エネルギーの山を越える!?

エネルギーの山を越える!?

あさ さんの書込 (2006/07/26(Wed) 23:50)

こんにちは.以前かなりお世話になったあさです. 急にわからなくなっちゃったことがあるので,質問させてください.

いま,化学で,ブタン分子のアンチ型とゴーシュ型について勉強していました. で,ブタン分子の中央のC−C結合のねじれ角とポテンシャルエネルギーについてのグラフを眺めていたんです. アンチ型からゴーシュ型に移るのに,約3.8kcalのエネルギーの山を越えなければならないことがわかったのですが,この山が,室温で越えるにはどれほど低い(或いは高い)ものなのかとはどのように分かるのでしょうか?

「室温300K(27℃) に対応するエネルギー kT の値は,4.14 × 10^(−21)J」というのを知ったのですが,これだと3.8×4.2 Jよりずっとずっと小さいような気がします.このエネルギーは山を越えるのに必要なエネルギーとはまた別のものなのでしょうか?

よろしくお願いいたします

Re: エネルギーの山を越える!?

篠原 さんのレス (2006/07/27(Thu) 00:22)

はじめまして. 篠原です.

このような分野は,非常に苦手なので,自信はないのですが,私の思ったことを書きます.

3.8kcalと言うのは,おそらく1molあたりの量ですよね・・・? でも,kTは,おそらく粒子1個あたりの量ですよね?? なので,これらを単純に比較するには無理があると思います.

数をそろえて計算したほうが良いのでは・・・?

細かいところは,全くわかりません. 詳しい方の返答を待ちましょうか・・・.

Re: エネルギーの山を越える!?

あさ さんのレス (2006/07/27(Thu) 14:13)

ああ,そうですよね!

・・・で改めて,よく考えて, 気体のエネルギーは(3/2)RTじゃないかと思ったのですが,それでも3.8kcal/molには届きません(>_<)

多分,他にもブタン分子のC−Cを回転させる要素があると思うのですが,やっぱりよくわかりません(TmT)

Re: エネルギーの山を越える!?

toolkit さんのレス (2006/07/27(Thu) 20:19)

横から失礼します.

理化学辞典の「等分配則(エネルギー)」の拠りますと;

一般にある座標,運動量に関して2乗の形に表せる項を含む場合,その項の平均値は常に(1/2)kTとなる.これを等分配則という.例えば,一原子分子からなる理想気体では,1molあたりの平均エネルギーは,モル分子数をNとして,(3/2)NkT=(3/2)RTとなり,定積モル比熱は(3/2)Rとなる.

ブタン;CH3(CH2)2CH3;の定積モル比熱から大雑把なブタンの自由度が判るはずですが;

1)全体の並進運動:自由度3 2)全体の回転運動:自由度3or2 3)CC間の結合振動:自由度3? 4)CC間の捩れ振動:自由度3?

故に,全体の自由度f=12..5

1分子の平均エネルギ=f(1/2)kT 1molあたりの平均エネルギー=f(1/2)RT 定積モル比熱Cv=f(1/2)R

故に, f=Cv/[(1/2)R]=2Cv/R

だと思います.

なお,R=8.31J/(K・mol)

Re: エネルギーの山を越える!?

komagatake さんのレス (2006/08/21(Mon) 12:41)

初めまして.駒ヶ岳です.新しく書き込みの仲間に入れてもらいました.

日付は古いようですがまだ結論に至っていないように思いました.私にもわからないところがありますが頑張って書きます.

はじめの質問の文中の数字,単位の混乱があってよけいにわかりにくくなっています.化学反応において出てくるエネルギーは基本的にmolあたりです.kcal/mol,またはkJ/molです.だから熱エネルギーの方もkTでなくRTで考えることになります.toolkit様の解答の中に出ている数字を使うと300KでRT=2.5kJです.これは質問の中にあるkTの値にアボガドロ数をかけたものと同じです.エネルギー等配分の法則というのは1自由度あたり1molでRT/2という内容になります.自由度が3であれば3RT/2です. 反応熱は反応前後の基底状態で比較しています.だからポテンシャルの山の高さも基底状態に対してです.熱エネルギーはその基底状態に対しての熱励起の程度を表しています.

ブタンの転移のエネルギーの山の高さは同じ単位で書くと16.0kJです.これは熱エネルギーに比べて大きいようですがそのまま数字を比べるわけにはいきません.ここでの転移エネルギーはブタンがある形から別の形に移るときに必要なエネルギーの山の高さです.kT/2というのは1自由度あたりでしたからこの変形に関係している原子や結合全体のエネルギーを与えているのもではありません.各原子が平均的に1自由度あたりkT/2です.このところでは換算が難しいです.変形に関係する原子はどれか,その原子のどの様な運動が変形に関わっているかが分からないとエネルギーの評価は難しいです.kTを何倍したものと比較したらいいのかがわからないのです.でもtoolkit様の解答の中にあるようなブタン全体の運動の自由度で考えるというものではないでしょう.転移に関係する自由度だけでしょう.kTとの比較はオーダー的なおおよその比較だということになります.6倍程度の違いですから12RT/2で同じになる事になります.自由度が12というのに対応します.(toolkit様がf=12.5という数字を出されたのはこれを出したかったからではないでしょうか.でも並進の自由度は比熱には関係してきますがこの転移には関係してこないはずです.) 実際の自由度は12もないと思います.でも超えられないはずだというのは誤解です.基底状態から余分に16kJ必要だということを言っています.自由度が6に対応する3RTぐらいしかなければ越えられないのでしょうか.ここで元の当配分に戻ります.1自由度あたり,kT/2であるというのは平均です.実際のエネルギー分布は温度による揺らぎがあります.ある分子ではこのkTよりも大きいエネルギーを持っているかもしれません.別の分子ではkTよりも小さいエネルギーを持っているかもしれません.この時の分布は統計力学で議論されていることです.平均でkT/2のエネルギーを持つものがkTのエネルギーを持つチャンスはそれほど小さいものではありません.10倍のエネルギーを持つチャンスはほとんどないかもしれませんが2〜3倍程度のエネルギーを持つチャンスはそれほど小さくないのです. 以上のようなことから多分この転移は常温であまり低くない確率で起こるだろうということまでは言えるだろうと思います.

補足 当配分の法則にも注意が必要です.1自由度あたりと言っていますが自由度毎にエネルギー順位の間隔に違いがあります.束縛の緩い運動の場合,間隔が狭いです.熱エネルギーで充分励起できます.連続的にエネルギーを与えることができるとしてもいいです.この場合は当配分が成り立ちます.並進運動や自由回転の場合です.束縛状態でエネルギー順位の間隔が広い場合は熱エネルギーで充分に励起できません.kT/2の大きさまでエネルギーを与えることが出来なくなります.伸縮振動や偏角振動です.ポテンシャルの中での回転運動は両者の中間でしょう. 気体の定積モル比熱は1原子分子では3R/2,2原子分子では5R/2となるとされています.5R/2であるということは自由度が5ということですから剛体と考えていることになります.原子間の伸縮振動に普通はエネルギーが渡せないからです.測定値では1原子分子ではよく合いますが2原子分子ではズレが目立ちます.剛体近似はうまく成り立っていないということになります.ブタンの変形のエネルギーは緩い束縛状態のものでしょう.ポテンシャルの中での回転だけのようですから伸縮振動にはあまり関係しないでしょう.伸縮振動が関係するのであれば熱エネルギーで励起するのは難しくなります.糖の椅子型,舟型のような転移はエネルギーの山がかなり高いはずです.