ウィキペディア;

に因りました.従って,

\lambda_{m} &= \frac{b}{T} \\&= \frac{0.29\mathrm{cm}\cdot \mathrm{K}}{300\mathrm{K}}\\&\sim 10 \mathrm{\mu m}

もっと波長は長くてcmのオーダだと思っていました.可視光の波長が \sim 500\mathrm{nm}=0.5\mathrm{\mu m} であるのに比べれば,室温平衡光の波長は可視光の20倍ほどは長い事になる訳ですね.

どこかの解説でのコーヒー・ブレイクのネタにはなりそうですね,クロメルさん.

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これで,このスレッドでのコメントは終了します.

Re: 可視光のエネルギーはどこへ

クロメル さんのレス (2007/02/16(Fri) 11:05)

>なんとなくさん

ああ,そうですね,熱平衡では黒体輻射で長い波長の電磁波で充満するとおもいます.ただ今考えたいのは,LEDを点灯させて平衡に達するまでの時間というか,LEDの発する光が壁に供給する単位時間あたりの熱量なんですよ(^^;)

>篠原さん >そりゃ,紫外線レーザーを使ったら高い容量のディスクができると思います. でも,今でさえ,精一杯がんばって青色レーザーをやっとこさ作れているレベルなので,紫外線のレーザーとなると,なかなか今は難しいんじゃないかな? そういえば,半年ほど前にAlN(窒化アルミニウム)を使って,波長210nmのLEDの製作にNTTが成功したそうです. 紫外線レーザーも研究室レベルではできているのかも知れませんね.

たしか,青色LEDよりも紫外線LEDのが先に作られましたよね? そうなると難しいのは微小なドットを読み取ることが難しいってことなんでしょうか?それとも,LEDを作るのとレーザーを作るのは別物ってことですか?

>りんごさん

なるほど,10μmですか,WIKIで調べたら遠赤外線でした.以下引用です.

==引用ここから 遠赤外線は,およそ4〜1,000マイクロメートルの電磁波である.電波に近い性質も持つ. 遠赤外線は熱を持った物体(絶対温度が0Kを超える物体)からは必ず放射されている.すなわち熱線としての性質を持ち,高い温度の物体ほど赤外線を強く放射する.

主として,熱線として調理や暖房など加熱機器に利用される.一般に電磁波は,波長が長い方が物体に浸透する能力が大きくなるので,遠赤外線を用いることにより,対象を内部から暖めることができる(その好例がコタツである). ==引用終わり

熱をもった物体から放射されているといわれると,ああなるほどって気がしました.