水飲み鳥は何故動くのか

水飲み鳥は何故動くのか

しんスケ さんの書込 (2006/08/05(Sat) 12:15)

以前に課題研究の相談をさせていただいた者です. 高3ですが,高校物理はまだ力学・波動・電気しか履修していません.

水飲み鳥が動く仕組みについて疑問があります.

水飲み鳥のしくみ ttp://www.geocities.co.jp/Technopolis/7934/column06/#sikumi

これによると,水飲み鳥は周囲の熱を仕事に変換しているように見えます. そこで水飲み鳥は第二種永久機関なのではないかという疑問が湧いたのですが, 実際にはそうでないらしいのです(自分でもそうではないと思います).

「水飲み鳥を動かしているのは太陽の反エントロピーである」 調べてみるとこのような言葉でまとめられていたのですが, いまいち腑に落ちません.

数式を扱った本格的なことは分かりませんが, エントロピーが何なのかは本を読んで少し理解しました.

水飲み鳥が第二種永久機関ではないことを, 高校生でも分かるように説明したいのですが, 助言を頂きたく書き込みをさせていただきました.

気温が20度なのに太陽湯沸かし器が40度のお湯を沸かすことができるのも, この疑問に何となく関連があるような気がするのですが…

Re: 水飲み鳥は何故動くのか

yama さんのレス (2006/08/05(Sat) 14:09)

水と空気の温度差を利用して動いているので,永久機関ではありません. この温度差は水の蒸発熱によって生じます. 放置しておくと,水が蒸発してしまって動きが止まります.つまり水を補充し続けないと永久に動き続けることはできません.

また,水飲み鳥全体を密閉容器に入れると,そのうち水蒸気が飽和状態になるので水は蒸発しなくなり,しばらくすると空気と水の温度差がなくなって,水飲み鳥は動かなくなります.

第2種の永久機関は,温度差に関係なく,熱を吸収して仕事をします. 温度差がないと仕事をしないものは,第2種の永久機関ではありません.

Re: 水飲み鳥は何故動くのか

しんスケ さんのレス (2006/08/05(Sat) 15:47)

水は蒸発する際に周囲の熱を奪っているのではないのでしょうか?

・「温度差」によって動く. ・「水の蒸発」によって「温度差」が生じる. ・「周囲の熱」によって「水が蒸発」する.

こう考えると,根端にある要因は「周囲の熱」で, "熱を奪って運動をしている"ように思われるのです.

言葉足らずで申し訳ありません.

Re: 水飲み鳥は何故動くのか

yama さんのレス (2006/08/05(Sat) 17:03)

確かに,水が蒸発するときに周囲の熱も奪っています. しかし,それが水飲み鳥の運動の原因ではありません. 蒸発するときに,水自体の熱が奪われるため水温が下がるのです. その水で冷やされて内部のエーテルの温度が下がるので,水の蒸発によって間接的にエーテルの熱が奪われると考えることもできます.

周囲の熱で水が蒸発すると考えるのは間違いです. はじめに水温が周囲の温度に等しくても,水蒸気が飽和していなければ,水は蒸発し,水温が低下して温度差が生じます. つまり,水が蒸発するのは,水と水蒸気が相平衡に達していないためです. もちろん周囲の空気の熱によってエーテルが温められる過程もあります. しかしエーテルが温められるだけでは,運動は持続しません. エーテルが冷却される過程も必要であり,それが水の蒸発によって行われるのです.

・水が蒸発しなければ運動は持続しない. ・水が蒸発すれば,そのうちなくなってしまって運動が止まる. ・運動を続けさせるには,水を補充する必要がある. ・つまり,周囲の熱だけでは運動は続かない. というわけなので,これでは永久機関とは言えません.

Re: 水飲み鳥は何故動くのか

mNeji さんのレス (2006/08/05(Sat) 17:17)

しんスケさん:

始めまして.

私も熱力学が得意でありません. 逆に,なんとなく気にするところが判りますが,残念な事に説明できません.

>気温が20度なのに太陽湯沸かし器が40度のお湯を沸かすことができるのも, >この疑問に何となく関連があるような気がするのですが…

多分,この疑問が前からあって,「頭に付いた水が室温なのに蒸発する」という質問が出てきているのではないかと推測します.

yamaさんの解説を戴けると幸いです.

Re: 水飲み鳥は何故動くのか

しんスケ さんのレス (2006/08/05(Sat) 17:45)

水の蒸発についての解釈が間違っていたようです. 第二種永久機関の定義についても誤解していました.

「他に何も変化をおこさずに」運動しなければならないようで, 水を補給しなければならない点で永久機関と言えないのも納得です.

ご丁寧に回答して頂きありがとうございました.

Re: 水飲み鳥は何故動くのか

yama さんのレス (2006/08/05(Sat) 22:26)

説明にちょっと間違いがあったので訂正しておきます.コップの水が蒸発して水温が下がるかのように書きましたが,正しくは,コップの水が頭部についてから蒸発して,その蒸発熱のため内部のエーテルが冷えるわけです. いずれにしても,水の蒸発によって運動が持続することになります.

