静電遮蔽について質問します.電磁気の教科書では,内部に電荷がない場合のみ証明されているようですが,一般に導体内部は,外部の電場の影響を受けないと理解してよいように書いてあります.しかし,携帯電話は,ペースメーカーに影響を与えると言われます.ペースメーカーはきっと導体で遮蔽して作られていたら,問題なさそうなのですが,なぜ,影響をあたえるのでしょうか?これは,時間的に変動する場では,なにか別の要因が発生するのでしょうか?よろしくお願い致します.
宏太さん,こんにちは.
電磁波は金属にも侵入します. どのくらいの深さまで侵入できるかは,金属の種類,電磁波の強度, 電磁波の波長に依存します.
最近のペースメーカーは十分な対策がなされていて,携帯電話の電磁波で 誤動作を起こす可能性は低いようです.
事実として電磁波が導体内部に進入するのかどうかよりも, 静電遮蔽と矛盾するような感覚にどう折り合いをつけたらよいかを, 広太さんは気にされているのだと思いました.
広太さんは「静電遮蔽」と電磁波の遮蔽との区別が漠然としているのだと思います.
CO さんがご紹介のサイトには「シールド」についての説明もありました.
上記サイトでは「静電シールド」と「電磁シールド」という語句が使われています.
遅ればせながら自己紹介をすると, 専門は数学なので物理学については高校程度の知識しかもっていません. ので,以下の書き込みは眉に唾をつけてお読みください.
静電遮蔽というのは, 導体内部の電子が動いて,静電場を打ち消すような配置をとることで成立するのだ と思っています. 電子たちが動き始めてから,理想の配置が成立するまでのわずかな時間, 導体内部にも電場が存在するわけです. 電場が静的なものでなく変化するのであれば,内部の電子も電場の変化に追随しな ければなりませんが,それにはけっこう時間がかかりそうです. 導体内部で電子の動く速度というのは意外と遅いのではなかったでしょうか.
導体内部に入り込もうとする電場とそれを防ごうとする電子のせめぎ合いによって 電磁波は導体表面にも侵入するのでしょう.
>静電遮蔽と矛盾するような感覚にどう折り合いをつけたらよいかを, 広太さんは気にされているのだと思いました.
そのとおりです. >導体内部で電子の動く速度というのは意外と遅いのではなかったでしょうか. これは,どの程度を速いというかによると思いますが,静電誘導にかかる時間は 10^(-18)[s]ほどと,本にありました.直流の流れるときのドリフト速度よりは, ずっと速いということです.しかし,anonさんの指摘は納得しました.
>導体内部に入り込もうとする電場とそれを防ごうとする電子のせめぎ合いによって 電磁波は導体表面にも侵入するのでしょう.
その結果,電子の振動によって電磁波が発生し, 導体内部は,完全には外部の影響を遮断できないということですよね. そういわれてみれば,”静電”遮蔽と書いてありますね. 外部電場の影響を完全に遮断できるのは,静電場だけと理解しました. ありがとうございました.
> >導体内部で電子の動く速度というのは意外と遅いのではなかったでしょうか. > これは,どの程度を速いというかによると思いますが,静電誘導にかかる時間は > 10^(-18)[s]ほどと,本にありました.直流の流れるときのドリフト速度よりは, > ずっと速いということです.
“静電誘導にかかる時間”と“電子の移動速度(ドリフト速度)”を比較.... 片や“時間”,片や“速度”.いかがでしょうか.
ちょっと図を描いて見ます.(簡単のために直線状の導体内部です) <pre> - - - - - - - - + + + + + + + + </pre> -(電子)と +(原子核)がペアになって並んでいます.この両脇に電荷を置いて <pre> + - - - - - - - - - + + + + + + + + </pre> となりました.生じた電場によって電子が左に寄って, <pre> + --- - - - - - - + + + + + + + + </pre> これで静電遮蔽が完成です.電子たちはゆっくりと左に二歩移動しただけです. かかった時間は一瞬です.
>ペースメーカーはきっと導体で遮蔽して作られていたら,問題なさそうなのですが
完全に導体で密閉されていれば,問題ないと思います. しかし,ペースメーカーとして動作させるには,電極を心臓に接続する必要があるので,この部分は密閉できません. 電極がアンテナになって電磁波を受信したり,電極取り出し部の微小な隙間(絶縁体部分)から電磁波が進入したりして,影響を受ける可能性があります.
anonさん申しわけありません 図の意味がわかりません.あと,私の力不足で,anonさんの言わんとしていることが わかりません.この説明は,静電遮蔽のときに電子がゆっくり動くことの説明なのでしょうか?
桝岡さんへ. >完全に導体で密閉されていれば,問題ないと思います. ということは,変動している電磁場が外部にある場合でも, 導体内部の,電磁場に影響はないのでしょうか?ということは, 私が”静電”遮蔽,と静電場だけの性質と考えたことは間違いでしょうか? よろしくお願い致します.
枡岡さん,はじめまして.
>しかし,ペースメーカーとして動作させるには,電極を心臓に接続する必要があるので,この部分は密閉できません.
へ〜,こういうクリティカルな問題があることに気づいていませんでした. でも,よく考えてみればそうですね.電波制御だったら余計怖いですし.
こういうリアルな情報があると,人ごみで,携帯電話を使うことがちょっと怖く なります. 貴重な情報ありがとうございました.
広太さんの No.12204 への返答です.
> anonさん申しわけありません > 図の意味がわかりません.あと,私の力不足で,anonさんの言わんとしていることが > わかりません.この説明は,静電遮蔽のときに電子がゆっくり動くことの説明なのでしょうか?
言葉が足りなかったようですね.ちょっと補足させてください.
広太さんの No.12150 にある
> 静電誘導にかかる時間は...(中略)...直流の流れるときのドリフト速度よりは,ずっと速いということです.
という言葉を拝見して, “ドリフト速度はさほど速くないにもかかわらず静電遮蔽にはほとんど時間がかからない” というのを広太さんが解し難いことと感じているのだと思ったのです.
そこで,“ドリフト速度はさほど速くないにもかかわらず静電遮蔽にはほとんど時間がかからない”というのはなにも不思議なことではないのだということを説明しようとしたのでした.
図については,“図を見て伝われば儲けもの”という程度のつもりでしたので, 見て分からなければあまり気にしないで下さい.
>ということは,変動している電磁場が外部にある場合でも, >導体内部の,電磁場に影響はないのでしょうか?
厳密に,ということであれば,電磁波は金属内部にも侵入するので,完全に遮蔽することはできません. 携帯電話の周波数であれば,電子の移動速度が原因ではなく,金属の電気抵抗が0よりも大きいことが原因で電磁波が侵入すると考えられます. 電磁波は電場と磁場の変動を伴い,金属内部の磁場が変動すると電磁誘導による電流が流れて磁場の変動を打ち消します.電気抵抗が0よりも大きいと,抵抗*電流の電場変動が金属内に残ることになります.
日常生活の電磁波の周波数と強度では,金属で密閉することで,内部の電子回路が誤動作しない程度のレベルまで電磁波を減衰させることができます. このため,電子機器では,静電場と電磁波のシールドを目的として,導体によるシールドが利用されます. 実際のシールドでは,密閉が不完全なことが大きく影響し,金属に電磁波が侵入する影響はほとんど無視できます. シールドの隙間を,どの程度許容できるかは,シールドしたい電磁波の周波数や強度に依存します.