気温が20度なのに太陽湯沸かし器が40度のお湯を沸かすことができるのは直接の関係はないようですが,全く無関係とも言えないようです. というのは,どちらも太陽放射が関係しているからです. 太陽熱湯沸かし器に太陽光を当てないようにすると,周囲との熱のエネルギーのやりとりは主に熱伝導によって行われます.熱は高温物体から低温物体に移動するので最終的には周囲と温度の等しい熱平衡状態になります.従って気温が20度のときは水温も20度にしかなりません.赤外線による熱のやりとりもありますが,これも温度が等しくなったとき釣り合います. しかし,太陽光が当たると状況が違ってきます.物体は太陽光線を吸収すると温度が上がりますが,温度が上がると赤外線としてエネルギーを放出するようになります.吸収するエネルギーと放射するエネルギーが釣り合ったところで温度が一定になります.これは一種の平衡状態ですが,熱平衡状態ではありません. このときの温度は物体によって違います.たとえば黒い物体は,光をあまり反射しないので,当たった光のエネルギーの大部分を吸収します.吸収したエネルギーと釣り合うエネルギーを赤外線として放射するためには,白い物体よりも高温になる必要があります.このような放射によるエネルギーのやりとりのほかに,熱伝導や対流によるエネルギーの移動ももちろんあります. 太陽熱湯沸かし器は,できるだけ多くの太陽エネルギーを吸収し,熱伝導などによるエネルギーの損失をできるだけ少なくするようにして気温よりも水温が高くなるようなしくみになっています.

地球全体としてみれば,太陽放射を吸収し,赤外線を宇宙空間に放射しています. つまり,太陽→地球→宇宙空間というエネルギーの流れがあります.このエネルギーの流れは,太陽と宇宙空間が熱平衡状態にないことを意味しています.実際,太陽の表面温度が6000度であるのに対して宇宙空間の温度(宇宙背景放射の温度)は,絶対温度で3度です. 地球もこのエネルギーの流れのなかにあるため,熱平衡状態にはならず,部分的な温度差やいろいろな形でのエネルギーの移動が生じています. 水飲み鳥の水が蒸発するのも,熱平衡状態でないために水蒸気が飽和していないからです.この非平衡状態は,太陽放射のエネルギーによって維持されています. 地球内部のエネルギーを考えないとすると,太陽放射がなくなれば地球全体が絶対温度3度の熱平衡状態になります.そうなれば,太陽熱湯沸かし器は役立たなくなり,水飲み鳥も動かなくなるでしょう.

「平和鳥」 とよんでください.

山旅人 さんのレス (2006/08/05(Sat) 23:20)

この鳥は,昭和24年6月に広島市にお住まいの平田さんが発明され,「平和鳥」 と命名されたそうです. (戸田盛和『おもちゃセミナー』<日本評論社>によります.)

>>しんスケさん 一見永久機関に見える運動の原動力は yama さんが解説されているとおりですが,水の流入と流出で周期運動がくり返される 「鹿威し」 と異なり,閉じた系の中でエーテルの重心が間歇的に移動するように設計された,メカニズムの周到さにも感心してください.鳥のウエスト(支点)の高さをわずかに上下させることにより,間歇の周期を調節することができます.

>> yama さん 平和鳥の永久運動から地球や宇宙空間の熱非平衡に思いを致すスケールの大きさに感心させられました.

Re: 「平和鳥」 とよんでください.

toorisugari no Hiro さんのレス (2006/08/07(Mon) 14:44)

もうスレッドはおわっていますが,

> 「水飲み鳥を動かしているのは太陽の反エントロピーである」

これはあの有名なシュレディンガーの言葉 「生物は反エントロピー(ネゲントロピー)を食べて生きる.」 のパロディー・オマージュですね.

生命とは何か―物理的にみた生細胞 E.シュレーディンガー 岩波書店

Re: 「平和鳥」 とよんでください.

komagatake さんのレス (2006/08/19(Sat) 12:19)

今までの文章を拝見しました.水の蒸発と内部にエーテルがあることは書かれていますがエーテルの働き,動きについては触れられていないように思います. 内部がガラスで二重構造になっているのをご存知ですか.中が見えない水飲鳥の前でアインシュタインが考え込んでしまったというエピソードがあります. 初めは外側のガラスの底にエーテルが入っています.エーテルの蒸気が全体に充満しています.鳥の頭の部分にはフェルトのような布がついていて水分を保持します.最初に頭を下げてやって濡らしてやります.重心が低いですから振動を繰り返します.水が蒸発するとその部分だけ周囲のガラスの部分よりも温度が下がります.頭の部分内側に接触していたエーテルの蒸気が液体に戻ります.この液体に戻ったエーテルを二重構造内側のガラス容器に溜めるようになっているのがポイントです.外の容器に入っていたエーテルが内側の容器に移っていく事になりますから重心が高くなります.内側の容器の体積は小さいですから短時間でいっぱいになります.ここで獅子脅しと同じ理屈で一気に中のエーテルを流し出します.その時頭を水に突っ込んで新しく水で濡らします.最初に頭を下げて濡らしてやると運動を繰り返します.頭と腹で温度差がなければエーテルの循環は起こりません.二重構造になっていなければ運動に変換は出来ません.

獅子脅しと仕組みは似ています.獅子脅しでは少量の水の定常的な流れを断続的な大きな運動に変えています.水飲み鳥では流れてくる水の代わりにエーテルを使っています.少量のエーテルの移動を断続的な大きい運動に変えています.外気の熱エネルギーを循環のエネルギーに変えています.